孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダン 地方からの支援の要請

2012-02-23 21:30:45 | スーダン

(南スーダン 井戸水を飲む子供たち “flickr”より By babasteve http://www.flickr.com/photos/babasteve/5769500460/

【「援助が中央に集中し、地方との格差が生まれている」】
昨日に続き、南スーダンでの日本PKOの話題。
陸自によPKOは、限定的な武器使用を定めた現行基準では、治安が不安定な地域で活動することは不測の事態に対応できなくなる恐れがあるとの判断もあって、治安が比較的良好とされる首都ジュバ周辺とされています。

当然ながら、首都ジュバはインフラについては恵まれた地域で、地方こそ支援が必要とされているとの指摘・要望が以前から、国連や現地からも出されています。

****自衛隊、南スーダンでPKO活動開始 地方にもニーズ****
昨年7月に独立した南スーダンの国造りは始まったばかりだ。インフラが貧弱で、生活を支えるのは家畜だけといった地方も少なくない。国連平和維持活動(PKO)にあたる陸上自衛隊の主力部隊が首都ジュバで活動を開始したが、地方にこそ支援が必要との声も聞こえる。

■「道路つくって」
赤茶けた土煙を上げ、車を蛇行させながら走らせる。凹凸が激しい。至るところに車が乗り捨ててある。途中で車が悲鳴を上げ、動かなくなったのだろう。首都ジュバから200キロの距離を7時間かけ、ジョングレイ州ジャレに入った。
ジャレ周辺は人の気配が消え、ゴーストタウン化した集落が10キロ以上続いていた。破壊され、焼かれた民家も点在する。

ジャレ近くのディンカ族の村パペールでは昨年12月、ムルレ族数百人による襲撃を受けた。200人いた住民は再来を恐れてほとんどいなくなった。周辺では100軒以上の家が焼かれ、45人が死亡したという。村民のアトッチさん(37)は、母親が銃殺された。「母は孫6人を逃がした後に捕まった」という。 
村周辺に治安部隊の姿はほとんどない。人々は銃で自衛する。アニャングさん(32)は兄(40)を殺され、40頭の家畜を奪われた。残されたのは子牛1頭だけ。それでも毎日、自動小銃を持って放牧する。「この牛は絶対に守る」

この州の対立の火だねは家畜だ。これまでもたびたび家畜の奪い合いが起き、この地に住むムルレ、ロウ・ヌエル、ディンカの民族が三つどもえの大規模な武力衝突を繰り返してきた。政治的な背景は薄いとされる。南スーダンは北部のスーダンから分離・独立を果たしたが、長く続いた内戦の影響で銃器は容易に入手できる。
紛争は昨年末から激化し、これまでに3千人以上の死者が出たとの情報もある。国連の推計では約14万人が生活の基盤を失った。

ジョングレイ州に舗装道路はない。わずかなデコボコ道も4月から10月まで続く雨期には通行不能になる。マニャング州知事は、「道路が紛争を解決する鍵だ」と強調する。
道路が極めて貧弱なため、住民はほかの地域から隔絶されて暮らす。唯一の生活の糧である家畜をめぐって争いごとが起きても、「治安部隊が到達できない場所が多すぎる」(マニャング州知事)といい、政府や州などが関与することができないのが実情だ。
さらに、道路がないため、電気や医療サービス、清潔な水の確保といった基本的なインフラ整備はままならない。牧畜に代わる産業育成のめども立たない。

日本も参加する国連南スーダン派遣団(UNMISS)も、この州の安定には道路整備が不可欠との認識を示しているが、まだ手つかずの状態だ。
「道路整備が将来の希望につながる。首都よりも地方でのインフラ整備が急務なのを分かって欲しい。日本の自衛隊にはジョングレイにも来てもらいたい。民族は殺し合っているが、外国人が襲われたことはない。安心して欲しい」。マニャング州知事はそう訴える。

■自衛隊は治安優先
日本政府は昨年秋、ジュバ以外に北部のマラカルでも現地調査をした。だが、民族間衝突などの危険があるうえ、雨期には陸路が寸断されて補給が難しいと判断。当面の活動場所を比較的治安が安定しているジュバ周辺に決めた。
派遣隊員は拳銃や自動小銃、機関銃を携行するが、現行の基準では武器の使用は隊員の身を守るためなどに限られる。政府内ではジュバ以外での活動も検討されたが、武器使用基準が緩和されないなか、治安が不安定な地域で活動することは、不測の事態に対応できなくなる恐れがあるとして見送られた経緯がある。

国連は日本政府の方針に理解を示しながらも、ジュバの北方約150キロにあるジョングレイ州のボアでのナイル川の港整備などを要望しているという。
現地の外務省関係者によると、マラカルではインドの施設部隊が空港の整備を担当。韓国軍がボアでの活動の可能性を探っているとの情報もあるという。

国際協力機構(JICA)によると、南スーダンでは計8千キロの幹線道路のうちジュバ中心部などの60キロしか舗装されていない。JICAは2006年からジュバでの支援を始め、ナイル川にかかる新しい橋や環状道路の建設計画などをつくった。だが「援助が中央に集中し、地方との格差が生まれている」(花谷厚南スーダン事務所長)として、今月からマラカルに職員を交代で派遣し、道路整備などを進める計画だ。

南スーダンに詳しい大阪大大学院の栗本英世教授(文化人類学)は「ジュバ周辺は安全で開発も比較的進んでおり、国連のPKOとして道路を造る必要はない。道路が通じていない地域はたくさんあり、自衛隊はそうした困難な場所で活動すべきだ」と指摘する。

派遣部隊の幹部は「ジュバを拠点にどこまで行けるか考えたい」と話し、活動範囲をどこまで広げられるか検討を始めている。具体的には、ジュバとボアを結ぶ道路など複数の幹線道路が候補に挙がっている。
ただ、部族や民族の衝突はいつどこで起きるか予測が困難なうえ、相手が一般人のため、紛争に遭遇した場合の対応も難しい。武器使用が制約される自衛隊としては、危険な場所は避けるしかないのが実情で、防衛省幹部は「活動は治安の安定した地域に限らざるをえない」と話す。【2月23日 朝日】
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現状ではやむを得ない選択であり、先ずは可能なところから・・・とはなりますが、今後については、現地のニーズ、PKOが必要とされている地域は基本的に治安に問題があり、往々にして現地の紛争に巻き込まれる可能性があること、その場合、どのように対応するのか(人道的判断で武器使用を含めて紛争に関与するのか、眼前の殺戮を見捨てでも中立的不介入を貫くのか)・・・そうした面を検討していく必要があります。

【「財布を置き忘れても取られたことがない」】
部族間の衝突が続いているジョングレイ州で活動している日本人や団体についても報じられています。

****ヌエル族語「辞書」手作り=部族衝突研究の日本人―南スーダン****
国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊が活動する南スーダンの首都ジュバから約200キロ離れたジョングレイ州の州都ボルで、同州で歴史的に続く牛の強奪を原因とした部族衝突の研究を1人の日本人女性が続けている。地元部族の家庭に滞在し、ヌエル語習得のため、自分用の「辞書」を作る奮闘ぶりだ。

一橋大学で博士号取得を目指す日本学術振興会特別研究員の橋本栄莉さん(26=新潟県出身)は、ボルのヌエル族の民家に通算17カ月、ホームステイし、少なくとも1920年代から続く部族衝突を研究中だ。家には電気や水道はなく、民族衝突で親戚が逃げてきたため、現在は庭でテント暮らしを続けている。

平和構築について勉強を始めた橋本さんは「実際の人々の姿が見えなかった」と現地入り。「かつては部族の間で衝突を収拾するメカニズムがあったが、今は彼らの中で収拾ができない状態になっている」と話す。
ボル周辺でも部族衝突が起きているが、市内は極めて平穏という。「財布を置き忘れても取られたことがない」といい、現地の人は非常に親切だ。滞在中、腸チフスに何度かかかった以外、40度を超す暑さの中でも健康に問題はないという。【2月23日 時事】
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井戸を掘り治安部隊の活動を定着させる
もうひとつはNGO「ピース・ウィンズ・ジャパン」の活動です。
「ピース・ウィンズ・ジャパン」については、外務省からの補助金不正受給問題、エルセラーン化粧品との繋がりなど、問題が指摘されることもあります。
また、02年には週刊文春が、「彼らは支援に来たのか、それとも遊びに来たのか」と現地で酷評されていると、パキスタンでの「ピース・ウィンズ・ジャパン」の活動を厳しく批判しています。

代表の大西健丞氏は、田中真紀子外相と鈴木宗男議員の“バトル”の引き金にもなったことでも有名です。
“2001年にはアフガニスタンで国内避難民支援に携わり、同年12月のアフガニスタン復興NGO東京会議の開催に奔走。翌2002年1月に、政府が主催したアフガニスタン復興支援国際会議への出席を予定していたが、会議前日に外務省から出席を拒否された。記者会見でその不当性を訴え、背後に鈴木宗男氏の「圧力」があったと指摘したことで政治問題化し、国会での参考人招致も受けた”【ウィキペディア】

NGOとは言っても、志や熱意だけでは活動できません。税金が自動的に流れてくる政府活動ではありませんので、どのように活動資金を調達するかが現実問題となります。
大西氏の場合、積極的に政府、経済界などに協力を求める手法をとっていますが、その方法・関係がときに問題ともなるようです。

大西氏と「ピース・ウィンズ・ジャパン」については、判断出来るほどの情報を持ち合わせていませんが、自衛隊が活動をためらう紛争の現場で、和平構築に向けた活動を行っていることが報じられています。

****牛戦争」最前線で奮闘=井戸掘りで和平寄与―日本のNGOに期待・南スーダン****
南スーダンの東部ジョングレイ州で歴史的に続く牛の強奪を背景とした部族衝突の最前線で、日本のNGOが井戸掘りなどの支援活動に奮闘している。約1世紀に及ぶ争いの中、行き場もなく、平和の到来を願うしかなかった人々の期待を担っていた。

国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊が活動する首都ジュバから四輪駆動車で約4時間のジョングレイ州の州都ボルから北方にさらに約1時間。かやぶき屋根が焼け、土壁だけが残る民家が何軒も無残な姿をさらしていた。南スーダンの最大部族ディンカ族が住むパンヤチ村。数十キロ離れて接するムルレ族の襲撃を毎年のように受けてきた。

地元の人によると、昨年11月の襲撃では、武装したムルレ族の若者ら約350人が夕方に乱入、村人約40人を殺害したほか、生活の糧である約500頭の牛や子供15人を強奪した。多くの住民は避難したが、村に残るマミョク・アクトさん(50)は「部族衝突に終止符を打つ効果的な策を望んでいる」と訴えた。

近くのマジャク村に住むボヨル・クルさんは「(南スーダン政府による)部族の武装解除は過去に失敗しており、国際社会の支援がほしい」と懇願する。「治安部隊が回収に来れば、武器は隠す。自衛のための武器は手放せない」と述べる村人もおり、和平への道は険しい。

こうした厳しい状況を受け、ボルを拠点に日本人職員3人を配置して支援活動を行うピース・ウィンズ・ジャパンは同州内で約150本の井戸を掘削しており、パンヤチ村でも近く井戸の掘削を開始する。南スーダン政府も重い腰を上げ、村に治安部隊の詰め所を建設。井戸はその近くに掘り、治安部隊の活動を定着させることで、和平構築に少しでも寄与することを願っている。【2月23日 時事】
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