孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中東和平交渉  「入植凍結」期限切れ 危ぶまれる交渉継続

2010-09-28 22:27:53 | 国際情勢

(壁で守られたユダヤ人入植地 “flickr”より By activestills
http://www.flickr.com/photos/activestills/4528062332/ )

【アメリカ 交渉継続に向け必死の説得】
イスラエルとパレスチナ自治政府の直接和平交渉は難問が山積していますが、さし当りの第一関門として注目されていたイスラエルによるヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地の建設凍結措置が26日で期限切れとなりました。
仲介役のアメリカは、「凍結の3カ月延長」の妥協案を提示しましたが、イスラエルは応じていません。

****中東和平:米、入植凍結延長に必死 イスラエルと電話協議*****
イスラエルによるヨルダン川西岸でのユダヤ人入植凍結期限(27日午前0時=日本時間同日午前7時)を前に、米国務省は26日、クリントン長官がネタニヤフ・イスラエル首相と電話で協議し、ミッチェル中東特使もニューヨークでパレスチナ側と協議したことを明らかにした。イスラエルが凍結を延長せず、再開から1カ月足らずで中東和平交渉が決裂すれば、仲介した米国の指導力不足を国際社会にさらすことになり、オバマ政権は交渉継続に向けた必死の説得を続けている。

期限は過ぎたが、ネタニヤフ首相は凍結延長を発表していない。一方でパレスチナ側は入植活動が再開されれば、交渉打ち切りの姿勢を崩していない。
アクセルロッド米大統領上級顧問は26日放映の米ABCテレビの番組で、中東不安定化への「岐路にある」との現状認識を示し、イスラエルとパレスチナが「折り合うことに望みを抱いている」と語った。
2日に再開した和平交渉では、首脳同士の交渉を2週間ごとに行うことで合意したが、14、15日に開かれたのみだ。
オバマ大統領が23日の国連総会一般討論で「イスラエルは凍結を延長すべきだ」と強調し、中東和平実現の重要性に演説時間の大半を割いたのも、危機感の表れと言える。
仲介役として正念場を迎えた米国は、「凍結の3カ月延長」の妥協案を提示する一方、凍結期限を「26日から30日までの間」(クリントン長官)とあいまいにし、事態の打開を図ろうとしている。【9月27日 毎日】
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最初から誰もうまくいくとは思っていなかった中東和平交渉であり、アメリカがどういう思惑で乗り出したのかよくわかりませんが、始めた以上は、オバマ政権としても中間選挙前のこの時点での、入口段階での決裂は避けたいところでしょう。
アメリカのミッチェル中東和平担当特使が27日夜にイスラエルに向かっています。

【アッバス議長 即座の交渉停止はしない】
イスラエル政権内では、一部の大規模入植地での建設を再開する一方で、その他の入植地では建設を許可しない非公式な「部分凍結」案が検討されているとも報じられていますが、これも連立を組む極右政党などの同意は得られていません。
凍結延長がされなければ交渉を打ち切るとしてきたパレスチナ自治政府のアッバス議長は、直ちに決裂させるのは避けていますが、実際に入植工事が開始されればどうなるか・・・。

****入植凍結、期限切れ 「解除後」の交渉に含み 中東和平*****
 ■アッバス議長、柔軟姿勢
イスラエルとパレスチナ自治政府の直接和平交渉で焦点となっているヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地の建設凍結措置が26日夜、期限切れを迎える。仲介役の米国が双方に交渉継続を働きかける中、自治政府のアッバス議長は、凍結が解除されても交渉を即座に停止することはないとの考えを示した。
                   ◇
26日付の汎アラブ有力紙アルハヤートでのインタビューでアッバス氏は、凍結が延長されなかった場合、「自治政府やアラブ連盟に持ち帰って意見を聞く」と述べ、交渉を停止するかどうかの結論を急がない姿勢をみせた。
アッバス氏のこうした態度の背景には、交渉を破綻(はたん)させたとの“汚名”は着たくないという思惑がある。また、自治政府内での地盤が決して強固ではないアッバス氏としては、期限切れ直後に交渉を離脱して後ろ盾である米国のメンツをつぶすのは得策ではない、との判断もあるとみられる。
ただ、西岸の一部の入植地では、すでに重機が搬入され、期限切れと同時に住宅などの建設を始められる態勢がとられている。建設が再開されればパレスチナ世論の硬化は避けられず、仮に交渉が継続されてもアッバス氏が十分な指導力を発揮できるかは不透明だ。

イスラエルのネタニヤフ首相は同日、入植者やその支援者らに向け、「節度と責任」をもって行動し、パレスチナ側を挑発しないよう求める声明を発表した。
入植凍結期限をめぐっては、米国が3カ月程度の延長を提案したとされるほか、ネタニヤフ氏も一部の小規模入植地で凍結を続ける妥協案などを模索したとみられる。しかし、こうした案は、ネタニヤフ氏が所属する右派政党リクードの入植積極派や、連立相手でリーベルマン外相が党首を務める極右政党「わが家イスラエル」などの理解を得られていない。

一方、東エルサレムで22日、パレスチナ人男性が入植地の警備員に射殺された事件をきっかけとした衝突は、その後も散発的に発生。25日には西岸のヘブロンやベツレヘムで投石や入植反対デモなどが行われ、緊張が高まりつつある。
入植凍結期限はイスラエル軍の公式文書では9月30日とされていたが、入植推進派への配慮などから、昨年11月の入植凍結開始から10カ月となる今月26日が期限となった。【9月27日 産経】
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右派のネタニヤフ氏が首相となり、極右政党「わが家イスラエル」のリーベルマン氏が外相となった時点で、中東和平の進展への期待は殆ど見込めない状況でしたが、自分自身が右派強硬論の立場にあるネタニヤフ首相が何らかの思惑(中東和平の歴史に自分の名前を残したいとか・・・)で交渉を進める方向に動けば、同じ右派だけにある程度入植積極派を抑え込める・・・という可能性はあります。

アッバス議長の立場は脆弱で、その正当性、パレスチナ人民を代表する資格すら怪しい部分があります。
自治政府議長としての任期は20カ月も前に本来は切れています。
しかも、対立組織ハマスが実効支配しており、自治政府の支配が及んでいないガザ地区は、パレスチナ自治政府の人口の40%を占めています。そのイスラム原理主義の武装組織ハマスはイスラエルとの交渉に反対しています。
常識的にはアッバス議長にはイスラエルに譲歩する余地は殆んどありません。これまでもイスラエルに対する弱腰を批判されてきているだけになおさらです。

【ファタハとハマス 交渉再開】
悲観的なニュースが多いなかで、やや期待を抱かせるものとしては、アッバス議長のファタハと対立するハマスとの間で、11か月ぶりに協議が再開されたという報道です。
****パレスチナ和解協議「多くで合意」 ファタハとハマス****
分裂が続くパレスチナの主要組織ファタハとハマスが24日、11カ月ぶりにシリアの首都ダマスカスで和解協議を再開し、25日未明に「多くの点で合意に達した」との共同声明を発表した。だが、これで最終合意に向かうかは不透明だ。
パレスチナでは、2007年にハマスがガザを武力で制圧し、ファタハが拠点とするヨルダン川西岸と分裂。昨年1月から、和解に向けた協議が始まった。
仲介役のエジプト政府が示してきた和解案は、もともと今年1月に予定されていたパレスチナ自治評議会(国会)と自治政府議長(大統領)の選挙を半年延期し、それまではファタハとハマスが8人ずつ指名した合同委員会が統治するというものだった。
昨年10月26日にカイロで合意の署名式典が開かれるといったん発表されたが、直前になってハマス側が拒否し、協議は頓挫。治安権限をめぐる対立が解けなかったためとみられる。分裂が解消されないまま選挙は期限なしで延期され、実施されていない。
今回の共同声明は「エジプト案で対立した点を再検討し、その多くで合意した」としただけで、具体的な合意内容などは明らかにされていない。一方で、他のパレスチナ非主流各派も含めた協議を近く行うとして、「前進」を強調している。【9月25日 朝日】
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両者間で「合同委員会」といったものでの合意ができればもちろんですが、少なくともハマスがイスラエルとの交渉を妨害しない立場にたつことになれば、中東和平交渉には大きな前進です。

コメント
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