
(タイのバンコク郊外メークロン 写真中央の通路部分は線路です。 線路上のマーケットは列車が近付くと片づけられ、列車が通り過ぎるとまた店開き。 高速鉄道ではこんな訳にはいきません。個人的には、こんな線路上マーケットの方が好きですが・・・・
“flickr”より By Wunkai http://www.flickr.com/photos/wunkaiwang/4389490796/)
【昆明からシンガポール】
先月末にベトナム中部のホイアン・フエを旅行しました。
南北に長いベトナムですが、空路で南部のホーチミンシティ(旧サイゴン)に入り、時間節約のため目的地ホイアンへは飛行機を利用、帰路も飛行機でホーチミンシティに戻る形でした。
そのベトナムでは「南北高速鉄道」が計画されており、ベトナム政府が日本の新幹線方式の採用を決定していましたが、資金的に無理があるとの理由でベトナム議会が政府案を否定して、計画は仕切り直しになっています。
一方、インドシナ半島で日本と競うように支援に力を入れている中国ですが、その中国支援でタイが南北を貫く高速鉄道建設に乗りだすそうです。
将来的には、中国の昆明からラオス・タイを経て、マレー半島先端シンガポールに至るルートが想定されているとか。
****タイ:政府が南北に走る高速鉄道建設の方針 中国が支援*****
タイ政府は中国の支援で、国土を南北に貫く高速鉄道の建設に乗り出す方針を固めた。中国南部雲南省・昆明からラオスを経てタイに至る、中国が構想する「南北回廊」鉄道の一部となる。実現すればインドシナ半島は、急速に整備が進む中国の高速鉄道網に組み込まれ、中国は日本や米国を抑えて地域への影響力を独占的に強める可能性がある。
タイのアピシット首相は万博見学のため訪れた上海で5日、中国の支援でタイ国内の高速鉄道建設に乗り出すと表明。政府は議会の承認を得たうえで、中国側と具体的な協議に入る方針だ。
高速鉄道の最高時速は200キロ以上。ラオスとの国境から首都バンコクまでの約600キロが第1期、バンコクから南部のマレーシア国境までの約1000キロが第2期区間で、資金は3000億バーツ(約8100億円)程度と見積もられている。
タイ政府によると中国はラオスと、すでに昆明からビエンチャンまでの直通鉄道建設で合意しており、タイ国内の高速鉄道と接続する。現在、タイ国鉄のレール幅は1メートルだが、新たに建設される鉄道は中国国鉄と同じ1・435メートルで、中国からの直接乗り入れが可能になる。中国は最終的には鉄道をマレー半島南端のシンガポール方面へ延長させたい意向とみられる。
中国はまた、ミャンマーとの間でも、高速鉄道建設に向けた準備協議を進めていると明らかにしている。
インドシナ半島では日本政府がベトナム、ラオス、タイ、ミャンマーを主に道路で東西につなぐ「東西回廊」の構築を支援している。これに対し中国は自国と同地域を直接つなぐ「南北回廊」の整備に力を入れる。
中国の資金で域内のインフラ整備が進むことを東南アジア側も歓迎する。しかしタイやラオスは自国内に高速鉄道を建設するほどの需要はなく、鉄道建設は中国側の権益確保の色合いが濃い。東南アジア諸国連合(ASEAN)地域には一方的に影響力を拡大する中国への警戒感も生じ始めている。【9月8日 毎日】
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“鉄道建設は中国側の権益確保の色合いが濃い”・・・日本との支援競争を含め、なんだか日露戦争当時の東清鉄道や南満州鉄道を彷彿とさせる感も。
それはともかく、万事にのんびりした国ラオスにはこれまで鉄道がなく(フランス植民地時代に貨車輸送はあったようです)「陸の孤島」状態でしたが、つい先日の09年3月5日、タイの資金援助でタイ国境のノンカーイとメコン川を越えてラオス側のタナレーンを結ぶ5.3kmが、ラオス国内初めての鉄道として誕生しました。(タイ側から出た最初の列車には、タイのシリントン王女が乗車されたとか)
すでにこの時点で、タナレーンから首都ビエンチャンを結ぶ9kmにも着工しています。
今後ラオスは、東南アジアと中国を結ぶ交通の要衝となることが期待されています。
ただ、建設後の保守・管理は大丈夫でしょうか?ちょっと心配。
【中国国際援助への幻滅】
欧米諸国と違って内政に口出ししないということで、アフリカなどで急拡大した中国の援助についても、汚職や安全性の点で問題が指摘されています。今、アフリカではアメリカの巻き返しが行われているとも報じられています。
****中国に幻滅するアフリ力****
中国への幻滅はアンゴラとナイジェリアでとりわけ大きい。両国は数年前まで、無条件の開発融資の約束や内政に口出ししない方針に魅了され、中国寄りの姿勢を取っていた。中国とナイジェリアの2国間貿易の総額は06~08年の間に倍増し、70億ドルに達した(08年のアメリカの対ナイジェリア貿易の総額は420億ドル)。
だがナイジェリアのウマル・ムサ・ヤラドゥア大統領(今年5月に死去)は、スキャンダルや進行の遅れを理由に多くのプロジェクトを中止した。アメリカはこのチャンスを見逃さなかった。米商務省によれば、今年に入ってから対ナイジェリア輸出は48%増大。ナイジェリアからの輸入(大部分は原油)も16%拡大している。
アンゴラでも、状況は同じだ。同国の汚職監視団体マカの創設者であるラファエル・マルケスデモライスに言わせれば、「中国との取引にはびこる汚職や説明責任の欠如が、より持続可能な長期的関係を結ぶ上で障害になっている」。
いい例が75年の独立以来、初の医療機関として首都ルアンダに建てられた総合病院だ。中国企業が建設を請け負ったこの病院は「落成式から4年で崩壊し始めている」と、マルケスデモライスは話す。総合病院は7月、施設の安全性に問題があるとして患者とスタッフを避難させた。
アメリカは、アンゴラが中国に抱く幻滅もうまく利用している。米当局者は6月、アンゴラ政府高官と貿易強化について会談。09年にIMF(国際通貨基金)が決定したアンゴラヘの資金援助を引き合いに出し、欧米金融機関が新たな融資を行う可能性も示唆した。【9月8日号 Newsweek日本版】
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病院の壁がはげ落ちるのならまだしも、高速鉄道の場合は安全上の問題は致命的です。
【インドシナ半島で進む鉄道インフラ整備計画】
ベトナムに話を戻すと、“南北高速鉄道のほかに、北方の中国、西方のカンボジアと鉄道網を接続する計画がある。ホーチミンとカンボジアの首都プノンペンを結ぶ鉄道にはアジア開発銀行(ADB)が、一部融資している。中国南部、雲南省の省都・昆明や、広西チワン族自治区の首府、南寧とベトナム北部を結ぶ鉄道計画も進められている。国内だが、ホーチミンとメコンデルタ地帯のカントーを結ぶ鉄道建設は韓国が支援している。”【5月29日 Oxford Analytica】 とのことです。
今後、インドシナ半島の鉄道インフラは急速に進展しそうです。
そして、その中心にいるのは、いろいろ問題はあるものの中国であることは間違いないでしょう。