孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ソマリアでテロ活動を続けるアル・シャバブ アフリカへの関与を強める方向のアメリカ

2015-07-27 22:37:59 | ソマリア

(ソマリアの首都モガディシオ 海辺で遊ぶ人々 20年以上に及ぶ戦闘と混乱を経て、ようやく平和が訪れたようにも見えますが・・・ “flickr”より By United Nations Photo https://www.flickr.com/photos/un_photo/14829119406/in/photolist-oAp7yw-jQRR8U-bSX8YR-5XSZ9q-bownfP-fptVoK-bwZbQS-ayjThs-bKTUPH-bKTUTK-bwWpSL-bwWpMA-nnpP9c-bKR8k8-pMYh3p-ndYfFd-dNX5KF-ndYdrN-bMLWd4-bwWpK9-fpjq9b-bySgtW-fpjqVw-fp4Z6Z-cF6QL5-uudCRD-rgAtgT-bowoU6-rsrT5A-fpjoqU-ayjT2m-bZvTWf-bySFHS-bMLWet-haFLto-r1e4jb-k5S3Nc-dZJDeZ-ng1G4H-k5S5Sn-nnaR4g-ndXYi7-ndXX7L-ng1kD6-6pzUsG-ng1EdD-qHWb8i-r1oyDt-6pzUw3-r1ewUR

首都モガディシオで自動車爆弾攻撃
アフリカ東部のソマリアは、イスラム原理主義組織が支配し、海賊が跋扈する「無政府状態」にありました。

そのソマリアで中部と南部を支配下に収め、イスラム国家の建設を目指していたイスラム武装組織アル・シャバブですが、2011年にアフリカ連合(AU)やケニア軍・エチオピア軍が介入し、ソマリアの首都モガディシオや南部の港湾都市キスマヨからの撤退を余儀なくされました。

現在は、アフリカ連合ソマリア平和維持部隊AMISOMの支援を受けるソマリア政府軍が拠点都市を奪還し、かつての“暫定政府”は、2012年9月の大統領選挙を経て、正式な政府となっています。

しかし、拠点を失ったアル・シャバブはゲリラ戦に戦術を変えて自爆テロなどを繰り返しており、依然としてその脅威は去っていません。

26日にも首都モガディシオのホテルで自動車爆弾攻撃が起きています。

ちょうど、オバマ米大統領が訪問先の隣国ケニアを離れ、エチオピアに向う中で起きた事件であり、アル・シャバブの勢力を誇示するかのような事件です。
ケニア・エチオピア両国とも、アル・シャバブと戦うアフリカ連合の平和維持部隊への主要な部隊派遣国です。

****ソマリア首都ホテルで自爆攻撃、中国人ら13人死亡****
ソマリアの首都モガディシオで26日、国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派組織アルシャバーブが、厳重に警備されたホテルに大規模な自動車爆弾攻撃を行い、治安当局者によると少なくとも13人が死亡した。

標的となったのは、中国、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)の外交使節団が置かれ、ソマリア政府高官や外国人の人気も高いジャジーラ・パレスホテル。中国政府は27日、中国大使館職員1人が死亡し、3人が軽傷を負ったと発表した。

アルシャバーブは今回の自爆攻撃をソマリア南部にある同組織の基地がエチオピア軍の攻撃を受けた際に死亡した「無実の民間人数十人の殺害への報復」だとしている。(後略)【7月27日 AFP】
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【「あなた方は、まさにここで、今、夢を築くことができる」】
ソマリアで劣勢にあるアル・シャバブは、13年に起きたケニア首都ナイロビのショッピングモール襲撃事件、今年4月に起きた東部ガリッサの大学キャンパス襲撃事件など、ソマリアへ軍事介入した隣国ケニアでの活発なテロ活動を行っています。

そのケニアを訪問したオバマ大統領は、アフリカの「将来の希望」と改善すべき課題について語っています。

****アフリカの「将来の希望」強調=米大統領、ケニアで演説****
アフリカ東部ケニアを訪問したオバマ米大統領は26日、首都ナイロビの競技場で演説を行った。現地からの報道によると、大統領はケニアを含むアフリカの発展ぶりを強調。「あなた方は、まさにここで、今、夢を築くことができる」と述べ、将来への希望を訴えた。

大統領は「今の若いケニア人は、私の祖父や父のように、宗主国の主人に仕えたり、国を去ったりする必要はない」と述べた。

一方で「ケニアは危険と巨大な希望に満ちた十字路にいる」と語り、はびこる汚職などケニアの将来を脅かす問題にも言及。慣習にとらわれず改善するよう呼び掛けた。

大統領はまた、強制結婚など女性の権利侵害の問題にも触れ、「選手の半分が競技に参加しないチームを想像してみよう。ばかげている」と、女性の教育や社会参加の重要性を指摘した。(後略)【7月27日 時事】 
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【「地球最後の巨大市場」を狙うアメリカ
今回のオバマ大統領のケニアとエチオピア歴訪は、中国の影響が強まるアフリカに対するアメリカの影響力回復と経済関係強化を狙ったものと見られています。

****米、アフリカ重視模索 中国の経済進出に対抗 オバマ氏、ケニア・エチオピア歴訪****
オバマ米大統領は24日、父親の出身国であるケニアを訪問し、首都ナイロビで祖母サラさんら親族と面会した。

25日には両国政府が共催する起業家サミットに出席。「アフリカは動いている。世界で最も成長が著しい地域の一つだ」と述べ、経済協力を一層推し進めていく考えを強調した。

その後、ケニヤッタ大統領と会談。イスラム過激派によるテロ対策や汚職撲滅の分野などで、支援を拡大していく方針を確認した。

オバマ米大統領のケニアとエチオピア歴訪は、イスラム過激派の台頭に揺れるアフリカの安全保障や経済関係の強化を目的としている。

オバマ政権はこれまでアフリカを重視してこなかった。中国の台頭でアフリカでの影響力に陰りが見えはじめるなか、米国はアフリカ政策の深化をめざす。

成長が著しいアフリカは「地球最後の巨大市場」とも言われる。援助対象としてだけではなく、経済的な重要性が、米国にとっても無視できなくなったことが訪問の大きな背景だ。

米国は2009年に対アフリカの貿易総額で中国に抜かれた。危機感を抱いたオバマ政権は昨年8月、アフリカ約50カ国の首脳をワシントンに招いて「米・アフリカ首脳会議」を初めて開き、官民合わせて330億ドル規模の投資策を発表。訪問はその1年後の継続対応としてなされている。

アフリカの人口は、50年には倍増し、約20億人に達すると推計される。
NGO「国際危機グループ」のアフリカ専門家エルンスト・ヤン・ホーヘンドルン氏は「人口爆発は(ビジネス)機会にも潜在的な脅威にもなる。職にあぶれた若者は、社会不安や過激派伸長の原因になる。そのため、経済分野の開発は安全保障にも直結する」と話した。【7月26日 朝日】
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直接的な軍事介入は避け、無人機攻撃で
経済関係強化を図る一方で、アメリカはアフリカへの軍事介入には慎重な姿勢を続けています。

アメリカにとってソマリアは、1993年10月に起きた米軍ヘリ「ブラックホーク」の撃墜、及びその後の救出作戦で多くの犠牲者を出し、“トラウマ”ともなっている地であり、そのことがアメリカのアフリカへの消極姿勢の原因ともなってきました。

****軍事介入には慎重****
安全保障は経済と同様、米国の優先事項だ。

ただ、アフリカでの軍事的な関わりは、主に現地軍の訓練といった間接的な活動にとどまり、戦闘部隊の派遣といった直接的な軍事介入には慎重だ。アフリカを担当する「米アフリカ軍」も司令部をドイツに置いている。

米軍が距離を置く理由は、1992年のソマリア内戦への軍事介入での苦い経験にある。撃墜された米軍ヘリの乗組員が市民に引き回された。94年に撤退して以来、アフリカへの軍事的関与は消極的なままだ。

その後、無法状態のソマリアではイスラム過激派「シャバブ」が伸長し、ケニアを含むアフリカ東部地域の脅威になっている。

また、米が独立を後押しした南スーダンも、11年の独立後に内戦状態に突入。米国は有効な手立てを打てていない。

ホーヘンドルン氏は、「過激派対策は若者の政治的、経済的な不満を取り除かなければいけない。時間はかかるが、現地の政府への包括的な支援が必要だ」といい、米の非軍事路線での政策が望ましいとした。

オバマ氏はケニアの後はエチオピアを訪れる。エチオピアは南スーダンの和平に主導的な役割を果たしているほか、シャバブの掃討作戦にも参加している。

オバマ政権はエチオピアを安全保障上の重要な国と位置づけており、オバマ氏が訪問した際に支援を表明するとみられる。【7月26日 朝日】
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もっとも、かつての「ブラックホーク」撃墜事件のようなリスクを伴わない方法・・・無人機攻撃で、アメリカはソマリアへの軍事関与を強めています。

****米軍、ソマリアで過激派掃討の作戦拡大 無人機攻撃を増強****
アルカイダ系のイスラム過激派「シャバブ」と政府軍などの戦闘が続くアフリカ東部のソマリア情勢に関連し、米国防総省当局者は26日までに、シャバブ掃討の米軍の作戦を過去数週間、拡大させていることを明らかにした。

作戦拡大は武装無人機の攻撃増強などから成り、政府軍に肩入れするアフリカ連合(AU)の平和維持軍への直接的な軍事支援を狙っている。シャバブはここに来てAUの平和維持軍への攻撃を強めている。

複数の米国防総省当局者によると、武装無人機はジブチにある米軍関連施設から出動。エチオピアに拠点がある無人機は情報収集や監視などの活動に当たっている。武装無人機などは特に戦線でのシャバブ戦闘員の根絶を狙っている。

平和維持軍には十数カ国が参加しているが、大部分はケニアとエチオピア両国軍兵士が占める。

ソマリアにおける米国の軍事介入はこれまで、空爆や特殊作戦部隊の展開でアルカイダや他のテロ勢力に関わる特定の人物の捕捉(ほそく)や殺害が中心だった。

しかし、ソマリア南部で先月、シャバブが平和維持軍の基地を占拠し、兵士50人を殺害したとする襲撃が無人機の攻撃拡大を促す契機となった。

米国は、この襲撃はシャバブが特定の標的を襲い、奪還する能力を見せ付けたと判断し、無人機の投入拡大はこの種の攻撃を阻止するのが目的ともしている。

過去10日間で実施した無人機攻撃は少なくとも7回で、今後も続く見通し。
7月14日にはケニアの平和維持部隊へのシャバブの襲撃が差し迫っていたとして空爆に踏み切り、地上のAU軍の砲撃などの応戦につなげていた。【7月26日 CNN】
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26日の首都モガディシオのホテル自爆攻撃を受けて、アメリカの無人機攻撃は更に強化されることが予想されます。

過激派対策の根幹は・・・・
ただ、軍事作戦だけでは問題の根本をただすことはできません。
「職にあぶれた若者は、社会不安や過激派伸長の原因になる。そのため、経済分野の開発は安全保障にも直結する」(前出ホーヘンドルン氏)

「将来の希望」を実現できる環境を作り出していく現地政府の努力にかかっています。
国際社会も支援を惜しみませんが、その際の問題は政治の腐敗・汚職です。その点では、あまり楽観的にはなりにくいところがありますが・・・。

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