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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  テロと弾圧の悪循環に陥るロヒンギャ問題 スーチー氏の経済運営に不安も 変容する社会の歪

2017-08-16 22:00:26 | ミャンマー

(ヤンゴン郊外の老人ホーム【8月13日 AFP】)

ミャンマー政府の消極的対応
スーチー政権ミャンマーにおいて、西部ラカイン州のイスラム系少数民族ロヒンギャへの対応があまり改善していないという話は、7月6日ブログ「ミャンマー ロヒンギャ虐殺を否定する国軍 “政治家”スー・チー氏の対応は?」でも取り上げました。

ロヒンギャはミャンマーを構成する民族として認められておらず、バングラデシュからの「不法移民」として、長年、移動の自由などが制限されています。

更に、昨年10月の警察襲撃事件以来、国軍など治安当局による“民族浄化”とも言えるような迫害(放火、暴行、殺害など)がなされているとの国際的批判があります。

****人権問題対応「変わっていない」 スーチー政権を批判****
イスラム教徒少数派ロヒンギャなどミャンマーの人権問題の調査で同国を訪れていた国連特別報告者の李亮喜(イヤンヒ)氏が21日、最大都市のヤンゴンで会見を開き、調査地域が厳しく制限されたことや、政府側からの圧力があったとして「受け入れられない」と批判した。
 
10日からの調査を終え会見に臨んだ李氏は、アウンサンスーチー国家顧問率いる現政権の人権問題への対応が「これまでの(軍事)政権と変わっていない」と厳しく指摘した。
 
記者3人が拘束された北東部シャン州で一般の観光客が訪れる場所にさえ入れなかったことや、ロヒンギャのいる地域で地元の人と接触を図った際、政府側が監視していたと指摘。「(人権問題に取り組む)保護団体やジャーナリストが監視されていた状況は(政権が代わった)今も続いている」とした。
 
李氏は、ミャンマーが国連の調査対象から外れるのを望んでいることについて、「まずは調査が必要ない国にならなければ」とした。
 
ミャンマー政府は、李氏の調査とは別の国連人権理事会による調査団の受け入れを拒否している。李氏はこのことを「非常に残念」とし、政府側と会談した際に「受け入れを強く進言した」と話した。【7月22日 朝日】
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****ロヒンギャ迫害「証拠ない」 ミャンマー政府が報告****
ミャンマー西部で少数派イスラム教徒ロヒンギャへの迫害が相次いで報告されている問題で、政府の調査委員会は6日、「国際機関が発表しているような人権侵害を裏付ける証拠はない」とする報告書の要約を発表した。

報告書はすでにティンチョー大統領に提出されたが、公開するかは大統領が判断するという。
 
委員会は最大都市ヤンゴンで記者会見を開き、政府軍が「民族浄化」を行っているとした国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書について、「誇張やでっちあげ」と批判。OHCHRの調査に「夫が殺された」と証言した村人が示した遺骨が偽物だったとする事例も紹介した。【8月7日 朝日】
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調査委員長を務めたミン・スエ副大統領は軍部出身ですから、こういう報告書にもなるのでしょうが、スーチー氏としても、こうした状況を追認するしかないようです。

迫害はテロ・過激思想の温床にも
迫害から逃れようとすると、今度は人身売買の対象にされたり・・・と苦難が続きます。

****少数民族ロヒンギャ 密航、人身売買・・・迫害の民****
東南アジアでは、迫害から逃れたり経済的理由から密出国した難民らが、仲介業者にだまされ人身売買の被害に遭うケースが続いている。ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャの事例は、実態をあぶり出した。
 
ロヒンギャは、1970年代後半以降、ミャンマー軍事政権に迫害され、政府は自国民族と認めていない。西部ラカイン州では2012年、仏教徒とロヒンギャが衝突し200人以上が死亡し、ロヒンギャを中心に10万人以上が避難民キャンプで暮らす。
 
周辺国への密航も続き、15年5月には数千人を超えるロヒンギャを乗せた船が、マレーシアやインドネシアの沖合で漂流し、世界的な注目を浴びた。
 
タイ南部のジャングルでは15年5月、ロヒンギャの人身売買拠点とみられるキャンプ跡が70カ所以上見つかった。漁船に奴隷として売ったり、追加の密航料を家族に身代金要求していたとみられる。暴行や病死が横行し、周囲には数十人ごと埋めた「集団墓地」も見つかった。
 
タイの刑事裁判所は7月19日、ロヒンギャの人身売買の罪に問われた62人に有罪判決を言い渡した。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は今年2月、ミャンマーの治安当局がロヒンギャの殺害やレイプに組織的に加担したと非難する報告書を発表した。【8月9日 産経】
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ミャンマーにおいては“バングラデシュからの不法移民”として扱われていますが、そのバングラデシュに逃げても厄介者扱いは変わりません。

バングラデシュ人と以前からいるロヒンギャ、新たに流入したロヒンギャの3者の間に緊張関係が生まれているとの指摘も。

こうした逆境は、当然のように武力・テロで抵抗しようとする“過激思想”の温床となります。

****南東部、難民流入 迫害ロヒンギャ、住民とあつれき イスラム原理主義拡大か****
バングラデシュ南東部コックスバザールで、隣国ミャンマーから越境してきた少数派イスラム教徒「ロヒンギャ」と地元住民とのあつれきが深まりつつある。

ロヒンギャ難民はミャンマー軍などの迫害が強まった昨年10月以降7万人以上が流入し、35万人に膨れあがった。多くが不法滞在で、治安が悪化しており、バングラ政府は対策を迫られている。

雨でぬかるんだ土地に青いビニールシートの住居が密集していた。コックスバザールから車で約1時間にあるバルカリ。住民によると、ここで暮らす約3500世帯は全員、昨年10月以降に流入したロヒンギャだ。
 
「できるなら、いつかミャンマーに戻り、軍と戦いたい」。トタンで作ったマドラサ(イスラム教神学校)で学ぶハビブル・ラフマンさん(16)は低い声でつぶやいた。

4月ごろ、ミャンマー北西部ラカイン州の村が軍とみられる集団に襲撃を受け、自宅を放火された。親族3人が銃撃で死亡し、自身も暴行を受けた。家族10人で村を抜け出し、国境の川を渡ってバルカリにたどり着いた。「父も仕事が見つからない。援助物資だけが頼りだ」

コックスバザールでは、難民登録を受けた約3万3000人は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の難民キャンプで暮らすが、残る約32万人は不法滞在のまま、キャンプ周辺に集落を形成している。

仕事は日雇いの農作業や建設作業がほとんどで、多くは援助物資で食いつなぐ。日当100タカ(約140円)の日雇い労働で家族5人を支えるウマル・ファルークさん(15)は「援助がないときは、食事できない日もある。学校にも行けない」と話す。
 
一方、地元のバングラ人は、ロヒンギャ難民が暮らす地域は強盗や人身売買などの犯罪の温床と化しているため、治安悪化への不安を募らせている。
 「
ロヒンギャは危険だ」。地元ジャーナリストのムハンマド・ハニフ・アザド氏(40)はこう言い切る。サウジアラビアなどの支援でマドラサが次々にできており、「イスラム原理主義が広まっている」と指摘する。国際機関関係者も「マドラサの若者たちが将来、過激化する恐れがある」と語った。

ロヒンギャに詳しいチッタゴン大学のラフマン・ナシルディン教授は「バングラで過激派に入るロヒンギャは今のところは多くはない」と否定するものの、地元住民の間には「治安悪化はロヒンギャのせいだ」(バングラ人大学生)との批判も少なくないという。
 
ミャンマーではサウジやパキスタンとつながりを持つロヒンギャの武装組織が活動しており、政府との「聖戦」を呼びかけている。

昨年10月にはミャンマーの警察施設襲撃事件に関与したとされ、軍がロヒンギャに対する取り締まりを強化し、住民の大量避難につながった。こうした過激派組織がバングラの避難民を勧誘する可能性もある。
 
こうした中、バングラ政府はロヒンギャをベンガル湾の島に移住させる計画を検討中だ。だが、生活インフラが整っておらず、洪水被害も多発する島のため「非人道的」との指摘も出ている。

ナシルディン教授は「バングラ人と以前からいるロヒンギャ、新たに流入したロヒンギャの3者の間に緊張関係がある。ミャンマー政府に働きかけ、帰還をうながすべきだ」と述べた。【7月25日 毎日】
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ロヒンギャの一部が過激化することで、ミャンマー国軍側は更に対応を厳しくする・・・という悪循環にもなります。

****ラカイン州に数百人の部隊増派=ロヒンギャ問題、衝突懸念も-ミャンマー****
イスラム系少数民族ロヒンギャ迫害問題で不穏な情勢が続くミャンマー西部ラカイン州をめぐり、政府と国軍は数百人規模の国軍部隊を現地に増派するなど、治安対策の強化に乗り出した。ただ、反政府武装集団との衝突など情勢の一層の悪化を懸念する声も上がっている。
 
政府は11日発表した声明で、ラカイン州で「過激派がテロ活動を活発化させている」と指摘。9日までに59人が殺害され33人が行方不明となり、その多くは政府に協力しているとみられた村長らだという。政府は「国軍と協力し、活発化するテロ活動を鎮圧する」と表明した。
 
声明は増派部隊の規模には触れていないが、地元メディアなどによると、数百人に上るとされる。
 
部隊増強に対し、ミャンマーの人権状況に関する国連特別報告者の李亮喜氏(韓国出身)は11日声明を発表し、「大きな懸念」を表明。「政府はラカイン州の治安情勢に対処する上で、治安部隊があらゆる状況で自制し人権を尊重するよう保証しなければならない」と警告した。【8月12日 時事】
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テロと弾圧の応酬、増える難民、過酷な難民生活、難民を食い物にする密航業者・・・明るい展望が見えないロヒンギャ問題です。

【「目下の問題は経済が指導者らの優先事項ではないことだ」】
ミャンマー経済に関しては、アメリカが経済制裁を解除したことを受けて好景気の到来を期待する声が強かったのですが、このところはむしろ減速傾向にあり、スーチー氏の経済舵取りへの不安も投資家・経営者にはあるようです。

****置き去りにされたミャンマー経済、スー・チー政権に不安****
ノーベル平和賞を受賞したアウン・サン・スー・チー氏は2016年にミャンマーの事実上の最高指導者となって以来、数十年に及ぶ内戦を終結させることに専念してきた。この目標達成に精力を注ぐ余り、新たな問題が生まれている。

急ピッチで開放が進むミャンマー経済をうまくかじ取りできないのではないか、との疑念が投資家の間で広がりつつある。
 
長年孤立してきたミャンマーの景気減速は、スー・チー氏の経済運営が早くも壁にぶち当たったことを浮き彫りにしている。

軍による支配が続いたミャンマーでスー・チー氏率いる文民政権が誕生し、米国が数十年ぶりに経済制裁を解除したことを受け、好景気の到来を期待する声は多かった。
 
ヤンゴンに本社を置く複合企業UMGのアリワルガ最高経営責任者(CEO)は「ミャンマーは、やり方さえ間違わなければ大きな可能性を秘めている」とした上で、「目下の問題は経済が指導者らの優先事項ではないことだ」と述べた。
 
ミャンマーでは前年度の経済成長率が2011年以来の低水準に落ち込んだ。それを受け、国家運営に不慣れな現政権の戦略を疑問視する投資家が増えつつある。

国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、海外からの直接投資(FDI)は2016年に前年比22%減の22億ドルとなったが、それでも2011〜14年平均の2倍超の水準だ。
 
景気減速は意図的に引き起こされた面もある。新たな指導者らは、法令順守問題を調べるため首都ヤンゴンでの猛烈な建設ラッシュに歯止めを掛けた。さらに、経済の多様性を高める狙いで、鉱業(石油など)以外の分野に投資を分散させた。
 
政権移行期には経済の先行きが見通しづらくなることがよくあるが、何十年も世界から孤立し経済発展が遅れを必死に取り戻そうとしているミャンマーの場合、不安要素はそれだけでは済まないと投資家らは言う。例えば、スー・チー氏の政権運営手法や民間企業との協議で見せるよそよそしい態度を投資家や政治アナリストは不安視する。(中略)

スー・チー氏率いる与党「国民民主連盟(NLD)」の幹部で、ミャンマー投資委員会のメンバーでもあるエイ・ルウィン氏は、改革の遅れは官僚機構の脆弱(ぜいじゃく)性が一因だとし、スー・チー氏でもさまざまな問題にいっぺんに対応できるわけではないと述べた。
 
一方、中核機関である国防省、内務省、国境省の3省は引き続き軍の管理下にある。(中略)

スー・チー氏に近い関係者は、同氏は経済を優先する方針に傾き始めており、近くそうした変化が現れるだろうとしている。(中略)

経済政策がようやく変わり始めた兆しもある。政府は最近、明瞭な投資規制を発表したほか、外国企業に現地企業との合弁を義務づけている業種を90から22に削減した。さらに、外国人に移動制限などの規制を課す法案の可決を阻止した。

また、内閣改造でエネルギー相を入れ替えたほか、過去の功績が高く評価されている元中銀幹部を副財務相に据えた。(中略)

国際通貨基金(IMF)はミャンマーの経済成長率について、昨年は6.3%にとどまったが、今年は7.5%程度まで回復すると予想している。(後略)【8月7日 WSJ】
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変容する社会で「うば捨て」のような歪も
“昨年は6.3%にとどまったが”ということで、減速とは言っても、基本的には拡大基調にあることは間違いありません。成長する経済につれて社会も大きく変化します。

****世界的な動物カフェブーム、ミャンマーにも****
世界的なペットカフェの波がミャンマーにもやって来た。急速に変わりゆくミャンマーの最大都市のヤンゴンに動物カフェが2軒オープンしたのだ。ミャンマーは今、モンスーンの季節だが2軒のカフェが動物愛好家たちに屋内で過ごす楽しみを提供している。(後略)【7月29日 AFP】
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こうしたニュースを見ると、人々の暮らしにも余裕ができたのか・・・とも思えますが、それほど楽観ばかりもしていられないようです。

ミャンマーは“若い国”のイメージがあって、高齢化社会とは無縁のように思えますが、必ずしもそうではないようです。高齢化は、解消しない貧困や未整備な医療・介護制度とあいまって大きな歪を生みます。

****ミャンマーの貧困と高齢化問題、「うば捨て」も****
脳卒中で半身がまひし、ほとんど話すこともできないティン・フラインさん(75)は、実の子どもたちによって道端に捨てられた。
 
そのまま道端に横たわっていたティン・フラインさんは、気の毒に思った知らぬ人に、最大都市ヤンゴンの郊外にある老人ホーム「トワイライト・ビラ」に連れて行ってもらったことで救われた。
 
ティン・フラインさんの身に起きた「うば捨て」のような出来事は、急速に進む高齢化への対応に苦慮している貧困国ミャンマーにおいて、まれな例ではなくなってきている。同国では高齢化の問題が、既に無力化している医療福祉制度に重くのしかかっている。
 
トワイライト・ビラのキン・マー・マー氏によると、入居者の多くはティン・フラインさんのように、家族に見捨てられた後、当惑し病気を患った状態でやって来るという。(中略)

■死に場所
軍事政権による数十年にわたる悪政、厳しい制裁、民族紛争などによって、ミャンマーは世界の最貧国の一つとなった。そんなミャンマーは今、人口動態上の危機に直面している。
 
国連(UN)によると、現在、ミャンマーの人口の約9%は65歳以上だが、2050年までにこの数字は25%に急増し、15歳未満の割合を上回る見通しだという。
 
国連人口基金(UNFPA)のミャンマー担当者ジャネット・ジャクソン氏は「経済の現状により、多くの人々が高齢になっても生きるために肉体労働を続けることを余儀なくされている」「このことは高齢者のための適切な社会福祉と政策の必要性を明確に示している」と語った。
 
軍事政権の50年にわたる投資不足により高齢化対策は既にぼろぼろの状態で、ミャンマーの医療福祉制度はこうした現状に対処するのに苦慮している。
 
約半世紀ぶりとなった文民政権は昨年の発足以来、新しい老人ホームを1つしか設立していないばかりか、この施設は90歳以上限定で、1か月あたりわずか1万チャット(約800円)の援助金しか得ていない。
 
伝統的に大抵の高齢者たちは家族によって面倒をみられるが、貧困の圧力、高いインフレ率、急速な都市化などにより身内を見捨てる人々の数は増加している。
 
僧侶が運営しているヤンゴンの別の老人ホームに3年前から暮らしてるフラ・フラ・シュイ(Hla Hla Shwe)さん(85)は「私たちには他に行く所がない。死を待つためにここに来た」と話し、「ここでは孤独感が薄らぐし、寄付のおかげで食べ物も貰える」と付け加えた。(後略)【8月13日 AFP】
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