豊田の生活アメニティ

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豊田の産業空洞化の始まり

2011-01-26 | 市民生活・企業都市
 昨年11月トヨタシンポジウムが、豊田市福祉センターで開催されました。08年には世界経済危機となり、トヨタも北米の住宅バブルに依拠した、拡張路線が失敗しました。その影響は「トヨタ・ショック」として、非正規労働者の解雇・雇止め、労働者の賃下げ、下請けの仕事の減少と倒産でした。基調報告と、愛労連などの中小企業アンケート結果や、大村豊田市議会議員からの市民生活の悪化、トヨタ社員の労働現場などが報告されました。「トヨタ・ショック」以後に起きたことは、社長交代、下請け単価の引き下げ、「エコひいき」減税による経営のV字回復、大量のリコール事件でした。
 今のトヨタの経営の基本は「廉価良品」で、部品の世界最適調達を日本だけでなく世界から輸入、あるいは海外生産の拡大をしています。さらに、人件費と下請け単価引き下げが廉価の特徴です。品質の良いものをつくるという考えで、海外の販売を拡張してきました。アメリカのトヨタ叩きだ、ブレーキは感覚の問題だなどという意見もマスコミで一部ありました。講師の丸山惠也氏は「トヨタのリコール問題と車づくり」(資料『経済』2010.7月)で、その要因を①拡大戦略を支えた効率主義、②「すり合わせ」不能の職場疲弊、③ゆき過ぎた原価低減としています。「良品」は、安全のギリギリ設計といえます。
 行政は電気、自動車などの輸出型大企業を支援してきました。豊田市は企業誘致でなく市内の工場等新増築でも助成をし、トヨタ関連には10年間で46億円の補助です。さらに、旧下山のトヨタ研究開発施設には、県企業庁がトヨタに代わって行う造成と用地買収を、市が「お手伝い」して職員人件費だけで4億8千万円の単市支出です。地域の経済効果を市議会で質問されても、市は不明としか答弁できません。それは大企業が繁栄しても、下請け・労働者・地域経済に波及効果・トリクルダウンがほとんどないからです。法人税を下げないと企業が海外に逃げるとか財界に言われ、菅総理は5%下げることを決めましたが、経団連は雇用の約束はできないとしています。高岡工場では1,900人の余剰人員の転出「削減」が行われようとしています。ブラジルやロシアのサンクトペテルブルグでの工場稼働、東北でのトヨタ系増設など、部品の最適地調達から会社利益の「最適地生産」に変位し、西三河の産業「空洞化」が関連企業から本体へと現実味を帯びてきました。豊田市は自動車に特化した「一本足」の産業構造から、農業、福祉も含めた多様で内発的な地域再生へと、「革命的」転換が求められていると思います。大企業依存からの自立、共生はどうあるべきか、それにはまず「中小企業憲章」を基に、中小企業の実態調査と産業連関分析が欠かせません。
(写真はトヨタ本社技術棟のある敷地での増築です。)
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