孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ソマリア  依然続くイスラム過激派“アルシャバブ”のゲリラ活動

2013-05-19 21:38:51 | ソマリア

(5月3日 首都モガディシオにおける警察によるチェック 4月14日の最高裁襲撃以来、こうした警備体制が厳しくなったそうですが・・・ “flickr”より By AU/UN IST http://www.flickr.com/photos/au_unistphotostream/8716371037/)

【「一連の攻撃の最初となる攻撃を行った」】
内戦が続く東アフリカ・ソマリアの状況については、あまり多くの報道は目にしませんが、イスラム過激派“アルシャバブ”を首都モガディシオや拠点都市から追い出したものの、アルシャバブのゲリラ活動が続く状況にあります。

“20年以上内戦が続いているソマリアでは、2011年8月にアフリカ連合部隊とソマリア暫定政府軍がアルシャバブをモガディシオから一掃、昨秋にはケニア軍とソマリア政府軍が南部の主要港湾都市キスマユからもアルシャバブを放逐した。状況の好転が期待されていたが、今回の攻撃は、アルシャバブによる都市部ゲリラ戦の封じ込めの難しさを浮き彫りにするものだ。”【4月15日 毎日】

“今回の攻撃”とは、“4月14日、最高裁の建物に武装した男たちが侵入し、ソマリア軍などと激しく交戦。AP通信によると16人の死者が出た。”【同上】というテロを指しています。(犠牲者は、その後の報道では35人とも報じられています)
この攻撃とほぼ同時刻に空港近くで、トルコの援助物資を運んでいた車列が遠隔操作の自動車爆弾による攻撃を受け、通り掛かった女性2人を含む5人が死亡する事件も起きています。

今月に入っても、首都モガディシオでカタール政府関係者を狙った自爆テロが起きています。

****ソマリアでカタール代表団狙った自爆攻撃、11人死亡****
ソマリアの首都モガディシオ中心部で5日、同国を訪問中のカタール政府関係者らを乗せた車列に、国際テロ組織アルカイダ系イスラム過激派組織アルシャバブの構成員が爆弾を積んだ車で突っ込み、自爆した。
警察によれば「11人前後」が死亡。カタールの代表団4人にけがはなかった。アルシャバブはツイッター(Twitter)を通じ、「一連の攻撃の最初となる攻撃を行った」と発表した。
モガディシオでは死傷者を出す攻撃が頻発している。政権転覆を誓うアルシャバブは同市で、爆弾攻撃やゲリラ型の攻撃を数回にわたり行ってきた。【5月6日 AFP】
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砂糖・木炭取引への関与でアルシャバブは年間数十億円を得ている疑い
“ゲリラ活動”とは言っても、そうした戦闘を続けるためには武器・弾薬・生活物資の補給が必要であり、そのための資金が必要です。
いったいどこからそうした資金が流れ込んでいるのか不思議に感じていたのですが、そのひとつの答えが下記の記事です。

****過激派:国境越え暗躍…ケニア、ソマリア隣接の町****
アフリカでイスラム過激派が勢力を拡大している。過激派が国境を超えて連携し、政府の支配が弱い地域に移動して拠点を作り、地域の不安定化につながっている。
無政府状態が続いたアフリカ東部ソマリアで、拠点都市から追い出され隣国ケニアで活動を広げるイスラム過激派アルシャバブの実態を追った。

 ◇砂糖密輸で年数十億円
ソマリア国境に近いケニア北東州のガリッサ。首都ナイロビから町に近づくにつれ、治安当局の検問が増える。街中は平穏そうだが、最近のテロ続発を受け、夜間外出禁止令が敷かれている。

「もうこのぐらいに」。テロ事件とアルシャバブの関係について記者の取材を受けていた男性が突然、席を立った。男性はソマリ系の敬虔(けいけん)なイスラム教徒。若手リーダーの一人で、地域事情に詳しい。
案内人は、男性が取材を中断させた理由について「下手にアルシャバブに触れれば、彼らの『(暗殺)リスト』に男性が載ってしまうからだ」と声を潜めた。「何に触れると危険なのか」と、立ち去ろうとする男性にそう畳み掛けると、男性が言った。「彼らのネットワークさ」

ガリッサでは昨年から、街中の飲食店やホテルなどを狙った攻撃や爆弾テロが散発的に発生。地元紙によると、100人以上が死亡し、アルシャバブの犯行が疑われている。先月には、「治安関係者がよく集まる場所」(地元公務員男性)といわれる中級ホテルで複数の男が銃を乱射し、9人が死亡した。

「ケニア軍のソマリア介入への報復だろう」。ガリッサ郡のモハメド・マーリム郡長(46)はテロの理由を推測する。地域の有力国ケニアとエチオピアは、アルシャバブ掃討のため2011年秋に相次いで軍事介入し、アルシャバブは撤退を余儀なくされた。

ソマリア国内で弱体化が指摘されているが、アルシャバブの「ネットワーク」はガリッサ住民の恐怖の的だ。その資金源は砂糖の密輸とみられている。
案内人によると、砂糖を入れた袋を積載したトラック20〜30台程度が連日、秘密裏に国境を越えてソマリアからケニアに入る。

ソマリアから来る砂糖は安く、ケニアでは重宝がられるからだ。国連の調査団も、ソマリアから木炭を湾岸諸国に輸出、逆に湾岸経由で砂糖を輸入し、この砂糖をケニアに持ち込む裏ビジネスにアルシャバブが関与していると指摘する。

地元報道などを総合すると、砂糖・木炭取引への関与でアルシャバブは年間数十億円を得ている疑いがある。金は武器購入のほか、非ソマリ系も含めた若者らを戦闘員や協力者にスカウトする際に使われると考えられる。

先月、複数の治安当局者がアルシャバブの砂糖密輸に関わった疑いなどで職務停止処分を受けた。マーリム郡長は「反政府組織の資金源をつぶす」と意欲的だが、当局側にも浸透するネットワークの取り締まりは簡単ではなさそうだ。

さらに、民族と宗教も複雑に絡む。ガリッサにある約30カ所のキリスト教会のうち4教会が襲撃され、礼拝中に14人が死亡するテロ攻撃も起きている。
多数派のソマリ系住民はイスラム教徒であるのに対し、教会の信者は非ソマリ系住民。教会信者の間には「アルシャバブの名前を利用して、地元の人間(ソマリ系)がキリスト教徒を追い出そうとしているのではないか」との疑念も渦巻く。(後略)【5月17日 毎日】
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“砂糖を入れた袋を積載したトラック20〜30台程度が連日、秘密裏に国境を越えてソマリアからケニアに入る”というのは、奇妙な話です。
人が荷物を担いで山越えするというのならともかく、トラックが通れるような道を、荷を満載したトラックが連日20〜30台も“秘密裏”に行き来するなどありえません。

合法経済活動として堂々と行われているか、治安当局と内通した違法活動として行われているかのどちらかでしょう。
ケニア治安当局にその意思があれば、簡単に潰せるように思えるのですが・・・。

26万人が餓死 半数は5歳未満の幼児
こうして得られた資金で内戦が続く結果どうなるのか・・・というのが、次の記事です。

****ソマリア飢饉、2年で約26万人が死亡 半数は幼児****
国連食糧農業機関(FAO)と飢餓早期警報システムネットワーク(FEWS NET)は2日、北アフリカのソマリアで2010~12年に約26万人が飢餓のため死亡したとの報告書を発表した。半数は5歳未満の幼児だという。

2011年にソマリアを襲った干ばつによって起きた飢饉の被害について、科学的手法に基づく統計が出されたのは今回が初。報告書によると「2010年10月~12年4月に、飢饉と食料不足のため約25万8000人が命を落とし、このうち13万3000人が5歳未満の幼児だった」という。

飢饉は2011年7月にソマリア南部のバクールなどで宣言され、すぐに他の地域にも広がっていったが、フィリッペ・ラッツァリーニ国連ソマリア人道問題調整官は、「飢饉宣言の前にもっと援助するべきだったことが、今回の報告書で確認できた。干ばつが起きていることは2010年には既に警告されていたのに、早期の対応が為されなかった」と声明で説明した。

2011年に北アフリカの「アフリカの角(Horn of Africa)」と呼ばれる一帯を襲った干ばつでは、1300万人が被災した。中でも被害が大きかったのがソマリアだ。20年にわたって内戦に揺れるソマリアは、世界でも最も援助を必要とする地域の1つだが、援助団体にとっては世界有数の危険地帯でもある。【5月2日 AFP】
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“干ばつによって起きた飢饉”とありますが、25万8000人もの人々を餓死にまで追いやった原因は干ばつではなく、内戦による無政府状態で干ばつ被害に対する予防・救済策が何もとられなかったことでしょう。
更に、以前にも何回かとりあげたように、国際支援団体が支配地域に入ることをアルシャバブが拒否したことも被害を大きくしています。(結果的には、この無責任な姿勢によって人心を失ったことが、勢力が弱体化する原因ともなりましたが)

個人の生命など一顧だにされない社会が今も世界各地に存在するという、なんともやりきれない現実です。
もっと徹底した国際介入で治安を確立すべきではないか・・・という思いも抱きますが、いったいどの国が犠牲を払って介入するのか?介入した結果アフガニスタンのように泥沼化する事例だってあるし・・・と考えると、よくわからなくなります。

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