古賀茂明(2014.9)『国家の暴走-安倍政権の世論操作』角川oneテーマ21
古賀さんが通産省に見えた方で、いわゆるエリート官僚と考えられ、胡散臭い感じがしていました。しかし、この本を読んでそんな考えは吹き飛びました。一般的に公務員も含めサラリーマンが出世を考えるなら、通常自分の考えを殺してトップの意向で(特に成果主義のある場合)仕事をします。マスコミ、NHKもおかしくなって国民の情報判断力が鈍っています。この本は昨年9月に書かれたものです。(その後の情勢変化は、橋本大阪都構想は敗北、集団的自衛権は憲法違反が世論の多数)。アベノミクスの考え方は私と少し異なりますが、今問題になっている戦争法案・「集団的自衛権の行使」の背景をすでに見通していて、考えるにはピタリのお勧めの本です。以下3章までの気になった個所をピックアップします。
序章 加速する暴走
「堂々たるウソをつける男」、14.5.15記者会見を引用し、「国民の命を守るため」「平和な暮らしを守るため」と何度も口にし、パネルを使って、集団的自衛権が行使できない場合の「危険性」を強調する安倍総理。問題は、どうやったら無用な戦争に巻き込まれたり、一部権力者の都合で国民が戦争に駆り立てられたりすることを防げるかということだ。(p5)
記者の「戦争に巻き込まれるのでは」という質問に、安倍さんは安保があるから「日本の抑止欲が高まり、アメリカのプレゼンスによって、平和がより確固たるものになっている」(この思想は豊田の自民党の団長と同じである)と反論した。同じようなことが、オリンピック誘致で、「フクシマについて、状況は統制されています。東京には悪影響を及ぼすことはない」、「汚染水は0.3㎢の港湾内に完全にブロックされています。」と、こんな大嘘をついて誘致を決めたわけである。マスコミも、集団的自衛権がそもそも憲法違反とういうことを忘れて、報道している。(p7)日本を列強国にしたい人達は、「国民の命と財産を守る」との名目で若者を戦場に送り込み、子供達に過酷な状況を強いることに、何の疑問も持たない。武器や原発を世界中に輸出し、日本の軍事的・経済的影響力を高めようとする。そこには当然、利権を貪る官僚や族議員、そして軍事産業がはびこることになる。(P10)暴走装置は何か、官房機密費、自民党の政党交付金、経団連、さらに「憲法96条改正を目指す議員連盟」がある。彼らの思想はワンパターンで、「中国が攻めてきたらどうする」「北朝鮮のミサイルが飛んできたらどうする」、だから集団的自衛権が必要だという。「多くの若者は、安倍さんは「戦争しない」と言っているのに、何でそんなにいちゃもんつけるの?」という。日本の若者達は、「中国や韓国に追い上げられる日本、それで生活が苦しくなる自分達」という感覚がある。
第1章 軍事立国への暴走
恐怖の3点セット、NSC法、特定秘密保護法、集団的自衛権行使の三つがセットになると、アメリカ軍が先制攻撃した戦争にも参戦することになる。米国の情報がガセねたでも、議事録は公開されない。「集団的自衛権の行使は、『我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合』に限定される」と言っても、三点セットになると無責任な判断で国民を無用な戦争に巻き込む事態が起こりうる。(p54)「戦後日本の経済発展の歴史を再認識すべき時」の項で、「安保ただ乗り」論があるが、その負担は沖縄が犠牲になっている。思いやり予算をどうみるか、むやみに軍事増強の道を進まなかったことが、日本経済を強くした。(憲法9条の成果とも言えるのでは?沖縄では米軍基地が沖縄経済を阻害している)。戦後70年日本は戦争しない国という思い込みが広がった。そうした「平和ボケ」から脱して、戦前に戻るのが安倍総理である。「日本を取り戻す」ということは、経済・軍事両面で欧米列強に並びかけた戦前の日本、しかないだろう。(p63)自民党憲法「改正」案にもいくつかあるが、戦争するための13の矢が推測される。詳細は2章で。原発と核燃料処理サイクルの維持に必死になっているのは、プルトニウム保有と核技術の維持で、将来の核武装につなげるためだろう。(p66)「そんなことは本当にあり得るのか?」ここまで材料が揃っている。オリンピック誘致のため、「汚染水は完全にブロックされている」本当だろうか。世界中の人々に、あの大嘘を平気でついた人が、「戦争なんかしません」と言っても、信用する人がいるだろうか。
第2章 戦争するための13本の矢
以下13本の矢の説明です。①国家安全保障会議(NSC)は閣議決定より、効率的に決められる。ねつ造情報に基づいて戦争が行われても、国民は判断できない。②特定秘密保護法も、情報公開法と公文書管理法との3点セットで議論しなければならない。③武器輸出三原則が廃止され、防衛装備移転三原則の騙しのテクニック。米国の軍需産業は巨大な政治力を持っている。米国政府は危ない橋を渡るが、日本もそれに付き合ってノコノコ出ていくのだ。集団的自衛権容認によって、遠隔地を攻撃するミサイル、空母、無人爆撃機なども必要になるので、国内需要はぐんと拡大する。三菱重工、川崎重工、IHI,東芝、日立などは大歓迎だろう。④集団的自衛権の行使容認と自衛隊の苦悩、限定容認でない、地域の限定もない、米国以外の限定もない。「一般的に海外派兵はできない」というが、一般的には例外がある。⑤集団的安全保障、湾岸戦争やイラク戦争に日本は多国籍軍に参戦できなかった。海部総理が断った理由は憲法9条であった。総額135億ドルも財政支援したが、パパ・ブッシュは怒った。集団的自衛権は国連安保理の決議がなくても発動できる。⑥富国強兵さながらの「産めよ増やせよ」政策、⑦日本版CIA、⑧ODAを軍事利用、⑨国防軍保持が憲法上の義務に、自民党の「改正」草案では「国防軍」。⑩軍法会議、⑪基本的人権の制限、⑫徴兵制導入、⑬核武装
第3章 本当の「積極的平和主義」とは
「他国がくれた情報を信じて戦争をするのは、極めて危険なことである」。諸外国はイラク戦争の顛末から貴重な教訓を得た。日本人だけが知らないイラク開戦の理由、「米国がくれる大事な情報だ。絶対に守らないといけない。だから特定秘密保護法だ」というものだ。この発想では、いずれ日本も米国の二の舞になるだろう。日米安保条約は片務条約ではない。日米安保は米国にとって都合のいい条約である。沖縄の基地が素晴らしく使い勝手が良い。思いやり予算も充分ある。
米国は尖閣を守るという幻想。尖閣諸島も含め日米安保の対象と言っているが、一方で「米国は領有権に対して特定の立場はとらない」とも言っている。米国は、防衛ラインで一応中国を封じ込めたいとは思っているが、一方で、世界秩序を維持していくために中国の協力は欠かせないと考えている。日本は米国の代わりに中東で血を流す?北朝鮮との関係で集団的自衛権は発動されないだろう。北朝鮮は日本を攻撃できても、米国を攻撃する力はない。北朝鮮と韓国が戦争になる可能性はある。その時考えられるのは、米軍は沖縄から出撃するから、日本も北朝鮮の敵であり、攻撃される。日本が中立なら、北朝鮮は日本を攻撃しない。今の安倍政権なら参戦するだろう。国際世論こそが最大の抑止力である。ウクライナ問題でも、今のところ大きな戦争になっていない。国際的に孤立して経済的な支障を恐れている。中国も南シナ海の島々を占領する勢いであったが、軍隊までは出していない。国際的に非難の放火を浴びない範囲で歯止めをかけている。最終的な抑止力になるのは、強い軍隊ではない。国際世論であり、国際的な経済の結びつきである。
武力に依らない積極的平和主義、70年間も武器を取って人を殺したことがない国民というのは、世界的に数少ない。それが国際社会での信頼に繋がっている。「米国の敵は我が国の敵」と日本が中東に出ていくのは、「日本が大好きです」と言っている友達を、米国のために殺しに行くようなものだ。ノルウェイの平和学者は、戦争のない状態を「消極的平和」を定義した。単に戦争がないだけでなく、貧困、病気、飢餓、人権抑圧、環境破壊などの「暴力」がない状態を、ガルトゥングは「積極的平和」と定義した。国際社会に出ていくのであれば、そうした「暴力」に苦しむ途上国に支援することが、本当の意味での「積極的平和主義」につながるはずだ。軍隊を引き連れて「悪い奴ら」を叩くことが積極的平和主義だというのは、とんでもない勘違いであり、あまりにも田舎者の発想である。
古賀さんが通産省に見えた方で、いわゆるエリート官僚と考えられ、胡散臭い感じがしていました。しかし、この本を読んでそんな考えは吹き飛びました。一般的に公務員も含めサラリーマンが出世を考えるなら、通常自分の考えを殺してトップの意向で(特に成果主義のある場合)仕事をします。マスコミ、NHKもおかしくなって国民の情報判断力が鈍っています。この本は昨年9月に書かれたものです。(その後の情勢変化は、橋本大阪都構想は敗北、集団的自衛権は憲法違反が世論の多数)。アベノミクスの考え方は私と少し異なりますが、今問題になっている戦争法案・「集団的自衛権の行使」の背景をすでに見通していて、考えるにはピタリのお勧めの本です。以下3章までの気になった個所をピックアップします。
序章 加速する暴走
「堂々たるウソをつける男」、14.5.15記者会見を引用し、「国民の命を守るため」「平和な暮らしを守るため」と何度も口にし、パネルを使って、集団的自衛権が行使できない場合の「危険性」を強調する安倍総理。問題は、どうやったら無用な戦争に巻き込まれたり、一部権力者の都合で国民が戦争に駆り立てられたりすることを防げるかということだ。(p5)
記者の「戦争に巻き込まれるのでは」という質問に、安倍さんは安保があるから「日本の抑止欲が高まり、アメリカのプレゼンスによって、平和がより確固たるものになっている」(この思想は豊田の自民党の団長と同じである)と反論した。同じようなことが、オリンピック誘致で、「フクシマについて、状況は統制されています。東京には悪影響を及ぼすことはない」、「汚染水は0.3㎢の港湾内に完全にブロックされています。」と、こんな大嘘をついて誘致を決めたわけである。マスコミも、集団的自衛権がそもそも憲法違反とういうことを忘れて、報道している。(p7)日本を列強国にしたい人達は、「国民の命と財産を守る」との名目で若者を戦場に送り込み、子供達に過酷な状況を強いることに、何の疑問も持たない。武器や原発を世界中に輸出し、日本の軍事的・経済的影響力を高めようとする。そこには当然、利権を貪る官僚や族議員、そして軍事産業がはびこることになる。(P10)暴走装置は何か、官房機密費、自民党の政党交付金、経団連、さらに「憲法96条改正を目指す議員連盟」がある。彼らの思想はワンパターンで、「中国が攻めてきたらどうする」「北朝鮮のミサイルが飛んできたらどうする」、だから集団的自衛権が必要だという。「多くの若者は、安倍さんは「戦争しない」と言っているのに、何でそんなにいちゃもんつけるの?」という。日本の若者達は、「中国や韓国に追い上げられる日本、それで生活が苦しくなる自分達」という感覚がある。
第1章 軍事立国への暴走
恐怖の3点セット、NSC法、特定秘密保護法、集団的自衛権行使の三つがセットになると、アメリカ軍が先制攻撃した戦争にも参戦することになる。米国の情報がガセねたでも、議事録は公開されない。「集団的自衛権の行使は、『我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合』に限定される」と言っても、三点セットになると無責任な判断で国民を無用な戦争に巻き込む事態が起こりうる。(p54)「戦後日本の経済発展の歴史を再認識すべき時」の項で、「安保ただ乗り」論があるが、その負担は沖縄が犠牲になっている。思いやり予算をどうみるか、むやみに軍事増強の道を進まなかったことが、日本経済を強くした。(憲法9条の成果とも言えるのでは?沖縄では米軍基地が沖縄経済を阻害している)。戦後70年日本は戦争しない国という思い込みが広がった。そうした「平和ボケ」から脱して、戦前に戻るのが安倍総理である。「日本を取り戻す」ということは、経済・軍事両面で欧米列強に並びかけた戦前の日本、しかないだろう。(p63)自民党憲法「改正」案にもいくつかあるが、戦争するための13の矢が推測される。詳細は2章で。原発と核燃料処理サイクルの維持に必死になっているのは、プルトニウム保有と核技術の維持で、将来の核武装につなげるためだろう。(p66)「そんなことは本当にあり得るのか?」ここまで材料が揃っている。オリンピック誘致のため、「汚染水は完全にブロックされている」本当だろうか。世界中の人々に、あの大嘘を平気でついた人が、「戦争なんかしません」と言っても、信用する人がいるだろうか。
第2章 戦争するための13本の矢
以下13本の矢の説明です。①国家安全保障会議(NSC)は閣議決定より、効率的に決められる。ねつ造情報に基づいて戦争が行われても、国民は判断できない。②特定秘密保護法も、情報公開法と公文書管理法との3点セットで議論しなければならない。③武器輸出三原則が廃止され、防衛装備移転三原則の騙しのテクニック。米国の軍需産業は巨大な政治力を持っている。米国政府は危ない橋を渡るが、日本もそれに付き合ってノコノコ出ていくのだ。集団的自衛権容認によって、遠隔地を攻撃するミサイル、空母、無人爆撃機なども必要になるので、国内需要はぐんと拡大する。三菱重工、川崎重工、IHI,東芝、日立などは大歓迎だろう。④集団的自衛権の行使容認と自衛隊の苦悩、限定容認でない、地域の限定もない、米国以外の限定もない。「一般的に海外派兵はできない」というが、一般的には例外がある。⑤集団的安全保障、湾岸戦争やイラク戦争に日本は多国籍軍に参戦できなかった。海部総理が断った理由は憲法9条であった。総額135億ドルも財政支援したが、パパ・ブッシュは怒った。集団的自衛権は国連安保理の決議がなくても発動できる。⑥富国強兵さながらの「産めよ増やせよ」政策、⑦日本版CIA、⑧ODAを軍事利用、⑨国防軍保持が憲法上の義務に、自民党の「改正」草案では「国防軍」。⑩軍法会議、⑪基本的人権の制限、⑫徴兵制導入、⑬核武装
第3章 本当の「積極的平和主義」とは
「他国がくれた情報を信じて戦争をするのは、極めて危険なことである」。諸外国はイラク戦争の顛末から貴重な教訓を得た。日本人だけが知らないイラク開戦の理由、「米国がくれる大事な情報だ。絶対に守らないといけない。だから特定秘密保護法だ」というものだ。この発想では、いずれ日本も米国の二の舞になるだろう。日米安保条約は片務条約ではない。日米安保は米国にとって都合のいい条約である。沖縄の基地が素晴らしく使い勝手が良い。思いやり予算も充分ある。
米国は尖閣を守るという幻想。尖閣諸島も含め日米安保の対象と言っているが、一方で「米国は領有権に対して特定の立場はとらない」とも言っている。米国は、防衛ラインで一応中国を封じ込めたいとは思っているが、一方で、世界秩序を維持していくために中国の協力は欠かせないと考えている。日本は米国の代わりに中東で血を流す?北朝鮮との関係で集団的自衛権は発動されないだろう。北朝鮮は日本を攻撃できても、米国を攻撃する力はない。北朝鮮と韓国が戦争になる可能性はある。その時考えられるのは、米軍は沖縄から出撃するから、日本も北朝鮮の敵であり、攻撃される。日本が中立なら、北朝鮮は日本を攻撃しない。今の安倍政権なら参戦するだろう。国際世論こそが最大の抑止力である。ウクライナ問題でも、今のところ大きな戦争になっていない。国際的に孤立して経済的な支障を恐れている。中国も南シナ海の島々を占領する勢いであったが、軍隊までは出していない。国際的に非難の放火を浴びない範囲で歯止めをかけている。最終的な抑止力になるのは、強い軍隊ではない。国際世論であり、国際的な経済の結びつきである。
武力に依らない積極的平和主義、70年間も武器を取って人を殺したことがない国民というのは、世界的に数少ない。それが国際社会での信頼に繋がっている。「米国の敵は我が国の敵」と日本が中東に出ていくのは、「日本が大好きです」と言っている友達を、米国のために殺しに行くようなものだ。ノルウェイの平和学者は、戦争のない状態を「消極的平和」を定義した。単に戦争がないだけでなく、貧困、病気、飢餓、人権抑圧、環境破壊などの「暴力」がない状態を、ガルトゥングは「積極的平和」と定義した。国際社会に出ていくのであれば、そうした「暴力」に苦しむ途上国に支援することが、本当の意味での「積極的平和主義」につながるはずだ。軍隊を引き連れて「悪い奴ら」を叩くことが積極的平和主義だというのは、とんでもない勘違いであり、あまりにも田舎者の発想である。
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