(【7月11日 時事】 経歴詐称、盗用などスキャンダルで集中砲火を浴びる「緑の党」ベーアボック共同党首
若い女性でリベラルという立ち位置が、女性を嫌悪する一部保守層の「格好の敵」(シュテルン誌)になっているとの見方も より基本的問題は「緑の党」のエコ重視政策が負担増を超えて受け入れられるかどうか)
【メルケル引退の与党低迷も、6月東部州議選で踏みとどまる】
ドイツは今年9月に連邦議会選挙が予定されています。ドイツの政治を牽引してきたのはメルケル首相であることは言わずもがなで、メルケル首相はドイツだけでなく欧州政治の中心にありました。
ただ、そのメルケル首相も今季限りで引退しますが、さすがにその神通力も失われたようで、後継者選びが迷走するとか、コロナ対策の関係で、状況が良ければ支持も回復するが、状況が悪化すると支持も低下するといった感じも。
そんな状況で、5月頃まではメルケル首相の与党であるキリスト教民主同盟(CDU)の政権維持さえ危ぶむ声をよく耳にしました。
****メルケル引退で勝ち筋の見えないドイツ与党***
ドイツは今年、連邦議会選挙を頂点とする「スーパー選挙年」を迎える。その先陣を切って、3月14日に南西部の2州(ラインラント=プファルツとバーデン=ヴュルテンブルク)で州議会選挙が行われた。結果は概ね、緑の党の台頭、メルケル首相の与党であるキリスト教民主同盟(CDU)の敗北、右翼政党「ドイツの選択肢(AfD)」の大幅な後退となった。大連立政権のパートナーである社会民主党は、全国レベルでは支持率を落としてかなり苦しんでいるが、両州では微減で何とか踏みとどまった。
今回の選挙の直前に、与党CDUではスキャンダルが相次いだ。3名の連邦議会議員が、マスク購入や外国政府との観光業で不当な利益を得ていた疑惑が持ち上がり、辞職が相次いだ。16年という長い政権が続くと、やはり規律が緩んでくるのかもしれない。
もともと新型コロナウイルスによるロックダウンで市民の政府に対する不満が高まっていたところに、汚職疑惑が持ち上がり、メルケル政権はかなりの打撃を受けた。昨年の3月〜4月頃、コロナが始まったばかりの頃は、メルケル人気は絶好調であったが、今回の二つの州議会選挙で負けたことで、CDUの失速は確実になった。
また、メルケルが保守政党のCDUをかなり中道に寄せたことで、社民党や緑の党といった左派政党の支持者層に食い込んだ一方で、この層は、簡単に元の左派政党に戻ることもある。現に今回、CDUから緑の党に流れた有権者がかなりいる。
逆に、右派の支持層をAfDに奪われた。ラシェットでは、この層を取り戻すことができない。そこで浮上しているのが、CDUのバイエルン州における姉妹政党、キリスト教社会同盟(CSU)のゼーダー党首を連邦首相候補として総選挙を戦うという説である。(中略)
そうすると、左を緑の党に奪われ、右をAfDに奪われ、CDUの支持はやせ細る可能性がある。緑の党は、このところ安定的に20%台に支持率を乗せてきているが、9月の選挙後、30%台を取る政党が一つもないという事態もあり得る。CDUにこれ以上スキャンダルが続くとそうなる可能性が大きくなる。
かつて、小党乱立によりワイマール共和国政治は混乱した。戦後、西ドイツ・統一ドイツの安定を築いたのは、二大政党制が揺るがなかったからである。その中心には常にCDUがあった。
SPDが弱まり、CDUも弱まれば、ドイツでもまた、小党乱立、不安定な多党連立政権時代が来るかもしれない。統合のシンボルのメルケルの時代は、皮肉なことにドイツの政党政治の黄金期の幕引きとなってしまうかもしれない。(後略)【3月31日 WEDGE】
**********************
上記記事にもあるCDU・CSUの首相候補は、結局、地域政党CSUのゼーダー党首を退けて、CDUのラシェット党首になんとか収まりましたが、イマイチ感は否めないところも。
そんな状況で注目されていた6月6日に行われた東部ザクセンアンハルト州の州議選。
ドイツ東部では右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持が堅調で、数年前から続いた難民の受け入れ問題は沈静化しましたが、コロナ規制が政権への格好の攻撃材料となっていました。
そのため、この州議選でメルケル与党を抑えて第1党に躍進するのでは・・・との見方もありましたが、結果は、予想外にメルケル与党の中道右派「キリスト教民主同盟(CDU)」が踏みとどまり、第1党を維持しました。
【躍進を続けてきた現実路線の「緑の党」】
今後に向けてCDU・ラシェット党首にとって好材料は、“唯一大勝のシナリオが描けるのは緑の党である”【前出 WEDGE】という緑の党の「躍進」にブレーキがかかってきたこと。
緑の党の躍進ぶりは、今に始まったものではなく、このブログでもここ2~3年、以下のような記事を。
今年に入っても、5月頃は「旋風」状態で、支持率はトップ。
****ドイツで「緑の党」旋風 女性首相候補で支持率トップに 現実路線に転換****
ドイツで9月の総選挙を前に、環境政党「緑の党」が旋風を起こしている。女性首相候補、アンナレーナ・ベーアボック党首(40)が環境や外交で新路線を掲げ、反核・反戦運動をルーツとする同党の脱皮を印象付けたためだ。支持率調査で同党は、メルケル大連立政権の保革中道与党を抑えて首位を走っている。
「強い欧州、強い欧米同盟こそ、未来の基盤です」
ベーアボック氏は先週、米シンクタンクのオンライン会合で、滑らかな英語で訴えた。米識者がドイツ駐留米軍に触れ、「緑の党は米国を批判していたはず」と尋ねると、「もはや冷戦時代ではない。バイデン米政権は中国と環境で対話し、人権に厳しい。われわれと共通点が多いのです」と応じた。緑の党はかつて北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を訴え、米軍基地前で抗議デモを展開したが、現在の党は違うのだとアピールした。
ベーアボック氏は緑の党の共同党首の1人で、4月に首相候補に選ばれた。環境産業への投資によるドイツ経済再生を掲げ、外交でも現実路線にシフトしたことで党の支持率は急上昇した。
6日に公共放送ARDが報じた調査で26%。メルケル首相の中道右派連合「キリスト教民主・社会同盟」(CDU・CSU)は23%で2位に甘んじる。
緑の党の経済モデルには実績がある。南西部バーデン・ビュルテンベルク州で、10年前に就任した同党の州首相が電気自動車(EV)、デジタル産業への投資を進め、国内屈指のハイテク拠点に育てた。フライブルク大のウルリッヒ・エイト教授は「ドイツ経済の課題はいま、与野党を問わず環境重視の産業育成だ。緑の党はいま、CDUの支持者だった中産層やキリスト教保守派を幅広く吸収している」と指摘する。
緑の党は現在、ドイツ連邦16州・特別市のうち、少なくとも10州で政権参加しており、党員は約10万人以上。総選挙で、保革与党に代わる選択肢として注目が集まる。(中略)
(メルケル後継の)首相候補のアルミン・ラシェットCDU党首(60)は目下、「メルケル路線の継承」以外の看板がなく、挽回の契機がつかめない。
ベーアボック氏は2013年に連邦下院議員に初当選。二児の母で、地方紙記者から政界に転身した。閣僚経験は皆無で、現在の人気は期待が先行する。選挙公約で「脱石炭」エネルギー政策の加速、富裕層増税などを掲げており、新型コロナ後のドイツ経済再生の道筋をどこまで示せるかが、勝利に向けたカギとなる。【5月10日 産経】
******************
一般市民だけでなく、「現実」を重視する企業経営者の間でもベーアボック氏は支持率トップに。
“メルケル後継候補、緑の党ベーアボック氏が財界の支持集める=調査”【4月23日 ロイター】
【「緑の党」、エコロジー重視による負担増を「正直」に公表 尻込みし始めた有権者】
しかし、6月以降、ベーアボック共同党首に関するスキャンダルがいろいろでてきたこともあって、その信頼感は急落。
****ドイツ緑の党、党首への信頼感が急落 疑惑などで=世論調査****
次期ドイツ首相候補として9月26日の連邦議会選挙(総選挙)に出馬を表明している環境政党「緑の党」のアンナレーナ・ベーアボック共同党首について、国民の過半数が信頼できないと考えていることが分かった。
次の女性首相を目指すベーアボック党首が4月に選出された際には、緑の党の支持率は一時上昇したが、ここ数週間は地方選惨敗に加え、自身のクリスマス賞与申告漏れや経歴詐称疑惑から急落している。
さらに、盗作に関する調査を行なっているウェブサイトは今週、ベーアボック氏が最近出版した政策案に関する書籍の中で、出典を注記せずに引用を行なったと主張している。(中略)
ビルト紙の委託で世論調査会社Insaが実施した調査では、ベーアボック氏は信頼できるとの回答は全体の23.2%、信頼できないとの回答は58.4%だった。
現在は、大半の世論調査でメルケル首相率いる保守連合の支持率が緑の党を8─10%ポイント上回っている。【7月2日 ロイター】
次の女性首相を目指すベーアボック党首が4月に選出された際には、緑の党の支持率は一時上昇したが、ここ数週間は地方選惨敗に加え、自身のクリスマス賞与申告漏れや経歴詐称疑惑から急落している。
さらに、盗作に関する調査を行なっているウェブサイトは今週、ベーアボック氏が最近出版した政策案に関する書籍の中で、出典を注記せずに引用を行なったと主張している。(中略)
ビルト紙の委託で世論調査会社Insaが実施した調査では、ベーアボック氏は信頼できるとの回答は全体の23.2%、信頼できないとの回答は58.4%だった。
現在は、大半の世論調査でメルケル首相率いる保守連合の支持率が緑の党を8─10%ポイント上回っている。【7月2日 ロイター】
******************
上記スキャンダルは、致命的なものでもなく、ある程度回復は可能にも思われますが、問題は緑の党の核心政策である「炭素税の大幅な引き上げ」などエコロジー重視政策による負担増に有権者が尻込みを始めたこと。
****ドイツ連邦議会選挙の勝敗を決める「気候保護の値札」*****
9月のドイツ連邦議会選挙で主導権を握ると見られていた環境政党・緑の党の勢いにブレーキがかかった。理由は、緑の党のマニフェストに掲げられた「炭素税の大幅な引き上げ」だ。実現すればマイカー通勤者には大きな打撃となる。一方でCDU・CSUは政策から数値目標を省く戦略で緑の党に「増税党」というイメージ付けを狙い、足元では支持率を逆転している。(中略)
引き金はマニフェストに関する報道
緑の党の支持率が急落した最大の理由は、6月に入ってから同党のマニフェストに関するメディアの報道・分析が増えたことだ。この報道により、市民の目に「緑の党が政権入りした場合に、生活がどのように変わり、環境保護のためにどの程度コストが増えるか」について具体的なイメージが浮かび上がってきた(マニフェストの草案は今年4月からネット上で公開され、6月の党大会で採択された)。
端的に言うと、緑の党はドイツを「エコロジー中心の社会」に変えようとしている。同党はマニフェストの中で、ドイツで「エネルギー革命」を起こし、交通、暖房、製造業、農業などあらゆる分野で環境保護を重視することを宣言している。
特に重要な課題は、地球温暖化・気候変動に歯止めをかけることだ。同党は、2015年のパリ協定に基づき、地球の平均気温の上昇幅を、工業化が始まる前に比べて1.5度に抑えることを目指している。そのために現政権の気候保護目標をさらに厳しくする方針だ。
たとえばメルケル政権は、2030年までにGHG(温室効果ガス)排出量を1990年比で65%減らし、2045年までにカーボンニュートラル、つまりGHG排出量が実質ゼロの状態を達成するという目標を持っている。
だが緑の党は、「現在の目標は不十分」として、マニフェストの中で2030年までにGHG排出量を1990年比で70%減らすという目標を掲げた。
またメルケル政権は、全ての褐炭火力・石炭火力発電所を2038年までに全廃することを決めているが、緑の党は「我々が政権入りした暁には、脱石炭を8年早めて2030年までに断行する」と主張している。
緑の党は脱石炭の前倒しを可能にするために、再生可能エネルギーの拡大を加速する。たとえば陸上風力発電の設備容量を毎年7〜8GWずつ増やす他、2035年の洋上風力発電の累積設備容量を35GWに増やす。さらに法律を改正して、新築の建物の屋根に、太陽光発電パネルの設置を義務付ける。緑の党は、「この措置により、2025年までに約150万台の太陽光発電設備を新設する」と公約している。
さらに鉄鋼、化学、アルミニウム業界などが使っている化石燃料を、再生可能エネルギーから作った水素によって代替し、製造業由来のGHGも大幅に減らす方針だ。
国内短距離航空路線の廃止も提言
また緑の党は、交通部門の非炭素化も加速する。同党はマニフェストの中で、2030年以降、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンを搭載した新車の販売を禁止するという公約を打ち出している。つまり緑の党の政策が実行された場合、自動車メーカーは2029年を最後に、純粋な電気自動車(EV)以外の新車を売れなくなる(党員からは禁止時期を2025年に早めるべきだという意見も出たが、党執行部は「過激すぎる」として前倒しを阻止した)。(中略)
さらに緑の党は、鉄道網を整備・拡充して運行する列車の数を増やすことにより、国内の旅客機の短距離便の運航を禁止する方針だ。(中略)つまり同党は、排出されるGHGの量を減らすために、市民に飛行機の短距離便を使わず、列車に乗り換えるように促しているのだ。
最大の焦点は燃料の炭素税引き上げ
緑の党の公約の中で、いま最も大きな論争を引き起こしているのが、炭素税(カーボン・プライシング)引き上げである。(中略)
緑の党は、「炭素価格を180ユーロ(2万3400円)前後に引き上げなくては、CO2を本格的に減らせない」と主張してきた。このため、緑の党はマニフェストの中で「我々が政権に参加した暁には、EUと交渉してEU-ETSを、運輸と暖房部門にも拡大させる。
同時に、市場で流通しているCO2取引権の数量を大幅に減らして、価格を引き上げる」と宣言している。つまり緑の党は、EU-ETSの改革によって、欧州全体で炭素価格を一気に引き上げることを目指している(その具体的な数値は明記されていない)。
さらに緑の党は、国内でのカーボン・プライシングについても野心的な改革を公約した。(中略)現在の法律によると、2023年の炭素税は1トンあたり35ユーロになる予定だが、緑の党はマニフェストに「2023年の炭素税を60ユーロに引き上げる」と明記した。つまり、現行規定に比べて71.4%もの増加だ。
しかもアンナレーナ・ベーアボック首相候補は、「2023年にはガソリンは現在に比べて1リットルあたり16セント、ディーゼル用の軽油は18セント高くなる」と述べ、車の燃料が高騰することを認めた。
つまり緑の党は、車の燃料代をあえて高くすることによって、市民が現在使っている内燃機関の車をEVに買い替えたり、鉄道など公共交通機関の利用を促したりすることを狙っている。化石燃料を使うことのコストの引き上げにより、化石燃料の消費を減らそうという作戦だ。
マイカー通勤者には打撃
だがこの公約は多くのドイツ市民に衝撃を与えた。この国では大都市の家賃が高いので、職場から40〜50キロメートル離れた地域に住んで、毎日車で通勤している人が少なくない。彼らにとっては、車の燃料の大幅な値上げは可処分所得の減少につながる。(中略)
ドイツの論壇では、「マニフェストの細部に関する報道が増え、市民が緑の党の気候保護政策がもたらすコストに気づき始めたことが、同党の支持率低下の最大の原因」という指摘が目立つ。(中略)
もちろん緑の党は、マニフェストの中で燃料価格の引き上げによる市民の経済的負担の増加を相殺するために、「エネルギー手当」を国民全員に供与すると公約している。たとえば同党は現在ドイツの電力料金にかけられている再生可能エネルギー賦課金を削減することなどにより、電力コストを減らすと約束している。
だがマニフェストには、いつどの程度エネルギー手当を供与するのかが明記されていない。「2023年の炭素税を60ユーロに引き上げる」という記述に比べると、負担の相殺のための政策が具体性を欠いている。負担の相殺の時期や金額を明記しなかったことは、緑の党の戦略的ミスだ。
エネルギー業界には、「NIMBY」という言葉がある。英語のNot in my backyard(私の家の裏庭に建てるのはやめてくれ)というフレーズから来ている。
多くのドイツ市民は、原子力発電所や石炭火力発電所を廃止するために、再生可能エネルギーを拡大することに賛成している。だが風力発電プロペラが自宅の裏に建設されるとなると、「地価が下がる」とか「騒音が気になる」などという理由で反対する。つまりNIMBYとは、エネルギー転換という総論には賛成するが、自分の生活に影響が出ると「各論反対」になる態度のことを指す。
多くの有権者は、地球温暖化に歯止めをかけるためにGHGを減らすという緑の党の政策には賛成している。このため同党の支持率は、今年5月にはドイツで最も高かった。だがマニフェストに関する報道が増えるにつれて、緑の党の政策の「値札」が市民の目に見えるようになってきた。いわば「総論賛成・各論反対」の市民が増えてきたのだ。
数値目標をあえて示さないCDU・CSU
保守政党CDU・CSUは、緑の党の弱点を衝く戦略を採っている。同党はマニフェストの中で炭素税の引き上げ、褐炭・石炭火力発電所の廃止時期の前倒し、短距離国内線の禁止、高速道路の全区間での速度制限の導入、内燃機関を使う新車の販売禁止などに一切触れていない。
CDU・CSUのアルミン・ラシェット首相候補は、「緑の党は法律によって多くの禁止措置を導入し、市民や企業の負担を大幅に増やす。まるで社会主義国の計画経済だ。そのような党にドイツの舵取りを任せてはならない」というメッセージを有権者に送っているのだ。
ドイツの政界には、「正直さでは票を増やせない」という警句がある。べーアボック首相候補は具体的な数字や禁止時期をマニフェストに明記して、国民に対して「エコロジー経済を実現するには、費用がかかる。我々は今の生活を変えなくてはならない」と正直に訴えた。だがこの正直さが、彼女にとって「命取り」になるかもしれない。
逆にラシェット首相候補は、具体的な数字を含まない、曖昧模糊としたマニフェストをあえて公表することによって、緑の党との違いを強調している。彼は選挙前に、数字を含んだ政策の細部を有権者の前でさらけ出すことが得策ではないことを知っている。(中略)
倫理か経済か
(べーアボック氏のスキャンダル)より重要なのは、「倫理」と「経済」をめぐる両党の対立だ。ドイツの科学界には「コロナ・パンデミックは気候変動が人類にもたらす非常事態の、リハーサルにすぎない」という見方がある。
気候変動がさらに悪化した場合、世界中の経済・社会に多大な影響が及ぶ。たとえばマダガスカル南部では気候変動のために2年前から雨が降っておらず、114万人以上が食糧不足、1万4000人が壊滅的な状況だという。将来アフリカや中東での飢饉が深刻化した場合、2015年の難民危機を上回る数の難民がヨーロッパに押し寄せるかもしれない。
緑の党は、「ドイツは短期的な懐具合よりも、長期的かつグローバルな公共利益を守るという視点から、政策の舵を切るべきだ」と主張している。気候変動は、欧州の安全保障にも関わる問題なのだ。ここには1980年の結党時からの緑の党の特徴である、公共倫理を重視する姿勢が反映している。
「ドイツが必要としているのは冒険や急激な変化ではなく、安定と継続だ」というラシェット氏。「気候変動を放置すると、将来の世代が苦しむことになる。エコロジーを政治と経済の中心に据える大胆な改革を実行しよう」というべーアボック氏。どちらのメッセージが、有権者の心をつかむだろうか。【7月13日 Foresight】
************************
「倫理か経済か」という選択を迫るのでは政権獲得は難しいでしょう。
倫理を求めながらも、そこで経済も回せることを示す、もしくは、そのように思わせないと