孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ フロリダ州オーランド銃乱射事件を受けて、LGBTへの連帯、移民規制、銃規制の動き

2016-06-16 21:45:18 | アメリカ

(エイズ対策から、男性同性愛者は最後の性交渉から1年が経過していない限り献血が認められていないということで、友人やパートナーが被害にあった男性同性愛者たちは、大勢が協力してくれるていることに安堵しながらも、自分が献血もできないことへの苛立ちを募らせているそうです。【6月14日 AFPより 写真とも】)

イスラム過激派のテロというよりは「個人的な動機による特殊な事件」】
アメリカ・フロリダ州オーランドの同性愛者向けナイトクラブで12日未明、両親がアフガニスタン移民であるオマル・マティーン容疑者(29)が銃を乱射し49人が死亡、53人が負傷した事件については、事件後「イスラム国(IS)」の犯行声明なども出されましたが、現在のところはそうした組織的犯行ではなく、個人的な社会への不満などをきっかけに、インターネットなどを通して過激思想に心酔し、人々の注意を引くためにテロを引き起こす、いわゆる“ローンウルフ”による犯行ではないかと見られています。

****米乱射事件の容疑者、過激派組織との関連見当たらず=上院情報委****
米上院情報特別委員会のリチャード・バー上院議員は15日、フロリダ州オーランドで起きた銃乱射事件のオマル・マティーン容疑者に関して、国際的な過激派組織などとの関連性は現時点で確認されていないと明らかにした。【6月16日 ロイター】
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容疑者は、乱射の直前と最中にもフェイスブックで「ISへの空爆に対する復讐だ」などと書き込んでいたようです。

****空爆への復讐だ」銃乱射の最中にもFB投稿****
米フロリダ州オーランドの銃乱射テロで、オマル・マティーン容疑者(29)が乱射の直前と最中にフェイスブックで投稿や検索を行い、「(イスラム過激派組織)『イスラム国』への空爆に対する 復讐 ( ふくしゅう )だ」などと書き込んでいたことが15日、明らかになった。米メディアが伝えた。(後略)【6月16日 読売】
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ただ、そうしたイスラム過激思想への共鳴とは別に、同性愛に対する個人的な思い・屈折が事件の背景にあることが指摘されています。

****容疑者、ナイトクラブ常連か=「同性愛に強い思い」と元妻―米乱射テロ****
米フロリダ州オーランドの同性愛者が集まるナイトクラブで49人が殺害された銃乱射テロで、死亡したオマール・マティーン容疑者が、以前から頻繁に店を訪れていたことが分かった。複数の米メディアが13日、報じた。

また、容疑者が「同性愛に強い興味があった」という元妻の証言も伝えられている。(中略)
 
別の常連客はロサンゼルス・タイムズ紙に対し、容疑者から同性愛者向けのチャットアプリを通じ、たびたびメッセージが送られてきたと説明。

他にも、共通の知り合いが容疑者と同性愛者用の「出会い系」アプリを通じてやりとりしていたと証言する常連客の声が報じられている。【6月14日 時事】
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【「あなた方は孤独ではない」】
性的少数派のLGBTが標的とされたことに関して、オバマ大統領の連帯表明など、LGBTへの連帯の動きが社会に広がっています。

****LGBTは「孤独ではない」 米大統領、乱射事件受け連帯表明****
米フロリダ州オーランドの同性愛者向けナイトクラブで発生した同国史上最悪の銃乱射事件を受け、バラク・オバマ米大統領は14日、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)ら性的少数者との連帯を表明した。
 
オバマ大統領は米国家安全保障会議(NSC)への出席後に会見し、米国の思いは事件の生存者や犠牲者の遺族、そして「標的にされた」LGBTの人々と共にあると表明。「あなた方は孤独ではない。米国民とその同盟者たち、そして世界中の友人たちが、あなた方の味方だ」と続けた。
 
オバマ大統領はまた、12日の事件で射殺されたオマル・マティーン容疑者(29)について「怒りに満ちた不安定な若者が過激思想に染まった」と発言。同容疑者がインターネット上にある過激派のプロパガンダに触発されたとの見方を改めて示した。(後略)【6月15日 AFP】
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またイギリスでは、ウィリアム王子のLGBTコミュニティーにも勇気を与える行動が話題になっています。

****英王子、ゲイ誌表紙に・・・・「恥じること何もない****
英国のウィリアム王子(33)が15日、英国のゲイ雑誌「アティテュード」の表紙に登場した。
 
王子は同誌で、「恥じることは何もない。自分に誇りを持って」と、偏見に苦しむ若い読者に呼びかけた。英王室関係者がゲイ雑誌に登場するのは初めてという。
 
王子は5月に同誌関係者らをケンジントン宮殿に招き、同性愛が原因でいじめに遭った経験を聞き、今回、同誌で「誰も性的指向でいじめられることがあってはならない」と訴えた。
 
王子はキャサリン妃と共に14日にロンドンの米国大使館を訪れ、100人以上が死傷した米フロリダ州オーランドの銃乱射テロの被害者を悼んで記帳した。【6月16日 読売】
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大統領選挙両候補も真っ向対立
事件を受けて、大統領選挙に向けて民主党のクリントン前国務長官がイスラム教徒との関係を強めることや銃規制の強化を訴えたのに対し、共和党のトランプ氏は銃規制に反対する姿勢を鮮明にするとともに移民対策を強化すべきだと主張し真っ向から対立しました。

****クリントン氏とトランプ氏 銃規制巡り真っ向から対立****
大統領選挙に向けて民主党の指名獲得を確実にしたクリントン前国務長官は13日、中西部オハイオ州で演説し、組織の指示を受けないテロリストいわゆる「一匹オオカミ」による事件を防ぐことが「大統領としての最優先事項だ」と述べました。そして「戦争用の武器が街なかにあるべきではない」と述べて、殺傷能力の高い銃の規制などを強化すべきだと訴えました。

そのうえで、「若者などが過激な思想に染まるのを防ぐためにイスラム教徒を孤立させるのではなく、関係を強化すべきだ」と述べ、イスラム教徒の入国を禁止すべきだと主張する共和党のトランプ氏をけん制しました。

これに対し、共和党の指名獲得を確実にしているトランプ氏は東部ニューハンプシャー州で演説し、「われわれがより賢く迅速に対応しなければアメリカは崩壊してしまう」と述べ、オバマ大統領やクリントン氏を強く批判しました。

そのうえで、「私が大統領になれば、アメリカや、ヨーロッパ、それにわれわれの同盟国を狙ったテロを行ったことがある地域からは、脅威が取り除かれたと分かるまでは移民の入国を停止する」と述べ、移民への対策を強化すると主張しました。

また、「クリントン氏は解決策は銃規制だと言っているが、銃規制が厳しいフランスでもイスラム過激派のテロによって多くの人が殺害された」と指摘し、銃規制は効果がないとして反対する姿勢を鮮明にしました。

アメリカ社会に衝撃を与えている今回の事件についても2人の見解は真っ向から対立していて、大統領選挙に向けて銃規制やテロ対策を巡る議論が活発になっています。【6月14日 NHK】
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世論の反応については、クリントン氏の姿勢に同調する声の方が、やや多いようです。

****トランプ氏の言動「評価せぬ」5割 米乱射受け世論調査****
米フロリダ州オーランドで100人以上が死傷した銃乱射事件をめぐり、米CBSが世論調査を実施したところ、回答者の51%が共和党のトランプ氏の対応を「評価しない」と答えた。

米大統領選の同党の候補者選びの過程では、テロ事件を受けて「イスラム教徒の入国禁止」などを訴えたトランプ氏の過激な主張が人気を集めたが、より広範囲な有権者に訴える必要がある本選に向けた課題が示されたといえそうだ。
 
13〜14日に実施された調査でトランプ氏の言動を「評価する」と答えた人は25%で、評価しない人の約半分。共和党支持者の間でも、評価する人が50%にとどまった。事件を受けて銃規制の必要性などを主張している民主党のクリントン氏の対応は、36%が評価し、34%が評価しないとほぼ同数。オバマ大統領の対応は44%が評価し、34%が評価しなかった。
 
イスラム教徒の入国を一時的に禁止すべきかどうかについては、36%が賛成したのに対し、58%が反対した。

また、57%が銃規制の強化に賛成したのに対し、30%が「現状でいい」、10%が「より緩めるべきだ」と答えた。ただ、民主党支持者は銃規制に賛成で、共和党支持者が反対するという構図は変わっていない。【6月16日 朝日】
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共和党内にはトランプ発言以上に厳しい移民規制を求める動きも 「アメリカ国民の安全を最優先」】
トランプ氏のイスラム教徒を敵視する姿勢に、オバマ大統領も強い怒りを表明しています。

****オバマ大統領 トランプ氏の主張を厳しく批判****
・・・・「共和党員はイスラム教徒の入国禁止に賛成しているのだろうか。それは、われわれが望むアメリカではなく、民主主義の理念も反映していない。われわれの安全のためにもならず、むしろ『西側諸国はイスラム教徒を憎んでいる』という過激派組織IS=イスラミックステートの主張を助長するものだ」と述べ、怒りをあらわにして厳しく批判しました。そして、「信仰や人種に基づいて人を判断すべきではない。結束こそがISの打倒を可能にする」と訴えました。【6月15日 NHK】
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共和党内部にあっても、ライアン下院議長がトランプ氏の主張について「これはイスラム過激派との戦いであって、イスラム教徒との戦いではない。大多数のイスラム教徒は穏健で平和的な人たちだ」と批判するなど、共和党主流派は対応に苦慮しています。

特に、大統領選挙と同時に行われる議会選挙候補者にとっては死活問題です。

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・・・・共和党のラリー・ホーガン知事(メリーランド州)が「自分はトランプには投票しない」と言明して、静かに衝撃が広がりました。

特に動揺が激しいのは11月の総選挙で当落線上にいる共和党議員および候補で、このままでは「トランプに引きずられて落選してしまう」という危機感を募らせていると報道されています。【6月16日 冷泉彰彦氏 Newsweek】
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もっとも、共和党内にはトランプ氏より更に過激な移民規制を求める動きもあります。

****難民受け入れ全面停止」トランプより排他的な共和党****
<難民にはオーランド銃乱射容疑者のような危険分子が混じっているから、もっと厳しい審査体制ができるまでは誰一人入れてはいけない──トランプの「イスラム教徒入国禁止」よりさらに排他的な法案に80人以上の共和党議員が結集>

米南部フロリダ州オーランドで発生した銃乱射事件を受けて、米下院の共和党議員グループが中心となり、直ちに一切の難民受け入れを禁止する法案の提出に動いていることが、フォーリンポリシー誌が入手した資料から明らかになった。

その内容は、米大統領選の共和党指名候補の座が確定したドナルド・トランプが提唱した「イスラム教徒の移民受け入れ停止」のさらに上を行く強硬策だ。

法案の提出を目指しているのは、共和党下院議員のブライアン・バビン(テキサス州選出)の他85名の共和党議員。国土安全保障省が難民審査を再開するまでは難民の認定を禁じるという内容だ。さらに米政府監査院に対して、高齢者や低所得者、障害者向けの医療保険制度やその他の社会保障関連制度を利用している難民について、実態を報告するよう求めている。

アメリカが最優先
法案への指示を求める文書の中で、バビンは次のように述べた。「この法案は、難民の受け入れが国家安全保障上の脅威にならないことを確証できるまで難民の受け入れを停止することで、アメリカ国民の安全を最優先に守るものだ」(中略)

法案は難民に対して不公平でアメリカの価値観にも反するとして、人権団体から痛烈な批判にさらされている。
国際協力団体の英オックスファムで上級政策アドバイザーを務めるノア・ゴットシャルクは、「米議員の一部がオーランドで起きた悲劇を利用して、イスラム教徒、とりわけ紛争や暴力から逃れ、ただ安全な避難場所を求めているだけの亡命希望者や難民に対する恐怖心を煽っている」と批判した。「この法案はアメリカの安全を守るために不要なだけでなく、アメリカらしくない」(後略)【6月16日 Newsweek】
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人権とか価値観とかにかかわらず「アメリカ国民の安全を最優先」という発想は、外交にあっては、中国とか日本など同盟国などの立場にかかわらず「アメリカの利益が最優先」という方向にもつながるものでしょう。

銃規制では、保守派サイドからも規制強化を容認する声が
一方、銃乱射事件が繰り返されるたびに、銃規制問題に言及されるものの、一向に規制強化は進まないという現実がありますが、今回についてはやや異なる風向きもあるようです。

****選挙戦最大のピンチに追い込まれたトランプ****
・・・・二つ目は、銃規制問題です。トランプは、事件直後から「この事件を銃規制議論に結びつけるオバマ、ヒラリーを許さない」と非難して、NRA(全米ライフル協会)に全面的に連帯すると主張してきました。

そのNRAは、事件を受けて「銃規制に関する姿勢に一切変化はない」としていたのです。過去の乱射事件の例に従って、いつものように賛否が拮抗して前進しない、そんな感触がありました。

ところが、14日から「風向き」が変わり始めました。事件の動機が個人的なものだという認識と並行して、軍用に準ずる火器である連射可能な「アサルトライフル+多弾装マガジン」が「ほとんど野放し」である状態への反発が、全米の広範な世論の中で静かに広まっていったのです。

これを受けて、共和党の上院院内総務ミッチ・マコーネル議員は「新たな銃規制法に関して真剣な論議」が必要だという画期的な発言をしています。

また、15日夜のFOXニュースでは、著名な保守派キャスターであるビル・オライリーが「現状は変えるべき。憲法に認められた武装の自由は尊重しなくてはならないが、一般市民が持てる武器に関しては連邦がしっかり定義するべきだ。これに加えて、保有や携行に関する規制は各州に任せればいい」という論説を発表しました。これは「アサルトライフル規制」への支持を示唆するもので、衝撃をもって受け止められています。

狼狽したトランプは、「NRAと協議する」と対抗していますが、銃規制にあくまで反対して「NRAと共に政治的自滅へ進む」のか、あるいは「テロ容疑者への銃器販売規制については、一部妥協を示唆しているNRA」を「更に強い規制を受け入れるよう」説得するのか、注目されています。(後略)【冷泉彰彦氏 同上】
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上記にもある“狼狽したトランプは、「NRAと協議する」と対抗”ということに関しては、以下のようにも。

***米上院やトランプ氏、銃規制の部分強化を検討へ 乱射事件受け****
史上最悪となったフロリダ州の乱射事件を受け、米共和党や全米ライフル協会(NRA)に事件への対応を求める圧力が高まるなか、米共和党の大統領選候補指名が確実となったドナルド・トランプ氏は、テロ要注意人物リストや航空機搭乗禁止リストに記載された人物の銃購入を規制する方法についてNRAと協議すると表明した。

共和党は、銃規制は憲法で保障されている武器携帯の権利に踏み込むものだとして、長年規制に反対している。

また、米上院共和党ナンバー2のジョン・コーニン院内幹事と民主党のダイアン・ファインスタリン議員は妥協できる法案の可能性について非公式な協議を行ったという。コーニン氏の側近が明らかにした。

フロリダ州の乱射事件では、リストに記載された人物が49人を殺害する結果となった。【6月16日 ロイター】
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銃社会アメリカにあって自己防衛のために銃保有が必要という議論はありますが、(個人的には賛同しませんが)仮にそうであったとしても、なぜ「アサルトライフル+多弾装マガジン」が「ほとんど野放し」状態で市販されているのか、全く理解できません。憲法問題以前の常識の問題です。

オバマ大統領も、「国内で同じような悲劇が起きるのを防ぐためには、アメリカ人を殺害しようとたくらむ人々が簡単に武器を手に入れられないようにしなければならない」と述べ、殺傷能力の高いライフル銃の一般への販売を禁止すべきだと訴えました。

国連人権高等弁務も、「不十分な銃規制の結果であり、防げたはずの暴力行為だ」としたうえで、「アメリカ政府は市民を守るための責務を果たすべきだ」と、銃規制を強化するようアメリカ政府に求める異例の声明を出しています。

今回事件を受けて銃規制が一歩でも前進するのであれば、大いなる惨事にあってのせめても救いですが、どうなるのでしょうか・・・、また、いつもの繰り返しでしょうか?

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