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日本病その1

2018-11-19 | 気になる本

 金子勝、児玉龍彦(2016)『日本病』岩波新書

 国家財政の1000兆円の借金、日銀のマイナス金利、異次元緩和、株価下支え、企業の不正・品質低下、格差と貧困の増大、アベノミクスの破綻。失敗を認めない日銀、政府、本音が言えない学者・マスコミなど、日本の将来は出口が見えない。借金大国はどうなる。以下、本より気になるポイントの要旨である。

 長期化する不況、失業者の増加、年金制度の破綻、少子高齢化の進行・・。アベノミクスによって日本経済は「長期衰退」の時代に入り、いまや「日本病」とも呼べる状態に陥っている。複雑な仕組みを解明した著者たちが、「治療法」を提示する。

 14年の実質GDP成長率はマイナス0.9%であったが、大企業は史上最高益をあげた。金融緩和と円安、株高を誘導し、大企業は利益をあげ、名だたる企業の持ち株は外資が1/3となっている。大企業は設けてもトリクルダウンはなく、格差と貧困が進み、とりわけ地域経済は疲弊している。

 長期低迷経済を「オランダ病」、「イギリス病」と呼んだが、日本も「日本病」に陥っている。銀行の不良債権処理から福島原発まで、経営者から完了まで責任をとらず、当面の対応で産業構造の転換ができず国際競争力を落としていった。

 競争相手と認識される近隣アジアと緊張関係が強調され「歴史修正主義」がとなえられる。マスコミへの恫喝と、ヘイトスピーチ、教科書改訂、靖国参拝など逆コースとアジア近隣諸国への挑発が日常的となっている。

 日本経済は、サブプライムローン絡みの証券保有は少なかったにもかかわらず、実態経済としては、大幅な景気後退に飲まれた。それは失われた10年における小泉構造改革が、日本経済の機能不全の上にミニバブルをもたらしたものによる。

 今最大のメディアタブーはアベノミクスの失敗である。「道半ば」「継続は力なり」、「三本の矢」が検証されないうちに「新三本の矢」にすり替えられ、政策の誤りは増幅されて引き返せなくなってしまう。日銀は金融緩和で、国債を大量に買い消費者物価上昇率を2%上げるとしてきたが、達成していないし辞任もしない。メディアが批判しないのは、安倍の圧力とスポンサーの大手企業が目先の利益拡大するため。

 実質賃金の低下は、家計消費の低下をもたらしている。大手企業が市場最高益をあげても株価が高くなっても、それがしたたり落ちるトリクルダウンはない。

 厳格な債権査定額と経営責任を問う抜本的対策は避けられ、小出しの公的資金注入でずるずると不良債権処理を続けているうちに、大手企業は短期的利益を追求して「選択と集中」と称するリストラを継続し、国際会計基準の導入とあいまって内部留保をため込み配当を増やす一方で、技術開発や設備投資を怠るようになっていった。雇用流動化、賃金抑制で国内需要は縮小し、外国の投資が増える悪循環に陥ってしまった。

「三本の矢」は金融緩和、財政出動、規制緩和で、出口がなく待っているのは長期衰退の道である。国内貯蓄が1400兆円もあるので、国債暴落は起きないとされているが、日銀が国債を引き受ければ、この国内貯蓄の制約を超えて財政赤字をだすことができるが、それは将来的にはハイパーインフレのような大きなリスクをため込んでいる。世界的な経済停滞の中で、金融市場では投機マネーがうごめいている。それゆえ当面は金利が上昇する「危険性」がないので、量的緩和を続けても問題が出てこない。財政規律が失われている中で、突発的事故で物価が上昇し、国債価格の下落と金利の上昇が起きれば、日銀は国債を買い入れる金融緩和策を止められなくなる。

戦争の責任も、バブル崩壊後の不良債権のごまかしによる銀行経営者や、福島原発事故における東電責任者など責任を問われなかった。そして東芝の不正会計、東洋ゴムの免振ゴム、旭化成の基礎杭データなど、企業文化の荒廃はあとを絶たない。(その後も、モリカケの文書偽造、タカタ、日産、スバル、KYB免振装置など枚挙に暇がない。)

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