「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

鹿と生物多様性

2010年05月03日 | 田舎暮らし

冬の猟期の間はあまり頻繁に姿を見せなかった鹿が、猟期が終わると途端にすごく増えて、家の周囲にも平然と出没するようになる。夜など、子どもを迎えにいこうと思って玄関のドアを開けた途端に、車のすぐそばから鹿たちが逃げていくこともしょっちゅうだし、下のバス停に行くまでの間に2~3カ所で鹿の集団に会ったりする。昨夜は電柵のスイッチを入れ忘れて寝てしまったら、朝、畑の周囲に鹿がいて、慌てて外に出てみたら、数日前に植えてばかりのキャベツとレタスをかなり食べられてしまった。
 鹿が増えすぎたことによる害は畑ばかりでなく、家の周囲でも植生が随分変化していて、鹿の嫌う植物ばかり目立つようになり、南アルプスの貴重な高山植物まで食われてしまって、お花畑が悲惨な状態になっているし、草のあまりない時期には、このように木の皮をはいで食べてしまう。これはつい最近のしわざで、今年は葉っぱが出てきたけど、これだけ皮がはげてしまうと、じきに枯れてしまうのではないかと思う。よく山で木の幹にテープがぐるぐる巻いてあるのも、みんな鹿の食害を防ぐためだ。

 先日、歯医者の待合室で見たナショナルジオグラフィック3月号の「オオカミとの戦い」は非常に興味深い記事だった。鹿が増えすぎているのは、鹿を食べる肉食動物がいなくなってしまったせいで、アメリカのイエローストーン国立公園では狼を再度導入するプロジェクトによって、生態系が見事に復活してきているのだそうだ。「彼ら(エルクなど)が越冬していたお気に入りの餌場では木々が丸裸になるまで食いつくされていたが、動物たちが長居しなくなると、猛烈な勢いで若木が育ち始めた。緑豊かな森に小鳥がやってきて巣作りをし、ポプラやヤナギ属の木々が川岸に根を張って土壌が安定した。木々から水中に落ちた昆虫は魚や両生類の格好の餌となり、木の枝を目当てにやってきたビーバーがコロニー建設に励む。(中略)たった1種類の捕食動物が引き起こす環境バランスの変化は、土壌中の微生物にまで及ぶのだ」。そうはいっても、もしオオカミが山にいたとしたら、それはそれでやっぱり怖い。