孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ・カリフォルニア  深刻化する水不足 もし来年も雨が降らなかったら・・・・

2015-05-18 21:36:37 | アメリカ

(米カリフォルニア州で水位が下がった湖(3月24日) 【4月23日 日経産業新聞】)

世界銀行報告書:「地球は、さらに乾く」】
将来的に「水」が、エネルギー資源や食糧と同等、あるいはそれ以上に貴重な資源となるであろうこと、また、やがて「水」をめぐる熾烈な国際紛争がぼっ発するであろうことは、多くの場で指摘されていることです。

現在でも、メコン川上流国のダム建設をめぐる中国と流域国、チベットのダム建設をめぐる中国・インド、ナイル川の水利用を巡るエジプトなど既得権益国とその他の国々・・・などで不協和音が出ています。

メコンやチベットについて言えば、そもそも水源であるヒマラヤの氷河が急速に減少しています。全体量が減少すれば、「奪い合い」も激化します。

****<安全な飲み水>世界で8億人分不足 国際会議に4万人参加****
日本では水道の蛇口をひねれば安全な水が出るが、世界では8億人以上が安全な飲み水を手に入れられないという。深刻な水問題を解決するため、今月韓国で国際会議「世界水フォーラム」が開かれた。そこでは、国によって大きく異なる水事情が浮かび上がった。

 ◇温暖化で加速
世界水フォーラムには168カ国から4万人以上が参加した。バングラデシュ代表は「海面上昇に加え、水源となるヒマラヤ山脈の氷河減少で水不足が懸念されている」と、地球温暖化がもたらした異なる窮状を訴えた。

カタール代表は「他地域より水不足に直面している。海水の淡水化が急務」と強調。エジプト代表は、ナイル川水源が他国にあり「我々の水は大半は外国に依存している」と危機意識をのぞかせた。

閣僚宣言は「水問題解決に向け官民など国際協力が必要」とした上で、「温暖化への対応が重要」と盛り込んだ。

「水の惑星」と呼ばれる地球だが、水の大半は海水で淡水は2.5%。しかも、その多くは南極などの氷として存在し、川や湖といった利用しやすい水は0.01%程度にとどまる。

世界保健機関(WHO)などによると、安全な水を入手できる人口の割合はソマリアは29%、パプアニューギニアは40%、エチオピアは44%しかない。

干ばつに直面する国が多いが、パプアニューギニアは熱帯雨林が広がる。雨が降っても上下水道の整備が遅れ、トイレなどの衛生施設が乏しければ、安全な水が手に入らないという。

国連などは、2050年には人口増と経済活動で水不足に直面する人は現在の5倍に増えると予測する。
温暖化に伴う豪雨や干ばつで水事情は悪化し、世界銀行は報告書で「地球は、さらに乾く」と懸念した。

国際協力機構(JICA)は途上国を中心に、04~13年度に上下水道の専門家ら延べ8554人を派遣し、約2万人の研修生を受け入れた。

 ◇日本も海外依存
日本も対岸の火事で済まない。急峻(きゅうしゅん)な地形のため、河川の水量は雨が降ると急増し、やむとすぐに減少する。東京都水道局は「日本は季節で流量が変わり、水利用の上で不利な状況にある」とし、歯みがき時などの水使用量を公表し、有効利用を呼びかけている。

日本の食料自給率は約40%と輸入に頼る。環境省などの試算では、輸入食料の生産に使われた水は約800億立方メートル。国内の年間使用量に匹敵し、多くの水を海外の水に依存する。

JICAは「世界の水環境悪化は人ごとではない」として、水問題が深刻なアフリカを重視して「1000万人に安全な水を届けるとともに、衛生施設を整備したい」としている。【4月29日 毎日】
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中国:「南水北調」事業・・・・長江の水にも陰り
安全な水が入手できない地域は、現在はサハラ以南のアフリカ諸国や島嶼部のパプア・ニューギニア、あるいは紛争国のアフガニスタンなどですが、現在入手できても将来的には問題が起こる地域も少なくないでしょう。

中国も水に不安を抱える国です。中国水利省によると、中国の水資源の約8割は、降水量の多い長江流域など南部に集中しており、北京など黄河流域を中心とした北部は水不足に悩まされてきました。

****北京に長江流域から送水=「南水北調」中央ルート完成―中国****
新華社電によると、中国の長江流域から北京など水不足に悩む北部に水を引く「南水北調」事業のうち、中央ルートの1432キロが完成し、12日から正式通水が始まった。

2003年の着工から11年。総投資額2013億元(約3兆8000億円)の大事業で、水は15日前後で北京に届く。

ただ、中国では河川などの汚染が深刻で、水質に懸念が残る。コストや水源地域で干ばつになった場合の問題も指摘されている。【2014年12月12日 時事】 
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ただ、水源とする長江の水にも陰りが見え始めており、「南水北調」で問題が解決する訳でもなさそうです。

カリフォルニアで流行る「芝生スプレー」】
アメリカ・カリフォルニア州も、ここ4年間干ばつが続いており、水不足が深刻化しています。

****深刻な水不足の米カリフォルニア州、水使用量平均25%削減へ****
カリフォルニア州水資源管理委員会はこのほど、都市部の水使用量を平均25%削減するというジェリー・ブラウン同州知事の緊急干ばつ対策案を承認した。

都市部の各自治体と水資源の管理当局はそれぞれ、水の使用量に応じて8~36%の削減を求められる。同州では2012年から、深刻な水不足が続いている。【5月7日 AFP】
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州全域で節水が義務付けられるのは初めてで、ブラウン知事は「歴史的な干ばつには前例のない行動が必要だ」と州民に理解を求めています。

カリフォルニアと言えば、郊外の家々の青々とした芝生の庭が思い浮かびますが、それも様変わりしているようです。

****枯れた芝生を緑色に塗る人続出、大干ばつの米カリフォルニア州****
4年連続で記録的な干ばつに見舞われている米カリフォルニア州で、給水制限のため黄色く枯れてしまった自宅の庭の芝生をスプレーで緑色に「化粧直し」する住民が増えている。

息詰まるほどの暑さと乾燥が続く中、カリフォルニア州では4月に史上初めて州全域に給水制限が発令され、スプリンクラーが自由に使えなくなった。

そこで注目されているのが、干し草のようになってしまった芝を緑色に塗ってカリフォルニアっ子自慢の庭の美観を保つ「芝生スプレー」だ。

天然色素を使用した無害な塗料を枯れた芝に塗布している地元の会社「ローンリフト」の売り上げは、「干ばつ景気」により昨年3月からの1年間で倍増した。一度塗布すれば、12週間は色落ちしないという。(中略)

こざっぱりした住宅の前庭に青々とした芝生が広がる光景は、伝統的な米国文化の1つだ。全米の都市郊外ならどこでも見られる。この前庭の手入れが行き届いていれば「きちんとした」住人だと思われ、家を売る際の価格にも影響する。

しかし、カリフォルニアでは干ばつのせいで、住宅所有者の多くがこの伝統の芝生をあきらめて、サボテンやアガベなど水まきが不要な砂漠の植物に植え替えている。

ロサンゼルスなど節水できる庭への改修を奨励する助成金を出している自治体もある。サンフランシスコでは、乾燥に強い地元の植物を使った庭の出来を競う「最も醜い庭(Ugliest Yard)」コンテストが開催されている。【5月18日 AFP】
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セレブたちの豪邸の庭もやり玉にあがっているようです。

****干ばつ深刻化のカリフォルニア、セレブの水の使いすぎでさらなる危機に****
深刻な干ばつに見舞われるカリフォルニア。セレブたちが彼らの豪邸の庭や芝生をメンテナスするために大量の水を使い続けていることをニューヨークポストのゴシップ誌「Page six」やデイリーメール紙が指摘している。

専門家によると、カリフォルニアの貯水は1年分の飲み水も確保できないぐらいの量しか残されていないという。町の水を確保するよう、緊急的に法律も作られた。水道事業会社のラス・バージーンズ・ウォーター・ディストリクトは、来月から4週間36パーセントもの水の使用量を制限する予定だ。

このような危機の最中にあるカリフォルニアで、セレブたちがいかに水を無駄遣いしているのかが航空写真によって暴かれた。

特に非難の的となっているのが、リアリティースターのキム・カーダシアン。彼女が夫でラッパーのカニエ・ウェストと暮らしている家は、横を通ると芝生の庭がかなり強く匂うらしく、大量の水を使用していることが伺える。

そのため、彼らの近所に住む人たちも怒っているとか。また、歌手のジェニファー・ロペスも、近隣の人から水の使い方を非難されているらしい。

彼女の家の芝生は、明らかに大量の水を使わなければ維持できないような青さであることが航空写真から見て取れる。その問題について近所の人と口論になった際も、「お金を払うんだから、問題はないでしょ?」という態度だったとか。(後略)【5月11日 ハリウッドニュース 】
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経済活動への影響も 干ばつは西部全域に拡大
まあ、このあたりは笑い話の類ですが、当然ながら経済活動は大きな影響を受けます。

****金融にも影響か 米加州の干ばつ、節水命令の事態に ****
米カリフォルニア州の深刻な水不足の影響に懸念が高まっている。ブラウン州知事は4月1日に、向こう9カ月間で25%の節水を義務付ける行政命令を発令した。

大学キャンパスやゴルフ場、墓地など敷地面積が大きな施設での水使用制限のほか、新築住宅や住宅団地での水道水を使った散水をはじめ芝生や道路中央分離帯への散水自体が禁止された。

カリフォルニア州は過去にも干ばつに見舞われているが、この4年間にわたる状況の深刻度は群を抜く。知事は昨年1月にも干ばつによる非常事態を宣言したが、今年は初めて同州全域で節水を義務付ける行政命令を出すところまで追い詰められた。

米国農務省自然資源保全局(USDA/NRCS)が4月10日に発表した調査結果では、西部山岳地域の4月1日時点の残雪量は極端に小さい。

気温上昇と乾燥により雪塊の融解スピードが速まった結果で、この先、貯水池の水路に流れ込む雪解け水の量はほとんど期待できないという。

シエラネバダ山脈の雪塊量は2011年には平年の171%あったが、12年は52%、13年は42%、そして14年は過去最低水準の25%まで落ち込んだという指摘もある。

カリフォルニア州では春から秋にかけてが乾季だ。気温上昇、乾燥、水不足の相乗作用が今後、様々な影響を引き起こすと予想される。

まず農業である。州内の農地の大半はかんがいの対象となっており、少雨への対策は講じられているが、かんがい水が減少してしまえば生産が大きく左右されることは必至だろう。

野菜や果物、アーモンドの主要産地である同州の生産減少は米国全体の農産品輸出余地を減らし、日本に影響が及ぶ可能性もある。

また、雇用への影響もある。カリフォルニア大学の推計では、14年の干ばつでは1万7100人の季節農業労働者の雇用機会が失われたという。今年は、より影響が大きくなるとも言われている。

次に製造業への影響がある。今後、家庭が節水義務や供給削減の対象となる可能性も十分にある。そうなると世論の厳しい目は工場の水消費や節水対策の巧拙に向くだろう。既に日系現地工場でも、こうした圧力を受けている例があると聞く。

各工場では生産工程の見直しや排水再利用システム導入などの対策が求められよう。こうした事前の対策を怠れば、ある日突然に水供給の上限値が設定されて、工場操業が完全に制約される事態に陥ってしまう。

さらに、金融への影響を指摘する声もある。この数年、カリフォルニア州では大規模な山火事が起きている。今月初めにもサンバーナーディーノで発生、一時は24万平方メートルに延焼したと伝えられた。水不足は消火活動をも困難にして事態を一層深刻化させるのである。

2000年前後から米国では年金基金などが資産運用を行う際に、森林が有力な投資対象となってきた。木材資源供給を収益の原資にするとともに、環境保全にも貢献できる観点から注目され、株式や債券の価格との逆相関性も相まって普及が進んだ。しかし森林火災が頻発、投資対象のリスクが一気に高まる事態になっている。

今年1月のダボス会議で、向こう10年間で最も影響が重大なリスクとして世界の約900人の専門家が選んだのは「水資源の危機」だった。

カリフォルニア州の現実はそれを実際に物語っている。気候変動のインパクトは、もはや将来ではなく、現在の目の前にある。【4月23日 日本総合研究所理事 足達英一郎氏 日経産業新聞】
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干ばつはカリフォルニアだけでなく、西部全域に拡大しています。

****米干ばつ、カリフォルニア州境界線越え拡大-西部の乾燥進む****
米カリフォルニア州に被害を及ぼしている記録的な干ばつは地図上の境界線内にとどまっていない。降水量の減少による乾燥は西部全域に拡大している。

ワイン用ブドウとビール原料ホップの産地として知られるワシントン州ヤキマバレーでは11日から3週間、当局による給水制限のため農家約1700戸への水供給が止まる。ラスベガスの東方にあるミード湖の水位は貯水が始まった1937年以降で最低となっている。

米海洋大気局(NOAA)の全米統合干ばつ情報システムのディレクター、ロジャー・プルウォーティー氏は「カリフォルニア州が注目されているのは当然だ」と指摘した上で、「西部の大半の地域で乾燥状態が続く見通しだ」と述べた。

干ばつは米西部では珍しくないが、気候変動の影響でここ数年、水不足は一段と長期にわたり頻度も増えている。米航空宇宙局(NASA)によると、1880年以降で最も気温の高かった10年のうち9年が2000年以降に集中。カリフォルニア州とネバダ州にまたがるシエラネバダ山脈など山間部では雪塊が減少している。これらの雪塊は米西部への主要水源となっている。

米中部の人口の西部への移動が徐々に進む中、この変化は将来、永続的に乾燥が進むことを示唆している。このため、政策立案者らは太平洋からの脱塩水の抽出を検討しており、米最大の農業地帯である西部の農家は他の場所に移ったり、地下水をくみ上げるためより深い井戸を掘ったりすることを余儀なくされている。

米干ばつモニターによると、西部の約40%が厳しい干ばつに見舞われている。【5月12日 ブルームバーグ】
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【「もし来年もカリフォルニア州に雨が降らなかった場合、一体どういうことが起きるか」】
海水からの脱塩水の抽出では、3900万人もの人口を抱えるカリフォルニア州全体の水不足を解決するための抜本的な解決策にはなり得ない・・・ということで、水のパイプライン建設の話もあるとか。

****ウィリアム・シャトナー氏、カリフォルニアの干ばつ対策として水パイプライン構想を立ち上げ****
スタートレックのカーク船長役を務めたことで知られている俳優のウィリアム・シャトナー氏は18日、カリフォルニア州で生じている干ばつによる水不足を解決するための手段として、ワシントン州とカリフォルニア州の間に水供給用のパイプラインを敷設するための資金募集を近くKickstarterを通じて開始することをYahoo! Techのインタビューを通じて発表した。

シャトナー氏はワシントン州=カリフォルニア州間の水パイプラインの敷設費用は300億ドル(3兆6000億円)と見積もっており、その全額をKickstarterを通じて集めたいとしている。(後略)【4月19日 businessnewsline】
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“シエラネバダ山脈の雪塊量は14年は過去最低水準の25%まで落ち込んだ”“専門家によると、カリフォルニアの貯水は1年分の飲み水も確保できないぐらいの量しか残されていない”・・・という状況で、“シャトナー氏は「300億ドルは非現実的だと思うかもしれないが、しかし、もし来年もカリフォルニア州に雨が降らなかった場合、一体どういうことが起きるか」と、これまで誰も口にはしてこなかったことは真正面から捉えた議論を進めている。”【同上】とのことです。

“1880年以降で最も気温の高かった10年のうち9年が2000年以降に集中”という状況を考えると、‟もし来年もカリフォルニア州に雨が降らなかった場合・・・・”というのは、十分に起こりうる想定です。

従来、気候変動・温暖化問題に消極的だったアメリカが、最近やや前向きになりだした背景には、オバマ大統領の選好だけでなく、その影響が現実の問題になりつつあることが少なからずあるのではないでしょうか。


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