孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国でも、ドイツでも記録的な豪雨災害 気候変動の影響は?

2021-07-21 21:04:54 | 災害
(中国河南省鄭州市で20日、大雨の影響で浸水した地下鉄の車内を撮影したとされる動画の一場面。中国のSNSで拡散している【7月21日 朝日】
地下鉄車内で肩まで水位が上がってくる・・・まるでパニック映画のシーンみたいに怖いです。乗客が冷静に見えるのが不思議なぐらい)

【限定的な気象改変技術の効果】
式典などが行われる特定の日時を晴天にする・・・といった技術はときおり耳にしますが、中国ではその種の天候コントロール技術が進んでおり、実用に供されているようです。

*****共産党結党100年式典は人工晴天、翌日から関東・東海では豪雨*****
雨や雪を意のままに降らせ、特定の地域・日時を晴天にする――。近年の中国の気象改変技術の躍進は目覚ましいが、同時に近隣国・地域への気象や環境への影響の有無も懸念されている。

中国国務院は2020年12月、各省庁と地方政府に対し、人工降雨などの気象改変プログラムの実施対象地域を2025年までに550万平方キロメートルに拡大するという政策方針を示した。これは中国全土の57%に相当し、インドの総面積の1.5倍以上に相当する広大さで世界最大規模だ。

だが、これによる地球規模の気象、環境に対する影響について日本社会の関心は低く、関係省庁での研究も進んでいない。2008年の北京五輪開会式当日を、事前の人工降雨で晴天にしたことで知られる中国に対し、東京五輪開会式や開会期間中の荒天に対する日本の備えは果たして万全だろうか。

7月1日式典は「人工晴天」
中国共産党100周年記念式典が開かれた今年7月1日の北京・天安門広場。この日は降雨が予想されていたことから、中国当局は式前夜と、当日早朝、上空の積乱雲に向けて数百発の降雨ロケットを打ち上げたという。降雨を早めることによって、式典開会中の降雨を避けるのが狙いで、実際に式典の最後のころには晴れ間も広がっていった。

13年前の北京五輪開会式の際と同様、国家の威信をかけた重要行事で、自国の気象改変技術の高さを内外に誇ったことになる。弱い毒性を持ヨウ化銀だが、中国当局は「使用量はわずか」だとして人体への害も否定しているという。

一方、日本の東海から関東の太平洋側では、翌7月2日夜から発生した記録的な豪雨により、3日午前には静岡県熱海市で大規模な土石流が発生。多くの人命が失われた。

ただし、この2つの出来事の関連の有無は不明だ。(後略)【7月21日 吉村 剛史氏 JBpress】
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数百発の降雨ロケット・・・・中国はやることの桁が違います。
そうした行為が自然をかく乱し、別の災害発生などに影響する可能性は・・・そのあたりは全くわかりませんし、上記記事も、そこまで関連付けている訳でもありません。疑問は投げかけていますが。

【全体的には、自然に人間が翻弄される自然災害が多発】
ただ、言えることは、干ばつや洪水などに対処するためとして、中国は巨額の資金を投じ、気象改変研究を継続しているようですが、実際に天候をコントロールできるのは極めて限定的な地域・時間での話であり、全体的には、逆に自然に人間が翻弄される災害が多発しているということです。

今月はじめには四川省での大規模な豪雨被害が報じられています。

****四川省で豪雨被害、経済損失360億円か****
中国南西部の四川省で、豪雨による大規模な浸水被害が発生し、72万人あまりが被害を受けています。 増水した河川に押し流される白いボートや大量のガレキが、そのまま濁流にのみ込まれていく様子が確認できます。 

中国・四川省では9日から激しい雨が降り続け、広い範囲で大規模な浸水被害が発生しました。地元メディアによりますと、これまでに31の地区で72万人あまりが被災し、およそ11万人が避難したということです。

 死者や行方不明者の情報は入っていませんが、1300軒あまりの家屋が倒壊または浸水し、経済損失は360億円にのぼるとみられています。 

中国では11日夜から北京市や天津市などでも激しい雨が降り続いていて、気象当局は13日朝まで雷や強風を伴う強い雨のおそれがあるとして警報を出しています。【日テレNEWS24】
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そして今度は中国中部の河南省で17日から大雨が続き、省都・鄭州市の気象局は20日夜(日本時間同)、「千年に一度」の大雨との見解を示し、警戒を呼び掛けました。

****中国・河南省で記録的豪雨 12人死亡、1万人以上が避難*****
中国中部・河南省は、今月16日から続く記録的豪雨で、深刻な洪水被害に見舞われている。駅や道路が冠水し、住民1万人以上が避難を余儀なくされている。

当局によると、鄭州市でこれまでに少なくとも12人が死亡した。
また、主要道路が閉鎖され、空の便が欠航するなど、10都市以上に被害の影響が出ている。

人口約9400万人の河南省には最高レベルの気象警報が発令されている。
洪水発生の原因は複合的だが、気候変動による気温上昇は激しい降雨のきっかけになる。

ダム決壊の恐れも
ソーシャルメディアでは、道路全体が水没している様子が画像から確認できる。水の流れは速く、車やがれきが漂流しているのがわかる。

こうした中、河南省のダムが決壊する恐れが出ている。
当局によると、洛陽市のダムに20メートルほどの亀裂が生じている。同地域には兵士が配備され、軍は声明で「いつ決壊してもおかしくない」と警告した。

ツイッターには、鄭州市で浸水した地下鉄の車両に乗っていた乗客が、肩のあたりまで水に浸かっている映像が投稿されている。現実の状況を撮影したものなのかは不明。

救助隊がロープを使って人々を安全な場所に引き上げる様子や、列車の座席に立って水に浸からないようにする人の姿などが確認できる。

車両内に何人が閉じ込められているのかは不明だが、これまでに数百人が救助されたとの報告がある。

シャオペイと名乗る人物は、中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」に助けを求めるメッセージを投稿した。「車両内の水が自分の胸にまで達している。もう声も出ません」。
消防局はその後、この人物が救助されたと明らかにした。(後略)【7月21日BBC】
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“鄭州では20日午後4時から同5時までの1時間雨量が200ミリを超え、観測史上最大を記録。17日からの3日間でほぼ1年分の雨が降った計算になるという。”【7月21日 時事】 
1時間に200ミリというのは、想像を絶する降雨です。

衝撃的だったのは、浸水する地下鉄の様子

****地下鉄に閉じ込められた客「水位が徐々に」 河南省洪水****
中国河南省鄭州市の豪雨による洪水で20日、地下鉄が浸水し車両内に閉じ込められた乗客ら12人が死亡した。当時の車内の状況を、救出された乗客らが中国メディアに語った。

地下鉄浸水12人死亡 中国・河南「千年に1度の暴雨」
「今でも思い出すと胸がどきどきする」。浸水した車両に約2時間にわたって閉じ込められた女性は、当時の恐怖を振り返った。
 
女性は20日午後6時半ごろ、帰宅するために地下鉄に乗車した。走り始めて20分ほど後、地下鉄は急に運行を停止した。すると車内に水が入って、水位が徐々に上がっていった。乗客は全員、座席の上に避難。車内の乗客たちに緊張が走った。
 
午後7時20分ごろには、身長が低い乗客は首まで水につかるようになっていた。別の車両から移動してきた乗客もおり、車内の空気が薄くなっているように感じた。携帯電話で車内の動画を撮影して救助を求める乗客もいた。

午後8時10分ごろ、到着した救急隊員が車両の上部に穴を開けて乗客の救助を始めた。女性も午後8時50分ごろに救助されたという。
 
一方、救出された男性乗客は上半身裸の姿で中国中央テレビの取材に応じ、「水の流れがあまりに強かったので、(耐えるために)上着やカバンなど捨てられるものは全部捨てた」と話した。

肩まで達した水が勢いよく流れたが、近くのパイプにしがみついて耐えた。「何かをつかまなければ流されるほどの水流だった。もう少しで諦めそうになった」と振り返った。【7月21日 朝日】
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豪雨災害は中国だけでなくドイツ・ベルギーでも。

****洪水の死者200人超に=依然不明者も多数―独・ベルギー****
欧州西部を先週襲った豪雨による洪水の死者が20日、200人を超えた。これまでにドイツで170人、ベルギーで31人の犠牲が確認された。電話など通信手段の途絶も重なってまだ多くの安否不明者が残っており、「100年に1度」とも言われる災害の全容は把握しきれない状況だ。

ドイツでは特に被害の大きかった西部アールワイラー郡で155人の行方が分からないまま。ベルギーにもいまだ53人の安否不明者がおり、捜索が続いている。【7月21日 時事】
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【否定もできない気候変動との関連】
こうした災害は、普段に世界各地で起きている・・・と言えばそうなんでしょうが、災害報道が重なると、「やっぱり気候変動の関係だろうか・・・・」という印象も。

****ドイツの壊滅的な洪水、忍び寄る気候変動の影響****
ドイツをはじめ、ベルギーやオランダ、ルクセンブルクの一部で、数日にわたる豪雨が発生し、壊滅的な洪水をもたらした。死者は180人に上っている。

今回の豪雨と気候変動との関係について、科学者らはまだ明らかでないとしているが、気候変動がどんな暴風雨をもたらすかはわかったと言う。すなわち、より多くの雨が、より長く降り続くということだ。

洪水の大半が発生したドイツのライン川流域では、降雨量が記録を更新した。家屋は浸水し、ボートで道を渡らなければならなくなったほか、流域に建つ城の一部が流された。

「異常気象が増えることは気候モデルから予測されており、さほど驚くことではありません」と、ドイツのポツダム気候影響研究所の気候学者、ディーター・ゲルテン氏は述べている。それでも、今回の洪水の規模と激しさにはショックを受けたと言う。ゲルテン氏の生まれ故郷であるドイツ、オーバーカイルでも洪水があった。

「今回の出来事は、ドイツのような裕福な国であっても、厳しい気候の影響からは逃れられないことを示しています」と、米コロンビア大学の気候物理学者、カイ・コーンフーバー氏も言う。

気候変動で雨はどう変化するか
世界中の天気予報を提供するAccuWeatherによると、西ヨーロッパでは7月中旬から、動きの遅い低気圧のために激しい雨が降り続いていた。ドイツの一部では、1日の降水量が例年の1カ月分を超えた。この低気圧は、7月12日にロンドン各地で洪水を引き起こした後、南ヨーロッパに向かって移動していた。

気候変動は、今回の洪水に二つの点で影響を与えたと、科学者らは考えている。降雨量の増加と、暴風雨の動きの遅さだ。

「21世紀の気候のせいで、今回のような強い雨が起きる可能性が高まっているのか」との問いに、ゲルテン氏はそれはあり得ると答えている。

気温が上昇すると、空気中に蓄えられる水蒸気の量が増える。科学者らの見積もりによると、気温が1℃上昇するごとに、大気中に蓄えられる水分量は約7%増加する。大気中の水分量が増えれば、ヨーロッパを覆う低気圧や大西洋のハリケーンなどによる降雨量も増える。

洪水が発生するかどうかは、降雨量や都市開発の状況、地形(盆地か否か)などさまざまな要因に左右される。だが、今回の洪水がこれほど大規模になったのは、降雨量の多さが原因ではないかとゲルテン氏は言う。

6月30日付けで学術誌「Geophysical Research Letters」に発表された論文によると、大量の雨を降らせる雨雲がよりゆっくり動くことで、ヨーロッパでは今後、今回のような豪雨の頻度が高まるという。

「北極での温暖化増幅により、一般にこのような嵐の移動は、夏や秋にはさらに遅くなっていくと思われます」と、論文の著者の一人である英ニューカッスル大学の水文気候学者、ヘイラー・ファウラー氏は述べている。

北極や南極では、世界の他の地域に比べて2〜3倍のスピードで温暖化が進んでいる。その結果、北半球ではジェット気流が不安定になっていると、科学者らは考える。

両極地方と赤道地方の温度差が大きいときには、強く一定のジェット気流が吹くが、両極地方の温暖化が進むと温度差が縮まり、ジェット気流の速度が低下する。結果、低気圧や高気圧が停滞する期間が長くなるのだとゲルテン氏は説明する。

「気象は3日から7日ごとに変化するものですが、現在では数週間も同じ気象パターンが続くようになっています」(後略)【7月21日 ナショナル ジオグラフィック日本版】
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何か自然災害がおきると短絡的にすぐに気候変動に結びつけるのは非科学的ではありますが、気候変動の影響を無視するのもまた同様でしょう。慎重に検討すべき問題です。

私が住んでいる地域もつい先日線状降水帯の発生で川が溢れて浸水する家屋も出る被害がありました。
そういうこともあって、中国・ドイツの豪雨被害が気になった次第です。

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