孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

北朝鮮  金正恩党委員長の“過剰激怒” 「コロナフォビア(恐怖症)」に歯止めがかからない

2020-12-05 23:10:02 | 東アジア

(北朝鮮中部、平安南道・肅川郡の農場。「忠誠の80日戦闘」の文字がみえる=労働新聞のホームページの記事(11月10日付)から【12月1日 朝日】)

 

【新型コロナへの厳戒態勢】

北朝鮮が狂気というか、不思議というか、外部からすると常軌を逸した政治体制の国であることは今更の話です。

その類の記事は、毎日目にします。

 

もっとも、極度に情報流出が制約されている国なので、本当のところはよくわからないことも。

また、常軌を逸したように見える政策も、それなりの合理性に基づくもので、決して狂ってる訳ではない・・・と指摘されることも。

 

最近の笑える記事。

北朝鮮の人々、特に男性は所構わずタバコを吸うという世界一の喫煙国家でしたが・・・

 

****金正恩氏「禁煙法」制定でも自分だけ例外…映像で確認****

北朝鮮の金正恩党委員長が、11月29日に自身が主宰した朝鮮労働党政治局拡大会議で、たばこを指に挟んでいる姿が映像で確認された。北朝鮮では同月4日の最高人民会議(国会に相当)常任委員会で、公共の場所での喫煙を禁じる禁煙法が制定されたばかりだが、最高指導者は例外と見える。(後略)【12月1日 デイリーNKジャパン

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このあたりの感覚が理解できないところです。

 

なお、“グルパ(取り締まり班)は、職盟(朝鮮職業総同盟)、青年同盟(金日成金正日主義青年同盟)のメンバーからなる糾察隊を立ち上げ、羅先市内の30ヶ所で、喫煙の取り締まりを行い、違反者は労働鍛錬刑(短期間の懲役刑)を含めた法的措置も辞さないと警告している。”【11月17日 YAHOO!ニュース】ということで、北朝鮮における刑務所事情など考えると、一般人の違反者は命にかかわるような事態にもなりかねません。

 

奇妙な話は毎日のように報じられていますので、あげているときりがありませんが、その北朝鮮は、新型コロナに極めて神経質になっています。

 

****北朝鮮のコロナ防疫 最高レベル「超特級」に引き上げ****

北朝鮮の朝鮮中央放送は2日、新型コロナウイルスの防疫段階が再び最高レベルの「超特級」に引き上げられたと報じた。

 

これにより、一部の商店や飲食店、銭湯などが休業となり、人の移動も制限される。業務ではテレビ会議など非対面の方法を活用する。

 

地上、空中、海上を問わず国境を封鎖し、物資が入ってくる橋や港湾には消毒施設が設置された。

 

北朝鮮は新型コロナの感染拡大を受けて「非常防疫法」を制定し、感染症が広がる速度と危険性によって防疫レベルを1級、特級、超特級の3段階に分類した。超特級では地上、海上、空中の全ての国境を封鎖し、集会や登校を中止するほか、国内の地域を完全に封鎖する。(中略)

 

北朝鮮が再び「超特級」防疫措置を施行したのは、冬に入って世界的に新型コロナの再流行に対する懸念が高まっているためだと分析される。

 

北朝鮮内部での新型コロナウイルス検査件数も増えている。

世界保健機関(WHO)の報告書によると、北朝鮮では先月25日までに計1万6914人が検査を受けた。このうち約5000人はここ1カ月以内に検査を受けたが、感染者は1人も確認されていないと報告された。【12月2日 聯合ニュース】 

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”北朝鮮は、国内でまだ新型コロナの感染者が確認されていないとしている。ただ、韓国の国家情報院(NIS)は、1月下旬に国境を閉鎖する前に中国と貿易や人の往来があったことを踏まえると、国内のコロナ感染拡大の可能性は否定できないとしている。”【12月1日 ロイター】

医療体制が未整備なだけに感染拡大を極度に恐れているようにも見えます。

 

****北朝鮮国境都市、コロナ封鎖中に100人死亡…餓死者も発生****

中国との国境に接した北朝鮮の慈江道(チャガンド)満浦(マンポ)市に先月(10月)26日、封鎖令が下された。

中国との密輸に関わっていた人を中心に12人が呼吸困難の症状を見せ、市内の病院で死亡したことを受け、金正恩党委員長が下した命令によるものだ。

 

同市は8月末から9月中旬に続き2度目の封鎖だった。当局は「予防のため」と繰り返しているが、市民の間では、密輸品との接触で新型コロナウイルスに感染したとの噂が広まった。

 

封鎖は、今月14日になってようやく解除されたが、その後も混乱が続いているようだ。その状況を現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

 

封鎖中には一切の外出が禁止され、出勤もできない状況だったが、14日の封鎖解除後は外出が認められるようになった。また、問題となった密輸品は焼却処分されたが、一部の重要なものについては満浦税関に留め置かれ、消毒作業が行われている。

 

また、密輸に関わった税関職員、商人10人が逮捕され、安全部(警察署)で取り調べを受けている。彼らに着せられた容疑は国家転覆罪と殺人罪。多くが無期懲役となり、密輸の首謀者は公開処刑されるだろうとのいうのがもっぱらの噂だという。

 

情報筋が明らかにした、慈江道の非常防疫委員会に報告された集計によると、封鎖期間中にコロナの疑いで隔離施設に収容された人が320人、症状が表れその後に死亡した人は107人に達する。

 

それに以外にも医学的な調査が必要な対象者は別途隔離措置を受け、家の玄関には安全員(警察官)が「隔離」と書かれた紙を貼り付け、他の住民の接近を防いでいる。

 

このような「コロナ騒ぎ」は依然として続いているが、市当局はこれ以上封鎖を続けると市民生活が破綻すると判断し、解除した模様だ。

 

「満浦市内では、薪の切り出しや石炭の掘り出しなど越冬用品を調達する期間に封鎖され、市民は何もできず、キムジャン(キムチの大量漬け込み)ができていない世帯が半分を超えた」(情報筋)

 

当局は、満浦市民1人あたり1日300グラム、10日分の食糧を配給したが、外出が一切できない封鎖期間は3週間で、全く量が足りていない。また、孤児を収容する育児院、初等学院では、封鎖による食糧不足で10人が餓死するという痛ましい事件も起きている。

 

すでに餓死者が発生し、長く厳しい冬を乗り越えるために欠かせない薪と石炭、保存食であるキムチの調達ができなかったとあって、死者がさらに増える可能性がある。

 

すでに市民の間では「餓死した人はもっといるはず」との噂が広まり、感染症の拡大を未然に防ぐための封鎖が、人を餓死に追い込んでいる状況に、もはや国も防疫機関も幹部も信じられないと不信感が広がっている。

 

中には、「山中に疎開してテントで寝泊まりし、草の根や木の実を食べて暮らしたほうがまだマシだ」という人もいるという。

 

市内での移動は可能となったが、市外と結ぶ道路は依然として遮断され、軍需工場で必要な部品を除き、一切の物品が入荷しなくなり、市場には売るものがない有様だという。朝鮮労働党の慈江道委員会と満浦市委員会は、20日までの状況を見て、道路の封鎖解除を判断するとの方針だ。

 

現在、隣の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市でも、今月2日から封鎖令が下され、3週間の間一切の外出が禁止されているが、耐えしのぐための食糧を確保する時間が充分に与えられず、市内は大混乱に陥った。【11月19日 デイリーNKジャパン

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他地域への感染拡大を防ぐために、特定地域を完全封鎖する、たとえ餓死者がでようが・・・これを合理的とみるか、非人道的とみるかは見解が分かれるところでしょう。

 

欧米などで実施されるロックダウンにも似たような要素はあります。

アフリカでエボラ出血熱が広がった際には、餓死者をいとわない、ほとんど同様の措置もとられました。

 

【「制裁の長期化にコロナが加わり、想像以上のストレスで暴走に走る金正恩」との指摘も】

こうした緊張状態にあって、金正恩委員長の精神状態も不安定になっており、“過剰激怒”による処刑乱発がっみられるとの報道も。

 

****「常識を失っている」金正恩“過剰激怒”で処刑を乱発…韓国情報機関****

韓国の情報機関・国家情報院(国情院)は27日の国会情報委員会で、北朝鮮で最近、大物両替商や新型コロナウイルス対策の防疫規定を守らなかった有力幹部が相次いで処刑されたと報告した。

 

同委員会幹事を務める野党・国民の力の河泰慶(ハ・テギョン)議員が明らかにしたところによれば、金正恩党委員長は10月末、為替レートの急落を理由に平壌の大物両替業者を処刑し、8月には新型コロナウイルスの防疫対策として行っている外国からの物資搬入禁止令に違反し、新義州(シニジュ)に物資を持ち込ませた有力幹部を処刑した。

 

同議員はこれについて、「経済制裁と新型コロナ、水害の三重苦の中にある金正恩委員長が”過剰激怒”を表しながら、常識から外れた措置に出ているようだ」と語った。

 

たしかに、韓国デイリーNKや米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)などが北朝鮮国内の協力者から得ている情報を見ても、処刑に関する内容が増えている。

 

1990年代の大飢饉「苦難の行軍」においても、北朝鮮当局は社会を恐怖で統制すべく、公開処刑を乱発した。(中略)

 

国情院はまた、北朝鮮が米大統領選後、在外公館に米国を刺激しないよう言動を慎むように指示し、問題が生じれば大使に責任を問う方針を伝えたと報告した。さらに、北朝鮮は金正恩党委員長とトランプ大統領との個人的な関係が無に帰することで、米朝関係などを一からやり直すことへの不安感を見せているとも指摘した。(後略)【11月28日 デイリーNKジャパン

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“過剰激怒”・・・実際のところはわかりません。

今の微妙な時期、アメリカを刺激しないという対応などは、きわめて冷静な対応にも見えますので。

 

コロナに対する極度の警戒や“過剰激怒”を指摘する記事としては、以下のようなものも。

海水が汚染されているので漁業や塩の生産を停止とか、中国からの支援のコメも受け取らいないとか・・・

 

****隔離期間中に外に出たら“銃殺&火炎放射” あまりに過激すぎる「北朝鮮式コロナ対策」最前線****

「海水が新型コロナウイルスで汚染された恐れがある。漁業や塩の生産を全面禁止せよ」

 

韓国の情報機関である国家情報院(国情院)が11月27日に国会に報告した内容によれば、北朝鮮ではいま、金正恩委員長のこうした奇想天外ともいえるような指示が飛び交っているという。

 

都市のロックダウンも連発され、11月1日には恵山(ヘサン)市、5日には羅先(ラソン)市、6日には南浦(ナムポ)、20日には平壌までが封鎖される事態になっている。

 

「最悪の逆境」→「過酷な激難」→「前代未聞の苦難」…日に日に強まる北朝鮮のトーン

封鎖されているのは「都市」だけではない。中国との国境についても、今年の1月から人の往来や物資の移動が厳しく制限される封鎖状態が続いている。

 

中国当局の発表では、10月の貿易総額は前年同月より99%減少したという。韓国国情院も、北朝鮮の極端な封鎖政策で対中貿易規模は今年1月〜10月で5億3000万ドルと前年同期比4分の1に急減したとしている。

 

2020年、北朝鮮市民は制裁の長期化と水害、新型コロナウイルスによる国境封鎖という「3重苦」に悩まされた。とりわけ国境が封鎖されたことで物資が滞り、北朝鮮市民は物価高騰で加速度的に厳しい状況に置かれている。

 

中国への経済的依存度の高い北朝鮮国内では、物資が入ってこないことで食料品など生活必需品の価格は4倍に跳ね上がった。砂糖も年初の6000ウォンから2万7800ウォンに急騰し、ロックダウンされた国境周辺都市に至っては物価が10倍になったと報じられている。

 

さらに、原材料設備の導入も止まった影響で、産業稼働率は金正恩政権での最低水準になっている。コメの生産量も今年は20万トン減少する見通しになっており、食糧不足に拍車がかかっている。

 

北朝鮮ももはやこうした困難を隠そうとしない。経済的苦境を伝える北朝鮮国営メディアの表現も、「最悪の逆境」→「過酷な激難」→「前代未聞の苦難」と、日に日に強くなっている。

 

自宅隔離期間中に外に出たら“銃殺&火炎放射”…衝撃の「コロナ怠慢罪」

しかし、金正恩は締め付けを弱めるどころかますます強化し続けている。8月には中国との国境から内陸1〜2キロの区域を「コロナ封鎖ライン」、いわば緩衝地域に定め、「無断でこの封鎖ラインを越えたものは、人でも動物でも銃殺せよ」という指示も下した。非正規ルートでの入国を避けるため、中朝国境の一部に地雷を埋めているともいわれている。

 

さらに、北朝鮮の朝鮮中央通信が11月29日に明らかにしたところでは、「国境と境界沿線(軍事境界線)地域で縦深深く封鎖障壁を構築して、警備体制を強化している」という。本当に北朝鮮が「壁」を築いているかは確認されていないが、警戒の程度は並大抵ではないことはたしかだろう。

 

さらに、11月3日には韓国国情院が「北朝鮮がコロナウイルス感染防疫のため、非常防疫法に“コロナ怠慢罪”を新設し、コロナを管理できなかった罪を犯した幹部に死刑宣告まで可能にするよう規定した」と明らかにした。新型コロナウイルスへの防疫対策に失敗したり参加しなかった場合、最高で死刑とするというあまりに過激すぎる防疫政策がとられているのである。

 

実際、10月にこの国境の緩衝地域を訪問した朝鮮労働党経済部長は「緩衝地帯を訪問した者は平壌に入る前に(指定した場所で)30日間自ら隔離生活せよ」という金正恩の「コロナ隔離指針」をやぶってすぐに平壌に戻った結果、責任を問われて幹部たちの立ち会いのもと銃殺され火炎放射器で焼却されたという。

 

「コロナ隔離指針」に違反して処刑されたのはこの部長だけではない。羅津で中国と貿易業を営む人物も、隔離期間中に銭湯に行ったという理由で2月16日に処刑されている。

 

「国内にコロナ感染者は一人もいない」と語る北朝鮮だが…

元首相である朴鳳柱(パク・ボンジュ)をトップにした「国家超特急非常防疫委員会」を設置して極端な防疫措置を次々に導入し、「国内にコロナ感染者は一人もいない」と主張する北朝鮮だが、「防疫」の実態はかなり悲惨な状態であることが明らかになっている。

 

エイブラムス在韓米軍司令官は4月、新型コロナウイルス感染患者はいないという北朝鮮の主張に対し、「得られているすべての情報から考えて不可能な主張だ」と発言。筆者自身、7月中旬、北朝鮮の国境と平壌、元山(ウォンサン)、清津(チョンジン)などに取材した結果、平壌だけで300人が感染し5人が死亡(保健省集計とされる)、国境では地域によって「あそこは10人、こっちは15人」と次々と新型コロナウイルスによる死亡者が出ていることを確認した。

 

「韓国の感染による死者数」を大きく超える「北朝鮮の処刑人数」

深刻なのは感染による死者数だけではない。

 

北朝鮮防疫対策本部の資料によると、外国から帰国するにあたっては、平壌の東北部の衛星都市である平城の旅館や、平安南道の感染病予防院に隔離されることになっている。

 

問題は、この指示に違反するとどうなるのかである。

 

金委員長は4月3日に「防疫措置が長引いてだらける状況を防がなくてはいけない。誕生日パーティーや結婚式などの集会を開くことは、『敵と内通した』と考え、容赦なく処罰せよ」と述べ、防疫を損なった人を軍法で処理するよう指示。結果、処刑された人数が4月中旬の時点ですでに700人を超えた。韓国での新型コロナウイルス感染による死亡者数は526人(12月2日時点)。「防疫違反」によって北朝鮮で処刑された人数の方が多い計算になる。

 

北朝鮮「コロナパニック」に歯止めがかからないワケ

北朝鮮のこうした極端な措置は、もはや「パニック」といっていいだろう。「ヒト・モノ」とともにウイルスが流入してこないかと相当神経質になっており、特に外部物資搬入に対する警戒心は尋常ではない。

 

感染を恐れて、中国が提供したコメ11万トンも受け取っていないという。また、韓国からの支援物資も受け取らずにいる。8月中旬に韓国支援物資であることを隠して北朝鮮に搬入した(新義州の)税関員たちが処罰を受けた。「コロナフォビア(恐怖症)」に歯止めがかからない状態だ。

 

「海水に触れると感染する」「輸入品で感染する」「隔離生活中に外に出たら銃殺」……。どうして北朝鮮ではこのような「荒唐無稽」な考え方や指示がまかり通るのか。それは金一族の皇帝のような統治体制に起因している。

 

「コロナも怖いが…」

北朝鮮では、「元帥様は即ち、神である」ため、「神様」である金一族に誰もアドバイスや忠告はできない。金委員長の言うことは、たとえ非現実的で間違っていたとしても、助言や異議を申し立てれば、その幹部はほぼ処刑を免れることができない。

 

そのため、常識外の指示でもそのまま従うしかない状況になっている。「『死ぬかもしれない』コロナも怖いが『ほぼ間違いなく殺される』金正恩はそれ以上に怖い」というわけだ。

 

姿を消した金正恩

加えて、その肝心な金正恩の精神状態にも不安がささやかれている。

 

今年4月、金正恩は約20日間姿を消した。理由は様々に語られているが、大きな要因の1つは神経衰弱と不安症状によって、急に怒鳴りつけたかと思えば何も手につかないほど落ち込んだりと、感情の浮き沈みがコントロールできない症状が続いたからともいわれている。

 

当時は幹部たちからの報告も受けられず、妹の金与正・党第1副部長が相当部分代わって決裁していたようだ。8月に韓国国情院が、「金委員長が金与正第1副部長などと一部の権限を共有し、委任統治をしている」と明らかにした背景には、このした金委員長の状態があったのである。

 

制裁の長期化にコロナが加わり、想像以上のストレスで暴走に走る金正恩。権力を集中させた北朝鮮体制の副作用が、「パニック」として噴き出している。こうしている間にも、北朝鮮暴発の危機が静かに高まっているのだ。【12月5日 文春オンライン】

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