孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国人の日本に対する微妙な感情・・・最近の話題から

2021-07-02 23:21:01 | 中国

(雨の盧溝橋 2008年9月 北京旅行で撮影)

 

【加害者と被害者の違い】

中国人が日本を旅行して、あるいは日本に住んでみて、日本社会の行き届いた細かい配慮、清潔さ、ルールの尊重、時間の正確さ、農村の豊かさ等々に感激した・・・という類の記事は毎日目にします。(読者がそういう記事を喜ぶので、メディアも敢えてその種の記事を多く掲載しているのでは・・・と疑うぐらいに)

 

まあ、実際、日本の実際の姿を知る機会が増えるにつれて、日本社会に対するリスペクトが一定に広がっているのは事実でしょう。

 

ただ、もちろん、中国人がみな親日的になった訳でもなく、侵略の歴史に対する反日感情は(最近ではあまり報道される機会は多くはないものの)中国社会に根深く残っているのも、また事実でしょう。

 

そのあたりを改めて感じたのが下記記事。

 

****ソニーが中国で新製品発売予告も「盧溝橋事件」の日時と重なり批判殺到、撤回して謝罪―独メディア****

2021年7月1日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、ソニーが中国で盧溝橋事件の日に新商品を発表すると予告したことで中国世論の怒りを買ったことを報じた。

記事によると、ソニー中国は6月30日にSNSアカウントを通じて「2021年7月7日午後10時に新製品発表、乞うご期待」と予告を行った。7月7日は1937年に盧溝橋事件が起こった日であり、日中両国が全面戦争に突入することになった事件の記念日に新製品の発表を合わせたとして、たちまち中国のネットユーザーから非難の声が相次いだ。

また、盧溝橋事件の始まりが午後10時だったとされていることから「どうしてソニーはわざわざ日付だけでなく時間まで合わせてきたのだ」との疑問の声も聞かれ、一部のネットユーザーは感情的になり「8月6日や8月9日、8月15日に新製品を発表してみろ」との要求まで見られたという。

ソニー中国は7月1日に「7月7〜10日に中国で開かれる展示会で発表する新製品の紹介動画を、展示会初日に合わせて上映する予定だった。われわれの不行き届きにより、日取りの選択で誤解や混乱を招いたことに対し、深くお詫びする」という謝罪声明を発表するとともに、7日午後10時の新製品発表を中止することを明らかにした。

記事によると、ソニー側の謝罪声明でも中国ネットユーザーの怒りや不満は収まらず、なおも「企業としてあまりに鈍感」などとの批判が寄せられているという。

また、北京で広告業に20年以上携わっているという女性は「ソニーは中国に大きな市場を持っており、自らの損になる行動を意図的にとることは考えにくい。今回の件はソニーのマーケティング責任者の常識不足が原因だろう。マーケティング担当者は自分をプロフェッショナルだと思っているケースが多いが、実際には基本的なセンス、社会に対する理解が足りない」と分析したという。【7月2日 レコードチャイナ】

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常識不足、社会に対する理解が足りない・・・そのあたりは、加害者と被害者の違いでしょう。

 

反日強硬派との評価がある韓国大統領選で革新系与党「共に民主党」の支持率トップ候補、李在明・京畿道知事は、「私を反日だと評価する人もいるが、日本を憎んでいないし、日本国民に反感はない」としつつも、「(日本による植民地支配は)加害者の立場では過ぎたことかもしれないが、被害者の立場では依然として残っている痛みだ」とも。【7月2日 時事より】

 

多くの日本人同様に、韓国の執拗な反日的言動にはいささかうんざりもしていますが、そこには加害者と被害者の違いからくるギャップが存在していることは留意する必要があります。

 

かく言う私も、盧溝橋に自分が行ったことがあるのを全く忘れていました。

このブログを書きながら「そう言えば、盧溝橋って行ったことあるよな・・・」と思い出し、確認すると13年前の北京旅行時に立ち寄っていました。

 

降りしきる雨の中で興味深げに「歴史的場所」の写真を撮る私を、若い中国人ガイドはどういう思いで眺めていたのかはわかりません。

 

下記記事なども、そうした加害者と被害者の違いを反映したものでしょう。

 

****中国人たちが議論「日本は今も中国侵略の野心を持っていると思う?」****
日中戦争という歴史からか、中国では今でも日本について「野心の強い国」と見て警戒している人が少なからず存在する。中国のQ&Aサイト知乎はこのほど、日本は今でも「中国を侵略する野心があるのか」と問いかけるスレッドが立てられ、多くの中国人が議論を交わしている。

「日本の野心」というのは、中国人全般に関心の高い話題らしく、反応が大きかった。現代の日本人に中国を侵略する野心があるかどうかについて、「あるはずだ」と主張する中国人は非常に多く、現代の中国人の多くは「日本がまた攻めてくるかもしれない」と考えているようだ。

たとえば「日本は大昔から、そして永遠に中国を侵略する意思がある」と主張した中国人ユーザーは、「今の日本は力がないので静かにしているが、中国が弱くなればすぐに侵略しようとするに違いない」と主張した。

また、「どこの国にも野心はある」と主張した別のユーザーは、日本にも野心はあるが、今は新型コロナや東京五輪などでそれどころではなく、「米国に中国を倒してほしいと願っているに違いない」とした。そのため、本当に警戒するべきなのは米国だという。

一方、「現代の日本に野心はない」と主張する中国人も少数ながらいて、その根拠として「日本の現代の若者は侵略はおろか、政治にすら関心がなさそうから」と答えていた。「日本の若者は選挙にすら行かない」、「日本の若者は自衛隊に入りたがらない」などを根拠に、「すでに野心を失っている」と主張する声もあった。そのほか「国力が増した中国を侵略する能力は日本にはもうない」とし、それゆえ「日本側に野心があっても無くても関係ない」という声も見られた。

「野心などあり得ない」というのが日本人の感覚だろうが、中国人が「日本は野心を持っている」と疑うのは、中国国内における教育やメディアの報道によるところが大きいと言えそうだ。【7月2日 Searchina】

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もちろん、尖閣諸島をめぐる衝突とか、台湾有事の際の日本の対応といった話はありますが、中国本土を侵略する野心と言われても「何、それ?」って感じが多くの日本人の正直な感覚でしょう。

 

しかしながら、中国人の間では熱い議論にもなる・・・というあたりが、両者の認識の違いです。

 

「日本は今も中国侵略の野心を持っている」といった認識の違いがあるので、靖国神社の扱いにも敏感に反応するのでしょう。

 

****靖国神社を訪れた中国人男性がそこで見たものとは=中国メディア****

中国は近年、愛国的思想を意識的に強めているようだ。テレビや映画では愛国心を高めるような内容を多く放送し、学校で行う軍事訓練にも熱が入っている。中国の動画サイト・西瓜視頻はこのほど、中国人男性が「靖国神社に行ってみた」経験を振り返り、愛国心を高めるべきだと主張する内容の動画を配信した。

動画を配信したのは中国人男性2人で「靖国神社を見に行った」と伝えている。もちろん参拝するためではなく、毎年のように繰り返される靖国神社をめぐる対立について、「日本の政治家が、炎上すると分かっていて参拝を断行する理由」を自分たちの目で確かめるためだったという。

動画のほとんどは、靖国神社そのものではなく、敷地内にある「遊就館(ゆうしゅうかん)」を扱っていた。遊就館は軍事関係の資料を展示している建物だが、「遊就館では太平洋戦争は国を守るためだったと戦争を正当化し、美化すらしていた」と伝え、「謝罪の言葉が一言もなかった」と息巻いている。

そして動画では、日本人の靖国神社参拝を止めることができない以上、「中国を強くする」ことと「歴史を忘れない」ことで、間接的に対抗するしかないと訴えた。動画は全体的に「日本が間違っている」と強く非難しており、中国人の感情に訴える内容となっているが、中国人にとっては理想的な愛国教育だったらしく、コメント欄は称賛の嵐だった。「国営テレビで放送したら良い」、「感動した」、「泣いた」、「今まで見てきたなかで最高の動画」など、最高級の誉め言葉が並んだ。

それほど、中国人にとって愛国は心を打つ話題なのだろう。「日本から受けた屈辱を忘れるのは裏切りだ」といった感情的なコメントも目立ち、学校で行う愛国教育も「小学1年生から軍事訓練を始めている」という人もいた。日本への憎しみが、往々にして愛国心を煽るために利用されているこの現状は、日本にとって非常に残念なことだ。【6月25日 Searchina】

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なお、遊就館の展示については、日本国内でも意見が分かれるところでしょうが、本旨ではないので、ここではその件はスルーします。

 

【福島原発処理水の海洋放出 新たな対立のタネ?】

中国社会に根深く残る反日感情を刺激する可能性のあるものは、尖閣や台湾問題、あるいは人権問題に対する中国批判、アメリカの主導する中国包囲網等々、多々ありますが、新たに追加された今日的事案が東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出問題。

 

****中国外相が処理水放出を牽制 BRICS外相会議で****

中国外務省は2日、王毅(おう・き)国務委員兼外相が1日に新興5カ国(BRICS)外相のオンライン会議に出席したと発表した。王氏は、日本政府が決定した東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について、「利害関係国や国際機関との協議がまとまる前に、核汚染水を勝手に放出してはならない」と牽制した。

 

王氏は処理水の海洋放出を、イスラエルとパレスチナによる衝突や、イラン核合意などの国際問題と同列に論じ、「政治解決」を図るべきだと主張した。日本が米国などとともに対中批判を強める中、海洋放出を国際問題化し対日圧力の材料にする思惑が指摘される。

 

王氏は「全世界の海洋生態環境の安全や、各国人民の命や健康に関わることだ」との考えを示した。

 

一方、バイデン米大統領が米情報機関に新型コロナウイルスの起源に関する調査の徹底を命じたことを念頭に、「西側諸国の一部勢力が政治的な利益のため、再び政治問題化しようとたくらんでいる」と反発。その上で「感染対策の国際協力を破壊する」と強調し、BRICS各国が連携し「共同で阻止」するよう訴えた。【6月2日 産経】

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日本側の主張する「科学的事実」とは別に、批判する側は「環境保護」という錦の御旗を掲げやすい事案なだけに、日本にとっては扱いが厄介です。

 

****中国、IAEAの福島第1原発・海洋放出の作業チームに参加へ**** 

中国外務省の汪文斌副報道局長は2日の定例記者会見で、日本政府が決定している東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について、国際原子力機関(IAEA)が組織する技術作業チームに、中国側の専門家も加わるよう要請を受けたことを明らかにしたうえで「中国側は作業チームの業務を全力で支持する」と述べ、参加する意向を示した。

 

汪氏によると、IAEAのグロッシ事務局長が中国側専門家の参加を要請したという。汪氏はこうしたIAEAの要請が中国などの呼びかけに応えたものだと指摘したうえで、「IAEAが利害関係を有する関係国の意見をよく聞き、(処理水の)処置について、その途中でも、また事前、事後にも技術的な評価、監督を実施することを希望する」と述べた。中国政府は処理水の海洋放出の決定について、繰り返し批判を続けていた。【7月2日 毎日】

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【蘇州「日本街」は今も賑わい】

あと日中に関する社会ネタ的話題を二つ。

 

最初は、ひと頃話題になり、当然の如く中国国内で批判も起きた「日本街」の件。

 

****今も大勢の中国人で賑わう蘇州の「日本街」が論争の対象となった理由=中国****

中国江蘇省蘇州市には「日本街」と呼ばれる通りがある。全長約550メートルと、さほど大きくはない商店街のような通りだが、この「日本街」は中国でしばしば「論争の対象」となってきた。中国の動画サイト・西瓜視頻はこのほど、中国で日本街に対する論争が絶えない理由を紹介した。

蘇州市の「日本街」はその名のとおり、日本料理店や日本人向けの小売店などが集中する場所だ。チャイナタウンは世界中に存在し、日本にも複数存在するという意味では、中国に「日本街」があっても問題はなさそうだが、なぜ中国で蘇州市の「日本街」が論争の対象となるのだろうか。

動画の中国人配信者は多くの人で賑わう夜の「日本街」を歩きながら、「ここはどこもかしこも日本料理の店ばかりだが、これは蘇州近隣に数多くの日本企業が存在するため」だとし、その企業に勤める日本人向けの店が集まって形成された通りなのだと説明した。

そして、論争の対象となってきたのは「日本料理店が集まっていること」ではなく、「この街で和服姿で写真を撮ろうとする中国人女性たちの存在」であると強調。日本街が通りのリニューアルをすると、「まるで日本にいるかのような感覚」になる街並みが話題になり、網紅(ワンホン)と呼ばれるインフルエンサーたちを含む多くの中国人女性が日本街に来て和服姿で記念撮影をするという現象が生じたという。

そして、中国人女性が和服姿で写真を撮るという現象に対して、「蘇州市は戦時中に日本から攻撃された地の1つであり、その蘇州で和服姿で写真を撮るなど言語道断」というのが批判の内容だったと紹介。こうした激しい批判と論争が続いた結果、この街で和服を着て写真を撮る中国人女性はずいぶん減ったと紹介している。

動画では現在の「日本街」の様子を紹介しており、確かに和服の人は見られないが、それでも日本街そのものは非常に大勢の中国人で賑わっているのが見て取れる。和服を着ていないものの、写真撮影を楽しむ中国人女性たちの姿も多く映っていた。【6月25日 Searchina】

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今度中国に行ったら、「日本街」に寄ってみましょう。

 

【急増する日本語教師需要】

日本に対する感情は、上述のように微妙なもの、複雑なもの、屈折したもの、敵意をむき出しにしたもの・・・いろいろありますが、それはともかく、日本語教師需要は急増しているとか。

 

****中国で日本語教師の需要が急増中! 日本人教師は取り合い状態=中国メディア****

中国で日本語教師の需要が急増している。背景には、日本への留学や、大学で日本語を学ぶ学生が増えていることがある。

 

さらに、日本人教師の多くが日本への帰国を余儀なくされており、中国国内にとどまる日本人教師の数が減少している。中国ポータルサイト百度がこの話題を取り上げ、現地の状況を伝えている。

現在、日本人教師の争奪戦が始まっており、日本語学校の多くが採用時に給与を上げるなどして対抗しているという。実際に、給与が通常より20%アップしたなどという話も聞く。日本から渡航してくる日本語教師がほとんどいないこともあり、中国国内の日本語教師の価値が爆上がりしているのだ。

こうした状況に、別の要素もさらに拍車をかけている。現在、中国の大学入試センター試験(高考)で外国語科目で日本語を選択できるようになっている。こうした状況のために、ある市では日本語を学習する高校生が、年間ペースで1.4〜2.7倍ペースで増加しているという。

 

さらに、日本への中国人留学生も、このコロナ禍で、他国に比べても減少せず、引き続き日本に渡航できているという状況もあり、留学希望者が日本語を選択しやすい状況が起こっているという。

記事はまとめとして、「早ければ、2022年度には大学入試で日本語の口頭試験も始まる見込みと言われており、日本人教師の人材確保はますます待ったなしの様相。

 

中国国内では、将来の日本語人材の育成だけでなく、日本語教育人材の育成を真剣に検討する時期に来ているのではないか」と述べている。【6月18日 Searchina】

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