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大門「やさしく強い経済学」

2022-06-09 | 気になる本

大門実紀史(2022)『やさしく強い経済学』新日本出版社

 コロナ禍と戦争による原材料高、それに円安で物価高が止まらない。日銀の黒田総裁は「許容範囲」という。彼の年収は3530万円、買い物はしたことがない。欧米などは物価上昇で金利を上げている。日本は1000兆円の借金があり、金利を上げられない。アベノミクスの金融緩和の失敗である。安倍政権の時に、消費税は5%から10%に上がった。法人税の多くに充てられた(図略)。株価は日銀と年金マネーで釣り上げられ、労働者の賃金は上がらない。社会保障も下げられた。トヨタの営業利益は史上最高で内部留保も膨れている。大企業の利益はトリクルダウンしない。新自由主義(資本主義)の行き詰まりである。岸田首相も新自由主義の問題点を指摘し、「新しい資本主義」を言っているが、「骨太の方針」ではアベノミクスの継承である。それに、配分は成長優先となり消えた。所得倍増は資産所得倍増と変質した。プライマリーバランスも消えた。さらに、日米会談で武器爆買いを約束したため、軍事費を「相当増額」すると約束した。自民党はGDPの2%、防衛費を増額するという。これでは国民生活も日本経済も破綻する道である。この本は、人間を大事にする「逆転の成長戦略」を、具体的に易しく描いてある。以下、そのメモである。(  )内は私のコメント。

 「新自由主義」の自由は人間の自由ではなく、大企業がもうける自由、もうけを最大化する自由である。(そして政権党は政治献金を受ける)自公政権は大企業・富裕層への減税を行い、かわりに消費税を増税した。強いものが勝てばいい、なんでも自己責任を押し付ける。新自由主義とは真逆に、賃金を引き上げ、社会保障を立て直し、応能負担の税制にあらためれば、購買力も向上し、内需も喚起し経済発展する。

 新自由主義の経済政策は、①賃金の抑え込み、②社会保障の改悪、③国の所得再分配機能の否定、④民営化路線、⑤マネー資本主義。経済の一般論では、企業利益→貯蓄→投資が、新自由主義ではもうけが「カネ余り」、「余剰資金」、で株や金融商品へ投資される。各国は金融緩和でこれを後押しした。

 新自由主義の4つのウソ、①トリクルダウン、②「市場原理に任せておけばうまくいく」、政府のばく大な支援、③税のフラット化で累進課税を一律化、④多様な働き方改革である。あれから20年、非正規の拡大と低賃金構造が固定化、経済は停滞している。

 岸田首相の「1億円の壁」(所得が1兆円を超えると税率が下がる)見直しは、取り下げてしまった。「金融所得課税」の強化も株価が下がり消えた。

 企業の内部留保は、①利益剰余金、②資本剰余金、③引当金や準備金、である。財務省などは①だけをカウントする場合がある。企業にとって内部留保は大事な貯蓄である。しかし、賃金を抑え込み、投資に回さず、マネー経済につぎ込まれていることが問題である。法人税減税は内部留保を増やした。アベノミクスで法人税率は28%から23.2%に下げられた。(自治体の法人市民税もこれを課税ベースにするから、連動して下がった)トヨタの場合、2012年度末か20年度末で、内部留保は8兆円増加し、減税で3.1兆円、その結果、現預金すなわち余剰資金が5.7兆円増えた。日本共産党はアベノミクスによって増えた内部留保に課税することを提案している。(大企業が共産党を嫌う理由の1つがここにある。政権党に政治献金して、税金をまけて貰う方が得である)内部留保は二重課税という意見もあるが、先の国会答弁で否定された。二重課税というなら、消費税こそがそうである。佐藤主光、小林慶一郎など富裕税の導入を主張する意見もある。

 消費税減税は世界の流れ、インボイスは廃止を。インボイスは税務署に登録した課税業者しか発行できない。免税業者は発行されないので、取引から排除される恐れがある。免税業者は課税業者になるか、消費税分を値引きするかで、営業が困難になる。

 日本経済の長期低迷は、賃金が下がり、購買力の低下で、消費と内需を冷え込ませた。この悪循環を断つには賃上げしかない。社会保障の経済波及効果は優れている。最も重要なことは、社会保障にセーフティネットを再構築することである。

 アイスランドで賃金の8割支給で育児休暇制度を、男性の8割が主億している。日本では7%である。「同一価値労働同一賃金」が重要である。

 デジタル化は「監視社会」と表裏一体である。人々はただ監視されるだけでなく、「国家による従順な国民」へと誘導され、「幸福な監視社会」になる可能性がある。

 伊藤、村松の「品質」での非正規雇用の問題点、①賃金格差からの労働意欲低下、②チームワークの疎外、③ノウハウの蓄積と継承が疎外、④教育訓練の不足、などである。

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