孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

北朝鮮と中国の微妙な関係  黙認された「金正恩暗殺説」、羅津港使用権の中国付与、金正男の処遇

2012-02-18 21:05:27 | 東アジア

(金正恩氏の側近が2009年、「おしゃべりな」金正男氏(写真)を襲撃する計画を立て、中国から「わが国の領土では(正男氏に)接触するな」と警告を受けていたと、朝鮮日報が10年10月13日報じています。
“flickr”より By Tin Mot Tam Muoi http://www.flickr.com/photos/tin180/5095970393/ )

北朝鮮:脱北者取り締まりを厳格化
北朝鮮・金正恩体制が、脱北者取り締まりを厳格化していることが報じられています。
****脱北者は三代にわたり処刑」北が指示…米報道****
韓国外交通商省は14日、北朝鮮からの脱北者10人が8日、中国・瀋陽で公安当局に身柄を拘束されたとの情報があり、現在、中国側に事実関係の確認と、強制送還を控えるよう要請していることを明らかにした。拘束の情報は、9日に人権団体から同省に寄せられた。

韓国メディアによると、先に韓国入りした家族に会うため脱北した16歳の少年も含まれ、大半は韓国を目指しているという。ほかにも14人の脱北者が今月に入り、中国東北部で身柄拘束されたとの情報もある。

金正恩体制で、北朝鮮は脱北者取り締まりを厳格化しており、米政府系のラジオ自由アジア(RFA)は「脱北者は三代にわたり処刑する」との指示を出した、と伝えている。【2月14日 読売】
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また、米華字サイト・多維新聞は、食糧事情の悪化などに伴い、中国への越境を図ったり、食糧の密貿易を行う北朝鮮人が増加しており、北朝鮮政府はこうした状況をコントロールするため、越境や食糧の密貿易を抑止するため、北朝鮮が中国との国境付近の監視カメラの数量を大幅に増設していると報じています。【2月11日 Record Chinaより】

中国:「金正恩暗殺説」の噂を黙認
そうしたなかで、中国版ツイッターにおいて、“北朝鮮の最高指導者となった金正恩(キム・ジョンウン)が北京で暗殺された”という噂が広まったそうですが、興味深いのは、この噂を中国当局が敢えて規制しなかったという点です。

****金正恩暗殺説」を放置した中国の真意****
先週末、北朝鮮の最高指導者となった金正恩(キム・ジョンウン)が北京で暗殺されたという噂がネットを駆け巡り、大騒動になった。
結局、彼は死んでいなかった。事の経緯はこうだ。中国のミニブログ「新浪微博(シンランウェイボー)」で10日の午前2時頃に、正恩が北京の北朝鮮大使館で撃ち殺されたという噂が流れた。これが中国政府に近い香港の報道機関で引用されたため、信憑性が高まった。(中略)

しかしこの暗殺騒動で最も興味をそそるのは、中国が噂の拡散を放置した点だ。
新浪微博はしばしば中国版ツイッターと言われる。しかし実際には、ジャーナリスト向けの教育研究機関ポインター研究所のレジーナ・マコムズが指摘する通り、「ツイッターのように自由でもないし、開放されてもいない。厳重に管理され、監視された空間だ」。

つまり地政学的な観点から見ると、中国がこの噂を黙認したのは、中国と北朝鮮の関係が必ずしもうまくいっていないことの表れだ。おそらく権力掌握の過程にある正恩の行動が、中国の期待に十分沿うものでなかったのだろう。

北朝鮮関連の情報サイト「シノNKドットコム」の編集者アダム・カスカートは、外交ニュースサイト「ディプロマット」でこう書いている。
“すべてが、中国と北朝鮮の非常に緊張した関係を示唆している。中国は金正恩に対して、中国の庇護の下で北朝鮮が軍事独裁の手を緩め、国外からの投資を受け入れることを望んでいる。しかし現状では、正恩はそうした路線を取っていない。”

中国は、金正日(キム・ジョンイル)の後継者選びで黙殺された、正恩の兄・正男(ジョンナム)を取り上げた本『父・金正日と私 金正男独占告白』をめぐる報道にも口をはさまなかった。正男とのメール交換やインタビューなどを基に日本の新聞記者が記した同著の中で、正男は金一族の世代継承を公然と批判している。しかし、それについても中国は黙認している。【2月15日 Newsweek】
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北朝鮮の改革開放で、中国が日本海進出
なかなか興味をひかれるところではありますが、“中国と北朝鮮の関係が必ずしもうまくいっていない”かどうか・・・については、よくわかりません。
両国関係の密接な繋がり、北朝鮮の中国式改革開放路線を示すニュースもあります。

****中国式改革開放への第一歩か、北朝鮮が新埠頭使用権を中国に―韓国紙****
2012年2月15日、韓国紙・ソウル経済は北京とソウルの情報筋の話として、北朝鮮が羅先(ラソン)経済特区にある羅津(ラジン)港の4~6号埠頭の50年間の使用権を中国に付与したと報じた。米華字サイト・多維新聞が伝えた。

記事によると、中国と北朝鮮は昨年末、中国が総額30億ドル(約2360億円)を投資して、羅先特区の共同開発を加速させることで合意。まずは、羅津港に7万トン級船舶の出入りが可能な4号埠頭、旅客機と貨物機が離発着できる空港、吉林省延辺朝鮮族自治州の図們市と同港を結ぶ55kmの鉄道、火力発電所などを建設、その後、鉄道の延伸と同港の5~6号埠頭の建設が行われるという。

対外的には何よりも軍を優先させる「先軍政治」の継続を宣言している金正恩(キム・ジョンウン)政権だが、こうした動きから、実際は経済発展に重点を置く考えであることがうかがえる。記事によると、北朝鮮は遼寧省丹東市と接する黄金坪(ファングムピョン)経済特区の開発を急ぎたかったが、中国の意向で羅先特区が優先された形。

中国の北部から南部までの物資輸送はこれまで、長い陸路を経て渤海沿岸まで迂回し、そこから黄海を経るルートしかなかったが、羅津港から日本海を経由すれば距離、コストともにかなりの短縮となる。同港の1号埠頭は2008年に中国が使用権を獲得し、すでに昨年1月から利用が始まっている。3号埠頭の使用権はロシアが持っている。【2月16日 Record China】
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また韓国紙・ソウル経済は、中国がこれほど羅津港の使用権獲得に熱心なのは、以前から狙っていた日本海航路の開拓が目的との見方を示しています。

“中国で日本海に1番近いのは東北部の吉林省だが、直接面しているわけではない。ロシアと北朝鮮に挟まれているため、わずかに届かないのだ。
中国は4号埠頭の建設と同時に、同省延辺朝鮮族自治州の図們市と同港を結ぶ鉄道の建設も行うとしている。これにより、中国の東北三省から羅津港、日本海を経由しての物資輸送がよりスムーズになる。”【2月17日 Record China】

中国の日本海進出が本格化すれば、海上輸送路を確保するための軍事力強化など、日本との摩擦も増えることが懸念されます。

【“厄介者” 金正男氏への送金停止?】
ところで、前掲【Newsweek】記事のラストに登場する正恩の兄・正男(ジョンナム)氏ですが、中国は彼の北朝鮮体制批判を黙認していますが、北朝鮮側はそうではないようなニュースが報じられています。

****金正男氏、マカオのホテル追い出される 送金停止で困窮か****
北朝鮮の故・金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男、金正男(キム・ジョンナム)氏が、母国からの送金が止まり金銭的に困窮しているようだとロシア誌が17日、伝えた。3代世襲に疑問を呈したことが送金停止の理由ではないかと分析している。

露週刊誌「論拠と事実」(電子版)によると正男氏は最近、宿泊費1万5000ドル(約120万円)を滞納したため、滞在していたマカオの高級ホテル「グランドラパ・ホテル」を追い出されたという。
同誌はマカオ当局筋の話を引用し、正男氏のマカオでの暮らしぶりを、カジノに明け暮れたり高級レストランで食事をするなど派手な生活だったと紹介。ところが、グランドラパ・ホテル関係者は同誌に、正男氏は「ビザのゴールドカードで(宿泊費を)支払おうとしたが、口座残高がなかった」ため、ホテル17階の部屋から出てもらった話したという。

正男氏の窮状について同誌は、正男氏が1月に東京新聞とのインタビューで、金正恩(キム・ジョンウン)氏への3代世襲について「社会主義に符合しない」などとコメントしたことがきっかけではないかと分析している。
また同誌は、正男氏の滞在に神経をとがらせているマカオ当局者の次のような談話も伝えている。「彼(正男氏)の身に何が起きるか分からない。爆殺や殺し屋を雇っての暗殺計画がないとも限らない。(マカオでの)面倒は、ごめんだ」【2月17日 AFP】
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改革開放主張、中国の庇護下に
正男氏は北朝鮮にとっては厄介者ですが、中国にとっては、将来的に“切り札”になる可能性もある人物です。
“(ロシア週刊紙「論拠と事実」の)記者がマカオのカジノ前で護衛に伴われた正男氏を目撃していることから、正恩氏が病気で倒れるような事態に備え、中国が親中派の正男氏に庇護を与えているとの見解を伝えた。”【2月18日 読売】

糖尿病や高血圧を患っているとされる正恩氏ですので、健康問題は十分にありえる話ですが、権力継承がうまくいかず北朝鮮が混乱状態に陥るケースもまたありえます。

その正男氏は日本への偽名入国事件などで、日本には幾分馴染みがある人物ですが、“遊び人”イメージとは別に、中国式の改革開放路線を強く主張しています。彼がトップに就けば、北朝鮮社会も随分と変わるだろうということは想像できます。

****金正男にやらせろ! 意外とまともな人物****
日本で話題の本『父・金正日と私 金正男独占告白』(五味洋治著、文芸春秋社刊)は、北朝鮮の新指導者・金正恩の異母兄である金正男が日本の記者と交わした長年の“メール対話”を紹介したものだ。北朝鮮を知る貴重な第1級の最新資料である。韓国の本屋でも山積みされ関心を集めている。

読んでみて最も印象的だったのは、金正男がきわめてまともな人物だったことだ。スイスでの9年の留学を含め海外生活が長く(現在は中国在住)、国際情勢に明るく、北朝鮮の実情を客観的にとらえており、自分についてもおごりなどなく終始、冷静な語り口だ。すこぶる知的でマナーがよくユーモアもある。

金正男についてはその容貌やファッション、日本での偽名入国事件などから“遊び人”で“ドラ息子”風のイメージがあったが、実際はまったく違うのだ。北朝鮮の将来については中国式の改革・開放しかないことを繰り返し語りながら「祖父(金日成)に容貌だけ似ている正恩がどれだけ人々を満足させられるか心配です」という。

「資本主義青年」になったため父(金正日)から疎まれたというが、実に親近感を感じさせる人物だ。本人はその気はまったくないと言っているが、読後感は「金正恩ではなく金正男にやらせろ!」である。【2月4日 産経】
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