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川崎哲(2022)『僕の仕事は平和、・・』旬報社

2024-05-13 | 気になる本

川崎哲(2022)『僕の仕事は、世界を平和にすること。』旬報社

 21世紀になって、ロシアのウクライナ侵略、イスラエルのガザ攻撃など戦争が止まりません。ロシアは核兵器の使用もありうる、と威嚇しています。アメリカと日本は「台湾有事」、と中国を「敵」として煽り、沖縄などミサイル配置を進めています。被爆国日本で核兵器の廃絶を訴えるべきなのに、核の傘や憲法9条すら変えようとしています。どうやって戦争のない平和を築くのか、著者は理想を現実に一歩ずつ地道に楽しく活動しています。世界は核兵器禁止条約を批准する国が増えています。日本はせめて批准国会議にオブザーバー参加すべきです。この本は読みやすく、若い人にお勧めです。アメリカでは大学でイスラエルのジェノサイドに、抗議活動が続いています。豊田市に原水爆禁止の国民平和行進が6月2日16時に、豊田市駅前に参集します。以下、本の気になったメモ書きです。(  )内は私のコメントです。

 ピースボードが力を入れているのは、第一に持続可能なSDGsの普及、第二に武力紛争の予防、第三に核兵器の廃絶です。武力紛争の予防は、戦争が起きる前に戦争の根っこを断ち切ろう、という考え方です。多くの国では、よその国が戦争を仕掛けてくる可能性があるから、こちらも負けずに戦えるようにしておこう、と言って軍備や兵力を持ち日日これを強めています。(武力で平和は守れない)

 日本国憲法は平和主義です。日本が戦争を起こしたことを反省し、第九条で戦争放棄し、軍隊を持たないことを決めています。日本には自衛隊があって、それが事実上の軍隊です。自衛隊は自衛のためと言いながら、実際には戦争の準備をしているという、憲法の矛盾が長い間議論をされてきました。憲法の定めと現実がかなり異なっているので、憲法を変えてしまうべきだという意見があります。

 第三世界とは、いわゆる「開発途上国」のことです。冷戦時代世界は、アメリカ側とソ連側の二つに分かれていましたが、そのどちらでもない意味で使われた言葉です。今日では「グローバルサウス」と呼ばれることもあります。スーザン・ジョージの「なぜ世界の半分が飢えるのか」という本を、みんなで読みました。南北問題で貧しいのは、怠けているとかではなく、北の「先進国」や多国籍企業が自分たちの都合の良いように、世界のルールを作っているからだ、と言うことを学びました。

 戦後の教育現場で、先生たちは「教え子を再び戦場に送るな」というスローガンを掲げて、民主主義や人権、平和を教えるようになりました。今は戦争体験者が社会の第一線から退くにつれ、国家が怖いものであるという感覚が薄れてきているようです。国家は自分たちを守ってくれるものと思っている人が増えてきているようです。(ミャンマーは軍が国民に発砲している。ロシアは反政府勢力を弾圧している。戦前日本は、治安維持法で戦争反対者など弾圧した。沖縄戦の教訓(きょうくん)として「軍隊は住民を守らなかった」と語りつがれている。戦後の満州では軍隊が引き揚げ、開拓団は「棄民」(満蒙平和祈念館「手記」)となった。今の日本は戦争法・安保法制で、アメリカの指揮下で戦争ができる国に準備が進む。いわゆる「新しい戦前」である。)

 50年以上生きてきて、国が言う「敵」というものがコロコロ変わります。冷戦時代にはソ連や中国など「共産主義」が敵だとされてきました。その後、「テロリスト」があるいは「イラクやイラン」などならず者国家が敵だとされました。最近では「北朝鮮だとか中国」だと言われています。変わらないのは、政府が莫大な予算を軍備につぎ込み、それで軍事産業が金儲けをし続けていることです。

 大量破壊、大量殺人というのは20世紀の発想です。核兵器はいずれなくなります。僕たちがもうちょっと運動を頑張ればの話です。今世界で加速しているのは、ドローンや人工知能など最新技術を駆使して、精密にターゲットを定める殺人ロボットの開発です。機械が人間を殺す世界になる、ということです。そして、その機械をつくりプログラミングをするのは人間です。ゲーム感覚で戦争が進められてしまいます。エラーを起こせば全く関係のない人たちが殺されます。今日の世界では戦争と平和をめぐる問題がこのように複雑化しています。暴力や戦争の動機になる問題は増えています。国内で人権が軽んじられ、民主主義が弱まる時、その国は戦争に近づきます。

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神野直彦「財政と民主主義」を読んで、その②

2024-05-13 | 気になる本

神野直彦(2024)『財政と民主主義』岩波新書 ②

第3章 人間主体の経済システム

 財政は、社会システム、政治システム、経済システムという3っつのサブ・システムを、トータルシステムとして社会に織り上げる結節点である。福祉分野は社会システムでの人間の生活を支える社会環境を改善する。福祉と共に雇用創出分野として位置づけられているのが、環境である。それは社会環境と自然環境の破壊による根源的危機に対処するため、だと言ってもよい。コロナのパンデミックの歴史的教訓に学べば、福祉サービスも環境サービスも量とともに質の確保が求められる。質の確保には当然労働条件の改善が要請される。

 市場万能主義が生み出した弊害の解決を、社会の構成員の共同意思決定つまり民主主義に委ねるという発想に結びついていないことをも意味する。政治システムを実質的に動かす「官」と、経済システムを実質に動かす「民」との連携に、国家の運営を委ねるというのであれば、それは重症主義政策である。

工業社会の社会的インフラストラクチャーは、機械設備の延長線上に位置づけられるエネルギー網や交通網(原発、幹線道路)であった。ところが知識社会の社会的インフラストラクチャーは人間の神経系統の能力の延長線上に位置づけられる知識資本の蓄積を支援することとなる。知識資本は、個人的な知的能力と社会的関係資本という二つの要素から構成されている。従って、この二つの要素から構成される知識資本の蓄積を支援することこそ、知識社会の社会的インフラストラクチャーということになる。

新しい資本主義」のビジョンでも新自由主義を批判しつつ、「人への投資」を打ち出している。しかし、人間を成長させる知識社会の社会的インフラストラクチャー整備する視点から、教育体系を整備するという発想は乏しい

(豊田市の予算編成方針では、普通建設事業のハードに300億円以上とし、幹線道路など産業基盤の交通や土建を重視している。恵まれた財政は福祉、教育のソフト重視に転換すべきである。人口減少で出生数の減、若者の市外流出の中、奨学金助成や住宅の補助、何よりも非正規の改善が必要である。トヨタは高収益をあげているが、トリクルダウンはほとんどない。農林業や中小企業振興の地域循環型経済への転換が求められる。)

自己責任には二つの方法がある。一つは家族や地域社会の相互扶助や共同作業を活性化させることによって、対人社会サービスを充足する方法である。それは地域住民が無償労働によって、対人社会サービスを担う方法である。もう一つの方法は対人社会サービスの分配を市場に委ねることである。そうすると対人社会サービスが所得に応じて分配されてしまうので、貧困者には分配されない事態に陥ってしまう。

4章 人間の未来に向けた税・社会保障の転換

日本の社会保障給付は欧米より低い。その中身は、老齢年金と医療の二つの分野に集中している。「全世代型社会保障とはすべての世代を支援の対象とし、またすべての世代がその能力に応じて支え合う全世代型の社会保障」と唱えられている。高齢者中心の給付として捉えられていて、現役世代に頼った負担となっている、という認識である。また、子ども・子育て支援として年少世代への社会保障を充実してくことが唱えられている。それは子ども達を扶養し、教育して、人間を人間として育てていくことが、社会の共同責任だからという理念に基づいていない。あくまで少子化対策として位置づけ人間を、労働力や兵力という手段だと見なしていると考えられる。

所得税の負担構造上の最大の問題点は、所得税はすべての所得を総合合算して累進税率を適用することになっているのに、租税特別措置法によって累進税率の対象から、利子、配当などの金融所得が外されてしまっている。「1億円の壁」として問題になっているように、日本の所得税の負担構造は所得1億円をピークとして、それまでは累進的負担になっているが、そのピークを越えると逆進的になっていく。社会保障負担の高まりとともに労働所得への負担は高まっていくのに対して、1980年代から始まる法人税の引き下げ競争に見られるように、資本所得への負担は低くなっていく。格差と貧困を国際的に拡散させている重要な要素になっている。

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政府の少子化対策では、2024年度から5年間に3.6兆円の財源を確保する方針だ。財源の内訳は、支援金制度の創設で1兆円程度、社会保障の歳出改革で1.1兆円程度、既定予算の活用で1.5兆円程度とされる。このうち、「支援金制度」では、政府は医療保険料に上乗せする形で財源を確保する。当初「月500円程度」が所得によって違い、1000円程度になっている。アメリカ言いなりの武器爆買いをする防衛費は、5年間で43兆円である。社会保障の枠内でなく、裏金や政党助成金、原発、リニア、万博、DXなど必要性、優先順位など、国民的議論や選挙での投票に足を運ぶべきであろう。

豊田市では2月の市長選挙をきっかけに、遅まきながら18歳通院医療費無料化、学校給食無料化、学校体育館に空調、(コミュニティバスの高齢者無料化、)補聴器補助が新年度から予算化された。本格的少子化・子育て対策には、非正規の改善、奨学金制度、住宅家賃補助、公的・2次救急医療、保健所移設など次の課題もある。

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神野直彦「財政と民主主義」その①

2024-05-12 | 気になる本

神野直彦(2023)『財政と民主主義ー人間が信頼し合える社会へ』岩波新書 その①

 この本は著者のおそらく体力的に最後の本であろう。これまでの多くの著作の集大成と言える。少し難解であるが、「最大公約数」的で、論理的には反論する点はなく同意できる。思想的には社会的共通資本の宇沢弘文の流れを汲む。終わりにあるように、人間を「人間として充実させるビジョン」を描く使命を背負って生きている、と学者哲学が見られる。政府は、新自由主義でとアベノミクスで失われた30年、今の日本に暮らしも平和も、若者の未来への希望も見えない。国は借金まみれで武器の爆買い、庶民は円安物価高に苦しみ、自民党の政治家は裏金の金権腐敗政治で、その人たちが平和憲法を変えようとしている。

「地域再生の経済学」の思想が現実にどう生かされたか、地方分権は仕事だけ地方に押し付け、財源と権限は国に集約されている。金子勝の「平成経済史」のように、アベノミクスをばっさり批判検証できるか?以下は本書の拾い読みである。(  )内は私のコメント。

 戦後、資源配分機能、所得再分配機能、経済安定機能という3つの機能を、有効にシステム統合を図る、福祉国家体制が先進諸国で定着していった。いわゆる「黄金の30年」であった。しかし、①1973年は福祉国家体制が崩壊してく象徴する年となった。 1973年9月11日、反市場主義を唱え、圧倒的な民衆の支持を集めてチリの大統領に就任したアジェンデが、軍のクーデターによって惨殺される。クーデターにはアメリカのCIAの関与がされており、民主主義を旗印に掲げた覇権国アメリカが、自ら野蛮な暴力でこれを破り捨てた。② 1973年には、経済システムの重化学工業化の行き詰まりを告げる石油ショックが起きた。

 第二章 イギリスの政治学者は「2008年のロシア・グルジア戦争は、最初のNATO拡大を阻止する為の戦争だった。2017年のウクライナ危機が二番目だ。三番目が起これば人類が生き延びられるかどうかはわからない。」との警告している。パレスチナにおいても始まってしまった。

 私たちは「根源的危機」の時代に生きている。「生」は偶然だが、「死」は必然である。社会環境の破壊によって、経済的危機・社会的政治的危機という内在的危機も爆発してしまっている。(地震など自然災害は防げないが、戦争、不況、食料・資源危機は政治の責任である)

 人間が生存するための生活は、家族や地域社会などという共同体を形成して社会システムで営まれるが、生存のための財・サービスは経済システムの生産物市場から購入することになる。従って労働市場で労働販売して賃金という所得を獲得し、それによって財・サービスを生産物市場から購入しなければならないのである。ポスト工業社会となり、知識集約産業やサービス産業が基軸産業になると、女性も労働市場へ進出するようになり、子どもたちや高齢者のケアに無償労働として従事する者が姿を消して行く。そうなると政府が財政を通じて育児や高齢者へのケア・サービスを公共サービスとして提供しないと、格差や貧困が溢れ出してしまう。というのも労働市場への参加形態が砂時計型に両極分離してしまうからである。コロナ・パンデミックによって日本では、エッセンシャル・ワーカーが低賃金と劣悪な労働条件の下で働いていることも再認識させられた。これは政府が対人社会サービスへのアクセスの保障責任を果たしていないことのメダルの表と裏の関係にある。1990年代日本では新自由主義に基づく労働市場改革が強行されるとともに、低賃金で劣悪な労働条件の雇用が溢れ出していたこの多くが「規制緩和」と「民営化」の掛け声とともに、本来は政府が責任を持って提供すべき公共サービスを、民間に丸投げすることによって生じたものである。(1995年「新時代の日本的経営」、正社員・終身雇用・年功序列の廃止、勤務評定など人間コスト削減。賃金低下でデフレに陥り、金融緩和で弱い日本経済に。)

 生活面よりも生産面を優先した日本の対応。社会的セーフティネットとしての社会保障には現金給付と現物サービス給付がある。現金給付には社会保険と公的扶助がある。日本の社会保険は網の目が粗く、パートや非正規という雇用形態や自営業者を充分に包摂できていない。こうした網の目の粗さによって、ポスト工業社会の社会的セーフティネットとしては、機能不全に陥ってしまう。情報メディアの発展か雇用がネットワークで組織されるため、フリーランスなどと呼ばれる雇用型自営業が大量に存在するようになる。

 バンデミック・コロナでアングロ・アメリカン諸国では、社会的危機を回復するために財政を膨張させて、多額の現金給付を実施せざるを得なくなる。福祉国家が社会的セーフティネット強化したために、それがモラルハザードとなって勤労意欲が失われ、経済停滞が生じているとする新自由主義の経済政策思想に基づいて財政を運営してきたアングロ・アメリカン諸国にとって、福祉国家なき福祉を気前よく拡大したことは財政運営方針の大転換ということである。(安倍政権のコロナ対策はどうであったか検証が必要である。医療の削減が背景にあった。現金給付は必ずしも悪いと言えない。ワクチンが日本で開発されなかった。突然の学校休校、ガーゼのマスク配布や大阪のうがい役は根拠がない。国債発行はやむを得ないとしても、補正予算、予備費の流用には問題があった。国や岡崎市長公約の現金給付はバラまきという側面もあるが、生活不安もありやむを得ない面もあった。豊田市では公的病院が少なかった。軽症感染者と家族を隔離するホテルが、市内に設けられなかった。)

 「人への投資を原動力とする成長と分配の好循環実現へ」と銘打った内閣府は、「経済あっての財政の考えのもと、経済をしっかり立て直すことが重要である」と訴えている。コロナ・パンデミックを克服するために財政は、債務残高はGDP比を大きく高まった(2.6倍)が、倒産や失業が急増する事態を回避させることができた。しかし、「ウクライナ情勢等を背景とした原材料価格の上昇や供給面での制約、金融資本市場の変動などの下振れリスクが存在している」。そのため、「感染症の影響がやわらぎ、持ち直しつつあるわが国経済を腰折れさせることがあってはならず」、「経済あっての財政」という考えのもとに、経済を成長させていく方針を主張している。歴史的教訓は、民主主義の経済である財政に委ねる「財政あっての経済」という考え方に転換することである。

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山田「債務大国日本の危機」最終、展望は?

2024-05-08 | 気になる本

6章 今後の展望

大企業の内部留保は毎年増え続け、22年度には511.4兆円に達した。投資家も稼ぎまくり、国内の株式配当金で毎年約30兆円、海外投資からも約20兆円の利子・配当金を受け取っている。純金融資産1億円以上持つ富裕層世帯は、364兆円の純金融資産を保有する。だが、全世帯の3割はそもそも金融資産をもっていない。実体経済を脆弱化させ、円安と株高を主導してきたアベノミクスと、それを継承する政権の経済運営の結末である。日本の最大の貿易相手国がアメリカから中国に交代したのに、対米従属外交に固執し、アジアの新時代に対応した展望を見失っている

アベノミクスが始まったのは2013年度であったが、アベノミクスの検証しておこう。

第一に、世界経済における日本経済の地位が低下した。

第二に、アベノミクスは株価や株式時価総額を倍増させ富裕層の資産を倍増させた。しかし3割の世帯が金融資産を保有していない。日本社会では資産格差を拡大した。消費税は5%から8%さらに10%へと2回も引き上げ、国民所得に対する税社会保障の負担率は39.8%から47.5%へ跳ね上げた

第三に、大資本の自由と利益を最優先する新自由主義のアベノミクスは、国内での設備投資や賃金の支払いを渋る企業経営のあり方を放置してきた。大企業は内部留保を1.5倍に増やし511兆円を溜め込んだ

第四に、累積した政府債務(国債発行残高)は日本を世界トップクラスの政府債務大国に転落させた。自国のGDPの2.5倍である。

物価高の背景は、第1に世界金融恐慌のリーマンショック、さらには新型コロナウイルスのパンデミックに直面した各国政府と中央銀行が採用した大規模な財政金融政策である。不況対策や生活支援のための大規模財政出動は必要な対策である。だが各国の中央銀行が世界経済の成長をはるかに上回る大規模の資金供給を生み出したため、実体経済に必要とされる通貨量を超えた過剰な通貨が流通し、通貨価値の下落と商品価格の全般的な上昇=インフレーションが発生したからである。第2の背景は、ロックダウンによるグローバルなサプライチェーンの切断で世界生産が低迷し供給源になったこと、ロシアウクライナ戦争が資源原材料の供給減をもたらしたことである。

円の暴落を加速したのはアベノミクスと現在に至る異次元金融緩和政策である。円暴落が直撃するのは自給率が低く、多くを輸入に依存する石油・天然ガスなどのエネルギー価格、鉱物資源や原材料価格、さまざまな食料価格である。

円安・物価高の連鎖を立切り、物価高から国民生活を守るには、異次元金融緩和政策から脱出し、異常な水準の金利格差と円高を回避しつつ、賃上げ、消費税減税、家計への補助などの政策展開が喫緊の課題になっている。

日本は輸出入ともドル建て決済の割合が異常に高い。公的な外貨準備となるとドルの割合はさらに高い。日本の外貨準備高は中国に次ぐ世界第2位の1.2兆ドルの約8割を閉めるのはアメリカ国債でありその他のドル焼きも含めると9割以上は米ドルで保有されている世界経済の中心はアジアの時代である日本の輸出入総額168兆円の53.1%はアジア経済圏に依存する中国韓国インドASEAN諸国をはじめとしたアジアの国々と平和的に共存共栄する道を選択する仕事でしか日本の経済成長と繁栄はできない時代が到来したといえる。

目先の利益でマネーを暴走させ、バブル経済の膨張と崩壊を繰り返すカジノ型金融独占資本主義は「1%の金融独占資本と株主と富裕層」のための経済である。1%のための経済から持続可能な「99%のための経済」に転換することである。第一に物の取引を伴わない投機的な金融取引には課税し、実体経済から乖離したマネーの暴走を抑え込むことである。第二に国や地域の経済活動の中で稼いだマネーの一定割合は、その国や地域の発展と安定のために再投資し循環させる仕組みを確立することである。第三に中央銀行の独立性を保証し時の政権や経済界の意向に屈服せず「物価安定」の大目標を実現することである。第四に21世紀の人類敵拠点に立ち国連総会で採択された持続可能な開発目標17の目標達成できる各種政策を充実させ実行させることである。

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アベノミクスの異次元金融緩和が日本財政の借金大国にし、利上げで円安を止められない。自給率の低い日本の物価はインフレに向かうであろう。裏金問題、武器爆買い問題、アメリカ従属で中国との対立強化、民主主義の崩壊など日本は危機的状態にある。新自由主義の日本経済、資本主義社会は限界で在り、大企業・富裕層だけが利益を得て、資産のないものと貧富の格差が拡大している。自民党政権は裏金、企業団体献金、政党助成金、官房機密費など金権腐敗政治である。武器の爆買いを止め、消費税減税、大企業など応分の課税、非正規の削減、日米安保廃棄、アジアの友好、9条による平和外交など進めなければ、日本の未来に希望が持てない。それには、市民と野党の共闘で政権交代しかないだろう。当面は円安・物価高を安定させられるか?食料自給率の向上、非正規の改善、少子化ストップを地域から要望を挙げることである。ふるさと納税、成果主義など競争社会から、ポスト資本主義は分かち合いの共生社会も望まれる。

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山田「債務大国日本の危機」⑥

2024-05-06 | 気になる本

GW前に日銀が為替介入し、1$160円が153円になっている。アベノミクスの反省も、「出口戦略」もなく、利上げができない日本で、これで円安が止まるか?山田博文「国債ビジネスと債務大国日本の危機」(新日本出版社)以下、抜き書きである。

5章 日本の金融 財政危機 ⑥

 国債の投資が増えると国債金利は低下(国債価格は上昇)する。従って、長期金利の水準を中央銀行の金融政策で決定することは本来不可能である。アベノミクスは日銀からのマネタリーベースを拡大すれば、自動的にマネーストックが増えたし、2%の物価目標も達成できるとの誤った理論(貨幣数量説)で失敗したが、また同じ過ちを犯す。

YCCの狙いは国債利回りに代表される長期金利を、定位固定化することにある。日本が抱えこんだ1441兆円の政府債権残高(国債・財投・地方債)などは、すでに自国の経済規模(GDP)の2.6倍に達している。その大半は一般会計を発行母体にした普通国債発行残高(1068兆円)である。財務省は財政の持続可能性を見る上では、税収を生み出す元となる国の経済規模GDPに対して、総額でどの位の借金をしているかどうか重要、と指摘する。日本は財政の持続可能性が危うくなる世界のトップクラスの「政府債務大国」と言える。日本の国家財政は歳入の4割が借金に依存し、歳出の3割弱が借金返済に費消される自転車操業(サラ金)であり、火の車状態にある。

内外の金利格差を拡大させてきた。その上国内産業の空洞化や貿易赤字の拡大は、日本経済の弱体化と日本売りを誘発し、投機的な円売り環境を誘発してきた。その結果、日本だけほぼ半世紀ぶりの円安となり、輸入価格上昇→国内物価上昇⇒国民生活破壊の悪しきメカニズムが作動することになった。

インフレ物価高、バブル経済の暴走を抑え込むには、過剰なマネーを民間金融市場から引き上げる金融引き締め政策が不可欠である。各国中央銀行はこの間連続して金利を引き上げつつ、量的金融緩和から量的引き締めへと金融政策を転換してきた。

食料品やエネルギー関係価格が高騰するのは、いずれも輸入に依存する割合が高く円相場の動向に左右されるからである。異次元金融緩和政策の十年は半世紀ぶりの円安水準を記録した。2012年から2020年の期間に1ドル79円から137円へ7割も暴落した。インフレは日本国民の貯蓄を直撃する。預金金利から物価の上昇率を差し引いた預金の購買力は、2020年には-4%を記録した。インフレ・物価高、実質賃金の低下に加えて預貯金の購買力も低下する、トリプルパンチに国民はさらされている。

政府の一般会計は、国債発行残高の過半を保有するまでになった。日銀による国債の爆買い=日銀信用の供与によって支えられた。戦後の財政法(第五条)が日銀引き受けによる国債発行を禁じたのは、戦費調達を日銀の国債引き受けに依存した戦前の不幸な教訓からであった。日銀は独立性を失い、政府の「子会社」として国債増発を(民間銀行を迂回し)支えてきた。

日銀の抱える国債の含み損9兆5081億円は、日銀の純資産額(22年9月末現在)5兆365億円を2倍近く超過して、日銀は巨額の債務超過に陥っているのである。

異次元金融緩和政策の十年で大幅に上昇したのは株価であった。日経平均株価は2012年から22年にかけて、実体経済が低迷しているにも関わらず2.5倍に上昇した。2023年8月20日現在株式市場に日銀から37兆1160億円(簿価ベース)の資金が供給されてきた。株式市場に、日銀信用が供給されることで市場実勢を超えた株高=官製株式バブルが引き起こされた。貯蓄から投資を推進する政府日銀に支えられ、株式の配当金や大企業の内部留保金もほぼ倍増した。日銀が株を買って資本金を供給してくれるので、経営が悪化しても会社は倒産しない。現在日本の一般会計歳出は、増大する国債費や2倍になった防衛費に食いつぶされ、国民の生存権を担保する社会保障関係費が削減される事態に陥っている。23年度予算では防衛関係予算が戦後最高の伸びを記録する一方で、社会保障関係費では自然増の1500億円が削減され医療介護年金の全てが圧縮された。

長期金利の上昇や金利引き上げは、株式市場や不動産市場に流入しバブル経済を膨張させていた過剰なマネーを、高金利になった国債や元本保証型の預貯金などにシフトさせるので、バブル経済の縮小、株式・不動産価格の下落を誘発する。投資に失敗し、自ら経営破綻の危機に陥った大手金融機関の場合、「大きすぎてつぶせない」ということを主張し、各国政府からの巨額の公的資金と各種の支援策を引き出してきた。

日本資本主義は、①国家財政と日銀信用へのタカリの構造で、実体経済の成長より金融市場において、多様な金融収益を追求するカジノ型金融ビジネスが優先された。②国民経済と国民生活は、株価・金利・為替相場の変動など、予測不能の経済動向に振り回され不安定化する。3生産高、売上高が減っているにも関わらず、賃金削減や資金の運用を通じて内部留保金を累増させていく企業経営が横行する。④ものづくり国家日本から株式・債券・為替等の売買取引で、キャピタルゲインを追求する金融収奪型国家へ転落した。⑤対米従属の下で、ウォール街と国際金融独占体が日本の大株主経営支配者に成長し、日本の企業と国民は内外の金融独占資本から二重の金融収奪を受けるようになった。

現在の政府の債務残高は、対GDP比は軍事調達のために日銀引き受けで国債が大増発された1945年の終戦時を上回る水準である。当時はGHQの強大な外国権力を背景に、最高税率90%の財産税が断行された。

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政府に借金返済の「出口戦略」は無いだけでなく、武器爆買いで軍事費増大である。ものづくりは車だけはない、食料自給率は下がり国民の安全は保障されない。国民生活は二の次で、財界・金融界の言いなりであり自民党政権の裏金で動いている。また、アメリカのいいなりで、日本国民のくらし・平和は曲がり角にあると思う。

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河村小百合「日本銀行」再読②

2024-05-05 | 気になる本

7章 変動相場制下での財政破綻―欧州の経験

通貨が流通するのは価値が安定(信用)しているから。資金流出が止まらなくなった時、ドルなどやピットコインに変換する。国際金融のトリレンマ,①自由な資本移動、②為替レートの安定、③金融政策運営の自主性の3っつを同時に達成することはできない。

 我が国は預金封鎖や財産税、デノミを断行した。アイスランドは国民の重い税負担で、資本移動の規制解除できたのは2017年3月の8年4ヶ月の後だった。我が国の財政事情は、アイスランド、キプロス、ギリシャが危機に突入した2008年より相当悪い。何も起こってないからとして、放漫財政をこのままにして良いのか。円安が物価高騰につながるだけでなく、通貨安が金融危機になりかねない。日本は1ドル150円を超えた時、円買いをし、10年国債の金利を0.5%まで許容した(その後マイナス金利とYCCなど解除)。外貨準備があるが、持続可能だろうか。連休前から日銀・政府は円買い介入した。)                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

8章 我が国の再生に向けて

わが国では、高所得者層ほど負担率は低下している。1億円の壁である。「経済成長なしで財政再建なし」で、税制も十分議論されず与党の税調で決まってしまう。1964年東京五輪から「60年償還ルール」ができた。1975年石油危機後から、建設国債から赤字国債が「特例国債」として制定された。60年償還ルールが放漫財政の主犯でないか

真に独立した中央銀行としての抜本的な立て直しを。市場メカニズムの回復として、10年国債の金利の許容範囲(現在0.5%)の拡大、0%設定している10年国債金利を徐々に引き上げる。財政再建に向けて本腰を入れる。慶応大学深尾教授が「量的緩和、マイナス金利政策の財政コストと処理方法」を書いている。

日銀が、他の中央銀行が決して採用しないYCC政策を実施した結果、短期金利を0.2%上げただけで、あっという間に「逆ザヤ」に転落する。しかもETFを買い入れている。これ以上、財務の過度な悪化を招かないよう、日銀に段階的な正常化を取り組むことを促す。

政府も財政運営を見直すこと。国債発行額を減らす(軍事費倍加の岸田政権、緩和継続の植田総裁ではそれらの姿勢は見られない)。内閣府は26年度までプライマリーバランスの黒字化はできない、つまり国債発行は続けるとしている。自民党内では60年償還ルールを80年にするなどの議論がある。国債の元本も償還する気もないのか市場の信用を失う。国債金利が急上昇するか、円安が一段と進展するかして、財政運営が行き詰まる。(いつか?)米国では国債は財源として考えられていなく、10年単位で償還を設計する。米政府もコロナ化で財政出動をやり過ぎたと認めた。政府、日銀に場当たり的でなく問題の所在を明らかにさせ、国民も甘えや無責任から脱却しなければならない

私のコメント

植田総裁は、金融緩和を継続し、「物価目標2%」評価を1~1.5年でやる、と表明し危機意識が弱い。①アベノミクスの失敗を日銀・政府、国民が総括しなければ、小手先の円安解消に為替介入ではできないであろう。②自民党は金権腐敗政治を止めること、③武器の爆買いを止めること、防衛費の拡大をしない、④無駄な公共事業(万博、リニアなど)を止める、⑤消費税の減税(もちろん0%が好ましいが、財政的根拠と野党の合意も必要である)、⑥地方自治体から少子化対策の推進などである。これら金融・財政、経済再生を国民的共通政策の柱の1つにして、政権交代しかないように思われる。

少子化対策で西三河では給食の無償化(みよし、安城、豊田、碧南予定)、コミュニティバスの無料化が進んだ。豊田市では2月の市長選挙を機に、18歳医療費の通院無料、体育館の空調設置も前進した。しかし、小中の少人数学級、大学の奨学金制度(碧南市予定)、非正規の改善(みよし市方向)、非核自治体宣言(みよし市)はまだである。国の指揮命令による地方自治改悪は許されない。

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河村小百合「日本銀行 我が国迫る危機」再読

2024-05-04 | 気になる本

 政府・日銀は連休前から2度、為替介入を8兆円程し、1$153円程になった。しかし、基本的に円安基調が変わったわけではない、と思う。根底に米国との金利差が大きく続き、FRBの利下げも先送りである。何よりも、日本は利上げ出来ない。河村小百合は著書で、「金利1%引き上げ2年で債務超過に」といっている。つまり、日銀には政府の債務1千兆円超を民間銀行経由で半分以上持っている。今の国家財政は歳出も歳入も借金で、返済を長期に先送りしている自転車操業(サラ金かも)である。それでもアメリカの武器の爆買い、5年間で43兆円以上の軍事費拡大である。一方で、子育て支援の財源は目処がない。円安・物価高で国民生活は火の車である。だが、自民党は政党助成金、政治献金、パーティ券など裏金で、使途不明である。国民は怒り、3補選では自民党は0となった。政権交代するには、野党の共通政策づくり(円安物価高、平和憲法など)が急がれる。以前読んだが、改めて河村小百合の「日本銀行」6章(財政破綻でどうなる)を読み直す。メモ書き、(  )内は私のコメント。

 第六章 財政破綻でどうなる

 財政破綻は起きるはずがない。という理由に、わが国には2000兆円を超える家計貯蓄がある。ギリシャと違って国債のほとんどを国内で消化している。でも名目GDP比で260%になる国債を国内で消化できるのか?昭和20年の財政再建計画では①国有財産払下げ、②財産税、③債務放棄、④インフレ、⑤国債の利率引き下げで、GHQの押しつけでなく政府の案である。基本は「取るものは取る、返すものは返す」であった。具体的には、一度限り空前絶後の大規模課税として、動産、不動産、現預金など高率の財産税が課税された。その前に預金封鎖および新円切り替えが行われた。意思決定の状況について、「昭和財政史」にある。

 戦後日本でハイパーインフレの対策では、1946年に預金封鎖および資源切り替えが実施された。政府は国内企業や国民に対して、戦時中に約束した保証債務は履行しない、国内債務不履行を強行した。財政運営が行き詰まれば、最後の調整の痛みは間違いなく国民に及ぶ。(現在は、1000兆円以上の赤字国債があり、単年度黒字にできでいなくても、借金先送りで、しかも米からの武器爆買いである。1$160円となり政府日銀は為替介入したが、基本的には金利差があり一時的にしか円高に向かわないだろう。辰巳前参議院議員のU-tubeが参考になる。)

 戦前と同じレベルまで悪化した日本財政の教訓は、①国債の元利不払いは、民間銀行の経営破綻の引き金を引く、②財政調達の穴埋めに、所得課税、法人課税、消費課税か、③政府の借金はインフレで帳消しにできる、という意見もある。(それとも軍事費削減、大企業の応分負担、無駄な公共事業削減か、金権腐敗政治の政権交代か転機にある。)

 

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改憲NOin豊田

2024-05-03 | 平和・人権・環境・自治制度

 今日は憲法記念日です。憲法は紛争を武力で解決しない。NHKの政治討論でも憲法の討論がされていました。自公や維新、国民も改憲を促進していました。まずは緊急事態条項を理由にしていました。ドイツでは国会を閉鎖し、ヒトラーが戦争へと突入したわけです。自民党の裏金は何に使われたのか、解明されていません。裏金の疑いのある自民党議員が憲法審査会に参加していることは許せません。

 先に行われた補欠3選挙で、自民党は3連敗です。東京、長崎では候補者も立てられませんでした。庶民に増税、自民党は裏金で脱税の疑いもあります。国民は怒っています。名古屋市民オンブズマンは2日、自民党愛知県連が5年間で9000万円以上の収支報告書への不記載がある、として名古屋地検に刑事告発しました。市民と野党の共闘で、自公政権を代えましょう。共通政策を市民から議論しましょう。その1つは政治とカネの問題です。

2つ目は平和の問題です。

 ロシアのウクライナ侵略も停戦の気配がありません。武力と武力では解決しないことは明らかです。ましてや核兵器の使用をちらつかせることも許されません。イスラエルはガザ地区の戦闘を休止せよ。今、アメリカではパレスチナに自由を、と抗議活動をコロンビア大学はじめ全土で行っています。日本からも声を上げましょう。先日は岸田首相が国賓として訪米しました。しかし、グローバルパートナーとしてアメリカと友達を演じていますが、実情は武器爆買いであり、敵基地攻撃能力、そして米軍の指揮権に組み込まれる共同声明の内容です。軍備拡大でなく、憲法を生かした外交努力が欠如しています。

 3つ目は、円安物価高です。政府が円買いで円高に転じましたが、構造的には金利差からも円安基調にあります。アベノミクスの異次元の金融緩和で、日本経済は弱体化しています。国の借金は1000兆円です。武器を爆買いする余裕はありません。物価上昇率が現在2.8%ですが、食糧費は7.5%です。消費税の減税が必要です。

 庶民に増税、自民は裏金で脱税です。軍事費を削ってくらし、福祉、教育に回せ。市民と野党の共闘で政権交代をしましょう。

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山田「債権大国日本の危機」⑤

2024-04-30 | 気になる本

第4章

現在日本は、約1000兆円の国債発行残高を抱え込む、世界トップレベルの「政府債務大国」に他ならない。戦後の大規模公共事業や不況対策、バブル崩壊後の不良債権対策、直近のコロナ禍対策などの財政資金が、日本銀行に支援された国債の発行により調達されてきた。実体経済の長期的な低成長下で、資本蓄積の舞台が金融・証券市場にシフトするようになると、増発される国債は内外の国債投資家や金融機関によって、有力なビジネスチャンスを提供してきた。

国債増発の仕組みをフル回転させたのが、第二次安倍政権下の黒田日銀の異次元金融緩和政策である。(円安・物価高の今、黒田氏が春の叙勲とはいかがなものか?)。国債発行による財政資金調達を禁じた財政法第五条を空文化させ、国債は無制限に発行されてきた。これは日銀信用に依存した財政資金調達=財政ファイナンスを意味する国債の発行残高は2023年度末見込みで1068兆円にまで膨張し国債を大量に買い入れてきた日銀は55% 593兆円を保有する。

戦前まで、政府債務を高水準に押し上げる最大の要因は戦争であり、武器の購入などの軍備拡張、植民地経営。一時賜金・軍人恩給などの軍事費調達であった。戦後は平和憲法の下で戦争が禁止され軍事国債の発行は無い。それに代わって増発したのは、公共事業のための建設国債と財源補填のための赤字国債であり、終戦直後の対GDP比はもとより世界のトップレベルまで政府債務を積み上げてしまった。

 日本の政府債務の対GDP比は、主要国と比較しても261%に達し、2回の財政破綻に陥っ

た近年のギリシャの177%より高い。なぜ膨張したのか、第一に国債市場が現代日本の資本蓄積の主要舞台の一つであること。第二に日銀信用に支えられて国債が増発されたことである。ブレーキがなぜかからなかったのか?日銀による国債の爆買い(市中銀行経由)で、国債金利が0%台に定位固定化(YCC)されていること(2024解除)、1000兆円の発行残高にしては元本償還費を含む国債費は少額でブレーキがかかっていない。その秘密は世界でも例のない政府債務の返済を60年後まで作送りする「60年償還ルール」を採用しているからである。

 政府債務に国民の債権が向き合っているので、債務関係は互いに相殺されるとの一般論がある。国民全体が債権者ではなく、ごく限られた富裕層や内外の国債投資家だけが政府の債権者=国債保有者である。一般国民は消費税などを負担し、政府の債権者に国債の利子や元本償還のための支払いを、余儀なくされている。現代日本は国債・株式・預貯金などの金融資産を持つ者と持たざる者との資産格差が、拡大した「貧困・格差大国」に転落してしまった。将来世代に過大な税負担を強要し、国民生活を貧困に陥れるバブル経済の崩壊後長期にわたって、法人税率は1984年の43.3%をピークに現在の23.2%へと大幅に減税されてきた。その上超低金利政策下で、企業は借入金利の低下によって金利コストを削減するが、国民は預貯金金利の低下によって利子所得を失ってきた。(現在、1ドルが160円に達した。米はインフレで金利4.21%、日本はマイナスを解除しただけで、普通預金は0.02%である)

 この間の法人減税や各種の特別減税措置、所得税相続税の最高税率の引き下げなど新自由主義的な大企業金持ち減税を続けてきたことで失われた税制と税収を復活させ、またグローバル企業が全世界で獲得した利益を合算した課税、グローバルな金融取引への課税、デジタル課税、炭素課税などの新たな税制と税収を実現することで、財政破綻を回避する時代が訪れている。法人税や富裕層への増税に踏み出した欧米のように、国民負担でなく応能負担で得た税収を政府債務の返済に振り向け、また過大なリスク資産を抱え込んだ日銀のバランスシートの改善に振り向けることで、迫りくる財政破綻と円暴落の異次元リスクを、回避する大事業こそ現代日本の火急の課題である。(大企業などからの政治献金、パーティ券購入で裏金、「脱税」の自民党政権では実現できない。円安・物価高、金権腐敗政治は、市民党野党が共通政策を作ることである。その方向が3補選で示された。)

 財政政策でインフレを起こそうとした当時の安倍政権が、注目したのが「シムズ理論」でありヘリコプターマネーであった。日銀が供給するマネーは民間銀行の保有国債の日銀買い入れで、国債という金融資産を日銀が受け取る見返りにマネー供給しているのであって、現金をバラ撒いているのではない。実体経済の成長が伴わない状態で、国民がヘリコプターマネーを受け取り使えるマネーの量が2倍に増えたら、マネーの価値は半減する。ヘリコプターマネーとは、国民に現金をばらまいているように見えるが、その本質は政府が強制的にインフレを起こすことによって国民の預貯金を巧妙に引き出し、政府債務を解消する政策に他ならない。

 戦後日本のインフレ収束は、預金封鎖と「タケノコ生活」で、(デノミ新円切り替え、参考 河村「日本銀行 我が国に迫る危機」6章、7章)、インフレによる債務者利得は政府と大企業である。戦後のハイパーインフレはその戦略はインフレである。(検証*ドッジライン及び農地改革について?)

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山田「債権大国日本の危機」④

2024-04-29 | 気になる本

1$158円、円安・物価高でも、日銀は4月の政策会合で現状維持を決めた。債権大国日本で利上げできない、打つ手なしのジレンマがある。財務省も口先介入だけである。物価高で国民のくらしは火の車、自民党は裏金で脱税の疑いもある。3補選で野党が完勝は当然である。武器の爆買い止めて、消費税減税を。大企業・大富豪には応分の税金を!

第三章

国庫の赤字が経済規模GDPの2倍を超過し、破綻の崖っぷちにある。国内外の大手金融機関は国庫の赤字と日銀トレードをテコに、資本蓄積を増進している。第二次安倍政権下の政府と日銀との政策連携は、「デフレ脱却」「2%の物価上昇」が最重要課題とされ、歴史上例を見ない異次元金融緩和政策となって展開された。政府は国債の市中消化基盤である民間金融市場の動向から相対的に独立し、ほぼ無制限に国債を増発できた。日銀による国債の引き受けを禁止した財政法第五条は事実上空洞化した。しかも日銀の国債保有額は国債発行残高の5割を超えてしまい、国債価格の下落は日銀を債務超過に陥れるほどのリスクとなった。

日本を世界最高の政府債務大国に押し上げたのは、日銀信用に依存した国債増発メカニズムがフル回転しているからである。日銀は買入れで国債の金額を2008年12月に改訂し、これまで年14.4兆円スペースで行ってきた買い入れを、年16.8兆円にする決定を行った。2016年度では国債買い入れ額119.2兆円となり、国際増発の歯止めはなくなり無制限に増発できるようになった。。

第二次世界大戦時の日本の軍事資金調達のために、増発された国債は長引く戦時下での窮余の一策として、日銀の直接的な国債引き受けに依存した。戦後になると戦渦への反省とインフレ懸念から、財政法第五条によって禁止された。だが日銀が政府から直接国債を引き受けなくとも、民間金融機関が公募入札で落札した国債を日銀が買い入れ、その買い入れ額が国債発行額に匹敵するようになると、財政法第五条の規定は空文化する。しかも「財政ファイナンスを行っていない」と答弁していた。

日銀の国債買いに依存した国債発行メカニズムが作動すると、国債が際限なく増発され政府債務が累積するだけではない。日銀が国債を大量に買い支えているので、国債価格は下落することなく、官製バブルが演出される。政府債務の負担を軽減化し、財政破綻を先送りできる。(そして2020年からのコロナである)財政破綻が表面しないのは日銀による国債の大規模購入が継続され、日銀信用に依存した国債の発行と財政資金調達が行われたからである。

何らかの事情で国債価格が下落した場合、日本銀行は資産の劣化と巨額損失に逢着し、日銀信用は毀損する。対外的には急激な円安を誘発し、輸入物価を押し上げ、それと連動して国内物価の高騰インフレを誘発し、国民生活を直撃する。

日本財政と日銀は財政ファイナンス日銀トレードによって異次元のリスクを抱え込んでしまった。日銀が発行残高の5割台の国債を保有する事態は歴史的に未経験であり、日本の中央銀行と円はどうなるのか予断を許さない時代が到来している。

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