孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  融和姿勢を見せるタリバン 20年間で変わったのか? 変わっていないのか?

2021-08-18 22:47:59 | アフガン・パキスタン
【タリバン関係者がTV放送で女性キャスターのインタビューを受ける】
アフガニスタンでタリバンが実権掌握したことに関しては、
タリバンはどういう統治を行うのか? 女性の権利は? 報復は?
国際社会はタリバン支配にどのように対応するのか? 支配を承認するのか? 人道支援は?
タリバン支配を恐れて国外に脱出する人々をどのように受け入れるのか?
アフガニスタン撤退の混乱は、アメリカ・バイデン政権にどのような影響を与えるのか?
等々、多くの視点からの問題があります。

まずは、一番目の“どういう統治を行うのか?”というあたりから見ていきます。
その統治内容によっては、他の問題も大きく影響されます。

2番目の“国際社会の対応”も、タリバンがどういう統治を行うかによって大きく変わりますし、そこを見極めてから動こうとする国も多いでしょう。

また、タリバンからすれば、国際社会からの承認を得て、資金的な支援を得るためには、統治内容についても一定に国際社会が納得する形で無ければならないということにもなります。

更には、統治のあり方によっては、今後多くの難民を生むことになり、受け入れ態勢が必要になります。
また、バイデン政権にとっても、撤退の結果生じたタリバン支配の実態によって、撤退の評価も変わってきます。女性の権利が再び奪われる、多くの報復が行われることになれば、撤退政策がよかったのか?という疑問を惹起します。

一言で言えば、「今の段階では」タリバン指導部は、旧タリバン政権時代とは異なる融和的な姿勢を見せています。

17日には、タリバン関係者が女性キャスターのインタビューを受けるという、これまでからすると極めて“珍しい”光景がテレビ放映されました。

この中で、タリバン関係者は「イスラム法の範囲内で」という条件を付けた上で、「女性は統治機構に参画すべきだ」として、女性を公職から排除しない考えを明らかにしています。

上記放送では女性キャスターは顔全体を覆うブルカではなく、髪だけ覆うヒジャブを着用してしました。

旧タリバン政権時代は、女性は顔全体を覆うブルカを強制され、学校で学ぶことや仕事につくことはもちろん、夫や親族男性の同伴がなければ外出もできない・・・といった状況でしたが、新タリバンは柔軟な姿勢も見せています。

****タリバン、女性へのブルカ強制を否定 ヒジャブは必要に****
アフガニスタンを制圧した旧支配勢力タリバンは17日、女性に対し全身を覆う衣服「ブルカ」の着用を強制しない方針を示した。タリバンは旧政権時代には、ブルカ着用を義務付けていた。

1996〜2001年のタリバン政権下で、女性は移動を制限され、教育や就労を禁じられたほか、公共の場ではブルカの着用を義務付けられた。

カタールの首都ドーハを拠点とするタリバン政治部門のスハイル・シャヒーン報道官は英スカイニューズに対し、「ヒジャブ(ベール)とみなされるのは、ブルカだけではない。ブルカに限らず、ほかの類いのヒジャブもある」と語った。

ブルカは頭を含む全身を覆う衣服で、目の部分には網目の窓があり周囲が見えるようになっている。タリバンが15日の首都カブール制圧後、ブルカ着用を強制しない方針を示したのは初めて。ただしシャヒーン報道官は、タリバンが容認するヒジャブの種類については明言しなかった。【8月18日 AFP】
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また、崩壊した政権の職員らに向けた声明で「恩赦」を宣言し、職場復帰などを求めています。

****タリバン、崩壊政権の職員らに職場復帰求める…新体制づくりに着手****
アフガニスタン全土を制圧したイスラム主義勢力タリバンは17日、崩壊した政権の職員らに向けた声明で「恩赦」を宣言し、職場復帰などを求めた。深刻な女性差別など国際社会の懸念を意識し、国民を懐柔しつつ、新体制づくりに乗り出したとみられる。
 
AP通信は17日、タリバン指導部「文化委員会」のメンバーが、「女性は政府機構に加わるべきだ」と述べたと伝えた。首都カブール制圧に伴い、多くの国民が国外脱出を図っていることに、タリバンが危機感を抱いている可能性がある。
 
アシュラフ・ガニ大統領が国外退避した後も、政権メンバーの一部は国内に残っている。AP通信によると、タリバンは政権ナンバー2のアブドラ・アブドラ国家和解高等評議会議長や大統領経験者のハミド・カルザイ氏らと新体制に向けた協議に入った。タリバンがパキスタンで、アフガンの各民族指導者らと協議しているとの情報もある。(後略)【8月17日 読売】
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【謎に包まれていたタリバン幹部 記者会見で融和的方針示すも「イスラム法の範囲内で」】
17日には、これまで公の場に現れたことがなく、謎に包まれていたタリバンの報道担当のザビフラ・ムジャヒド幹部が記者会見を開き、“イスラム法の範囲内で”という条件付きながら、「イスラム法の範囲内で、女性の権利を尊重する。男性と女性は同じ権利を持つ。我々のルールや制限のもと、女性は様々な活動ができる。教育分野や保健分野などだ」「一定の枠内で働き、学ぶことができる」「これまで敵対してきた政府軍や警察、政治家など全ての国民の罪を許す」など融和的な考え方を示しています。

ただし、その具体的な内容は未だ不明です。その言葉を信じていいのかも疑問です。

****謎に包まれたタリバンの報道担当者、初めて公の場に アフガンの権力掌握後の会見****
アフガニスタンの反政府組織タリバンは17日、アフガンの権力掌握後の記者会見を首都カブールで開いた。タリバンの報道担当ザビフラ・ムジャヒド幹部が記者からの質問に応じた。ムジャヒド氏が公の場に姿を見せるのは初めて。

ムジャヒド幹部はこの歴史的な記者会見で、「イスラム法(シャリア)の枠組みの中で」女性の権利を尊重すると主張するなど、記者からのさまざまな質問をうまくさばいてみせた。

会見に出席した大半のジャーナリストにとって、この会見はその内容以外にも意味があるものだった。タリバンの報道担当を務めるムジャヒド氏の顔を見るのが、今回が初めてだったからだ。ムジャヒド氏は長年、舞台裏で活動し、報道陣は電話越しにその声を聞くことしかできなかった。

BBCのヤルダ・ハキーム記者は、10年以上前からやりとりをしてきたタリバン報道担当者の顔をついに目にして、「衝撃」を受けたと話す。

ムジャヒド氏は「我々は内にも外にも敵を望まない」と語るなど、融和的な雰囲気を演出しようとした。
しかし、会見での発言は、ムジャヒド氏からこれまで送られてきたテキストメールの内容とまったくかけ離れていると、ハキーム記者は言う。

「(ムジャヒド氏の)メッセージには強硬なイスラム教の教えが含まれていた。『この人はアメリカ人の血を求めているし、アフガン政府関係者の血を求めている』と思わせられる内容もあった。それが今日になって、会見に出席した彼は、報復はしないと言っている」
「何年間も血なまぐさい好戦的な声明を発表してきた人物がいきなり、平和を愛するようになるなんて。なかなか受け入れがたい」

実際、ムジャヒド氏が会見で座っていたのは、今月初めにタリバンが暗殺した、アフガン政府メディア情報局の責任者ダワ・カーン・メナパル氏が最近まで座っていた席だ。ムジャヒド氏は当時、メナパル氏が「特殊攻撃で殺害された」と犯行を認めていた。(中略)

顔の見えないタリバンの報道担当者は複数人いるのではないかとの憶測が、何年も前からあった。(中略)

「ムジャヒドというのは仮名で、大勢の『ムジャヒド』が交代で登場していたのではないかとの憶測が長年あった。今は当然、我々は皆この人物があのザビフラ・ムジャヒドだと受け止めている。しかし、もしかしたら彼ではないのかもしれない」と、ドゥセット特派員は言う。

こうした謎はすべてタリバンのシナリオの一部だと、ハキーム記者は指摘する。
「タリバンとはそういうものだ。タリバンは組織化され、イデオロギーを共有している。偶発事態など1つもない。1人の人物を謎めかせて、突然スクリーンに登場させる。これ以上よくできた筋書きはないだろう」

ムジャヒド氏が1人の人間なのかどうかに関係なく、17日の会見での同氏の発言を警戒していたと、ハキーム記者は言う。
「注意すべき点はやはりシャリアだ。この言葉を聞いて背筋がぞっとした」
「それがどのようなものなのか、タリバンはまだ説明していないので」
「これがタリバンの特徴だ。彼らは人を欺き、時に魅力的で、適切な言葉を使う術を知っている。彼らを信じるべきかどうかははっきりとはわからない」
「謎は多い。(中略)でも本当にタリバンが何者なのか、私たちは知っているのだろうか?」【8月18日 BBC】
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【幹部主張と現場の実態に違いも すべてはこれから】
こうした主張が、本音なのか、単なる国際承認を得るための最初のポーズなのか・・・そこらはまだわかりませんが、ポーズだとしても、そうしたポーズに配慮するということだけでも、一切“聞く耳を持たなかった”旧タリバン政権とは違っているようにも思えます。

タリバンもそれなりにこの20年間で変化があった・・・・のでしょうか。

いずれにしても、どこまで本気なのか、仮に「幹部」はそう考えたにしても、現場でそれが実行されるのか・・・・疑問は多々あります。
タリバンと一口に言っても、穏健派から過激派まで様々であり、指導部がそれらをまとめることができるのかという問題もあります。

すでに、「幹部」主張とは異なる「現場」での動きも報じられています。

****タリバン、新体制準備進める=柔軟姿勢と実態に乖離も―アフガン****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンは、国の全権を掌握してから4日目の18日も新体制樹立に向けた準備を進めた。タリバン幹部は17日の記者会見で、国際社会の視線を意識した柔軟姿勢を強調。

ただ、今後はタリバン内部で方向性の食い違いが生じる可能性もあり、会見内容と実態との乖離(かいり)が懸念されている。(中略)

17日はナンバー2のバラダル師が滞在先のカタール・ドーハから帰国。新体制樹立への準備は着々と進んでいるもようだ。

ただ、タリバンは最強硬派とされる「ハッカニ・ネットワーク」をはじめ、さまざまな派閥を糾合して成立している。

西洋文化の一掃を強硬に主張する一派もあるとされ、新政権が樹立されても全土で組織末端まで統一した施政方針を浸透させられるかは不透明だ。既に、新たな支配地域で女性の権利制限や私刑といった人権侵害の情報も伝えられている。【8月18日 時事】 
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****Q.タリバン政権はどのような政権になる?****
テレビ朝日外報部・元カイロ支局長の荒木基デスク
基本的にイスラム教の教えとして、イスラム法(シャリーア)というものがある。シャリーアには“人の道”という意味もあり、日本語で言えば道徳。イスラム教の人としての生き方に則った政治をやりたいというのが彼らの考え方で、これは20年経った今も変わっていないはず。

例えば、音楽禁止とか偶像崇拝を禁止して仏像を爆破するとか、そういったやり方を今後もやるのかというのは疑問符がつく。

というのも、インターネットもSNSも普及したこの時代に、どれだけのことがタリバンにできるのか。国際社会の目も無視することができない。20年前、オサマ・ビン・ラディンを引き渡せといった時に、誰に交渉すればいいのかもわからないぐらい、タリバンは閉鎖的なグループだった。

ところが今は、アフガニスタン政府と交渉するような代表団もいるし、スポークスマンもちゃんといる。それなりに20年の間に進歩している。

さらに先月、中国の代表とタリバンの代表が会談をしていて、タリバン側も自分たちがアフガニスタンを統治することになった時に備えて、すでに先手を打ち始めていた。そういう意味では、20年前のような状況とは少し違うのかもしれない。【8月18日 ABEMA TIMES】
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タリバンも変わったようにも見えますし、そうそう変わるものではないとも言えますし・・・・すべてはこれからです。
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