孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スリランカ  “解放のトラ”(LTTE)の空爆

2007-11-05 15:50:10 | 国際情勢

(東部州に残ったLTTEの最後の拠点Thoppigalaを制圧するスリランカ政府軍 2007年7月9日 “flickr”より By phoenix_750504 )

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スリランカ北東部を拠点に分離独立闘争を続ける少数派タミル人組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」は2日、同組織ナンバー2で政治部門責任者のタミルセルバン氏が国軍の空爆で死亡したと発表した。
同氏は、日本やノルウェーなど国際社会が仲介した政府との和平協定の交渉役なども務めた人物。
停戦が事実上崩壊した06年から双方の間で続く戦闘は、和平の実現がさらに遠のく最悪の展開となった。【11月2日 毎日】
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政府軍はLTTEの東部拠点をおさえて、北部に迫る情勢だと言われています。
LTTEの概要、紛争の状況などについてはこれまでも当ブログでも話題にしてきました。
9月14日 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070914
6月24日 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070624
06年の停戦合意破綻・紛争再開からでも、すでに政府軍・LTTEの双方で約5000人が死亡していると言われています。

恐らくタミルセルバン氏の生死にかかわらず和平・停戦は困難な状況にあったとも思われますが、LTTEのトップ、プラバカラン議長は4日、彼の死について「弟のように愛し、さまざまなことを教えた」、「彼の死は、自由を求めるわれわれの心に火をつけた」と語り、分離独立に向けた闘争を激化させることを明らかにしたそうです。【11月4日 時事】
この議長の声明を受け、中心都市コロンボなどは報復テロの恐れから厳戒態勢に入っているとのことです。

最近のスリランカ・LTTE関連で注目したのは、実は今回の政府軍攻撃の記事ではなく、10月22日の“スリランカ:反政府組織が政府空軍基地を空爆”という記事でした。
最初“空爆”という文字が目に入ったので、“ああ、政府軍がLTTEの基地を攻撃したんだね・・・”と思ったのですが、驚いたことに“LTTEが政府軍の空軍基地を空爆した”というものでした。
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LTTEは22日未明、アヌラダプラの政府空軍基地を空爆、陸上からも襲撃、一時基地を占拠した。昨年後半から激化した政府軍との戦闘で、政府軍基地に対する最大規模の攻撃。政府軍当局によると双方で33人が死亡した。
LTTEはこの襲撃で、政府空軍基地内の攻撃ヘリコプター2機を爆破した。【10月22日 毎日】
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LTTEに限らず反政府組織と言えば、ゲリラ戦的な戦術、自爆テロ(LTTEは自爆テロを“実戦活用”した世界最初の組織だと言われています。)をイメージしますが、飛行機を用いた攻撃というのは意外でした。
一体どんな飛行機を使ったのだろう?まさか最新ジェット戦闘機ではないだろうけど・・・、農薬散布に使うような飛行機から(第一次世界大戦のときのように)手で爆弾でも落としたのだろうか?どこから飛行機を入手したのだろう?飛行場というか格納基地はどうしているのか?パイロットの訓練は?部品・燃料の調達は?
いくつもの?が浮かんできます。
(確かにタミルエリアに近いとは言え、アヌラダプラというスリランカ第一の観光地が戦闘の場になっているのも、ちょっとショックでしたが。)

記事によるとLTTEの“空爆”はこのときが最初ではなく、「LTTEは今年3月、中心都市コロンボの国際空港に隣接する政府軍基地を初めて空爆。その後、北部ジャフナ半島の政府軍基地やコロンボの給油施設を相次いで空爆していた。」とのことです。

“【スリランカ動向ニュース】 ビコーズ インスチチュート”(http://www.because-i.org/tdiary/?date=200703)というサイトで確認すると、LTTEが使用している飛行機は、「チェコ製軽飛行機 Zlin Z 143 4人乗り 航続距離630海里(約1,100Km)積載能力240Kg(パイロット1名のみの場合はさらに積載可能)」とのことです。
(と言われても門外漢にはどんな飛行機かさっぱりわかりません。4人乗りで1100km飛ぶということは、それなりの戦闘用の飛行機・・・ということでしょうか?)
分解して密輸、組み立てたものとも言われています。

スリランカ政府軍は数年前からLTTEの滑走路建設および航空機所有を知っていましたが、その能力をつぶすことが出来ずにいたようです。
しかも、直前に不審な飛行機の目撃情報があったにもかかわらず,防ぐことができなかったばかりか,いきなり空軍の中心部を襲撃されてしまった・・・ということで、被害の程度は別にして(政府側は攻撃ヘリコプター2期、LTTE側は“イスラエル製ジェット戦闘機など6機に被害”と公表しています。)政府軍の面目は丸つぶれです。
まあ、軽飛行機はレーダーにも捕捉されにくいと言われ、ホワイトハウス上空に侵入するぐらいですから。
この攻撃を受けた後、大統領の発案で国民に不審な飛行機の目撃情報を求める3ケタのフリーダイヤルを開設したそうですが、フリーダイヤル情報で迎撃に間に合うのでしょうか?

一方のLTTEは意気軒昂で、インターネットで飛行機7機と青いユニフォームを着た飛行部隊,笑顔のプラバカラン議長の写真を公開したそうです。(IDE-JETRO “スリランカ政府軍,東部地域を制圧” 地域研究センター 荒井悦代 http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Asia/Radar/srilanka.html 
もっとも、“虎の子”の“空軍”を使って敵中枢を叩くという大胆・ハイリスクな攻撃に出た背景には、それだけLTTEが追い詰められている事情があるのでは・・・という観測もあるようです。

その他、“パイロット訓練をどうしたのか?”とか、“いろんな補給をどうしているのか?”とか、調べるとそれなりの答え・見解が見つかりますが、要するに今の世の中、戦闘機だろうがなんだろうが、カラシニコフから核爆弾まで金さえ払えばどんな組織でも入手できるということです。

以前、アルカイダ幹部が闇市場でスーツケース核爆弾を入手したとの話もありました。
パキスタンのカーン博士関連の闇市場摘発のニュースも。
先日は、「中国の山中で密かにウランを精製して、闇ルートで売りさばいている・・・」という記事などもありましたが・・・こちらは民生用ですかね?(でも誰が買うのでしょう?)

地域紛争のニュースを見聞きしていつも思うのですが、彼らにこの武器を売っている“死の商人”を規制できれば世の中の紛争の多くが未然に防げる、あるいは、犠牲を少なくできるのに・・・
もっとも、“そうなると不正な国家・政府の民衆弾圧への抵抗ができなくなるではないか”と言われれば、まあ、そうですね・・・。

コメント
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