
(中国から見た太平洋 スペースの都合でカットしましたが、この左手奥にアメリカがあります。
ピンクの丸と数字は太平洋諸国への06~14年の合計援助額 単位百万ドル
グレーの丸と数字は2016年の各国防衛費 単位億ドル
“中国から太平洋を見ると、沖縄や台湾などの島々が、太平洋への出入り口を塞いでいるように見える。
米軍や自衛隊がこの地図をよく使うのは、中国が自国の防衛ラインとしているとされる「第一列島線(沖縄―台湾―フィリピン)」と、米国の軍事的圧力を阻止することを目指す「第二列島線(グアム・サイパン―ニューギニア島)」の概念を理解する一助になると考えるからだ。”【8月6日 朝日GLOBE】)
【歴史・観光で日本ともつながりが深いパラオに流入するチャイナマネー】
日本以外に日本語を公用語としている地域があるとか。南太平洋の島国パラオのアンガウル州というところだそうです。
****日本以外にも「日本語が公用語」という国があるって本当?=中国メディア****
中国メディア・今日頭条は18日、「なんと世界で日本以外に日本語を使っている国があった」とする記事を掲載した。
記事は(中略)「日本語は日本以外でも使われているのだろうか。実は1つある。その国の名前は、パラオだ。太平洋上に浮かぶ島国で、この国の公用語が日本語なのである」と紹介した。
この説明は、正しくない。日本語を公用語に定めているのはパラオの国自体ではなく、同国内のアンガウル州である。同州の憲法には、同国の公用語であるパラオ語と英語に加えて、日本語を公用語とすることが書かれているのだ。
記事は、現地で日本語が公用語になった背景について「第1次世界大戦でドイツが敗れた際、戦勝国の1つだった日本がアジアにおけるドイツ権益をすべて引き継いだが、そこにパラオが含まれていたのだ。
パラオは日本によって植民化されたが、日本に対して恨みを持っていないどころか、日本を好む傾向が伺える。それは、日の丸に似たパラオの国旗を見れば分かる」としている。
第1次大戦終了後から太平洋戦争終了までパラオを含む南洋諸島は、当時の国際連盟が日本に統治を委託した委任統治領だった。
日本語教育が行われたが、敗戦後は米国の統治下に入り、日本語は使われなくなっていった。憲法で日本語を公用語と定めているアンガウル州では実際に日本語が日常的に使われている訳ではなく、日本との関わりがあったことを示す象徴として定められているようだ。
ちなみに、パラオは中華民国との国交があり、中華人民共和国とは国交がない。【8月22日 Searchina】
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その中国と国交がないパラオに、“例によって”近年チャイナマネーの影が濃くなってきているとか。
****赤く塗り替えられる太平洋の島・パラオ****
6月13日、南米の小国パナマが100年以上にわたり関係を築いてきた台湾との関係を捨て、中国本土との国交樹立を宣言した。
台湾政府は、国際的な孤立を避けるためにパナマだけではなく、台湾との国交関係を持つコスタリカ、ガンビアなど小国に莫大な資金援助をしてきた。中でも国交が107年にも及ぶパナマは台湾にとり、最も重要な国の1つだった。
にもかかわらず、パナマ政府は台湾を捨て、中国政府を選んだ。パナマに対し、中国政府が台湾以上の資金援助をしたことが最大の原因だった。つまりカネの力によって、中国はパナマを手に入れたということだ。
(中略)現在、台湾と国交を結ぶ国の大半は中南米のおよそ20カ国に集中している。そうした国々に〝パナマ現象〟が起きるのは時間の問題ともされている。
国際貿易の要衝、パナマ運河を抱えるパナマが〝赤く〟染まったことは米国にとっては深刻な問題だ。同様に日本政府にとってもパナマの寝返りは重要な意味を持つ。
なぜならば、日本の安全保障上、極めて重要な国がパナマと同じように中国にカネの力によって、中国傘下に収まるかもしれないからだ。
中国が仕掛ける台湾断交ドミノ
その国はパラオ共和国。日本からおよそ3200キロ離れた太平洋上の島国である。
人口わずかに2万人余り。200以上の小さな島々からなるこの小国がなぜそれほど日本にとって、重要なのか。それは世界地図を見れば一目瞭然。
中国は対米戦略上、戦略展開の目標ラインを定めている。日本の九州を起点に沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオに至る「第一列島線」、そして小笠原からグアム、サイパン、パプアニューギニアに至るのが「第二列島線」なのである。パラオはこの第二列島線の重要拠点の1つなのである。(中略)
観光の島、パラオ。日本人が持つパラオのイメージだが、それは一昔前に終わった幻想にすぎない。
例えば日本からパラオを訪れる観光客の推移を見ればそれははっきりする。2011年に3万7800人を数えたそれは、昨年は2万9000人余りと1万人以上減った。逆に急増している地域がある。中国だ。
同年を比較してみる。11年にわずか1700人だった中国からの観光客は、昨年はおよそ6万5000人。日本人の倍以上の急増ぶりだ。
だが、中国人観光客の急増ぶりをパラオ政府は諸(もろ)手を上げて歓迎しているわけではない。パラオの人々の脳裏にはある事件が今も鮮明に焼き付けられているからだ。
事件が起きたのは12年。パラオ海洋警察による中国の違法操業漁船の摘発だった。逃げようとする中国人漁民に対し、発砲した銃弾により中国人が1人死亡した。
(中略)違法操業を隠れ蓑とした「海上民兵」なのだろう。スパイ行為に近いことが行われていたのだろうとパラオ政府は今も思っている。
当時、人民日報はこの事件を取り上げ、台湾政府と国交を持つ、パラオへ観光に行くべきではないとの記事を掲載。一時、観光客は減ったが、ほとぼりが冷めた14年頃から一転、急増する。そして、今やパラオ観光は、中国の富裕層のステータスのように言われている。
中国漁船の影は今もパラオを脅かしている。パラオの人口のほとんどが密集するコロール島のあちこちに中国漁船で働く漁民のための宿舎のような建物がいくつもある。(中略)
日本の存在感は薄まるばかり
2015年、戦没者慰霊のためパラオ、ペリリュー島を訪問した天皇陛下らをパラオ国民は熱烈に迎えた。このようにパラオ国民の日本に対する親近感は今も根強い。世界一とも言われるほどの親日ぶりだ。
けれども、最も開発が進み、人口の大半を抱えるコロール島を回ってみても進出している日本企業は恐るべき少なさ。また観光客も減り続けている。日本の存在感は薄まるばかりだ。
資源、環境、観光を束ねる大臣、ウミー・センゲバウによれば、日本企業にも接触し、ホテルの進出や、インフラを含めた総合開発を提案しているが反応は良くないという。
そして、彼が危惧していたのは、パラオ開発がコロール島だけに偏り、パラオ最大の島である「バベルダオブ島」にはほとんど手がつけられていない点であり、また、言外に中国資本の積極的な動きを示唆していた。現に同島のリゾート開発目的で上海の開発業者が、同大臣を訪ねている。今年2月のことだ。(中略)
中国本土、上海や北京から自家用ジェットに乗り込んだ投資家たちが、パラオにも足を運ぶようになってきた。今年に入ってからも、自家用ジェットを駆ってパラオにやって来た中国人投資家は片手では収まらない。
12年の中国〝スパイ〟船の記憶も生々しく、中国本土からやって来る観光客を喜びながらも、まだどこか懐疑的な視線を送っている。しかしながら、その中国人が落としていく外貨が観光立国を目指すパラオの有力な財源になっていることは間違いない。
先の観光大臣ではないが、彼らの本音としては、日本企業の進出、日本人の観光客が戻ってきてほしいというのが本当のところだ。だが、日本側の動きは鈍い。(中略)
こうしたゴミ処理だけでなく、汚水を垂れ流している下水処理、電力、水道水の供給などインフラ整備はパラオの急務。日本企業が採算性から二の足を踏む中、中国資本の動きが見え隠れし始めている。
パナマはまさにインフラ整備への巨額投資が誘い水となり〝赤い中国〟へと寝返った。パラオがそうはならないと誰が保証できるのか。誰もできはしない。
パラオ同様に第二列島線に位置するサイパンが今は中国資本の島となり、中国資本によるカジノが中国本土からの客で賑わっていることを知っているだろうか。
たしかに、軍事的な施設ができているわけではないし、戦艦が寄港しているわけでもない。しかし、まずカネを落とし、そして人を送り込み、そこを〝赤く〟塗りつぶしていくのが中国のやり方。
パラオにも〝チャイナマネー〟により潤っているサイパンの情報は流れている。パラオ政府関係者もサイパンに何度も足を運んでいる。「パラオがサイパンのようにならないという保証はない」(パラオ政府高官)。なぜなら、潜在的にあるチャイナマネー待望の声を無視はできないからだ。【8月21日 WEDGE】
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【巨額融資の返済 断れない中国の要求】
太平洋におけるチャイナマネーの影響はサイパン、パラオの第二列島線を超えて大きく広がっています。
****トンガ 乗っ取られる? 首相発言が波紋****
「我が国はこのままだと、数年以内に中国人に乗っ取られてしまう」。北京から約1万㌔。約170の島々からなるトンガで今年5月、首相の発言が波紋を広げた。
1998年に台湾と断交して国交を結んで以来、中国との絆は深い。人口10万の国で、なにが起きているのか。(中略)
(アキリシ・ポヒヴァ首相)「あくまでも仮定だが、合意を守れなければ、我々の海で彼らが漁業をするようになるとか、我々の軍隊を彼らが使うようになるとか。さまざまなことが起こりうる」
「合意」とは中国からの多額の援助の返済だ。中国からトンガへの援助は2006年から16年までで総額約1億7200万米㌦(豪・ロウィー研究所推計)に上る。
無償援助もあるが、長期の低金利融資も多い。IMF(国際通貨基金)などによると、対外債務は今や国のGDPの半分近くに上るが、大半が中国からの借金だ。首相は、その元本の返済が「来年から始まる」と言った。
さらに、こう続けた。「多くの国民も恐れを感じている。商売では今や中国人が卸売りや小売りの8割以上を独占しているのだから」
不安をあおるようにも受け取れる一連の発言は、様々な臆測を呼んでいる。選挙制度改革を経てトンガで民主化が進んだのは2010年。首相のポヒヴァは民主化運動のリーダーだった。
一方、いまも大きな影響力を持つ王室は中国との関係が深く、「トンガ中国友好協会」の会長を王女がつとめるほどだ。
ヴァヴァウの中心街に並ぶ日用品店をのぞくと、店を切り盛りしているのは、ほとんどが中国系の人たちだった。
幼い子を連れて買い物に来たリーロイ・ファンガラヒ(27)は、以前は電気関係の職に就いていたが、いまは失業中だ。
「中国の店は早朝から深夜までやっているし、品ぞろえもいい。昔はトンガ人経営の店もあったが、ここにはほとんどなくなった。首相の言葉は俺たちの実感そのものだ」。06年に首都で暴動が起き、中国系の店が焼かれた。それ以降、ぎくしゃくした空気はある、と話した。
中国系の人たちはどう感じているのか。3階建ての建物で日用品店とホテルを営む王誦云(ワン・ソンユン、38)に聞くと、「中国人はどこででも生き抜く道を見つける。トンガ人の友達もたくさんいるよ」と言う。(中略)
王は移住して5年が過ぎた後で、商売をしやすくするため、トンガ国籍を取得した。90年代の一時期には高額でパスポートが売られていたといい、トンガ国籍を持つ中国系移民は少なくないという。トンガに暮らす「中国人」は数千人で、人口の3~5%というが、実態はつかめない。
取材後、王が「とっておきの場所がある」と、海と島を望む小高い山に連れていってくれた。先に来ていた家族連れとトンガ語で談笑した後で、声をひそめ、島の間に架かる橋を指した。「中国のお金で建てられたものだよ」と誇らしげな笑顔を見せた。
政府庁舎や埠頭も整備
首都・ヌクアロファに戻ると、中国はまた違う次元の存在感を放っていた。海岸通りにそびえるのは、完成したばかりの政府合同庁舎。中国が無償で建設し、首相府や財務省などが入る予定だ。玄関に「チャイナ・エイド 中国援助」と記されたプレートが光っていた。
その向こうには、巨大なモニュメントが立つ「ブナ埠頭」が見える。中国が全額を低金利融資し12年に完成したこの埠頭は、大型客船とともに軍艦も入港できる大きさと深さだ。
同じ海岸の東側では、日本が33億円を無償で援助し、国内輸送船用の埠頭を新設する工事の最中だった。
豪州、ニュージーランド……。島をめぐると、道路や施設のあちこちに支援した国名を書いた表示がある。「大国」の視線を集める太平洋の姿を示していた。
トンガで長年民主化運動に取り組んできたジャーナリスト、カラフィ・モアラ(66)は話す。「恐れからは何も生まれない。新しくパワフルな友達と賢く関係を築いていければ、我々にメリットはある。トンガの問題を中国のせいにせず、自分たちの問題として向き合うことから始めるしかない」【8月6日 朝日GLOBE】
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中国が欧米・日本とは異なる基準で経済援助を行っているとは常に指摘されるところですが、その資金援助もやがて返済が始まります。
トンガの場合もそうですが、返済能力を無視して融資された資金の巨額の返済をどうするのか・・・中国からすれば、その交渉が要求をのませる“狙い目”だとか。こういう言い方をすると、悪質な金貸しのようでもありますが・・・・。
****太平洋で存在感増す中国****
太平洋の島国に対する中国の存在感は経済援助を通じて急速に増している。
先進国の場合、経済協力開発機構(OECD)の原則に沿って、所得水準や返済能力によって融資できるかを決めるが、中国にはそうした制約はない。
返済期限が長く、低い金利の「ソフト・ローン」による支援も多く、先進国の援助にはなじみにくい「ハコモノ」建設が目立つ。
現地の事情に詳しい笹川平和財団の主任研究員・塩澤英之は「伝統的な支援国ができないことをやっている。現地の政治情勢に口を挟まないのも、支援を受ける側からすればニーズに沿った支援ともいえる」と分析する。
豪に拠点を置く「ロウィー研究所」は独自の調査で、中国の2006年からの10年間の援助額を「17億8千万米㌦(約2千億円)」と推計した。首位の豪州(77億㌦)は別格だが、2位の米国に迫る額だ。
当然、各国の債務はかさみ、返済帳消しや期限延長の交渉をせざるを得ない国も。塩澤は「その交渉過程こそ、中国は重要視しているようにみえる。上の立場に立って交渉を進めることで、新たなカードを持てる」と指摘する。
一方で、中国も最近は無償援助を増やしているとみられる。塩澤は「責任ある援助国としての地位を得ようとする動きにみえる」と言う。
ロウィー研究所の調査した援助は中国を承認した国が対象だ。だが、中国の存在感は、国交のない国々でも観光客や民間投資という形で高まっている。
台湾と国交を結ぶパラオには、10年ごろから中国人観光客が急増し、15年には人口の4倍超の8万7千人が押し寄せた。ダイビング客の急増などで環境面を懸念する声もあり、一時はパラオ政府がチャーター便数を減らす事態に。
11年にマカオ―パラオ間のチャーター便を開拓し、中国人向けのツアーを始めた旅行会社「旅易国際」社長、周立波(49)は「中国人観光客は5、6年で100倍。パラオ経済の発展に寄与している。パラオは歴史的にはアメリカや日本との関係が深いが、長い目で見れば、中国との関係は強くなっていくだろう」と語った。【同上】
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スリランカのように融資返済のめどが立たなくなり、中国に港湾を長期間貸し出す事例もづでに起きています。
「中国は戦争はせずに南シナ海や東シナ海から米国を追い出すという帝国主義的な長期戦略を立てている」(米国人ジャーナリストのロバート・カプラン氏)との指摘も。
もっとも、これについては「一見すると国家戦略のように見え、失敗とは言えないので宣伝部門もこのレトリックに乗るが、投資部門からすれば、単なる焦げ付きであり、経済的には不安要素以外の何物でもない。中国はあたかも昔から計画があったかのような演技をするので信じてしまいがちだが、数十年先、100年先を見据えた具体的な青写真は描いていない」(同志社大学教授の浅野亮氏)【同上】との、中国に明確な長期戦略があるという見方には否定的な見解も。
いずれにしても、“悪質な金貸し”のようなことをやる、やらないにかかわらず、それが長期的戦略である、なしにかかわらず、現在の経済状況を見れば、太平洋諸国における中国の存在感が高まるのは避けられない状況です。