孤帆の遠影碧空に尽き

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北朝鮮・韓国  高まる緊張 対立がエスカレートする危険も 宣伝放送中止要請期限は明日夕方

2015-08-21 22:29:36 | 東アジア

(21日、第3野戦軍司令部を訪れた朴大統領 「北のいかなる挑発にも徹底して断固対応せよ」と指示 【8月21日 聯合ニュース】)

北朝鮮は「準戦時状態」を宣言 韓国も「北の挑発に断固対応」指示
北朝鮮・韓国の間の緊張が異様に高まっています。
事の発端は、今月10日、軍事境界線非武装地帯の韓国側で北朝鮮が敷設したと思われる地雷によって韓国軍兵士2名が重傷を負った事件でした。

****国軍2人、地雷で足切断 北朝鮮に謝罪求める****
韓国軍は10日、韓国と北朝鮮を分ける軍事境界線の両側にある非武装地帯(DMZ)の韓国側で、北朝鮮軍が埋めたことが確実視される地雷で韓国軍下士官2人が負傷したと発表した。韓国軍は北朝鮮による挑発だとし、謝罪と責任者の処罰を求める声明を出した。

韓国軍によると、今月4日午前7時35〜40分ごろ、韓国京畿道坡州市のDMZで20代の下士官2人が地雷を踏み、足を切断するなどの大けがを負った。残骸を分析した結果、北朝鮮軍の地雷と一致。鉄材の残骸がさびたり、腐食したりした点がないことなどから、最近敷設されたとみられるという。

こうしたことから、韓国軍は、北朝鮮軍が非武装地帯に不法に侵入し、地雷を埋めた「明白な挑発」と判断。朝鮮戦争の休戦協定と南北不可侵合意に違反していると非難している。【8月10日 朝日】
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北朝鮮側は当然のごとく否定しています。

”朝鮮中央通信によると、北朝鮮の国防委員会政策局は14日、北朝鮮の地雷で韓国軍兵士2人が負傷した事件に関する談話を発表し、「(韓国軍は)回収したわが軍の地雷を埋め、謀略劇を捏造(ねつぞう)した」と自国の関与を否定した。”【8月14日 時事】

韓国側は対抗措置として11日、軍事境界線近くで大音量のスピーカーを使って北朝鮮の体制を非難する宣伝放送を11年ぶりに再開しました。
この放送は二十数キロ先まで届くとか。

北朝鮮軍は15日、韓国軍が軍事境界線付近で再開した放送による心理戦について、中止しなければ「軍事行動」を開始すると警告しました。

実際、20日北朝鮮軍による2回にわたる砲撃があり、韓国軍もこれに応射しました。

****北朝鮮が韓国側に砲撃、韓国軍も約20発応射 全軍に最高警戒態勢発令****
韓国国防省は20日、午後3時50分ごろ、北朝鮮がロケット砲とみられる砲弾1発を韓国側に発射した航跡を韓国軍の感知装置がとらえたと発表した。

ソウル北方の京畿道・漣川(ヨンチョン)付近に向け、発射されたとみられる。韓国軍も発射地点とみられる北朝鮮内の地域に向け、155ミリ砲弾約20発を応射した。

聯合ニュースなどによると、人的被害は確認されていない。韓国は漣川付近の住民に退避命令を出した。また、大統領府高官や安全保障に関わる閣僚による国家安全保障会議(NSC)を招集。全軍に最高レベルの警戒態勢を発令した。(後略)【8月20日 産経】
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砲撃の応酬の詳細ついては、下記のようにも報じられています。

****自走砲29発を応射 北朝鮮砲撃で=韓国国防次官****
韓国国防部の白承周(ペク・スンジュ)次官は21日、国会で開かれた与党セヌリ党の幹部会議に出席し、北朝鮮の砲撃を受け、南北軍事境界線の北朝鮮側500メートルの地点にK55A1(155ミリ)自走砲29発を応射したと明らかにした。同党の院内報道官が伝えた。

韓国軍の応射が北朝鮮の砲撃から1時間後に行われたことについては、「北の最初の砲撃は1発で、レーダーが誤る場合があるため確認中だった」と説明。「3発の砲声があって砲煙が上がり、対応した」と述べた。

北朝鮮が砲撃を行った地点に応射しなかったことに関しては「わが軍に被害がない地域に砲弾が落ちたため」と説明したという。

一方、最大野党・新政治民主連合への報告では、「弾丸の軌跡から、(対北朝鮮宣伝放送を行っている)拡声器を狙ったものではなく、警告射撃とみられる」と述べた。【8月21日 聯合ニュース】
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北朝鮮軍は20日夕、韓国国防省に通知文を送り、48時間以内に北朝鮮に対する宣伝放送の中止と拡声器の撤去に応じなければ「軍事的行動を開始する」と警告しています。

更に、北朝鮮メディアは、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記(軍最高司令官)が朝鮮労働党中央軍事委員会非常拡大会議を緊急招集し、前線地域に「準戦時状態」を宣言したと報じています。

中国の北京で記者会見した北朝鮮のチ・ジェリョン大使も、日本時間の21日午後5時半から「準戦時状態」に入ったことを確認しています。
北朝鮮の「準戦時状態」宣言は、1993年の米韓両国による大規模合同軍事演習による南北緊張時以来です。

また、火力兵器部隊を前線に移動させているとも報じられています。

****北朝鮮軍 最前線に火力兵器部隊を移動か****
北朝鮮の砲撃に韓国軍が応戦し南北で緊張が高まる中、「準戦時状態」を宣言した北朝鮮が火力兵器部隊を前線に移動させ配備しているもようだ。

韓国軍関係者は21日、「北が後方にあった火力を前線に移動配備する動きが確認された」と明らかにした。
240ミリロケット弾と170ミリ自走砲をはじめとする北朝鮮軍の火力兵器が、軍事境界線付近の最前線に集中的に配備されている。

北朝鮮軍が後方にあった火力兵器を前線に移し最前線部隊の戦力をより一層強化していることを意味する。(後略)【8月21日 聯合ニュース】
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韓国側も朴槿恵(パク・クネ)大統領が21日午後に軍司令部を訪問し、「北のいかなる挑発にも徹底して断固対応せよ」と指示するなど、応戦の構えです。

****朴大統領が軍司令部訪問「北の挑発に断固対応せよ****
北朝鮮軍が20日に最前線地域で韓国に向けて砲撃を行ったことを受け、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は21日午後、ソウル近郊・京畿道竜仁市の第3野戦軍司令部を訪問し、「北のいかなる挑発にも徹底して断固対応せよ」と指示した。青瓦台(大統領府)が伝えた。

同司令部は、北朝鮮が砲撃を行った西部戦線で韓国軍の戦闘・防衛の指揮を執る機関。

朴大統領は司令官らから北朝鮮の砲撃に対する韓国軍の対応や北朝鮮軍の動向などについて報告を受け、「北の新たな挑発に即刻対応できるよう、一分の隙もなく対応態勢を維持せよ」と指示。「わが兵士と国民の安全に危害を加える北のいかなる挑発も決して容認できない」と強調した。

また、20日に北朝鮮の砲撃を受け、韓国軍が現場の指揮官の判断で応射したことを評価。北朝鮮のさらなる挑発があった場合も、「先措置、後報告」(先に措置を取った後、報告する)との原則を守らなければならないと強調した。【8月21日 聯合ニュース】
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不測の事態でエスカレートする危険も
日本のすぐ隣、朝鮮半島で一触即発の危機が高まっていることは重大な事態であることは間違いないのですが、2010年の延坪島砲撃事件など、北朝鮮による挑発行動や常軌を逸した行動には、ある意味慣れっこになっていることもあって、正直なところ「またか・・・」という感もあります。

逆に言えば、北朝鮮側としてはそのように侮られないために、より強い姿勢を見せなければ・・・という力も働きます。

****北朝鮮、ノドン発射の動き=準戦時状態で緊張高める****
聯合ニュースによると、韓国政府関係者は21日、北朝鮮が中距離弾道ミサイル「ノドン」や短距離ミサイル「スカッド」の発射に向けた動きを見せていることを明らかにした。

北朝鮮軍は、韓国軍が22日夕までに宣伝放送の中止と拡声器の撤去に応じなければ軍事行動に出ると警告。「軍事行動の準備を完了した」(朝鮮中央通信)とされ、米韓両軍は警戒を強めている。

米韓両軍は、西部の平安北道でノドン、東部の元山でスカッドを搭載した発射車両が展開されている動きをつかんだという。政府関係者は「(北朝鮮は)軍事的緊張を高めるため、発射時期を計算するだろう」との見方を示した。

白承周国防次官は21日の国会答弁で、宣伝放送について、「北朝鮮がわれわれの政治・軍事的要求を聞き入れない限り続ける」と表明。北朝鮮が今後、拡声器への直接攻撃を仕掛ける可能性が高いと予測した。

一方、北朝鮮の池在竜駐中国大使は21日夕、北京の大使館で記者会見し、前線地域に準戦時状態が宣布され、部隊が「完全武装した戦時状態」に移行したと説明。

「非武装地帯に地雷を埋めたこともなく、先に砲撃したこともない」と韓国側の主張に反論した上で、要求に応じない場合「超強硬な対応は避けられない」と警告した。【8月21日 時事】 
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国内的に弱腰と見られる姿勢をとれないことは韓国側も同様です。韓国軍は全軍に最高レベルの警戒態勢を発令し、対応作戦に突入しています。

こうしたチキンレースの結果、思わぬ不測の事態を招く危険は常にあります。

また、北朝鮮で最近顕著な幹部処刑などの「恐怖政治」と、そうした異様な状況下での「忠誠競争」の結果、事態がエスカレートする危険もあります。

****北朝鮮砲撃】恐怖政治と忠誠競争で台頭する軍強行派、実態流す韓国宣伝放送に過敏反応**** 
約5年ぶりに北朝鮮が韓国に砲撃を加えた。人的・物的被害は出ていないもようだが、韓国では北朝鮮の軍事挑発に関するニュース一色で、北朝鮮の脅威を改めて国民に想起させる事態となっている。

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制では、朝鮮労働党高官らの処刑が続くなど“恐怖政治”が進行、幹部の“忠誠競争”とあいまって強硬派が台頭していた。

非武装地帯(DMZ)の韓国側で4日、北朝鮮が埋設したとされる地雷が爆発し韓国軍の2人が重傷を負った際、北朝鮮の軍事行動で韓国軍に人的被害が出たのは2010年11月の延坪島(ヨンピョンド)砲撃以来と報じられた。

同年3月の北朝鮮による韓国海軍哨戒艦撃沈事件や、延坪島砲撃を主導したとされるのが、工作機関「偵察総局」の金英哲(ヨンチョル)総局長だ。

金総局長は今年、朝鮮人民軍の大将から上将に降格されたことが判明したが、聯合ニュースによると、7月下旬、大将に復帰していたことが確認されたという。復帰後の最初の挑発が「地雷埋設」だったと韓国側はみている。

今回の「砲撃」という強硬対応措置についても、金総局長の影響を指摘する韓国メディアもある。

12年に発足した金正恩体制下では、このように側近・幹部がしばしば降格し、しばらくしてから復帰するケースが多い。

金正恩第1書記の最側近とされる黄炳瑞(ファン・ビョンソ)・朝鮮人民軍総政治局長と崔竜海(チェ・リョンヘ)党書記も役職や序列が頻繁に入れ替わり、注目された。(1)強力なナンバー2を作らない(2)忠誠を競わせる−ための人事とされる。

韓国では今月に入り、北朝鮮の崔英建(ヨンゴン)副首相が5月に銃殺処刑されていたと報じられた。山林緑化政策に関連し、金第1書記に不満を示したことが処刑理由という。党組織指導部の金グンソプ副部長も昨年9月に公開処刑されたとみられている。

金正恩体制下では、おじの張成沢(チャン・ソンテク)氏をはじめ、80人以上が処刑されたといわれており、恐怖政治が広がっているのが実情だ。

北朝鮮当局が恐怖政治による統制でしか人心の掌握を図れないからこそ、金正恩体制の実態などを拡声器を通じて大音量で流す韓国の政治宣伝放送に、極めて敏感に反応するといえる。【8月20日 産経】
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北朝鮮側の今回のような強硬姿勢は、北朝鮮内部の引き締めを図る狙いがあるとも指摘されています。
対外危機で国内求心力が高まるのは、支持率が低迷する韓国・朴大統領にとっても好都合です。
ただ、「先措置、後報告」のもとで事態が常にコントロール可能な状態に留め置かれる保証はありません。

北朝鮮側が宣伝放送の中止と拡声器の撤去の期限としている“48時間”は明日22日の夕方です。
韓国側も引かないでしょう。

おそらく、期限切れでまた何か北朝鮮側が仕掛けると思われます。
不測の事態に陥らないことを願いますが、なんとも厄介な隣人です。

追記
中国はどう対応するつもりなのか・・・と思っていましたが、北朝鮮を抑える方向ではあるようです。
また、北朝鮮自身も事態拡大を望んでいないとも。

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・・・・北朝鮮としては、これ以上の事態の緊張は避けたい考えとみられる。

9月3日には中国が国家の威信をかけた戦勝70周年記念行事を予定しており、中国は朝鮮半島が緊張する事態を望んでいない。

北朝鮮が挑発行為をエスカレートさせれば、中国側も北朝鮮の動きを制御する可能性がある。
北朝鮮指導部に近い関係者によると、中国は既に、北朝鮮との関係改善に乗り出しており、緊張状態はこの動きにブレーキをかける恐れがあるためだ。

北朝鮮側も、国内体制は安定しており、経済危機からの脱却も順調に進んでいるとみられる。朝鮮労働党創立70周年(10月10日)で盛大に軍事パレードを実施するためにも、事態収拾を急ぐ事情もあるようだ。(後略)【8月21日 毎日】
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ただ、先述のように、事態が常にコントロール可能な状態に留め置かれる保証はありません。

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