
(ミャンマー北部、中国に接するカチン州の州都ミッチーナ カチンの重要な祭りであるマナオ祭りに向かうカチンの女性 “flickr”より By fredalix - อาลิกส์
http://www.flickr.com/photos/fredalix/3705928235/in/photostream/ )
【「自由、公正な選挙実施が不可能」】
11月7日に予定されているミャンマーの総選挙については、民主化を求める勢力には極めて不利な条件で行われ、また、スー・チーさんなどの民主化勢力は排除されており、実質的に軍事政権の維持を狙ったものとの国際的批判が強いところですが、民主化運動と並んでミャンマーが抱えるもうひとつの問題、少数民族問題も総選挙に連動して不穏な雰囲気を見せています。
****ミャンマー:総選挙5州一部断念 少数民族武装組織拠点****
ミャンマー選挙管理委員会は16日、11月7日に予定される総選挙をカチン、シャン、カヤー、カイン(カレン)、モンの5州の一部で実施しないと発表した。5州は少数民族武装組織の拠点で、政権は武装組織支配地域での選挙実施を断念したとみられる。
これで20年ぶりの総選挙はアウンサンスーチーさん率いる民主化勢力だけでなく、政権の意向に沿わない少数民族も排除して行われることになる。米国など国際社会は政権への非難を強めそうだ。
選管は中止の理由について「自由、公正な選挙実施が不可能」と説明。5州ではシャン州南部の「ワ州連合軍」(兵力約2万人)など、政権と停戦合意は結んでいるものの武装解除に応じない少数民族武装勢力が拠点としている。またカイン州の「カレン民族同盟」など、政府軍との戦闘を継続している組織もある。
中国国境沿いの少数民族は民族的にも中国に近く、貿易や投資受け入れなどで中国側と結びついている。軍政が昨年8月、コーカン族を攻撃した直後、中国は異例の強い調子で政権に自制を要求した。しかしミャンマー国営紙によると中国の胡錦濤国家主席は今月8日、訪中したタンシュエ国家平和発展評議会議長に「国境付近の反政府勢力を支援しない」と言明した。
軍事政権は主席の発言を「中国が少数民族への武力行使を容認した」と、武装組織への大規模な軍事攻撃を決断しつつある可能性がある。【9月17日 毎日】
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軍事政権は多くの少数民族と停戦合意を結んできましたが、武装組織の政府軍編入を強く求めており、少数民族側の多くがこれに反発しています。
今回措置は、このまま総選挙に踏み切れば、反発を強める少数民族武装組織による妨害行為が起きかねないと軍政側が判断したと推測されています。
(「自由、公正な選挙実施が不可能」なのは5州に限った話ではありませんが・・・)
【大規模な掃討の準備?】
ただ、軍事政権側が少数民族の抵抗を放置する意思はないでしょうから、遅かれ早かれ「武力」に訴える形で少数民族の抵抗を抑え込むことが予想されますが、その時期が総選挙前に早まるかも・・・という報道もありました。
タイとの国境閉鎖が異例の長期に及んでいることが、少数民族掃討作戦の準備ではないかと見られているそうです。これまでも数日間の国境閉鎖はありましたが、これほどの長期の閉鎖は15年ぶりとか。
****活気消え 漂う緊張感 ミャンマー・タイ国境閉鎖から1力月半*****
タイ北西部でミャンマー(ビルマ)との国境閉鎖が異例の長期間に及んでいる。人や物の流れの拠点だけに、市民生活への影響が広がる。国境を閉鎖したミャンマー側は、合意なしにタイ側が国境の川の護岸工事を始めたことが理由だと説明するが、11月の総選挙を前に、軍事政権への抵抗を続ける少数民族勢力の大規模な掃討に踏み切る準備との見方も浮上し、緊迫した空気も流れている。(メソト=藤谷健、バンコク=山本大輔)
武装勢力掃討の前兆か
長引く国境閉鎖について、タイに拠点を置く亡命ビルマ人組織の間では、ミャンマー軍政による少数民族武装組織の大規模な掃討作戦が始まる前兆だとの見方が広がっている。
多くの少数民族を抱えるミャンマーで、軍政は武装組織を持つほとんどの少数民族と停戦合意を結び、その民族が持つ武装組織の国境警備隊への編入を求めてきた。しかし、多くはこれを拒んでいる。タイと国境を接するカイン州のカレン民族同盟(KNU)とモン州の武装組織は、国境警備隊への編入に反対している勢力だ。
反軍政のイラワジ誌(電子版)は1日、関係筋の話として軍政がKNUやモン族の武装組織を掃討する計画を進めていると報じた。編入に反対している民族のなかで、大きな兵力を持つワ族やカチン族への圧力を強めるために、兵力が限定的なKNUやモン族を先にたたく狙いとみられるという。カイン州とモン州ではここ数力月、爆弾事件が相次ぐなど治安が急速に悪化している。
本格的な掃討作戦を開始すれば各地で戦闘が起きるのは確実で、軍政は総選挙(11月7日投票)の実施を優先して少数民族武装組織の国境警備隊編入を後回しにする意向とみられていた。しかし、ここに来て方針を転換した可能性が高い。カレン族のなかでKNUから分裂していち早く国境警備隊への編入を決めた「民主カイン仏教徒軍」の一部が上層部に反旗を翻すなど、少数民族の反軍政の動きが拡大する兆候があるためだ。
権力維持のために総選挙を無事に実施したい軍政は、総選挙の妨害を防ぐために強攻策に乗り出した可能性がある。ただ、掃討作戦が始まれば、戦闘を逃れ難民がタイ側に流出するなど、国境地帯の混乱が拡大する恐れがある。【9月9日 朝日】
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今回のカチン、シャン、カヤー、カイン(カレン)、モンの5州の一部で総選挙を実施しないという措置が、総選挙前の武力鎮圧を断念したということなのか・・・よくわかりません。
いずれにしても、「中国が少数民族への武力行使を容認した」と軍事政権側は判断していますので、時間の問題ではあるでしょう。