(移民であふれるNGOのシェルター(一時保護施設)【7月12日 NHK】)
【アメリカの「裏庭」で不安定化するキューバ、ハイチ】
アメリカにしてみると「裏庭」にあたるキューバ・ハイチの政情が不安定しているのは周知のとおり。
アメリカの制裁もあって経済的に困窮しているキューバでは食料や電力、医薬品の不足に抗議するデモが11日に起き、全土で計数千人が参加したとされます。共産党の一党体制下で無許可のデモは禁止されており、大規模なデモが起きるのは異例だのことです。
****キューバの反政府デモで死者、100人以上拘束の情報も*****
異例の反政府デモがあったキューバの内務省は13日、市民を複数拘束し、1人が死亡したと発表した。反政府グループは行方不明者が100人を超すとしている。同日にはまた、首都ハバナなどでインターネット接続が制限された。
内務省は、ハバナ郊外で暴徒となった複数の市民を拘束したとし、この際、住民の男性(36)が死亡したと発表した。一方、政府を批判するグループがツイッターに投稿した情報では、13日正午までに130人が拘束されるなどして行方不明になったという。また、スペイン紙ABCは、同紙のハバナ支局に勤務するキューバ人記者が12日に逮捕されたと報じた。
現地からの情報によると、ハバナ中心部や内陸部などで13日、インターネットやSNSが使えなくなった。(中略)
SNSには11日のデモ関連とされる動画が多く投稿されている。警察官や私服警察官とみられる男たちがデモに参加した市民を殴る動画や、「デモ後に行方がわからなくなった子どもを捜している母親たち」と名付けられた、警察署前に集まった女性たちの動画などだ。情報の共有を阻もうとキューバ政府がインターネット接続を遮断した可能性がある。
一党支配するキューバ共産党は12日、党中央委員会政治局が会議を開いた。引退したラウル・カストロ前党第1書記も出席したと政府系メディアが報じた。会議では11日のデモについて「米国によって組織され、資金提供を受けた反革命分子による挑発行為」と分析したという。
国営メディアは、デモに「数百人が参加した」と報道しており、全国各地で数千人が参加したと報道する外国メディアと大きく開きがある。
一方、キューバのデモについてバイデン米大統領は12日の記者会見で「米国は普遍的な権利を主張するキューバの人々を強く支持する。キューバ政府には、人々の声を封じ込める行動や暴力を控えるよう求める」と述べた。
また国務省のプライス報道官は13日の会見で「キューバ政府はインターネット遮断や暴力、ジャーナリストや活動家らの恣意(しい)的な拘束などの抑圧的な方法によって人々の声を封じ込めようとしている」と強い懸念を表明。平和的なデモによって拘束された人々を釈放するよう求めた。【7月15日 朝日】
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キューバからすると、今回混乱はアメリカが背後で画策しているという話にもなります。
“ディアスカネル大統領は11日、一連のデモについて「キューバ系米国人のマフィアが不安をあおっている」と発言。グランマ紙も「米国によって組織化され、資金が提供された」と主張した。こうした見方について、ブリンケン米国務長官は12日、「重大な誤りだ」と否定した。”
また、アメリカの弾圧批判に対しては、「キューバの人々を支援」云々と言うのならアメリカが制裁を解除すればいい・・・ということにも。アメリカには、そうした制裁緩和の動きは今はないようです。
一方、人口約1100万人のハイチは最貧国の一つで、長く政情不安が続いています。
2010年には大地震に襲われ、30万人以上が死亡、更にその後ハリケーン被害もあって、そうした災害から復旧できず、市民生活は極めて困窮しています。
そのハイチで、モイーズ大統領が7日、武装集団によって私邸で銃撃暗殺される事が。
実行犯はともかく、事件を計画した背後関係について未だよくわかりません。
****ハイチ大統領暗殺、計画は隣国ドミニカで 元上院議員を指名手配****
カリブ海の島国ハイチの国家警察は15日、ジョブネル・モイーズ大統領の暗殺は隣国ドミニカ共和国で計画されたと発表した。また、大統領の主任警護官と警護員3人を拘束したと明らかにした。
モイーズ大統領は7日、首都ポルトープランスにある私邸に押し入った武装集団に射殺された。この事件では、大統領警護隊に負傷者が出ていないことから、内部関係者の関与が疑われている。
ソーシャルメディアで拡散されている写真には、すでに逮捕された容疑者2人が野党の元上院議員ジョエル・ジョン・ジョセフ容疑者と会っている様子が捉えられている。警察は同容疑者を指名手配した。
レオン・シャルル国家警察長官によると、この写真は、3人がドミニカ共和国の首都サントドミンゴのホテルでモイーズ氏の暗殺計画を立てている際に撮影されたものだという。
シャルル長官は、「暗殺の首謀者、実行犯採用班、資金調達班がテーブルを囲んでいる」と説明。写真には、すでに逮捕された医師のクリスティアン・エマニュエル・サノン容疑者や、ハイチ系米国人のジェームズ・ソラージュ容疑者も写っている。
警察によればソラージュ容疑者は、米フロリダ州マイアミに拠点を置くベネズエラ系警備会社CTUとの調整役として計画に参加していた。CTUの社長も写真に写っており、暗殺計画に絡んで何度もハイチに入国していたという。
シャルル長官はまた、暗殺資金はフロリダ州に拠点を置く金融サービス会社「ワールドワイド・キャピタル・レンディング・グループ」が提供したと語った。
事件では、ハイチ系米国人2人とコロンビア人26人が実行犯とされている。捜査に協力しているコロンビア警察は15日、逮捕された容疑者らが、モイーズ大統領を拘束して米麻薬取締局に引き渡す計画だったと供述していることを明らかにした。実行犯の中には、コロンビア軍特殊部隊の元隊員が複数加わっていたという。
米国防総省は同日、逮捕された容疑者の一部が、かつてコロンビア軍兵士として米軍の訓練を受けていたことを確認した。 【7月16日 AFP】
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【アメリカ 移民の大量流入を警戒】
アメリカは今のところ、キューバ制裁は緩和しないし、ハイチから要請されている軍の派遣も行わず、両国への深入りは避ける姿勢。
****キューバは「失敗国家」=ハイチ派兵予定せず―米大統領****
バイデン米大統領は15日、反政府デモが起きた社会主義国キューバについて「残念ながら失敗国家であり、自国民を抑圧している」と糾弾した。「失敗国家」は通常、中央政府が正常に機能していない国を指しており、異例の強い表現だ。
ドイツのメルケル首相との共同記者会見でバイデン氏は、共産主義体制が「全世界で失敗した制度だ」と断言。米国からキューバへの送金は「(現地)当局に押収される可能性が高い」と指摘し、トランプ前政権が強化した送金規制の緩和に難色を示した。
キューバへの新型コロナウイルスワクチン支援に関しては「国際機関が接種を取り仕切り、一般国民に行き渡ると保証されるなら、かなりの量を提供する用意がある」と表明。キューバでインターネット交流サイト(SNS)などの遮断が伝えられることにも触れ、復旧支援を検討する考えを明らかにした。
一方、モイーズ大統領暗殺で政情不安が深刻化しているハイチには、米大使館の警備強化のため海兵隊員を送っていると説明した上で、本格的な米軍部隊派遣は「今のところ予定していない」と述べた。
ハイチ政府は先に、武装勢力が空港などを襲撃する恐れがあるとして、米国と国連に派兵を求めていた。【7月16日 時事】
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ただ、こうした国が不安定化すると、アメリカへの非合法移民が押し寄せる可能性があり、アメリカもそのあたりを懸念しています。
****米、キューバ移民が海から大量流入した場合の緊急対応策ある=高官****
バイデン米政権の高官は15日、キューバから海を渡って米国を目指す移民が急増した場合の緊急対応策は整っており、フロリダ海峡における警備体制は「盤石」だと述べた。
同高官はその上で、マヨルカス国土安全保障長官の発言を繰り返す形で、キューバ移民に対し米国の海岸を目指さないよう警告を発した。キューバ政府の高官が国民の「集団移動」の可能性に触れたことについては「生命を危険にさらすことになるキューバ人への配慮に欠いている」と非難した。
キューバでは11日、数十年ぶりの規模とされる反政府抗議デモが国内各地で起きた。社会主義国キューバでデモは異例。
前出の高官は、デモはバイデン政権発足後すぐに開始した対キューバ政策の見直しの進め方に影響を与えるだろうと述べた。政策見直しに関し、キューバ政府ではなくキューバ人の支援を念頭に置いているとした。【7月16日 ロイター】
同高官はその上で、マヨルカス国土安全保障長官の発言を繰り返す形で、キューバ移民に対し米国の海岸を目指さないよう警告を発した。キューバ政府の高官が国民の「集団移動」の可能性に触れたことについては「生命を危険にさらすことになるキューバ人への配慮に欠いている」と非難した。
キューバでは11日、数十年ぶりの規模とされる反政府抗議デモが国内各地で起きた。社会主義国キューバでデモは異例。
前出の高官は、デモはバイデン政権発足後すぐに開始した対キューバ政策の見直しの進め方に影響を与えるだろうと述べた。政策見直しに関し、キューバ政府ではなくキューバ人の支援を念頭に置いているとした。【7月16日 ロイター】
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****米国に来ないで 米政府、ハイチ・キューバ人に警告****
米政府は13日、政情不安が起きている中米ハイチとキューバの国民に対し、米国に逃れて来ないよう警告した。ルートは危険で、強制送還すると主張している。
ハイチでは先週、ジョブネル・モイーズ大統領が暗殺され、指導部が混乱している。キューバでは先週末、経済的・社会的状況をめぐり各地で前例のない抗議デモが起きた。
こうした事態を受け、米国のアレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は、「海路で移動を試みる時期ではない」と述べた。「こうしたリスクを取る価値はない」
さらに、「はっきりさせておきたい。海に出ても、米国には来られない」と明言した。
マヨルカス氏によると、両国から船で米国へ渡る試みが増えているという証拠はまだない。しかし、米沿岸警備隊は、フロリダ州の航空支援を受けて海上をパトロールしており、移民船を阻止する構えだという。
マヨルカス氏は、「国籍にかかわらず、海上で阻止された移民は、米国への入国を許可されない」と語った。
同氏によると、現在ハリケーンシーズンのフロリダ海峡を渡る旅は特に危険で、ここ数週間で米国への入国を試みた20人が死亡している。【7月14日 AFP】
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アメリカが神経を尖らしているのは、移民に寛容と思われているバイデン政権に変わって以来、アメリカを目指す移民が急増しており、野党・共和党からの批判、更に与党・民主党内にはより寛容な移民政策を求める急進勢力と党指導部との対立があることもあって、このまま事態が悪化すれば政権の基盤を揺るがしかねない問題になる危険があるためです。
****米国境の不法移民拘束、6月は前月比4.5%増の18万9000人****
国のメキシコ国境で6月に拘束された不法移民の数は、夏の暑さで減少するとみられていたが、前月比4.5%増の約18万9000人となった。税関・国境警備局が16日、明らかにした。
CBPによると、拘束された不法移民の数は、5月が18万641人、昨年6月は3万3000人強だった。
また、保護者が同伴していない子どもの保護数は6月、前月比8%増の1万5253人で、1日当たり500人以上となった。米政府はこうした子どもについて、メキシコに送還するのではなく、米国内で再定住させると約束している。
米入国を試みた幼い子どもを含む家族連れは、前月から25%近く増加し、5万5805人となった。こうした家族連れの一部は、米国在留が認められている。
CBPが把握しているのは、国境で拘束された不法移民のみで、発見を免れた移民は含まれていない。しかし、専門家らは、不法入国の試みの増加は、当局の目を免れた移民の増加を示唆していると指摘している。
拘束された不法移民の約3分の1はメキシコ出身で、中米の「北部三角地帯」と呼ばれるホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラの出身者がそれに続いた。南米からの移民のほとんどは、エクアドルとベネズエラの出身だった。
CBPは、6月に拘束された不法移民の数は多いが、約3分の1は昨年に少なくとも1回は拘束されたことがあると強調した。 【7月17日 AFP】
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現在の移民対策の中核にあるのが、幼少時に親に米国に連れて来られた不法移民を保護する制度(DACA)ですが、この「DACA」に関し、テキサス州の連邦地裁は違法との判決を出しています。
****不法移民救済に違法判決=バイデン政権の方針に待った―米連邦地裁****
米南部テキサス州の連邦地裁は16日、幼少時に親に連れられるなどして不法入国した若者を強制退去対象から外す救済措置「DACA」が違法だとする判決を下した。既に同措置を適用されている人に影響はないが、新たな申請は認められないとしている。
オバマ政権時代の2012年に成立したDACAは、これまで約65万人に適用されている。バイデン大統領は、同措置適用対象者の市民権申請に道を開く制度強化の方針を表明していたが、司法に待ったを掛けられた形だ。
米メディアによると、判決はDACA適用対象者が米社会を構成する一部となっていることを認めつつ、「議会は、行政府が法制度の枠外で合法的な存在を認定できる自由を認めていない」と指摘。同措置が連邦行政手続き法に違反していると判断した。【7月17日 時事】
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この判決によって、「DACA」運用がどうなるのか・・・よくわかりません。