孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アラブ・アジア諸国  「原発ドミノ」

2007-11-20 17:06:13 | 世相

(ソ連チェルノブイリ近郊のPrypyat の保育園 あたりに散乱するおもちゃや人形が避難の慌しさを物語っています。事故は86年4月26日未明、Prypyat市民の避難が始まったのが1日半後の27日午後2時(3時間で街はゴーストタウンになったそうです。)、スウェーデン政府からの質問に答える形で事故を公表したのが28日、Prypyat市以外の30km圏の周辺住民の避難が決定されたのは5月2日でした。“flickr”より By chatarra picks)

最近、中東や北アフリカなどアラブ諸国で原発建設計画が相次いでおり、「原発ドミノ」とも呼ばれているそうです。
エジプトはチェルノブイリ原発事故(1986年)後に中断していた原発建設計画の再開を発表。
アラブ諸国では、昨年4月のモロッコを皮切りに、ペルシャ湾岸産油国のサウジアラビア、クウェート、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦、オマーンの6カ国で構成する「湾岸協力会議(GCC)」、ヨルダン、リビア--など13カ国が、すでに原発計画や建設の意思を表明。【11月17日 毎日】

エジプトやヨルダンなどでは原油価格高騰を受けての将来のエネルギー確保という面もありますが、石油資源も豊富な他の国々が原発計画に走っているのは、シーア派・非アラブのイランが核開発などにより地域での存在感を急速に高めているのに対する、スンニ派が主流を占めるアラブ諸国の危機感と対抗心が背景にあるとか。
サウジアラビアはイランに濃縮ウランを製造させないために、中東以外の中立国にGCCがウラン濃縮施設を共同設立し、イランにも濃縮ウランを供給する案を提示しています。

アラブ諸国は従来、地域唯一の核保有国とされるイスラエルを意識して「中東非核地帯」の設立を主張していました。
しかし、「ゲームのルールは変わった」(アブドラ・ヨルダン国王)とされるように、核の脅威の対象はイスラエルだけでなくイランにも向かっています。【同上】

しかし、原発計画が相次いでいるのはイランに対抗するアラブだけではなく、アジア各国でも同様です。
インドネシア:2010年ごろに着工し、16年ごろの運転開始を目指す。
ベトナム:20年の稼働を目標とする。
タイ:20年を目標に導入検討を進めており、13年に計画を実行するかどうかを決める予定。
ミャンマー:昨年から核技術研究所を設け、ロシアに留学生を送っている。【8月10日 毎日】

私の故郷には原子力発電所があり、そういう原発が日常の一部となっている所で育ったせいか原発に対する強い拒否感は持っていません。
ただ、これだけ世界中に、しかも国家の対抗心とか面子の理由もあって、原発が拡散してくると、 “本当に大丈夫だろうか?”という感じもしてきます。

改めて原発の安全性、核燃料サイクルなど問題を考えてみると、“人間は原子力技術の利用というものを十分にコントーロールできていないのではないか・・・”という疑念を感じます。
技術的なことが全くわからないせいかもしれませんが、逆に言えば、そんな素人を安心させるだけの平易かつ十分な説得力がないとも言えます。

例えば、使用済み核燃料をどのように処理するのか?
地価に埋めるワンス・スルーは、地震時の安全性についてはわかりませんが、なんだか自分たちの足元に危険物・汚物を溜め込むような不快感・不安を感じます。
今は主にフランス、イギリスに使用済み燃料を“輸出”して再処理していると理解しています。
六ヶ所村に再処理工場を建設中ですが、いろんな不具合の発覚などで計画はずれ込んできています。
これだけ原発のエネルギーに占める割合が高くなっている(2004年の一次エネルギー消費の13.8%)にもかかわらず、自前の処理システムが完結していないというのも不思議な感じがします。

仮に、六ヶ所村の再処理工場が稼動したとして、そこでできるプルトニウムあるいはMOX燃料をどう使うあるいは保管するのでしょうか。
高速増殖炉の“もんじゅ”は95年にナトリウム漏れ火災を起こし停止中、プルサーマルにしても、地元の反対などで計画が遅れていると聞きます。

もちろん専門知識を持つ方には、それらの安全性を力説される方もいますが、所詮人間のやることですからヒューマンエラーは必ず発生すると考えるべきでしょう。
自分の仕事を考えても、健康・生命に直結する仕事をしていますので“間違いはあってはならない”のですが、実態は・・・・。

多少のヒューマンエラーがあっても大事には至らない構造・システムに設計されているのでしょうが、そのたびにシステムを停止して安全を確認していては経済ベースに乗るような稼動は難しいでしょうし、住民の不安はいつまでも解消されません。
もちろん隠せばやがて大事にも至ります。

ただ、日本国内のことについては、そんな無茶苦茶なことにもならないだろうといった“理由もない”信頼感を抱いています。
最近、ロシアが既存の施設を使って海外からの再処理を受け入れることを計画しているとか。
場所は、ロシア・チェリアビンスク州オジョルスク市の東にあり、1948年から操業を始め旧ソ連最初の原子爆弾用プルトニウムを作ったマヤーク。
この施設の実態は“過酷事故をおこした旧ソ連の核再処理50年の真実(1)(2)(3)”(桐生広人)に詳細に報じられています
http://www.news.janjan.jp/world/0711/0711120534/1.php
http://www.news.janjan.jp/world/0711/0711120543/1.php
http://www.news.janjan.jp/world/0711/0711120546/1.php
以下の記述は、この記事によるものです。

*****
有刺鉄線に囲まれ外部から完全に隔離された施設“マヤーク”で作業に従事したのは、ほとんどが囚人でドイツ人捕虜なども含まれていました。
最盛期で人口約8万人にも達しましたが、地図に都市名が載ることはない秘密都市でした。
原爆の製造を急いだソ連は、安全対策を講じることは全くなく、液体核廃棄物や放射能で汚染された水を湖に捨てたと言われます。
汚染水は浄化されることなくロシア最長の大河オビ川の源流テチャ川に流れ込み、周辺住民に大きな被害をもたらし、その汚染は今も残っています。

50年前の1957年、処理中の液体核廃棄物が化学反応を起こして貯蔵タンクが爆発、強い放射能汚染は北東方向約100kmに及びました。チェルノブイリに次ぐと評される大事故でした。
当然甚大な健康被害、汚染を引き起こしましたが、この爆発事故が公表されたのは1993年になってからでした。

マヤークは現在プルトニウム生産炉は停止しましたたが、核燃料再処理施設とMOX燃料の生産試験施設、高レベル液体核廃棄物のガラス固化のための設備が動いています。
ロシア政府はこの施設を西側の使用済み核燃料再処理に対応できるように改良し、再処理拡大に動いていると伝えられています。
******

ロシアと日本では、安全性・国民の生命・健康への配慮といった点で決定的な差があるように見えます。
それが、政治体制の問題なのか、被爆経験の有無によるものか等についてはここでは問いません。
しかし、今後原発は世界中の国々で様々な思惑で建設・運用されるようになれば、かつてのソ連で起きたような垂れ流しや事故が世界中に拡散するような不安を感じます。

コメント
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