孤帆の遠影碧空に尽き

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ロシア  激しい兵士の損耗、ウクライナの弾薬庫ドローン攻撃で被害 最後の手段は「核」の威嚇

2024-09-29 22:19:58 | ロシア

(【9月19日 NHK】 18日、ウクライナのドローン攻撃で大爆発を起こしたロシア・トベリ州の弾薬庫)

【激しい兵士の損耗 契約兵増加で補充しようとするも難航、財政負担も増加】
ウクライナがロシアの電力インフラへの攻撃で厳しい冬を迎えなければならない状況などは一昨日ブログでも取り上げたところですが、ロシア側も大きな負担を負いながらの戦争になっています。

何よりロシア兵士の損耗が非常に大きいようです。1日当たりの死傷者数が千人を越え、これまでの死者数は7万人とも。

****ロシア死傷者1日平均千人超 英分析、訓練不十分で増加****
英国防省は20日、ウクライナ侵攻を続けるロシア軍の1日当たりの死傷者数が増加傾向にあり、平均で千人を超えているとの分析を発表した。

昨年までは多くても900人台だったが、今年5〜8月の4カ月間はいずれも千人以上で、9月も上回る見通し。十分に訓練を受けていない兵士が砲撃の犠牲になっているとした。
 
英BBC放送とロシア独立系メディア「メディアゾーナ」は20日、独自調査を基に、2022年2月の侵攻後に確認できたロシア兵の死者数が7万人を超えたと報じた。
 
一方、ウクライナ国防省は20日、月平均で6500人が新たに軍に入隊していると表明した。入隊者数は増加傾向にあるとしている。【9月21日 共同】
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死者数については20万人という推計もあります。

ロシア軍は自軍犠牲を厭わず戦闘を数で押し切ろうとする人海戦術のようですが、これだけ死傷者が膨らんでくると、兵士家族などの国内の動揺が懸念されます。

ロシア軍は自軍の損耗を兵士定員増加でカバーし、更にウクライナへの攻勢を強める構えです。まあ、人口規模・兵士動員可能数で言えばウクライナを圧倒していますので。

****ロシア軍、150万人規模に 18万人増、プーチン氏が大統領令署名****
ロシアのプーチン大統領は16日、露軍兵士の定員を現行の132万人から18万人増やし、150万人にすると定める大統領令に署名した。12月1日付で発効する。

ロシアによるウクライナ侵略の開始後、露軍兵士の定員拡大は3回目。ロシアは兵力を増強し、攻勢を強める思惑だとみられる。

ロシアが2022年2月にウクライナへ全面侵攻する前、露軍兵士の定員は約100万人だったが、大統領令により23年1月から115万人に拡大。23年12月には132万人へと再び拡大されていた。【9月16日 産経】
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プーチン政権としては、社会の反発が大きい徴兵のような動員ではなく、契約兵の増加によって上記のような「150万人」を実現する意向ですが、前述のような死傷者者が1日千人超といった状況ではおいそれと契約する者も多くありませんので、契約兵の確保には苦慮しているようです。

また、契約兵の報酬が膨らむにつれて、国家財政の負担も大きくなります。

****露、兵士確保に四苦八苦 首都は「年収800万円」提示 兵力損耗を補充、財政負担も拡大****
ロシアのプーチン大統領が9月、露軍兵士の定員を現行の132万人から150万人へと18万人増員する大統領令に署名した。実質的にはウクライナ侵略で損耗した兵力の補充が狙いとみられ、増員分は契約兵でまかなうという。

ただ、最近は契約兵の確保が難しくなっており、当局は高額の報酬や一時金支払いなどで勧誘に躍起となっているのが実情だ。侵略による死傷者増と兵力補充はロシアの財政にも重くのしかかる見通しだ。

「年収520万ルーブル(約800万円)以上」−。最近、首都モスクワ市内で見られるようになった契約兵の勧誘ポスターの文言だ。

露政府統計によると、2023年の露国民の平均月収は約7万3千ルーブル(約11万円)。単純計算で年収に換算すると87万6千ルーブル(約135万円)となる。契約兵になれば、1年で6年分近くの収入が手に入る計算だ。

契約兵確保のペースが鈍化
露政権は予備役30万人を招集した22年9月の「部分的動員」で社会の反発と混乱を招いた経緯を踏まえ、以降は契約兵で兵力を確保する方針に転じた。

ウクライナに派遣される契約兵には最低でも月収約21万ルーブル(約32万円)を保証したほか、契約時の一時金支払い、各種手当、ローン支払いの一時免除など、さまざま優遇措置を提示して契約兵確保を進めてきた。

今年2月、ショイグ国防相(当時)は「23年中に約54万人が軍と契約した」と誇示した。しかし、露国民も契約兵の死傷率が高いことを理解しており、政権による契約兵の確保は徐々に困難になっているとみられる。

メドベージェフ国家安全保障会議副議長は最近、「今年1月〜7月に19万人が契約兵になった」と述べており、契約兵確保のペースが23年よりもだいぶ鈍化してきたことが浮かび上がる。

兵員確保が難しくなっていることを示す一つの傍証が、契約兵に対する報酬の増額だ。
プーチン氏は7月末、契約兵になった国民らに政府から支払う一時金を、それまでの19万5千ルーブル(約30万円)から40万ルーブル(約62万円)に倍増させる大統領令に署名した。倍増は8月1日から12月末までとしており、「期間限定キャンペーン」のような趣が漂う。

自治体も競ってインセンティブ打ち出す
政府とは別に独自のインセンティブを導入する連邦構成体(自治体)も増えている。
モスクワ市は7月下旬、軍と新たに契約する人に市から190万ルーブル(約293万円)の一時金を支払うと発表した。それ以前に市独自で契約兵に支払ってきた月額5万ルーブル(約8万円)の手当てなどを含めると、モスクワで契約兵になった人の初年度年収は520万ルーブル(約800万円)以上になるとしている。

露メディアによると、24年までに計80を超す連邦構成体のほぼ全てが、契約時の一時金を導入したり、一時金を大幅に増額したりした。契約した人に土地の権利書を与えたり(北西部レニングラード州)、自宅の改修費用を支払うことを約束したり(中西部モルドビア共和国)する構成体も現れた。

各構成体の首長は政府から契約兵を確保するよう命じられており、その人数に応じて実績の評価が変わると伝えられている。このため、首長らは多額の予算を投じてでも契約兵集めに躍起になっているもようだ。

契約兵集めが難しくなっていることを示すもう一つの傍証は、受刑者や刑事被告人を勧誘するための法改正だ。
露下院は9月、裁判中や上訴中の刑事被告人について、契約兵になって契約期間を満了するか、勲章を授与された場合、刑事責任を免除すると定める法改正案を可決した。

ロシアはすでに昨年6月、収監中の受刑者らに関して同様の措置を定める法改正を実施している。ただ、受刑者出身の契約兵は最前線に投入され、多数が死傷したとされる。

今回の法改正は、受刑者だけでは十分な人数の契約兵を確保できなくなっている実情を反映している公算が大きい。

露軍の死者20万人、負傷者40万人の推計
多額の金銭を見返りとした契約兵の確保は今後、露財政の負担となる可能性がある。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、ロシアの国防費は以前、国内総生産(GDP)の3〜4%台で推移していたが、22年のウクライナ全面侵攻後に急増。23年はGDPの約5・9%に達した。

米ブルームバーグ通信は今年9月、露政府が25年の予算案で、国防費にGDPの6・2%に当たる13兆2千億ルーブル(約20兆3千億円)を計上する計画だと報じた。24年予算の10兆4千億ルーブル(約16兆円)から大幅に増える。

国防費には兵士らの人件費も含まれており、契約兵の増加が国防費増加の一因だとみられる。

戦闘での死傷者の増加もロシアにとって財政的負担となる。露メディアによると、ロシアは兵士らが戦死した場合、遺族に約1千万ルーブル(約1541万円)を支払うと規定。退役が必要な負傷をした場合は約600万ルーブル(約924万円)を支払うとしている。負傷の程度に応じた各種の支払いもある。

ウクライナ侵略に伴う露軍の死傷者数は不明だが、英BBC放送によると、遺族による交流サイト(SNS)への投稿など公開情報のみに基づく集計で、少なくとも約7万人の戦死者が確認された。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは9月、欧米情報機関には露軍の戦死者を約20万人、負傷者を約40万人だとする推計もあると報じた。

ウクライナでの戦闘が続く限り露軍の死傷者は増え続け、それとともにロシア財政が逼迫(ひっぱく)の度を増すのは確実だ。【9月29日 産経】
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【ウクライナによる弾薬庫ドローン攻撃】
戦況的には、ウクライナによる弾薬庫攻撃によって大きな損害が出ています。

****ウクライナ、新たにロシア弾薬庫2カ所を攻撃 ゼレンスキー氏「戦争終結早める」****
ロシアによるウクライナ侵略で、ウクライナ軍参謀本部は21日、露南部クラスノダール地方と西部トベリ州の露軍弾薬庫をそれぞれ攻撃し、打撃を与えたと発表した。クラスノダール地方の弾薬庫はロシアの三大弾薬庫の一つだとし、攻撃当時、ロシアが北朝鮮から調達した弾薬2千トンを運び込んだ輸送部隊が敷地内にいたと指摘した。

ウクライナ軍は最近、露軍の兵站を破壊して戦力を低下させるため、露軍の弾薬庫を標的とした攻撃を強化している。ウクライナ軍参謀本部によると、攻撃にはドローン(無人機)部隊などが参加した。

同国のゼレンスキー大統領は21日のビデオ声明で、弾薬庫には露軍がウクライナ国内への攻撃に使用するミサイルや誘導爆弾が貯蔵されていたとし、「露軍の攻撃能力を破壊し、戦争終結を早めるものだ」と述べた。

また、攻撃は国産兵器で行われたとも強調した。ウクライナ軍が最近実戦投入した新型ドローンが攻撃に使用された可能性がある。

ウクライナ軍は18日未明にもトベリ州の別の弾薬庫をドローンで攻撃。弾薬庫で大規模な爆発と火災が発生した。米紙ニューヨーク・タイムズによると、バルト三国エストニアの軍事情報当局者は20日、「砲弾75万発分に相当する規模の爆発が起きた」との見方を記者団に示した。(後略)【9月22日 産経】
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トベリ州にある弾薬庫には北朝鮮製のKN23弾道ミサイルやグラート多連装ロケットシステム、S-300防空システムや高性能弾道ミサイル「イスカンデル」などが保管されていたと報じられており、弾薬庫の大爆発の様子を伝える動画に、ウクライナを支持しているKremlinTrollsは「一番大きな爆発はまるで核爆弾が爆発したみたいに見える」と書き込み、「(ウクライナにとって)ものすごい成果であり、おそらく今回の戦争においてこれまでで最大規模の爆発だ」とつけ加えたとも。【9月20日 Newsweekより】

連日の弾薬庫攻撃ですが、こういう最重要施設への攻撃を許すというのは、ロシア側の防空体制はどうなっているのだろうか?という疑問も感じさせます。

【ロシアもドローン生産増強 イランに続いて中国の関与も】
ウクライナの攻撃にはドローンが多用されていますが、戦闘開始の頃はドローンではウクライナに遅れをとったロシア側も最近はドローン攻撃を強化しており、更に今後増強させる構えです。

****ロシア、ドローン生産を140万機に増強 昨年の10倍に=プーチン氏****
ロシアのプーチン大統領は19日、今年のドローン(無人機)の生産を増強し、140万機程度にすると発表した。昨年の約14万機からほぼ10倍増となる。

プーチン大統領はドローン製造開発に関する会議で「戦場で求められていることに迅速に対応する者が勝利する」と言明した。【9月19日 ロイター】
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ロシアのドローン生産には、これまでイランの関与が報じられていました。
“ロシア、イランからドローン数百機 軍事協力深化か=米高官”【23年6月10日 ロイター】
“イラン製自爆ドローンのロシア国内生産工場が稼働開始”【3月6日 YAHOO!ニュース】

最近は中国も関与しているとの情報もあります。

****ロシア国営企業 中国でウクライナ侵攻用の無人機開発や生産か****
ロイター通信は25日、ロシアの国営企業がウクライナ侵攻で使用する無人機の開発や生産を中国で進めていると報じました。

ロイター通信によりますと、ロシアの国営企業は今年、中国で現地の専門家の協力を得て、新型の無人機を開発し、飛行試験を実施したということです。

その後、中国の工場で大量生産が可能となり、ウクライナでの軍事作戦に投入できる段階だと伝えられています。

中国外務省はロイター通信の取材に対し、こうしたプロジェクトは把握しておらず、中国政府は無人機の輸出を厳しく管理しているとコメントしています。

ロシアとウクライナ両国が無人機による攻撃を活発化させる中、プーチン大統領は先週、ことしの無人機の生産量を去年のおよそ10倍、140万機に増やすと述べるなど、増産に力を入れる方針を示していました。【9月26日 日テレNWES】
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【最後は「切り札」としての核の存在を誇示し、ウクライナ・欧米に圧力】
ロシアとしては、兵員の損耗も激しく、弾薬庫がドローン攻撃を受けるといった状況、更には欧米の長射程兵器によるロシア領攻撃が認められるかどうかといった状況になってくると、最後は「核」の存在を誇示するということになります。

****「核の威嚇」繰り返すプーチン大統領、ウクライナの無人機攻撃を「核使用の根拠」にする可能性示唆か****
ロシアのプーチン大統領は25日、核兵器の使用要件を定めた「核抑止力の国家政策指針」の改定に言及し、核保有国の支援を受けた非核保有国から通常兵器で侵略を受けた場合、ロシアは核兵器で反撃できるとの方針を示した。

ロシアの侵略を受けるウクライナが、米欧供与の長射程兵器による露領攻撃を容認するよう米欧に求める中、「核の威嚇」を繰り返した。

露大統領府によると、プーチン氏は25日の国家安全保障会議で、国際情勢が変化する中、指針の改定にあたって核使用の条件を明確化すると説明した。核兵器を使う対象の国や脅威の種類を拡大するとも述べた。

指針の草案では、航空機や巡航ミサイルによる攻撃、無人機の大規模発射などに関する「信頼できる情報」を得た場合、核兵器の使用を検討するとしている。ウクライナが現在、続けている無人機攻撃が核兵器使用の根拠になる可能性を示唆するものとみられる。

プーチン氏は、ロシアが核兵器を配備する同盟国ベラルーシへの侵略が起きた場合も、ロシアは「核兵器使用の権利を留保する」と語った。ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領とも合意済みだと明らかにした。【9月27日 読売】
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****ロシア外相「核保有国に勝利するために戦うのは無意味」****
ニューヨークで開かれている国連総会に出席したロシアのラブロフ外相は「ロシアのような核保有国に勝利するために戦うのは無意味だ」と述べ、ウクライナや欧米をけん制しました。

ロシアのラブロフ外相は28日、国連総会で演説し、「ロシアのような核保有国に勝利するために戦うのは無意味で危険な考えだ」と述べました。

プーチン大統領が25日に核兵器使用の新たな運用規定を示し、ロシア領内を狙った大量のミサイルやドローンなどによる攻撃は、核兵器使用の条件になりうるとの考えを明らかにしたことを受けて、国連総会の場でウクライナや欧米諸国を牽制した形です。(後略)【9月29日 TBS NEWS DIG】
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もちろん、実際に核兵器を使用すれば、これまで以上の批判にさらされることになりますし、核使用のハードルを下げることは将来的に自国への核攻撃の可能性を高めることにもなりますので、そうそう容易なことではありませんが、抜かずに相手に脅威を感じさせる「伝家の宝刀」といったところ。

この宝刀、いったん抜いてしまうと収拾がつかなくなります。
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