孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インドネシア  ユドヨノ大統領再選 好調なインドネシア経済を引っ張るムルヤニ財務相

2009-07-09 21:45:05 | 国際情勢

(今年4月に開かれたロンドンサミットでのユドヨノ大統領(右)とムルヤニ財務相(左) “flickr”より By London Summit
http://www.flickr.com/photos/londonsummit/3406188803/)

【「次の5年間で世界はインドネシアの成長を認めるだろう」】
インドネシア大統領選挙は8日に投票が行われ、予想されていたように現職のユドヨノ大統領が再選を果たしたようです。
当選のためには、有効投票の過半数をとり、全33州の半数を超える州で20%以上を得票することが必要で、条件を満たす候補者がいない場合は、9月に上位2人の決選投票が行われることになっていました。

総選挙委員会による正式な結果公表は7月下旬の見通しですが、複数の民間調査機関の集計によれば、現職のユドヨノ大統領(59)が得票率58~60%と過半数を制し、再選を確実としたと報じられています。
民間調査機関LSIによると、ユドヨノ氏の得票率は60.85%で、スカルノ元大統領の長女で闘争民主党を率いるメガワティ前大統領(62)は26.56%。ゴルカル党党首のカラ副大統領(67)は12.59%とされています。(全国の開票所から2200カ所を選び、独自集計した数字)

昨年からの金融危機で東南アジア各国が軒並み景気後退するなか、インドネシアはユドヨノ大統領のもとで経済成長を維持、また、世界有数の汚職大国という汚名を返上し、さらにテロの徹底した取り締まりが奏功したこともあって、ユドヨノ大統領は国民の支持を得ての再選です。
ユドヨノ氏は4日、ジャカルタの競技場で数万人の支持者を前に演説、年7%の経済成長などを改めて約束し、「次の5年間で世界はインドネシアの成長を認めるだろう」と主張しています。【7月5日 時事】

なお、4月に行われた総選挙でも、ユドヨノ大統領を擁する民主党は得票率20.85%と前回7.5%から大躍進し、ゴルカル党と闘争民主党を押さえて第1党となっています。
今回の大統領選挙結果は、この流れを維持したものとなっています。

ユドヨノ大統領は、“英語が得意だったこともあり、米陸軍に派遣され研修を受けるなどした。軍内のインテリ、改革派として知られ、2万冊の蔵書があるとも。前回の大統領選挙期間中には博士課程に在籍し、大統領当選直後に博士号を取得するほどの勉強家。”【7月9日 産経】とのことです。


【今年はインドか中国のどちらかを抜く可能性も】
インドネシアというと、米ソ対立の冷戦の時代に第一回アジアアフリカ会議(バンドゥン会議)を主催し、非同盟主義・「第三世界」のリーダーの1人として国際的にも脚光を浴びたスカルノ大統領、権力を集中させて“開発独裁”のかたちで経済発展を実現し、インドネシアを地域大国としたスハルト大統領の名前が頭に浮かびます。
アジア通貨危機をきっかけに98年には13%のマイナス成長を記録。これが国民の不満を爆発させ、スハルト政権に終わりをもたらしました。
正直なところ、その後のインドネシアについては影が薄いと言うか、あまり明確な印象がありません。
しかし、最近のインドネシア経済は、インドや中国とも比肩されるような好調を実現しているようです。

“10年前には100%を超えていた政府債務の対GDP(国内総生産)比率は、今では30%。企業の借金も、アジアの他の国の企業と比べればはるかに少ない。
財政は緊縮ぎみだが、天然資源の輸出や約2億4000万の人口がもたらす個人消費が成長を牽引する。
経済は、商品価格の急落や世界的な信用収縮という外的ショックにも動じていないようだ(エネルギーは輸入に依存しているため、原油価格の下落はむしろ追い風だ)。
主な新興国のうち、09年に4%以上の成長を遂げる見通しの国は、インドネシアを含めて3カ国。だが、他の2カ国の中国とインドはここ数カ月で急減速し、政策的にもインドネシアよりむずかしい選択を迫られている。
インドネシアは今年、最大5.5%の成長を達成できるかもしれないと、(財務相の)ムルヤニは言う。
昨年の6%をわずかに下回るだけで、今年はインドか中国のどちらかを抜く可能性もある。“【7月6日 Newsweek】

【鉄の女ムルヤニ財務相】
この好調インドネシア経済をユドヨノ大統領のもとで実現したのが、上記記事にも名前が出てくるスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相です。

****インドネシア経済を立て直した女*****
08年12月、ある種の金融津波がインドネシアを襲った。例の世界的信用収縮の波ではない。インドネシア政府が国民や企業に対し、今後きちんと納税すれば過去の脱税は罪に問わないという新政策を打ち出したため、国庫に納税者のお金が押し寄せたのだ。
税収が正確にどれだけ増えたかはまだ不明だが、エコノミストは年間で50%以上は増えたと予想する。「これまで税務上存在もしていなかった納税者や過去の過ちを正したい納税者からの歳入が飛躍的に増大した」と、この政策の発案者であるスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相は言う。

この税収増はスシロ・バンバン・ユドヨノ政権、とくにムルヤニの大きな手柄だ。この国では、98年まで32年間続いたスハルト独裁政権の間に縁故資本主義がはびこった。ムルヤニは閣僚としてユドヨノ政権に参画した4年前から、そうした金融構造の解体を推し進め、金融秩序を取り戻した。
また政府と民間双方の債務を削減し、財政赤字の元凶だった燃料補助金の削減を強行し、税関と税務当局の改革を行うなどして、インドネシアを世界の新興国のなかでも有数の成長経済に押し上げた。【7月6日 Newsweek】
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ムルヤニ財務相はなかなかユニークな仕事ぶりで、着任直後、彼女は幹部職員に「安い給料なのに息子や娘を留学させられるのはなぜ。そのお金はどこから出たの。皆が罪を犯してきたことを認めよう」と迫ったそうです。
“彼女はまた公務員の給料を上げ、過去に生活のために賄賂を受け取った職員を悪者扱いしないことで職場の士気を高め、腐敗に負けない改革者として名を上げた。部下に対するムルヤニのメッセージは単純かつ前向きだ。「私の目標は一つ。国民にわれわれを信用してもらうこと。もし人々が政府を信用できないようなら、この国はどうにもならないからだ」”【同上】

日本では東国原知事の総裁候補云々で騒いでいますが、いっそのことムルヤニ財務相のような人物をヘッドハンティングして日本の総理に抜擢するほうがいいようにも思えます。



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