孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

気候変動  影響で紛争増加 「気候正義」を求める途上国 対策不十分な政府は「人権侵害」

2024-04-18 23:18:24 | 環境

(アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの冠水した道路(2024年4月17日撮影)【4月18日 AFP】
これも気候変動の影響か?)

【様々な事象と気候変動の関連性は?】
個々の異常気象・災害が長期的な温暖化に起因する気候変動に関係するものかどうかは素人的にはなかなか判断が難しいところもあります。

昨年6月以降、10か月連続で記録が更新されている気温上昇はおそらく温暖化によるもののようです。

****「史上最も暑い3月」 10か月連続で記録更新*****
欧州連合の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は9日、先月が観測史上で最も暑い3月になったとし、2023年6月以降、10か月連続で記録が更新されていると発表した。

C3Sによると、先月の世界の気温は、1850〜1900年(産業革命前)の3月の平均気温を1.68度上回った。
アフリカからグリーンランド、南米、南極まで、世界の広い地域で平均を上回る気温が観測された。 【4月9日 AFP】
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“C3Sのサマンサ・バージェス副所長はロイターに、「異常な記録が長期的な傾向となっており、非常に懸念している。このような記録が毎月続くことは、気候が急速に変化しつつある事態を示している」と述べた。”【4月9日 ロイター】 

いろんな事象はある限界を超えると変化が一気に加速することがよくありますが、そういう限界が近づいているのでしょうか。

ロシア・カザフスタン国境で起きた大洪水は、地球温暖化現象とは直接は関係がないとのことです。

****ロシア、カザフスタン:洪水により10万人以上の住民が安全な場所に避難する*****
『フランス24チャンネル』4月10日付けでは、ロシアやカザフスタンの洪水のピークにはまだ達していないがウラル山脈地域や西シベリアの多くの地域では記録的な洪水の被害が起きていると伝えている。そのため、10万人以上の住民が避難生活を余儀なくされているという。

ロシア大統領府のドミトリ・ペスコフ報道官は、4月10日、テレビを通じて「現状はかなり緊迫している。備えは不充分で、水位は上がり続けている。 ウラル山脈周りと西シベリアの多くの地域は記録的な洪水にみまわれている。」と伝えた。

カザフスタンとロシアで起きている洪水は、気温上昇による大雨の発生、雪解け水の増加、さらに河川を覆っていた氷が解け始めたことが相重なったためで、地球温暖化現象とは直接は関係がないという。【4月11日 JCC】
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砂漠の国UAEなど中東地域での大雨は、最近行われている人工降雨の影響ではないかとの話もあるようですが、専門家の話では人工的なものではなく、やはり地球温暖化などの気候変動のひとつと見るべきということのようです。

****“1日で1年半分の雨”街に襲来 空港も大規模冠水「人生で初めて」****
■空港も大規模冠水「人生で初めて」
中東・アラブ首長国連邦を襲った暴風雨。ドバイ国際空港では駐機場が冠水し、まるで湖のように…。24時間雨量は142ミリを記録。平年の年間降水量が94.7ミリのため、一日で1年半分の雨が降ったことになります。

この国で観測が始まった1949年以来、最大となる記録的な大雨によって各地で洪水や冠水が発生。(中略)
週末からアラビア半島で続いていた嵐。なぜ、ここまでの大雨となったのでしょうか。

UAE国立気象センター アルナクビ上級予報官
「もし、人工的に雨を降らせようとしたなら、その影響はあっただろうと思います」

可能性の一つと指摘されているのが「クラウド・シーディング」。“雲の種まき”です。
雲の中に氷の核となる物質を放出。人工的に雨を降らせる技術で、干ばつや水不足対策としてUAEなど中東の国々で利用されています。しかし、今回の嵐が来る前はこの試みは行われていなかったということです。

そこで考えられるもう一つの原因が…。

気候学者 コリーン・コルジャ氏
「今回は気候変動によって、嵐の勢力が過剰に増強された可能性が高い」 「地球温暖化などの気候変動が多くの異常気象が引き起こしている」。専門家たちは警告しています。【4月18日 テレ朝news】
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分かりやすいところでは、暑くなれば熱中症が増える・・・まあ、それはそうでしょう。

****熱中症搬送者、40年に倍増予測 3都府県で、名工大チーム****
地球温暖化による気温上昇が続き、2040年に世界の平均気温が産業革命前より2度上昇すると仮定すると、夏場の熱中症による救急搬送者数が東京、愛知、大阪の3都府県で10年代と比べて倍増するとの試算を、名古屋工業大などのチームが18日までに発表した。救急医療の逼迫が懸念されるとしている。

チームは、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による最も気温上昇が高いシナリオに基づき、3都府県の気温を算出。熱中症の搬送者数を予測した。(後略)【4月18日 共同】
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おそらく感染症などの地域分布も変わるのでしょう。デング熱など、これまでは熱帯地域特有の病気とされていたものがその他の地域にも拡散することになるのでしょう。

【気候変動による被害総額は2050年までに推計で年間38兆ドルとの予測も】
気候変動の影響は災害、農業など経済、健康など多岐にわたりますが、分かりやすい指標として金額換算すると、気候変動による農業やインフラ、生産性、健康への被害総額は2050年までに推計で年間38兆ドルに達するとの報告が。

****気候変動の被害、2050年までに年38兆ドルか=独研究所****
ドイツ政府の支援を受けているポツダム気候影響研究所(PIK)が17日発表した報告書によると、気候変動による農業やインフラ、生産性、健康への被害総額は2050年までに推計で年間38兆ドルに達し、人類が排出する温室効果ガスの量が増えるにつれ、さらに被害額が膨らむことがほぼ確実と分かった。

気候変動の経済的影響は完全には理解されておらず、エコノミストの間では頻繁に見解が分かれる。PIK報告書は深刻さで際立っており、今世紀半ばまでに国内総生産(GDP)が世界規模で17%落ち込むと試算している。

報告書の共著者レオニー・ウェンツ氏は「気候を守ることの方が、気候を守らないよりも格段に安上がりだ」と述べた。

報告書によると、2050年までに産業革命前からの気温上昇を2度以内に抑える地球温暖化対策には推定6兆ドルの費用がかかるものの、対策を怠って2度超上がった場合の推定損害額の6分の1未満にとどまるという。

従来の研究では、気候変動は一部の国の経済に恩恵をもたらす可能性があると結論づけられていたが、今回のPIK報告書では、ほぼすべての国に被害をもたらし、最も大きな打撃を受けるのは貧しい発展途上国であることが判明した。

ただ、各国政府は排出量を抑制するための歳出が少なすぎるだけでなく、気候変動の影響に適応するための対策費も不足している。

今回の報告書に至る研究過程では、過去40年間の1600以上の地域の気温データと降雨量を調べ、どの事象が被害をもたらしたかを検討した。

さらに、その被害評価と気候モデルの予測を使用し、将来の被害を推計した。それによると、排出量が現在のペースで続き、産業革命前からの気温上昇が平均で4度を超えた場合、経済的損失は2050年から2100年までに推計60%の所得損失に達することがうかがわれる。気温上昇を2度以内にとどめると、所得損失は平均20%に抑え込める可能性がある。【4月18日 ロイター】
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【気候変動がもたらす紛争増加 「気候正義」を求める途上国】
単に経済的に大きな損失を被るだけでなく、気候変動は資源の減少を通して、その稀少となった資源の奪い合いという紛争を多発させることが予想されます。

****アフリカの異常気象による「最悪のシナリオ」が現実に… 気候変動→資源減少→紛争増加 日本も他人事ではいられない****
2023年11月下旬、アフリカ・ケニア東部のトゥーラ近郊。取材のため車で通りがかった私は、赤茶色の濁流を前に立ち往生していた。(中略)

この場面だけ見れば一地域の大雨被害と思われるかもしれない。しかし、ここから北西に約400キロ、東京―大阪間ほどしか離れていないエリアでは、前年のこの時期は干ばつに見舞われていた。しかも、国連が「過去40年間で最悪」と評したほどのひどさ。ケニア・ソマリア・エチオピアの国境が接する一帯は23年前半まで苦しんだ。

それが一転して、その年の後半からは水害が多発している。ロイター通信は、ソマリアでは70万人以上が洪水で家を追われたと報じた。

地球各地で見られる気候変動。アフリカでは近年、異常気象による災害が顕在化。乏しい資源を奪い合って紛争が増えるという「最悪のシナリオ」も危ぐされている。現地では何が起きているのか。

▽ウクライナ侵攻の裏で進む食料危機
ロシアのウクライナへの全面侵攻開始が世界の目を集めていた2022年2月下旬、ケニア北部マルサビット郡には深刻な食料危機が直撃していた。

「食べ物がほしい」  車を走らせると、やせ細った子どもたちが訴えかけてくる。文字通り「不毛の大地」に、衰弱して息絶えた家畜の死骸が散在していた。

ケニアの「国家干ばつ管理機関」でマルサビットを担当するマモ・イサコさん(29)は恨めしそうに空をにらんだ。 「最後に雨が降ったのは昨年4月です」 家畜をはぐくむ緑はうせ、乾いた黄土色の砂地がかなたの山裾まで続いていた。(中略)

干ばつでも、地下水をくみ上げたり雨が豊富な遠方から輸送したりして、マルサビットの住民は渇きから逃れていた。だが、飢えは深刻だ。集落の副首長アンドリュー・レマロさん(34)は、食料危機が起きるメカニズムをこう説明する。

「集落の住民のほとんどは放牧をなりわいとしてきましたが、干ばつで牛やヤギ、ラクダといった家畜の餌となる植物が集落の周辺に生えなくなりました。家畜を避難させるため、集落の男たちはまだ植生がある100キロ以上離れた餌場まで家畜を連れて行ったきり、半年近く戻りません。集落に家畜がいなくなった結果、女性や子どもの栄養源となるミルクや肉が手に入らなくなったのです」

▽気温上昇が多様な被害に 
気候変動は、国連によると1800年以降は主に人間活動によって引き起こされた。化石燃料(石炭、石油、ガスなど)の燃焼によって温室効果ガスが発生し、気温が上昇する「地球温暖化」が問題視されている。

気温上昇によってもたらされる被害は多様だ。国連はまずこう説明する。
「気温が高い状態が長期化すると、気候のパターンが変化し、通常の自然界のバランスが崩れる」 

その上で、世界的に嵐や干ばつの被害が増えていると指摘する。
気候変動の影響は日本も含め世界に及ぶが、堤防やかんがい設備といったインフラの乏しいアフリカは異常気象への耐性が弱く、被害がより甚大になることが予想されてきた。

2023年にはアフリカ各地で大規模な水害が発生。2〜3月には、1カ月以上にわたり勢力を保ったサイクロンが南部のマラウイやマダガスカル、モザンビークを直撃。多数の死者が出た。北部リビアでも9月に大規模洪水で約4千人が死亡している。

▽紛争増加の原因にも…
気候変動に対して脆弱な国は一般的に貧しく、これまでも食料や水の不足がたびたび問題になってきた。こういった国では気象災害の増加で資源がさらに希少になり、紛争が増加するとの懸念も高まる。

国際通貨基金(IMF)はアフリカの貧困国を念頭にした予測を公表している。 「最悪のケースでは2060年までに、一部の国で人口に占める紛争犠牲者の割合が14%増える」(中略)

▽「不公平ただせ」、いらだつ途上国
気候変動対策を話し合う国際会議などでは近年「気候正義」というキーワードをよく聞くようになった。簡単に言い換えると次のようになる。

「気候変動が進んだのは長期にわたり温室効果ガスを大量排出してきた先進諸国の責任だが、甚大な被害を受けているのは発展途上国だ。この不公平をただそう」

貧困国が多いアフリカではとりわけ、気候正義を意識したような発言が聞かれる機会が増えた。
 「空っぽな約束だけで傍観してきた」(赤道ギニアのヌゲマ大統領)
 「連帯と信頼を崩す」(タンザニアのサミア大統領)

アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで2023年11〜12月に開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)。首脳級会合ではアフリカ各国首脳から先進国へのいらだちをあらわにする言葉が相次いだ。

背景にあるのは、先進国側の姿勢に対する怒り。2020年までに低所得国に、気候変動対策資金を年1千億ドル拠出すると先進国側は約束していたが、守られなかった。

中央アフリカのトゥアデラ大統領は「アフリカは第一の被害者だ」と断言し、先進諸国に対して、アフリカの気象災害に対する補償を求めた。

COP28で補償は議題にならなかったが、一方で「損失と被害」基金の運営ルールが採択された。この基金は、気候災害に見舞われた途上国に対する復興支援に当てられる。

気象災害激化という現実を前に、国際社会では気候変動対策について、アフリカ諸国を始めとした途上国の意見をより真剣に聞かなければならないという雰囲気がこれまで以上に強まってきたようだ。【4月18日 47NEWS】
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途上国は対策を講じるにために必要な資金がありません。もし必要な資金を投じれば債務不履行(デフォルト)に陥る恐れがあります。

****発展途上国は気候変動対応で債務不履行の恐れ=米大学報告****
ボストン大学グローバル開発政策センターなどは14日公表した報告書で、発展途上国は今年の利払いを含む対外債務返済額が過去最大の4000億ドルに達すると予想、50カ国近くは向こう5年間にわたり気候変動対応や持続可能な開発に必要や資金を投じれば債務不履行(デフォルト)に陥る恐れがあるとの見方を示した。(中略)

発展途上国47カ国は温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の2030年の目標達成に必要な資金を拠出すると、対外債務が今後5年以内に国際通貨基金(IMF)が定める返済不能の状態に陥るという。また19カ国は返済不能までには至らないものの、流動性が不足して歳出が目標を達成できなくなり、支援が必要になるという。

ボストン大学グローバル開発政策センターのディレクター、ケビン・ギャラハー氏は「発展途上国の債務負担は非常に重く、現在の債務状況を考えると、そのような資金調達に動けば(債務不履行に向かって)進みかねない」と述べた。【4月15日 ロイター】
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【欧州人権裁判所、スイス政府の気候変動対策は「人権侵害」】
残された時間は少ない・・・というのはいつも言われる話。

****温暖化から地球救う猶予「あと2年」、国連高官が対策強化訴え****
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のサイモン・スティル事務局長は10日、地球温暖化が政治家の課題から抜け落ちているとし、気候変動の大幅な悪化を回避するのに各国政府と企業幹部、開発銀行に残された猶予はあと2年だと述べた。

極端な気象や熱波の爆発的発生を防ぐために気温上昇を1.5度以下に抑制するには、2030年までに温室効果ガス排出量を半減させる必要があるとされる。しかし、昨年に世界で排出されたエネルギー関連の二酸化炭素量は過去最高を記録した。

現状の取り組みでは30年までに排出量はほとんど抑制されないとみられている。(後略)【4月11日 ロイター】
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スティル氏は「温室効果ガス排出を大幅に削減できるチャンスはまだある。だが、さらに強力な計画が今必要だ」とも語っていますが、私は確信をもって悲観的です。

人間は漠然とした将来の不安のために目の前の利害を犠牲にできるほど賢くありません。気付いたときにはすでに後戻り出来ない所に立っているでしょう。

賢くないのであれば、訴えてでも無理やりにでも・・・

****欧州人権裁判所、スイス政府の気候変動対策は「人権侵害」と初判断 各国に影響も****
欧州人権裁判所(フランス・ストラスブール)は9日、スイス政府の不十分な気候変動対策が人権侵害にあたるとする判決を下した。欧州メディアによると、欧州人権裁が政府の気候変動対策の責任を指摘する判断を示したのは初めて。

スイス政府は上訴できず判決に従う義務があるため、気候変動対策の強化を迫られそうだ。

会員2千人超の高齢女性の団体が、スイス政府が気候変動対策を十分にしなかったとして欧州人権裁に提訴。気候変動による熱波で健康や生活の質が損なわれ、死亡するリスクがあると主張していた。

スイスメディアなどによると、欧州人権裁はスイス政府が過去の温室効果ガス削減目標を達成していないなどとして「将来の世代がますます深刻な負担を負う可能性が高いことは明らかだ」と指摘した。十分な気候変動対策を講じなかったことにより、欧州人権条約が定める「私生活と家族生活の尊重を受ける権利」が侵されたと結論づけた。

ロイター通信によると、スイス政府の代表は「判決を分析し、スイスが今後どのような措置をとるか検討する」とした。今回の判決が適用されるのはスイス政府だけだが、欧州各国の気候変動対策にも影響を与えそうだ。人権侵害を基にした気候変動訴訟が欧州全体で増加する可能性もある。

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんは欧州人権裁の判決を称賛し、「これは始まりに過ぎない。私たちはもっと闘わなければならない」などと訴えた。【4月10日 産経】
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