
(昨年、ガザ地区の海辺で行われたギネス挑戦「一斉たこ揚げ」の様子 戦闘だけでなく、こうした穏やかな生活もあることで救われるような感じもしますが、混迷する現実の出口ままだ見えてきません。
“”より By Plastic artist and free lance photographer BASEL E
http://www.flickr.com/photos/31315139@N03/3778039296/)
【アメリカの「保証」】
パレスチナ問題を巡る交渉は、イスラエル側の従来方針を変えない姿勢などもあって、アメリカが仲介に入る間接交渉が進展していませんでしたが、イスラエル・ネタニヤフ首相の訪米・オバマ米大統領の会談あたりから、イスラエルの希望するイスラエル・パレスチナの直接交渉に移行する方向での調整が行われていました。
しかし、条件が整わないままでの直接交渉にはパレスチナ自治政府側が反発し、その実現は困難にも思われていました。
“ムバラク大統領はこの日、カイロで米国のミッチェル中東特使、パレスチナ自治政府のアッバス議長、イスラエルのネタニヤフ首相と、それぞれ個別に会談。会談後、エジプトのアブルゲイト外相は、「直接交渉に移る条件を欠いている」と語った。
アッバス議長は17日付ヨルダン紙で、(1)東エルサレムを含む占領地の返還を原則とした国境確立(2)イスラエル軍撤退後に外国軍が治安維持に当たるとの合意--の2点が直接交渉の条件だとした。
パレスチナ側は、イスラエルが凍結期限後に入植地での建設再開を示唆したことと、東エルサレムで無許可建築物の取り壊しを再開したことに強く反発している。
一方、不安定な右派連立政権の運営を強いられるネタニヤフ首相は間接交渉で成果を国民に示せないまま、建設凍結を延長するのは困難な情勢。国境問題などで立場をあいまいにしたまま「直接交渉」という成果が欲しいところだ。米国がアラブ連盟などの協力を仰ぎながら、「調停案」を探る努力が続きそうだ。
両者の直接交渉は08年12月、イスラエルのガザ侵攻で中断、ミッチェル特使が仲介する形で今年5月、間接交渉が再開した。間接交渉の期限は、9月末に設定されている。”【7月19日 毎日】
しかしここにきて、アメリカの強い要請があって、直接交渉入りの流れができてきています。
****アラブ連盟:中東和平で外相級会合 直接交渉の支持決める*****
アラブ連盟(本部カイロ)は29日、パレスチナとイスラエルの和平交渉問題に関する外相級会合を開催し、米国が強く開始を求める直接交渉を支持する方針を決めた。交渉開始時期は、同会合に出席していたアッバス・パレスチナ自治政府議長に一任した。決定を受け、直接交渉に難色を示してきたアッバス議長への受け入れ圧力は、さらに高まった。
会合後に記者会見したカタールのハマド首相は直接交渉の支持を確認。アラブ連盟の立場を説明したオバマ米大統領あての書簡を、駐エジプト米大使に託したと明らかにした。アラブ連盟のムーサ事務局長は支持理由について、オバマ大統領がアッバス議長あての書簡で直接交渉に関する一連の「保証」を行ったためと説明した。
パレスチナとイスラエルが米国の仲介で実施中の間接和平交渉はアラブ連盟が5月初めに承認、期限は9月まで残っている。パレスチナ側によると、オバマ大統領は最近の書簡で「パレスチナ国家の支持には、直接交渉が必要」と伝え、移行を求めていた。
オバマ政権の動きに対し、イスラエル側は受け入れ姿勢を示しているが、アッバス議長は、ユダヤ人入植地建設が完全凍結されておらず、パレスチナ国家樹立へのイスラエル・ネタニヤフ政権の支持が無いことなどを理由に、難色を示していた。
米国はエジプトなど親米アラブ諸国にも直接交渉開始を承認するよう求めていた。【7月29日 毎日】
*****************************
“オバマ大統領がアッバス議長あての書簡で行った直接交渉に関する一連の「保証」”なるものがどういうものかが問題ですが、以下のようにも報じられています。
****米大統領が圧力=直接交渉への移行で―パレスチナ高官*****
パレスチナ自治政府高官は31日、オバマ米大統領がアッバス議長に書簡を送り、中東和平の間接交渉から直接交渉への移行に応じなければ、米国とパレスチナの関係を悪化させることになると警告したと述べた。AFP通信が伝えた。
アリカット・パレスチナ解放機構(PLO)交渉局長によれば、書簡は16日に届いた。直接交渉に進めば、米国はイスラエルのユダヤ人入植活動の停止に向けて努力するが、交渉が始まらなければ、米国の役割は小さくなるとの内容だったという。【8月1日 時事】
******************************
「保証」というより「脅迫」のようにも思えます。少なくとも、「保証」ではなく「努力表明」です。
アメリカの「保証」で事態が動くものなら、直接交渉よりむしろアメリカ仲介の間接交渉の方が話は早いようにも素人には思えますが・・・・。まあ、いろいろあるのでしょう。
従来の主張を曲げて、条件が整わないまま交渉入りすることで、自治政府のアッバス議長の立場がパレスチナ内で更に揺らぐことにならないのか懸念されます。
望むような結果が出せれば別ですが・・・・。
【止まぬ攻撃の応酬】
ガザ地区の対イスラエル強硬派ハマスはこうした形の直接交渉には反対するでしょう。
30日は、直接交渉への反発とも思われるロケット弾攻撃がガザ地区からイスラエル領に向けて行われ、これに対しイスラエルが報復空爆を行っています。
****イスラエル軍、ガザを報復空爆 1人死亡13人負傷*****
イスラエル軍は7月30日夜、パレスチナ自治区ガザにあるイスラム組織ハマスの関連施設や南部ラファの密輸トンネル地帯など3カ所を空爆、ガザからの情報ではハマス戦闘員の幹部1人が死亡、民間人を含め13人が負傷した。
この日午前、ガザ地区から発射されたロケット弾が、同地区北端から約10キロ離れたイスラエルの都市アシュケロンに着弾し、マンションや車の窓ガラスが割れるなどの被害がでた。軍報道官はこの攻撃に対する報復と説明した。【7月31日 朝日】
*************************
このイスラエルによるガザ空爆に対し、31日、ガザから再びロケット弾攻撃が行われており、事態は「交渉」に向けた雰囲気には程遠いものがあります。
【ガザの空を埋め尽くす凧】
こうした国際面の記事を読んでいると、ガザ地区・パレスチナの殺伐たる雰囲気も感じられますが、当然ながら大勢の住民が生活しており、ごく普通の営みも行われています。
そんなパレスチナ・ガザの生活を窺わせる記事が2本。
****イスラエル:柔道で平和学んで エルサレムで山下さんら指導*****
◇イスラエルとパレスチナの子供50人参加
柔道の2人の五輪金メダリスト、山下泰裕さん(53)=ロサンゼルス五輪=と井上康生さん(32)=シドニー五輪=が21日、エルサレムで、イスラエルとパレスチナの子供たちのために開かれた合同練習会で技術指導した。イスラエルとパレスチナは政治レベルで厳しく対立しているが、山下さんは練習前に「柔道で相手を尊敬することを学び、普段の生活で生かしてほしい」と語りかけた。
山下さんはNPO法人「柔道教育ソリダリティー」の理事長を務め、中国の南京と青島で「中日友好柔道館」の建設を支援するなど国際交流に努めてきた。今回の指導はそうした活動の一環で、在イスラエル日本大使館の依頼に応えたもの。
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸から初めてイスラエルを訪れた子供も含めアラブ系少年約20人と、ユダヤ系の少年少女約30人が参加。山下さんらの技術指導に真剣な表情だった。乱取りでは、両者が交じって組み、互いに技を教え合う姿も見られた。
井上さんの直接指導を受けたイブラヒム君(13)は「『力』は暴力でなく、平和のために使うのだという(山下さんの)話が印象的だった」と話した。またエルサレムの柔道クラブのレズミ技術部長(50)は「パレスチナ側と協力して、今回の企画が実現しただけでも素晴らしいことだ」と感無量の様子だった。
山下さんは「中東に難しい歴史があるのは知っている。今回は始まりに過ぎないが、このように交わる機会が大事だ」と述べた。【7月22日 毎日】
***************************
****7200人「一斉たこ揚げ」でギネスに挑戦、ガザ地区の子どもたち****
パレスチナ自治区ガザ市の砂浜で29日、「一斉たこ揚げ」のギネス世界記録に挑戦するイベントが、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の主催で行われ、7200人以上の子どもたちが青空を色とりどりのたこで埋め尽くした。これまでの最多記録は、同じくガザ地区の子どもたちが前年の夏に打ち立てた「3710人」。
前週22日には、同じガザ地区のラファ(Rafah)でバスケットボールの5分間「一斉ドリブル」が行われ、まだ未認定ながら、ギネス世界記録を更新している。【7月30日 AFP】
*****************************