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「日本病」その2

2018-11-24 | 気になる本

その2 4章「主流派」の言説と実感のずれ*(カッコ内はコメント)

 アベノミクスの実際のステップは、中央銀行日銀と公共放送NHKという2つの組織の露骨な人事で進められた。(その後は司法の反動化、内閣人事局による忖度)

 年金の根本問題は単なる少子高齢化だけにあるのではない。雇用や家族の解体が年金制度の基盤を掘り崩していくからである。なかでも、若い世代の圧倒的多数が非正規であるために国民年金が空洞化しており、年金の持続可能性を奪っている。15歳から24歳の若者の4割が非正規雇用労働者や失業者になり、国民年金の未納や滞納も3~4割に上る

 労働者派遣法は「改正」によって、例外がつぎつぎ拡大して原則自由になっていった。専門派遣は長期雇用が一般派遣に置き換えられ、一般派遣も3年過ぎても部署を換えてそのままで正社員の道が閉ざされた。非正規雇用のままだと、年収200万円が精一杯で結婚も出産もできない。(大企業が好景気である豊田市でも少子化が進んでいる。トヨタの期間工はこれより年収は良いが、定住できない。具体的な数値は別途検証したい。)

 社会保障が持続可能性を失っていることは多くの国民が気付いている。5%から8%になり、増税分は財政再建に使い福祉には1/5しか回さないことに。決まると景気対策に法人税減税と公共事業に消えた。(企業栄えて国は借金大国、国民福祉は切り捨てに)アベノミクスは経済成長が税収増をもたらすということである。さりとて「小さな政府」論でもなく、ご都合主義である。財政規律も壊れる。

 米国がゼロ金利政策から脱出すると、新興国からマネーが引き上げられ、新興国経済の悪化が進む。財政金融政策という麻酔薬に頼らずに底堅い内需を作り出す政策が必要になる。特に地域において、新たな産業と雇用を創出することが喫緊の課題となっている。日本の原子力企業は海外展開で巨額の損失を抱え、窮地に追い込まれている。例えば、東芝である。三菱重工もカリフォルニアで、ベトナムでも日本政府の借款で、台北郊外では凍結している。ドイツのシーメンス社もアメリカのGE社も原発事業から撤退している。原発の安全性への懸念から、原発=低コスト論という主流派言説は、歴史的遺物となった。

 経済最優先のアベノミクスは失敗。うその上塗り安倍政権。実際にやってきたのは、特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認、武器輸出三原則見直し、原発再稼働、TPPであった。自民党の公約は国民を騙すものであった。日銀が国債購入を続けて、政策を支えてきた。バブル期に作られた民間債務は公的債務に付け替えられていった

 中国が世界の工場として台頭してから、長い間進んできた日本の工場の海外移転は、リーマンショックに伴う急激な円高によって決定的に進められた。こうした「場」の下で、日本では「信用」を先に拡大させ、実態経済を牽引させて経済成長を図ろうとしたインフレターゲット論は、完全な失敗である。先端産業への産業構造の転換に失敗し、旧来型産業はグローバリズムと株高政策の下で外資に買い取られ、ひたすら内部留保をため込んでいるだけで、雇用は破壊され、地域経済も衰退を加速させている。

 大手企業は内部留保と配当だけを増加させる一方で、日本の雇用は破壊されて働き方までが壊れだし、社会保障制度の将来見通しも失わされ、地域は少子高齢化で衰退がひどくなっていった。にもかかわらず、法人税減税、労働者派遣法「改正」、社会補償費削減による財政再建など、大手企業の収益増加のためには何でもする政策が続けられていく。結局、財政危機が止まらない中で、国内貯蓄の制約を超えて財政「赤字」を拡大させ、それをファイナンスするために、もう一つブレーキを外して異次元の金融緩和を「意図的に」行うようになっている。もはや財政規律という制御系は破壊され、底抜けの状態になった

 企業の決算を市場空前に押し上げ、株価は上昇している。しかし、実質賃金は伸びず、家計消費は増加しない。円安で輸出企業の業績は上がるが、貿易赤字が恒常化したまま、製造業の就業人口は増えず、企業の内部留保が増えるのみである。格差が拡大する結果、一般国民も将来の不安から消費を削減していく。年80兆円の日銀による追加金融緩和が行われながら、それは日銀の当座預金に積み上げられるだけで、信用の創造につながらない。金融緩和が繰りかえし行われても、製造業の国内回帰も進まない。結果、地域経済の衰退も急速に進む(豊田市も農林業の衰退は進んでいる。自動車のEV化では中小企業は淘汰される。)。このままでは、地銀や信金だけでなく、再び地方自治体も統廃合が行われていくだろう。(法人市民税も「一部国有化」のもとに召し取られている)

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