孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国で大ブームの“シェアサイクル” 背景には評価システムとマナーの向上 そこには別の問題も

2017-08-06 22:02:55 | 中国

(一部に乱雑に止められた自転車もあるが、おおむね“許容範囲”ではないか・・・との指摘も【6月26日 高口康太氏 Newsweek】 “乗り捨て自由”という話と、上記写真のような駐車スペースとの関係は?個人的には、基本的な仕組みがよく理解できていません。)

シェアサイクルの日本での展開は?】
中国では“シェアサイクル(シェア自転車)”が大ブームとなっている話はよく聞きますが、中国で成功した大手シェサイクル企業が日本でも営業を開始すべく準備が進んでいます。

ただ、中国での成功のカギとなった、スマホによるモバイル決済、乗り捨て自由といった環境が日本にはなじまず“苦戦”を予想する声もが中国国内でも多いようです。

また、そもそも日本ではシェアサイクルに対するニーズがあまりないのでは・・・との指摘も。

****中国発の「シェア自転車」が日本上陸、中国メディアは「数々の制約が発展の足かせに」と悲観的****
2017年8月4日、中国で大ブームの「シェア自転車」。スマートフォンのアプリを使う新サービスが日本にも上陸する。これについて中国メディアは「数々の制約が足かせになる。日本でも早くからシェア自転車プロジェクトが展開されているが、発展や普及、規模には限界がみられる」などと指摘。悲観的な見方を示している。

日本に進出するのは、中国の大手「摩拜単車」(モバイク)。6月、福岡市に子会社を設立し、同市と札幌市でサービス開始の準備を進めている。運営スタイルは中国と同じで、料金は30分につき100円(暫定)を想定しているという。

モバイクについて、中国網は「シェア自転車の日本における普及の見通しを占う」との記事を掲載。コンビニ最大手・セブンイレブン北京の董事長、総経理を務める内田慎治氏の「シェア自転車のプロジェクトをこれほど大きな規模で実施できる場所は中国だけだろう。日本では恐らく難しい」との見解を紹介した。

その理由として記事は「厳格な自転車管理法規があり、まず関連当局の申請を経て、固定のサイクルポートに関する問題を解決しなければならない」「東京や大阪、横浜など地価が非常に高い大都市では、中国のように街中の一部に白線を引いて駐輪場にし、大量のシェア自転車を置いておくということはほぼ不可能」などを列挙。

「利用者は必要な時に自転車を見つけることができない、目的地に着いたのに返却場所がないという状況に陥ってしまう」としている。

さらに「日本の都市の地下鉄、電車、公共バス、タクシーなどの公共交通機関は非常に便利で、公共自転車が発展できる余地がほとんど残されていない」とも言及。

「東京や大阪など人口が密集している大都市では、公共バスが非常に便利で、『駅から会社』『駅から家』などの『残りの1キロ』という問題はほとんどない」と述べる一方、「その他の都市は交通機関が大都市ほど発達していないものの、シェア自転車のプロジェクトを支えるだけの人口がない」と説明している。

日本人が個人情報保護を特に重視することにも着目。「日本では中国のような巨大なモバイル決済市場を形成するのは至難の業だ。そのため『シェアリング』と『モバイル決済』をセールスポイントとするシェア自転車に、日本人は興味は示しても、受け入れには慎重な態度を示す」との問題点も挙げている。

その上で記事は「環境保護への関心が高まっている今の時代、自転車は環境にやさしく、便利」としながらも、「制限の多い日本の市場で中国のシェア自転車が成功を収めることができるかは、日本市場を正しく調査し、実際の状況に適応できるかにかかっている」と結んでいる。【8月5日 Record china】
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ただ、上記のような制約・ハードルは素人が考えてもすぐわかる話で、そこに敢えて進出するというからには、それなりの成算あってのことではないか・・・とも思えます。

そもそも、中国におけるシェアサイクル事業の採算についても長期的には成り立たないとする海外の見方がある一方で、中国国内からはデポジットの資金運用という意外な指摘もなされています。

****自転車シェアリングは「バカげた経済」とする独メディア 果たして中国ネット民の反応は**** 
中国では急速にシェアリングエコノミーが普及中だ。そのスピード感や規模の大きさに、世界は驚きをもって注目している。その最たるものがインターネット技術を駆使したサイクルシェアリングだが、その評価は賛否両論というのが現状のようだ。
 
中国メディア・今日頭条は7月31日、サイクルシェアリングについてドイツのあるメディアが「バカげた経済だ」と酷評したと報じた。

記事は、ドイツの経済誌ビルトシャフツボッヘが同29日に「バカげた経済 中国のシェアリングバブル」というコラムを掲載したことを紹介。そこでサイクルシェアリングについて「高額のコストに対して価格設定が安すぎるため、投資のリターン率が極めて低すぎる」と評したと伝えている。
 
同誌の試算によれば、自転車1台あたりのコストは250ユーロで、毎日5回使われないと1年でコストが回収できないという。しかし、現状は4日に1台レンタルされる状況であり、これでは1時間12ユーロセントという価格は安すぎて全く割に合わないとのことだ。
 
記事はまた、同誌が「中国の投資者はシェアリングエコノミーに熱をあげている。タクシー配車から雨傘、充電器、そして自転車などのシェアを打ち出すスタートアップ企業が大量の資金を呼び込んでいるが、こういった企業は急速に拡張するばかりで、速やかに黒字を出すことはできない」と主張していることを紹介した。
 
同誌の見方に対して、中国のネットユーザーからは「彼らは自転車を貸して金儲けすると考えているようだが、それこそバカげている。デポジットで儲けるのだ」、「ドイツ人にとってデポジットは利用者のものであり、商売する側はデポジットで利益を得ようとしてはいけないと認識している。考え方の違いだ」、「1億人のユーザーが100元ずつデポジットを支払ったらいくらになると思っているのか」といった批判的なコメントが多く寄せられている。
 
確かに中国には「良さそうなものはとりあえずやってみる」という考え方があり、運用後に続々と問題が見えてくることがしばしばある。サイクルシェアリングの評価は、一連の問題がある程度出揃い、そこで頓挫してしまうか、さらなる進化を遂げるかを見てから下すべきだろう。【8月4日 Searchina】
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(中国だけでもありませんが)中国では、ホテル宿泊でも普通に高額のデポジット(保証金)を要求され、問題なくチェックアウトする際に返却されます。デポジット用の現金を用意しておらず慌てることもあります。

シェアサイクルは利用したことはありませんが(外国人観光客はモバイル決済できないので利用できません)、通常の“貸し自転車”を西安で利用した際も高額のデポジットを要求され、壊したりしたら大変なことになる・・・と感じたこともあります。

"マナーの悪さ”が指摘される中国で、なぜシェアリングが成功しているのか?】
そもそも、“マナーの悪さ”が国内外で大きな問題となっている中国に、“シェアリング”という行動様式が馴染むのか?・・・・という疑問も感じるところですが、この点に関しては“意外にも”クリアされつつあるようです。

****中国シェア自転車「悪名高きマナー問題」が消えた理由****
<中国発シェアリングエコノミーは世界から注目を浴び、いよいよ日本にもシェアサイクル大手が進出。中国内外のメディアでマナー問題がボトルネックといわれてきたが、筆者が中国で目にした現実とは>

(中略)シェアリングエコノミーとはもともと、Airbnbに代表される民泊、Uberに代表されるシェアライドなど、一般市民が持つ家や自動車(そして自分の労働力)を提供して代価を受け取るというサービスだった。

ところが、中国発シェアリングエコノミーはやや様相を違えている。シェアサイクル、シェア・モバイルバッテリー、シェア雨傘、シェア・バスケットボールなど、さまざまなサービスが登場しているが、いずれもプロの事業者が一般ユーザーにサービスや製品をレンタルするという形式だ。

日本のシェアサイクルと違って乗り捨て自由
なかでも台風の目となっているのがシェアサイクルだ。日本法人を設立したモバイクとライバルの「ofo(共享単車)」という2強を筆頭に計30社近い企業が乱立し、激しい競争を繰り返している。

各社累計で2016年には200万台以上の自転車が投入されたが、2017年の投入台数は3000万台に達するとも予測されている。また、モバイクは先日6億ドルを超える融資を獲得したが、その多くは自転車の製造費用にあてられるとみられている。

なぜ中国発シェアサイクルはこれほどまでに注目を集めているのか。
日本にもある従来型のサービスは規定の駐輪場で自転車を借り、やはり規定の駐輪場で返すという仕組みだが、中国発のシェアサイクルでは街のどこでも乗り捨て自由。

使いたい場合には、街のあちこちに放置されている自転車を探してスマートフォンで解錠。行きたい場所まで乗っていってそこに乗り捨てるという仕組みになっている。専用駐輪場まで行かなくて済むことで利便性が一気に高まったのだ。

私も実際に利用してみたが、なるほど、革命的なサービスだとうならされた。これまでは距離にして1キロ程度、徒歩10分を超えるような距離の移動には尻込みしていたが、シェアサイクルがあれば地下鉄駅から2~3キロ離れた場所への移動も苦にならない。値段も30分0.5元(約8円)程度と激安だ。

街を走っていると、学校帰りの中学生が下校のために利用している姿を見受けるなど、生活に溶け込んでいるさまがよくわかった。

マナー問題がボトルネックといわれるが
過熱する中国発シェアリングエコノミーだが、一方で課題も少なくない。その最たるものがマナー問題だろう。

シェアサイクルに関しても中国内外のメディアはマナー問題がボトルネックになる可能性を指摘している。ざっくりとまとめれば次のようにまとめられるだろうか。

自転車を好き放題乗り捨てすれば、交通の邪魔になってしまう。自分の自転車じゃないと思って乱暴に扱えば、壊れた自転車が散乱するだけになってしまう。さらには自転車を川に投げ込む、サドル部分に画鋲を埋め込んでおくという誰も得をしないイタズラまで報じられている。

多額の融資を得て次々と新しい自転車をばらまいている今はいいかもしれないが、しばらく経てば負の側面が鮮明に見えてくる。結局のところ一時のバブルであって、持続可能なサービスではないのではないか......。

素直な私は「なるほど、そういうもんかいな」と受け止めていたのだが、実際にいくつかの中国の都市を見てみると印象が変わった。

確かに乗り捨てられた自転車がたまっているところはあるし、壊れた自転車もある。だがあくまで許容範囲だ。気合いを入れて探せば報道されているような問題にも巡り合えたのかもしれないが、普通に利用している場合には特に困った点はない。

悪名高き中国人のマナー問題(というと中国の友人に怒られそうだが、中国人自身もネタにしていることなのでご容赦いただきたい)はどこへいってしまったのだろう!?

信用情報の大統一を目指す中国政府
この背景は2つの視点から理解する必要がある。第一にシステムの問題だ。

シェアリングエコノミーではマナーを守らせるための評価システムが導入されている。例えばシェアライドのUBERでは顧客がドライバーを、ドライバーが顧客を相互に評価する仕組みが導入されている。評価が高まると顧客は車を拾いやすくなり、ドライバーはより多くの客が配分される。利便性という「ニンジン」を吊すことによってマナーを変えようとしているのだ。

この評価システムは中国ではさらにアグレッシブな進化を遂げている。米国ではUBERが得た評価情報は原則として他社に提供されない。

中国では政府の指導の下、シェアサイクル各社は協定を結び、マナーが悪い顧客に関する情報を共有している。あるシェアサイクル企業のサービスでマナー違反を行えば、他企業のサービスも利用できなくなるのだ。

そればかりか、中国政府はこうしたシェアリングエコノミーの信用情報に加えて、金融機関の信用情報、海外旅行のマナー違反ブラックリストなど、ありとあらゆるデータベースを連結。信用情報の大統一を目指している。

完成した暁には、シェアサイクルでいたずらをすると、住宅ローンの金利が上がったり、海外旅行に行けなくなったりするという寸法だ。SF小説のディストピアそのままの世界だが、現実には人々のマナーが向上して過ごしやすい社会が到来するという側面もあるのかもしれない。

逆にいうと、そうした先進的ディストピア・システムが備わっていない日本では、中国以上にマナーが問題化する可能性もある。実際、香港のシェアサイクル「gobee.bike」はトラブルに苦しんでいる。(中略)日本でも同様の問題が引き起こされる可能性はありそうだ。

マナー意識は確実に向上してきた
ここまで紹介してきたように、マナーを守らせるシステムの要因は大きいのだが、実際に中国で取材を続けていると、それだけではないのではないかと思うようになった。

もう1つの要因がある。それは実際、中国人のマナー意識が向上しているという点だ。

過去10年間は中国が国際的な存在感を飛躍的に高めた時代である。北京五輪や上海万博などの国際的スポーツイベントが開催され、「恥ずかしくないホスト国になりましょう」という大々的なマナーアップキャンペーンが開催された。

海外旅行が一般人にも手の届くサービスとなったが、海外での恥ずかしいマナー違反がたびたびニュースになるなか、やはりこちらもマナー教育に力が入れられている。日本も1964年の東京オリンピックが国民意識を変える大きなきっかけになったと言われている。中国でも同様の変化が起きつつあるのではないか。(中略)

「中国、とりわけ都市部の人々は、海外の人々と直接接する機会が増えるなかで、このままでは恥ずかしい、経済面だけではなくマナーの面でも外国に優越しなければ――そんな思いがあるのではないでしょうか。なにせ中国はメンツの国ですからね。(中略)」

これは筆者の知人である在中国日本人の言葉だ。たんに評価システムにしばられているのではなく、マナーを向上させたいという熱い思いがあるのだろう。

日本では「意識高い系」というとバカにするような意味合いで使われることも多いが、中国で展開されている意識高い系ブランドやそこに群がる人々にはそうしたてらいはない。ただひたすらに文明人になろうと邁進している。

日本は今やさまざまな分野で中国に追い抜かれているが、そうした中でも日本社会の優位性として讃えられるのがマナーの良さや紀律だ。

だが、もしこのまま中国人がマナー面でも真摯に学び続けたら......。あるいはこの分野でも「日中逆転」が起こりうるのかもしれない。【6月26日 高口康太氏 Newsweek】
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“30分0.5元(約8円)で乗り捨て自由”なら、非常に使い勝手がいい乗り物になります。日本にそういうものがあったら私は喜んで使います。“30分で100円 所定の場所へ返却”なら、どうしてもという場合以外は使いません。

評価システムによってマナー問題がクリアされている・・・・という話は、非常に興味深いところです。
“実際にも、マナーに対する意識が向上しつつある”と言う側面を加速させる要因ともなっていると思われます。

私を含めて、中国に関する話をするとき、いくら経済・軍事力が拡大してもマナーが現状では世界から尊敬はされない・・・といった類いの話をするのですが、それもやがてなくなるのか・・・そうあってほしいです。(そのとき、日本が中国に対して誇るべきものは何があるのか?という話はありますが)

信用情報の大統一、国家による管理がもたらす恐怖
しかし、“信用情報の大統一”というのは、怖い話でもあります。
“管理社会”そのものです。しかもその“管理”を行うのが“一党支配”の共産党・・・・というのは・・・・。

国家による情報管理を当たり前のこととして受け入れている中国社会ではほとんど問題視されないのでしょうが。

もっとも、国内での意識の欠如だけでなく、国家による情報管理を否定しているはずのアメリカ大手も“中国市場”の魅力には勝てないのが現実です。

****アップルに続きアマゾンも中国に「屈服****
2017年8月2日、米自由アジア放送(RFA)は、アップルに続きアマゾンも中国に「屈服」したと伝えている。

米アマゾン・ドット・コムのクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の中国現地パートナーである北京光環新網科技(Sinnet)はこのほど、当局によるインターネット接続規制を回避することができる仮想プライベートネットワーク(VPN)の使用をやめるよう顧客に電子メールで伝えたことを明らかにした。

VPNをめぐっては、米アップルが数日前、主要なVPNアプリを中国の「App Store」から削除したばかりだ。

北京光環新網科技の関係者は、顧客向けの通知について、中国の公安部と工業情報化部の要請を受けて出したものだとし、「われわれは顧客が承認されていないVPNを使用していないか定期的にチェックし、使用している顧客を発見した場合、サービスを停止する」と話した。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンの広報担当者は2日、「Sinnetは、顧客に現地の法律を順守させる責任がある。通知を出したのは、顧客にそうした義務を思い出させることを意図したものだ」と説明した。【8月3日 Record china】
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欧州左派は「シェアリングエコノミーは死んだ」】
話をシェリングエコノミーに戻すと、中国のような大手企業主導のシェリングシステムは、当初想定されていた“シェリングエコノミー”とは異質のものとなっており、欧州などではこうした動きに対してネガティブな空気もあるようです。

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「シェアリングエコノミーは政治的右派にも左派にも通じる要素を持っている。

シリコンバレー系リバタリアンやネオコンなどの右派から見た場合、それは『規制緩和とIT化による遊休資産の最適配分』を意味する。

ヨーロッパの環境派・市民派コミュニティなどの左派から見た場合、それは『大企業から市民への生産消費プロセスの主権奪還』を意味する。

シェアリングエコノミーが死んだ、というのは、後者の夢が破れて結局は米系大資本による前者の成功のみが後に残った、ということだ」。【“欧州で左派が「シェアリングエコノミーが死んだ」と言うワケ” 藤井 宏一郎氏 7月11日 アゴラ】
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