豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

新しい公共をつくる

2009-01-09 | 気になる本
中嶋 信(2007)『新しい公共をつくる』自治体研究社
 従来の公共は国や自治体などが税金を使って行う事業、サービスを公共としてきました。それに不満があれば、住民は反対運動を行うという形でした。最近は対立でなく、早くから住民の意見を取り入れ、参加型のまちづくりが行われるようになりました。まだまだ試行錯誤の段階で形式的な参加や、安上がりを狙ったものなど様々です。民と公の役割分担、信頼関係をどのように築くか、実践的な地域まちづくりの先進事例が紹介されています。
1章では、アメリカ型の格差社会の進行と問題点が指摘されています。新自由主義による「小さな政府」の幻惑を説明しています。2章では、市場原理モデルを批判し、地域経済を家庭経済、地方行財政、営利企業の3つの構成関係を図解しています。3章では、「骨太の方針」を批判し、対抗軸を提案しています。4章では、「対抗するシステム」の骨格を示し、公共サービスの質を劣化させないための基準の必要性を説いています。5章では、Another world is possible!で、南米の新しい動きと、ASEAN+3(日中韓)の可能性を示唆しています。私も東南アジアの枠組みの重要性は同感ですが、日米安保からの自立と対等関係が出来るかに関わると思います。ここまでの考えは、2008年から現れた米国発の世界不況前に書かれたものであり、その先見性が評価できます。6章では、政策決定過程への住民参加で、行政と審議機関との関係についての図解で、審議委員の直轄に事務局を置き報告案をまとめる方式は、徳島県の事例として先進的なものであります。マリンピア検討委員会が従来の審議会から脱皮できたのは、知事の委員の選任方法などのリーダーシップをあげています。7章では、上勝町の「葉っぱビジネス」の事例紹介であります。この本は、大企業中心で輸出産業型の日本の経済構造が破綻する中で、地域経済の振興を住民参加でつくるヒントが沢山あります。地方が元気になるには、中央政府の骨格政策をチェンジする時代が来ているのではないでしょうか。
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