孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  国際協調・多国間主義に背を向け、「最も強い者のおきて」に徹するトランプ政権

2018-10-04 23:03:40 | アメリカ

(安保理サミット議長でありながら、途中退席するトランプ大統領【10月2日 Foresight】
トランプ大統領は9月26日、国連安全保障理事会で初めて議長を務めましたが、自らが掲げる強硬な対イラン政策について各国から非難を浴びたことが気にいらなかったのでしょうか)

プーチン大統領や習近平国家主席より低いトランプ大統領の評価
アメリカ・トランプ大統領は、ロシア疑惑だろうが、性的スキャンダルだろうが、脱税疑惑だろうが、どんな問題が明らかになっても岩盤支持層からの支持は40%強で非常に安定しているようです。

問題が起きること自体が、既成政治の枠を超えて、リベラルな建前を覆し、従来は大きな声では言えなかったような支持層の利益を実現してくれる存在としてのイメージを強化しているようにも見えます。

都合の悪い情報は「フェイクニュース」として無視すればいい・・・とのことのようでもあります。

一方、対外的なイメージは悪化しており、トランプ大統領の評価は、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席に対する評価よりも低くなっています。

****米国のイメージ悪化、トランプ氏への評価は中ロ首脳下回る=調査****
ピュー研究所が25カ国を対象に行った年次調査では、米国に対するイメージが昨年に続き悪化していることが明らかになった。指導者としてのトランプ大統領に対する評価は、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席に対する評価よりも低かった。

ピュー研究所は、5─8月に25カ国でそれぞれ900人以上にインタビューを行った。

米国に対するイメージは、トランプ政権1年目の2017年に行った調査で悪化していたが、今年は欧州を中心に多くの国でさらに落ち込んだ。

米国を好意的に見ている人の割合はドイツで30%と、昨年から5ポイント低下し、最下位のロシア(26%)に次ぐ低水準となった。またフランスでは38%、カナダでは39%で、ともに昨年から低下。メキシコではわずかに上昇して32%となった。

米国に好印象を持つ人が最も多いのは、イスラエル、フィリピン、韓国で、これらの国では80%以上に上った。

調査全体でみると、米国に対するイメージがプラスの人は50%、マイナスの人は43%だった。

調査では、25カ国中20カ国で過半数の人が指導者としてトランプ氏を信頼していないことが明らかになった。トランプ氏の指導力を評価している人の割合は、スペインで7%、フランスで9%、ドイツで10%にとどまった。

全体では、トランプ氏の指導力を評価している人は平均して27%で、プーチン氏(30%)、習氏(34%)を下回った。

メルケル独首相の指導力を評価する人が52%で最も多く、マクロン仏大統領(46%)が続いた。

調査ではトランプ氏への信頼が低いことが明らかになったが、世界のリーダーとしての役割を米国に期待する人は63%に達し、中国の19%を大きく上回った。【10月2日 ロイター】
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依然として大きいアメリカのリーダーシップへの期待だが・・・・
トランプ大統領への評価はともかく、アメリカに対する世界のリーダーとしての役割の期待は依然として大きなものがあるようです。

特に、中国の“脅威”に直面している日本では、その傾向が顕著です。

****米国と中国のどちらのリーダーシップを支持」日本人の回答は****
2018年10月2日、露通信社スプートニクの中国語版サイトによると、米ピュー・リサーチ・センターが米国と中国を除く25カ国の2万6112人を対象に、米国と中国のどちらのリーダーシップを支持するか調査したところ、日本では、米国のリーダーシップを支持するとの回答が81%と調査対象国で最も高かったのに対し、中国のリーダーシップを支持するとの回答は8%にとどまったという。

調査は今年5月20日から8月12日まで行われた。

調査結果によると、中国のリーダーシップを支持するとの回答が最も高かったのはチュニジアで64%、最も低かったのはポーランドで6%だった。米国のリーダーシップを支持するとの回答は、チュニジアが26%、ポーランドは68%だった。

米国のリーダーシップを支持するとの回答が最も低かったのはロシアで13%。中国のリーダーシップを支持するとの回答は35%だった。

25カ国の平均値は、米国のリーダーシップを支持するとの回答が60%、中国のリーダーシップを支持するとの回答が19%、どちらも支持しないとの回答が15%だった。【10月4日 レコードチャイナ】
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ただ、トランプ大統領はEU、カナダなど“同盟国”といわれる国に対しても、“力の外交”で要求をつきつけてくるのは周知のところで、“米国のリーダーシップ”をいつまで期待していいのか疑問もあります。

****サウジ国王、米国の支援なしでは権力維持できず=トランプ大統領****
トランプ米大統領は2日、サウジアラビアのサルマン国王に対し、米軍の支援がなければ、国王の権力は「2週間」もたないと発言したことを明らかにした。

大統領は、米ミシシッピ州での集会で「米国はサウジを守っている。私は(国王に)『われわれはあなた方を守っている。われわれがいなければ、あなたは2週間でいなくなるかもしれない。自国の軍の費用を支払う必要がある』と伝えた」などと語った。

トランプ氏は、こうした発言をいつ国王にしたかについては言及しなかった。

トランプ政権は、こうした強硬な姿勢を示す一方で、サウジがイランの野心的な行動を抑制する役割を担うとみて同国と緊密な関係を維持してきた。【10月3日 ロイター】
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サウジアラビアの政治体制に問題が多々あることはともかく、随分と露骨で傲慢な物言いのようにも思えますが、これが“トランプ流”なのでしょう。(所詮、外交は自国利益を実現するためのもので、トランプ流はそれを明快な形で実施しているだけ・・・とも言えますが、ものには限度も、やり様もあります)

日本もどのような要求を強いられるのか(あるいは、すでに言われているのか)・・・・。

【「最も強い者のおきて」の“トランプ流”】
****対話?対決?同盟国にも容赦ない批判 「トランプ外交」、世界を翻弄****
(中略)では「トランプ外交」とは何か。
 
トランプ氏は6月の米朝首脳会談で金正恩氏を「相性がよい」とたたえ、7月の米ロ首脳会談ではプーチン大統領を「良い競争相手」と持ち上げた。一方、欧州連合(EU)を「敵」と呼び、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国を軍事費負担が少ないと厳しく責め立てた。
 
外交舞台での一連の言動から浮かび上がるのは、独自の主張を通しにくい多国間の枠組みを嫌い、議会など国内事情に縛られる民主国家の首脳よりも独断即決で「取引」できる強権指導者との対話を好む姿勢だ。
 
そうさせる根底に、歴代大統領が成し遂げなかった難題を解決した「偉大な指導者」と支持層に印象づけたいトランプ氏の強烈なエゴ(自我意識)がある。
 
その手法にもパターンがある。相手を脅して自ら危機を高めてから、一転して対話を持ちかけ、問題を解決したと誇る。「合意の中身には頓着しない。ディール(取引)ができたとアピールできればいい」(元高官)。非核化の具体的な道筋が描けなくても前のめりの対北朝鮮外交は典型だ。
 
米韓合同軍事演習の中止など、関係閣僚に知らせずに重要政策を決めることもしばしば。6月のG7サミットでは合意した首脳宣言を直後に撤回表明した。
 
「相手に予測させないのは強み」との評価がある半面、情動的で独断専行の対応が政策の一貫性への疑念を生む。各国が互いの結束よりトランプ氏に取り入る風潮を危ぶむ声もある。(後略)【10月1日 朝日】
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面倒な多国間の協議を嫌い、交渉相手国や同盟国に対しアメリカのパワーを誇示して要求をつきつける“トランプ流”に対し、先の国連総会でマクロン仏大統領は「最も強い者のおきて」として拒絶する姿勢を明確にしています。

****仏大統領、国連演説でトランプ氏批判 「最も強い者のおきて」の拒絶訴え****
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は25日、国連総会で演説し、ドナルド・トランプ米大統領の地球規模の課題に対する姿勢を批判するとともに、各国首脳に「最も強い者のおきて」による問題解決を拒むよう訴えた。

これに先立ちトランプ氏は、同じ国連総会の場で「グローバリズムの思想」を拒絶する考えを示し、「選挙で選ばれていない、説明責任も負わない国際的な官僚組織に米国の主権を譲り渡すことは決してしない」と主張した。

マクロン氏はトランプ氏に直接言及こそしなかったものの、演説の中でトランプ氏の世界観とは対極の姿勢を示した。

マクロン氏は「最も強い者のおきてを選択する者もいるが、それでは誰一人守ることはできない」と述べ、国連が体現する多国間協調主義と世界平和実現の取り組みへの強い支持を改めて表明した。

2017年のトランプ政権発足以降、米国はフランスが主導してきた二つの国際協定であるイラン核合意と地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱している。

マクロン氏はイラン核合意を擁護するとともに各国政府にイラン政府との対話を呼び掛け、イランの孤立化を呼び掛けたトランプ氏と真っ向から対立する格好となった。

マクロン氏は「イラン情勢に真の解決策をもたらしたもの、そしてこれまでイランを安定させてきたものは何か。強者のおきてだろうか、一方的な圧力だろうか。断じて違う!」と強調。

また「イランは核武装へと向かっていたが、それを止めたものは何か。2015年の核合意だ」「われわれは地域情勢を悪化させるのではなく、核や弾道ミサイルといったイランの政策によって生まれたあらゆる懸念に対応するため、対話や多国間協調を通じて広範な課題に取り組むべきだ」と訴えた。

さらにマクロン氏は記者会見で、原油価格を下げるためにもイランに原油輸出を認めるべきだと語り、トランプ氏の対イラン経済制裁強化の主張に反対の姿勢を示した。【9月26日 AFP】
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マクロン大統領の演説は、アメリカに対する厳しい表現がフランス国内で“受ける”という思惑もあってのことでしょうが、世界のアメリカ・トランプ政権への苛立ち・不満・不安を代弁するものでもあります。

国際協調・多国間主義に背を向けるトランプ政権
いずれにしても、9月の国連総会一般討論演説は、トランプ大統領がグローバリズムを拒絶し、愛国主義や孤立主義、保護主義を前面に押し出したのに対し、多国間主義を擁護する国が相次ぎ、国連の礎である「多国間主義」と、トランプ米大統領の掲げる「米国第一主義」の対立が鮮明になりました。【9月26日 時事より】

最近のパレスチナやイランによる、国際司法裁判所という多国間主義を前提にした枠組みを使った要求に対し、これを明確に拒否するアメリカの対応にも、そのことは顕著に表れています。

****パレスチナが米を提訴 エルサレムへ大使館移転は「国際条約違反****
パレスチナ自治政府のマルキ外相は9月29日、米国が在イスラエル大使館を同国西部テルアビブからエルサレムに移転したことは国際条約に違反しているとして、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)に提訴したと述べた。
 
訴えは28日付。ロイター通信によるとパレスチナ側は、エルサレムはイスラエルが軍事的に支配している係争地で国際的な地位は定まっておらず、米国は、大使館を接受国の領土内に置くとする「外交関係に関するウィーン条約」(1961年)に違反していると主張。ICJに対し、米外交団にエルサレムからの撤収を命じるよう求めている。
 
マルキ外相は、提訴は「パレスチナ国家の政策」として行われたと述べ、エルサレムの性格と地位を変えようとする「イスラエル占領軍」の試みを拒絶するよう国際社会に訴えた。

パレスチナは2012年、国連での資格が「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」に格上げされた。
 
エルサレムをめぐっては、イスラエルが全域を「不可分の永遠の首都」としているのに対し、パレスチナ側は、イスラム教やユダヤ教、キリスト教の聖地がある東エルサレムを「将来の独立国家の首都」と位置づけている。
 
だがトランプ政権は昨年12月、エルサレムをイスラエルの首都だと認定し、今年5月に大使館を移転。その後も国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を停止するなどして、イスラエルとの和平協議を再開するようパレスチナ側に圧力をかけてきた。
 
自治政府のアッバス議長は9月27日、国連総会の演説で、「米国は単独で(和平の)調停者にはなり得ない」と述べ、親イスラエル姿勢を鮮明にするトランプ政権の仲介を拒否した。【9月30日 産経】
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****国際司法裁、米イラン制裁で人道物資輸出の確保命じる****
国際司法裁判所(ICJ)は3日、トランプ米政権によるイランへの制裁再開について、2国間の修好条約に違反しているとするイランの主張を一部認め、人道物資の輸出や民間航空機の安全な運航が妨害されないよう米国に対応を命じる仮処分を出した。

イランは、米国が5月以来再発動した制裁は1955年に両国が締結した修好条約に反しているとして訴訟を提起。ICJは、同制裁が人道的状況に影響を及ぼすことはないとする米国側の約束は「十分ではない」との判断を下した。

アブドゥルカウィ・ユスフ判事は15人の判事による判断を読み上げ、米制裁は「原則として」食品と医薬品・医療機器を対象外としているが、イランやイラン国民と企業がそのような物資を購入するために国際的な金融取引をすることが「不可能とは言えないまでも困難」になっていると指摘。

その上で、5月8日の発表によって再開したイラン制裁によって医薬品、医療機器、食品、農産物などの人道物資および民間航空機の安全に必要な物品とサービスの対イラン輸出が妨害されないよう「自主的に選択した手段を講じる」よう米国に命じた。(後略)【10月4日 ロイター】
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これらに対するアメリカの対応は、国際司法裁判所の管轄権を定めたウィーン条約の議定書から脱退であり、イランとの友好経済関係条約の破棄というもので、国際司法制度に背を向ける姿勢を強めています。

****米国、国際司法裁を批判 国際合意から離脱****
イランとパレスチナが米国の政策を巡り国際司法裁判所(ICJ)に対して行った申し立てに関連し、トランプ米政権は3日、2つの国際合意からの離脱を表明した。

ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はICJについて、「政治的に利用されており、機能していない」と批判し、米国がICJの決定に拘束される根拠となる全ての国際合意を見直すと表明した。

ICJはこの日、トランプ政権によるイランへの制裁再開について、1955年に両国が締結した修好条約に違反しているとするイランの主張を一部認め、人道物資の輸出や民間航空機の安全な運航が妨害されないよう米国に対応を命じる仮処分を出した。

これを受けて米国は、同修好条約からの離脱を発表。ボルトン氏は「イランはICJを利用している」と批判した。

また、在イスラエル米大使館のエルサレム移転についてパレスチナが9月にICJに申し立てを行ったことに絡み、外交関係について定めたウィーン条約の選択議定書からも離脱すると表明した。

ボルトン氏は「拘束力を持つとされるICJの管轄権や紛争解決に米国がさらされる可能性をもたらす全ての国際合意の見直しに着手する」と述べた。また「米国に対し根拠のない政治的な主張がなされるのをわれわれは静観しない」と言明した。【10月4日 ロイター】
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国際刑事裁判所(ICC)についても、ICCの検察官が昨年、アフガニスタンでの戦争犯罪について全面捜査を申請したことが問題となっています。

また、パレスチナ自治政府がガザ地区やヨルダン川西岸地区における人権侵害疑惑でイスラエルをICCで訴えようとしている動きもあります。

これを受けて、ボルトン米大統領補佐官は9月10日、ICCがアメリカ国民への起訴を実施するならば、米政府はICCに制裁を科す方針を明らかにしています。

とにかく、アメリカに対する批判は許さない、批判するならアメリカの力で屈服させる、あるいは関係を断つ・・・・といった対応です。

アメリカ映画によく出てくるような、バーで太い二の腕をあらわにしてビールをあおりながら、気にいらない相手にすごみ、相手がしかたなく引き下がると自分のマッチョぶりをあけすけにアピールする・・・といった“ならず者”のようなイメージも。

以前、アメリカはイランや北朝鮮を「ならず者国家」と呼んでいましたが、そのうちアメリカが多くの国から「ならず者国家」として見られることになるかも。

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