孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾  国産ワクチンの使用開始 緊急使用認可に批判も 日本の開発状況 早ければ年内??

2021-08-23 22:09:43 | 疾病・保健衛生
(メディジェン社の国産ワクチンを受ける蔡英文総統【8月23日 BBC】)

【台湾 緊急使用認可で国産ワクチンの使用開始】
台湾は従来新型コロナ感染をほぼ抑えてコロナ対策の「優等生」とみなされていましたが、今年5月中旬から市中感染が拡大、5月末には1日に新規感染者が500人を超える状況に急激に悪化しました。

この時期、確保・接種が遅れていたワクチンに関し、中国からの中国製ワクチン供与の“揺さぶり”もあり、これに対抗する形で、日本からの緊急供与も行われことも記憶に新しいところです。

その後、外食全面禁止などの厳しい規制により抑え込みに成功、6,7月は減少局面に入り、8月20日は9人(!)と、現在は再び封じ込んだ状態になっています。
(ロイター COVID-19 TRACKER )
ただ、デルタ株の感染が拡大し、ワクチン接種が遅れていることから、全土で4段階のうち厳しい方から3番目の警戒レベルを当面継続する方針です。

こうした状況で、不安材料はやはりワクチン確保でしたが、蔡英文政権は日本などの支援も受けつつ、自国開発を目指してきました。

その自国開発ワクチンの使用が、蔡英文総統が最初に接種する形で始まっています。
ただ、野党からは急ぎ過ぎの開発に批判も出ています。

****台湾、自主開発ワクチンの接種開始 批判の声も****
台湾で23日、自主開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。このワクチンをめぐっては、認可手続きが簡略化されたとして批判も集まっている。

保健当局は7月、臨床試験がまだ終わっていないにもかかわらず、医薬品メーカー「メディジェン(高端疫苗生物製剤)」が開発したワクチンの緊急使用を承認した。

台湾では供給の遅れや市民の忌避感情から、ワクチン接種事業が滞っている。
蔡英文総統はこの日、メディジェンのワクチンを接種し、市民にも接種を呼びかけた。

台湾では米モデルナ製と英アストラゼネカ製のワクチンが承認されているが、蔡総統はメディジェン製が完成するまで接種を待っていた。

蔡総統の接種の様子はフェイスブックで配信された。不安かと聞かれた総統は「いいえ」と答えた。
同ワクチンは28日の間隔を空けて2回の接種が必要。これまでに70万人が接種を予約している。

「皆さんに保証できる」
メディジェンのワクチンは緊急使用が許可された際、臨床試験の第3相が終了していなかった。
これについてメディジェンは、大きな安全性への懸念はなく、生成される抗体も英アストラゼネカ・オックスフォード製ワクチンと「遜色ない」ものだと説明していた。

今年後半にはパラグアイでの治験の最終段階が完了する予定だ。

メディジェン製ワクチンは、米ノヴァヴァックス製と同じ組み換えたんぱく質ワクチン。

ノヴァヴァックスのワクチンは、免疫系を刺激するため、ウイルスのスパイクたんぱく質の一部を再生成するという、より伝統的な手法で作られている。

陳燦堅最高経営責任者(CEO)はロイター通信の取材で、「我々は多くの実験を行い、誰もがこのワクチンの安全性を確認している。副反応は少なく、熱もほとんど出ない。皆さんに保証できると思う」と話した。

しかし、このワクチンには批判も集まっており、接種事業の先行きは不透明だ。最大野党・中国国民党は、このワクチンは安全ではなく、流通が急がれたと非難している。

同党の著名議員2人は、試験結果不足を理由に、緊急使用の認可を取り消すよう裁判所に要請。うち1人は、台湾市民を「研究所のマウス」のように扱う必要はないと訴えた。

接種完了は5%
台湾では現在、1日10人程度の新規感染が報告されている。COVID-19抑制に成功した国のひとつとされている。
しかし5月に起きたアウトブレイク以降、感染力の高いデルタ株の侵入が懸念されている。

人口2350万人に対し、政府は500万回分のワクチンを発注している一方、ワクチン接種を強制することはないとしている。

これまでにワクチンを1回接種した市民は約40%で、接種が完了した市民は5%に満たない。【8月23日 BBC】
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「組み換えたんぱく質ワクチン」は、
“ウイルスを構成する成分のうち、感染にかかわる部分のみを培養細胞などを使って増やしたのち、精製したものを接種する方法です。生ワクチンや不活化ワクチンに比べ、ウイルスそのものを使用しないので、副反応が起こりにくいとされています。

一方、精製されたワクチン成分の免疫を起こす力が弱いことが多く、ヒトの免疫システムがうまく働かない、変異したウイルスには効果を示さなくなるなどの問題点もあります。百日咳ワクチンや破傷風トキソイドで実用化されています。”【福山市医師会HP】

第3相臨床試験(フェイズⅢ)とは、少人数で安全性を確かめる第1相、比較的少人数で効果・副作用などを確かめる第2相に対し、数百から数万という大きな規模の患者さんを対象に、実際の治療での使用に近い形で治験薬を投与して、第Ⅱ相試験よりも詳細な情報を収集し、治験薬の有効性・安全性を調査するものです。

この第3相試験の段階で予期せぬ副作用などが見つかって、開発が断念されるケースも珍しくありません。
台湾のワクチンは、この第3相をパラグアイで行うようですが、結果はまだ出ていません。

パラグアイは南米で唯一、台湾と外交関係を結んでいる国ですが、ワクチン供給を巡って中国との間でトラブルも報じられていました。

****ワクチン供給「中国が破棄」 台湾との外交理由か―パラグアイ****
南米パラグアイのボルバ保健相は、アラブ首長国連邦にある中国医薬集団(シノファーム)子会社が、パラグアイへの100万回分の新型コロナウイルスワクチン供給契約を一方的に破棄したと明らかにした。1日付の地元紙ウルティマオラなどが伝えた。パラグアイは南米で唯一、台湾と外交関係を結んでいる。

同紙によると、ボルバ氏は7月31日の地元テレビのインタビューで「不可解な理由で、われわれは(ワクチン供給)契約の一方的取り消しを通告された」と説明。

その上で「(契約破棄はシノファーム側の)生産能力とは全く無関係だ」と述べ、国交問題が絡んでいることを強く示唆した。契約は4月に結ばれ、5月下旬に25万回分が到着。破棄分の代金は返却されたという。
 
保健省は、シノファーム製ワクチンの半分は2回目のために取り分けてあるため、接種計画に大きな影響はないとしている。
 
パラグアイでは3月、中国関係者を名乗る業者がワクチン提供の条件として台湾との断交を要求したと報じられた。その後、台湾はパラグアイのワクチン獲得を後押ししている。
 
南米ではブラジルでも、右派のボルソナロ大統領が5月に反中国的な発言をした直後、中国がワクチン原料の出荷を突然停止。現地での生産・供給が一時混乱した。【8月3日 時事】
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【日本の国産ワクチン・治療薬開発状況】
台湾製ワクチンの有効性・安全性に関しては上記のような一般的情報しか知りませんが、こういう話を聞くと、「日本はどうなってるの?」という疑問も。

****ヤマ場迎えた新型コロナウイルス「国産ワクチン」 第一三共など最終治験へ=前田雄樹****
新型コロナウイルスに対する「国産ワクチン」の開発がヤマ場に差し掛かっている。

第一三共や塩野義製薬が最終段階の治験に入る準備を進めているほか、武田薬品工業は米ノババックスが開発したワクチンを国内で製造し、年内の供給開始を目指している。

日本は現在、国内で使用するワクチンのほとんどを輸入に頼っているが、今後、国内で製造されたワクチンが選択肢として順次加わってくる見込みだ。  

現在、日本で主に公的接種に使われているワクチンは、米国のファイザーとモデルナが開発した二つのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン。国内メーカーが開発した「純国産ワクチン」はまだない。

英アストラゼネカのウイルスベクターワクチンは、原液の製造をJCRファーマが、バイアル充填(じゅうてん)などの製剤化を第一三共と明治ホールディングス傘下のKMバイオロジクスが、それぞれ国内で行っており、8月から40歳以上を対象に公的接種での使用が可能になった。

コロナ禍が長期化し、変異株の脅威が高まる中、国産ワクチンを望む声は根強い。 

◇武田は年内供給へ  
国内では現在、アンジェス、塩野義製薬、第一三共、KMバイオロジクス、武田薬品工業──が国産ワクチンの治験を進めている。このうち、現段階で実用化に最も近い位置にいるのが武田だ。

同社が開発しているのは米ノババックスが創製した「組み換えたんぱくワクチン」と呼ばれるタイプで、遺伝子組み換え技術を使って作ったコロナウイルスのスパイクたんぱく質をワクチンとして接種する。武田はノババックスから製造技術の移転を受け、山口県光市の自社工場で年間2億5000万回分の生産を計画している。  

ノババックスが米国などで行った最終治験では、変異株を含む新型コロナウイルスに対して90%を超える有効性が確認された。日本では2月から武田が成人200人を対象に初期の治験を行っており、海外治験のデータとあわせて承認申請を行う方針。通常の冷蔵庫の温度で保存でき、扱いやすさの点からも期待が大きい。
 
武田に続くのが、塩野義、第一三共、KMバイオロジクスの3社だ。塩野義は昨年12月から、第一三共とKMバイオロジクスは今年3月から、国内で初期の治験を行っている。

塩野義が開発しているのは、2019年に買収したUMNファーマが持つ昆虫細胞を使ってたんぱく質を作る技術を活用した組み換えたんぱくワクチン。製造は協力会社のUNIGENに委託し、年内に年間6000万人分の生産体制が整うとの見通しを明らかにしている。

 第一三共はmRNAワクチンを開発しており、年内にも最終治験に入る方針だ。

毒性をなくしたウイルスを使う「不活化ワクチン」を開発中のKMバイオロジクスも、年内の最終治験開始を目指すとともに、並行して半年で3500万回分を生産できる体制を整備。

創薬ベンチャーのアンジェスや、医薬品開発支援のアイロムグループの子会社IDファーマも開発を進めている。

◇塩野義、最速で年度内  
先行するファイザーやモデルナのワクチンが普及する中、国内メーカーは大規模治験の実施という困難に直面している。

接種が進んだことで未接種の治験参加者を集めるのが難しくなっている上、すでに有効なワクチンが使えるのにプラセボ(偽薬)を接種することには倫理的な問題もある。  

こうした課題をクリアするため、プラセボを使わない臨床試験の方法が各国で議論されており、すでに実用化されたワクチンと中和抗体の量を比較して有効性が劣らないことを確認する「非劣勢試験」などが検討されている。

ファイザーやモデルナはプラセボを使った数万人規模の治験で発症予防効果を確認したが、中和抗体を指標とする比劣性試験なら数千人規模の治験で承認への道が開かれる見込みだ。

塩野義や第一三共は、この方法で承認取得を目指しており、塩野義は最速で21年度中、第一三共は22年中の実用化を目標にしている。  

国産ワクチンの開発を巡っては製薬企業から、一定の要件を満たした医薬品に認められる「条件付き早期承認制度」の対象をワクチンにも広げるよう求める声も上がっている。

同制度は、重篤かつ有効な治療法が乏しく、患者数が少ない疾患に対する医薬品を対象とした特例的な制度。適用された場合、中間段階までの治験で一定の有効性・安全性が確認されれば、市販後の調査でそれらを再確認することを条件に早期に承認を得ることができる。この制度がワクチンにも適用されれば、最終治験と並行して使用を始めることも可能になる。

◇安全保障面で重要な国内生産  
海外頼みの供給にはリスクがあり、安全保障の観点から国内でワクチンを生産できるようにしておくことは重要だ。コロナワクチンの開発を通じて新技術を蓄積しておけば、いつ起こるかわからない将来のパンデミックへの備えにもなる。

しかし、最終治験の結果を待たずに承認を可能とするような動きには、医療従事者を中心に疑問の声も上がる。高い有効性と安全性が確認されたワクチンが使用可能な状況で、特例を使ってまで国産ワクチンの承認を急ぐ必要があるのか、という指摘だ。(中略)

◇軽症用治療薬を初承認
コロナを克服して日常を取り戻すためにはワクチンだけでなく、治療薬も欠かせない。これまでは主に、ほかの疾患で承認されている既存薬を転用する形で開発が行われてきたが、最初から新型コロナへの効果を狙った新薬の開発も進んでいる。

厚生労働省は7月19日、中外製薬が6月に申請していた新型コロナ治療薬の「抗体カクテル療法」(製品名・ロナプリーブ)を特例承認した。

中和抗体である「カシリビマブ」と「イムデビマブ」を組み合わせて投与する治療法で、米リジェネロン・ファーマシューティカルズが開発した。中外は国内での販売を担う。  

海外で行われた臨床試験では、基礎疾患を持つなどリスクの高い軽症~中等症の患者に投与することで、入院や死亡のリスクを70%低下させた。在任中のトランプ前米大統領への治療に使われたことでも知られ、米国では昨年11月に緊急使用許可(EUA)が出されている。  

国内でコロナ治療薬として承認されている薬剤は四つとなったが、軽症・中等症の患者を対象とした薬剤は初めて。田村憲久厚生労働相は「治療法としては大きな前進」と話し、ワクチン接種が進み、軽症患者の増加が予想される中で新たな薬剤が使用可能となったことに期待を示した。  

コロナ向け抗体の開発はほかの企業も行っており、米イーライリリーは「バムラニビマブ」と「エテセビマブ」の二つの抗体を併用する治療法のEUAを米国で取得。

米バイオベンチャーのヴィル・バイオテクノロジーズと英グラクソ・スミスクラインが共同開発した「ソトロビマブ」にもEUAが出されている。

アストラゼネカも抗体カクテル療法「AZD7442」の最終治験を進める。  

抗体医薬はコロナ治療の新たな武器として期待されるが、基本的には重症化リスクの高い患者が対象で、日本では入院患者に使用が限られる。軽症者が自宅で服用できる飲み薬の開発は重要な課題だ。

米メルクは米リッジバック・バイオセラピューティクスと共同で、経口の抗ウイルス薬「モルヌピラビル」を開発中。日本を含む世界で最終治験に入っており、順調に進めば9~10月にデータを得られる見込みだという。米国などでは年内にも実用化される可能性があり、日本でも早期の承認が期待される。

スイス・ロシュも米アテアから開発権を取得した経口抗ウイルス薬「AT─527」を開発している。海外では近く最終治験に進む見通しで、日本では国内販売を担う中外が開発を進める。

ファイザーも経口抗ウイルス薬の開発を行っており、年内の実用化も視野に入れている。 

◇日本勢も経口薬を開発  
国内メーカーでは、塩野義製薬やバイオベンチャーのオンコリスバイオファーマが経口抗ウイルス薬を開発中で、塩野義は7月に日本で初期の治験を始めた。

ペプチドリームは富士通などと創薬ベンチャーのペプチエイドを設立し、アミノ酸が連なった「ペプチド」をコロナ治療薬として開発中。富士通のデジタル技術を活用することで開発期間を短縮し、早期の承認取得を狙う。  

既存薬の転用では、有効性や安全性を示せず開発が頓挫したものも少なくない。小野薬品工業は、抗ウイルス効果が期待された膵(すい)炎治療薬「フオイパン」について、国内で行った最終治験で有効性を証明できず開発を中止。

第一三共は、同「フサン」を新型コロナ向けに吸入製剤として開発していたが、安全性への懸念から開発を中止した。富士フイルム富山化学の新型インフルエンザ治療薬「アビガン」は、厚生労働省の審議会で承認が見送られ、現在、別の臨床試験で有効性の証明を試みている。 【8月16日 前田雄樹氏・AnswersNews編集長 エコノミストOnline】
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国産ワクチンに関しては、武田が「年内供給」とのことですが、製造技術を提供したノババックスが2021年中に米食品医薬品局に緊急使用許可を申請する見通しということのようですから【8月20日 M&AOnline】、武田のワクチンを日本で実際に使用できるのは、更にその先になるのでは・・・。

スピード感を持って処理して欲しいと個人的には思いますが、石橋を叩いて、叩いて、叩き壊してしまう日本ですから・・・というか、誰も責任・リスクをとりたがらず、責任逃れの「安心・安全」を呪文のように唱える国と言うべきか。

コメント
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