孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  ガザ地区に強まるイスラエルのライフライン制限

2007-11-01 16:41:14 | 国際情勢

(ガザ地区から打ち込まれるロケット弾の残骸で作られたオブジェ イスラエル・テルアビブ  “flickr”より By imageMD )

イスラエルのオルメルト首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長は先月26日、エルサレムで会談し、今月予定されている米国を交えた3者協議の事前調整を行いました。
イスラエル側が和平進展の「指針」程度にとどめようとしているのに対し、パレスチナ側は国境画定や聖地エルサレムの帰属などの最重要課題を含めた包括的な枠組み合意につなげようとしているとのことで、両者の開きは大きいと言われています。

協議の後押しのためにイスラエル・パレスチナ間のシャトル外交を行ったライス米国務長官は、イスラエルの連立政権の一角を担うユダヤ教超正統派の宗教政党「シャス」幹部とも会談した際、「エルサレムの帰属問題はいかなる場でも協議の対象にはならない」とくぎを刺され、国際会議がこうした最重要課題に踏み込めば「オルメルト政権が崩壊しかねない」との警告を受けたそうです。【10月26日 毎日】

パレスチナ問題対処のベースとしては、2003年に米・EU・国連・ロシアの四者主導で提起されイスラエル・パレスチナが受け入れた「中東和平構想」ロードマップ(イスラエル・パレスチナ紛争を2つの恒久国家により解決するための達成基準型ロードマップ(行程表))がありますが、2005年までに紛争を解決するとしたロードマップはほとんど実行されておらず、パレスチナ国家樹立の目標期日はすでに過ぎています。

そして今、ハマスが実効支配するガザ地区とイスラエルの間の緊張が高まっています。
イスラエルのバラク国防相は先月25日、ガザから武装勢力が放つロケット弾攻撃に対抗して、今後のロケット弾攻撃の程度に応じて電力(6割をイスラエルに依存)と燃料(殆どをイスラエルに依存)の供給量を削減する計画を承認しました。
国連や人権団体は「罪のない住民を巻き込む集団制裁だ」と反発しています。

28日には発電所燃料、ガソリンが3割前後供給削減されました。
電力については“29日から開始する”とか、“政府内で法的に問題がないかさらに検討したうえで実施する”と言われていましたが、「イスラエルのマズズ検事総長は29日、人道的な影響を調査することが先決だとして、ガザ地区に対し予定されている電力供給削減による制裁措置を一時中止するとの見解を示した。」【10月30日 AFP】と報じられています。

また、10の人権団体が法的措置をとったことで、イスラエル最高裁判所は同国政府に対し、パレスチナ自治区に対する経済制裁の正当性を11月2日までに証明することを求めているそうです。
ただ、イスラエル政府は、今後数日以内に電力供給の削減に踏み切る意向は変えていないとも伝えられています。

今回の供給削減に先立って「イスラエルが麻酔用ガスの禁輸措置を行ったため、ガザ地区にある主要な病院で手術が行えない事態になっている」とのパレスチナ側の主張も報じられていました。(イスラエルは麻酔ガスを含む医薬品供給の制限を否定しています。)【10月22日 ロイター】

一方、イスラエルはガザ地区への圧力を強めており、30日にはガザ地区南部を空爆、ハマスの4人が死亡、5人が負傷しました。
イスラエルのバラク国防相は、ロケット弾の発射を阻止するためガザ地区への侵攻作戦も辞さないとの考えを示しているそうです。【20月31日 時事】

イスラエルによるガザ地区住民のライフライン制限に対し、「罪のない住民を巻き込む集団制裁」との批判も強いようです。
ただ、国際情勢的判断から離れて一般生活人として常識的に考えると、また、パレスチナ問題におけるイスラエルの対応全般を支持するものでもありませんが、ロケット弾を打ち込まれるイスラエルが何らかの対抗策に出るのは極めて自然なことのように思えます。
ロケット弾を打ち込まれながらも“敵に塩を送る”ような行為をイスラエルに期待するほうが身勝手というものです。
常識的でないのは、ライフラインを依存しているイスラエルに、住民生活を考慮せずにロケット弾を打ち込む武装勢力側(ハマス系だけではないでしょうが)ではないでしょうか。

ハマスはガザ地区を“実効支配”している訳ですが、この“支配”が“統治”であるなら、先ずは住民の生活を考慮した対応があってしかるべきでは。(或いは、どうしても攻撃するというのであれば、住民に“大義のために燃料も電気もあきらめてくれ。場合によっては飢え死に覚悟で支援してくれ”と説得すべきでしょう。)
そのような責任を放棄していたずらに事を構えるのであれば、“ガザ支配”はイスラエル入植地同様の“不当占拠”にすぎないということではないでしょうか。

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