「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

リニアをめぐる二つの集まり

2011年02月28日 | リニア新幹線
 昨日は飯田市内において、午前中はリニア飯田駅を考える会のシンポジウム、午後は飯田・リニアを考える会の学習会が行われた。午前中の方は、リニアが来ることを前提にした、リニア飯田駅を現在の駅に併設することを求める推進側の集まり、午後はどちらかといえばリニアに否定的な集まりだったけれど、信毎によればどちらもほぼ150名程度集まったとのこと。
 リニア議論活発に 飯田で市民団体がシンポや学習会
 そのほか、このときの様子をツイートしていた人がいて、それがtogetterにまとめられている。

 両方に参加した人もいたようだったが、私は午後だけ参加して、今度はこちらから記録係を申し出て、しっかり録音してきた。またテープ起こしして近日中にアップしたいと思っている。前回のテープ起こししたものは、さらに講師の方に手を入れていただいて、冊子にまとめていただいていた。そうやって生かしていただけると、すごくうれしい。分かりにくかった電磁波の部分も全面的に読みやすく直していただいてあった。(前は時間節約で「である」調で起こしたら、その電磁波の講師の方が全部「ですます」に直されていたので、今回は「ですます」で起こしています)

 午後の方は学習会第2弾「リニアが及ぼす自然環境への影響を考えよう」ということで、「南アルプスに穴を開けちゃっていいんですか? 伊那谷豊かな自然と環境をズタズタにしたいのですか?」というサブタイトルが付いていた。 
 まずは前回コーディネーターを務められて、十分にお話をお聞きできなかった川村先生から、そもそも「速いことはよいことか?」という文明論的な観点から、夏目漱石、志賀直哉、水上勉、茨木のり子、辻信一、ダグラス・ラミスといった人たちの考え方を紹介いただいた。夏目漱石は今から100年以上も前にロンドンに留学して、ロンドンの市民が当時は石炭だから、真っ黒な空気を吸っていること、非常に多忙であること、金の非常に力を持っていることに気付いて、文明の進歩が果たして人間の生存の苦痛を減らしているだろうかという疑問を呈している。
 またダグラス・ラミスの『経済成長がなければ私たちは豊かになれないだろうか』から、経済成長がよいものだということを大前提にして、開発の負の部分には目を閉ざして話が進められていくことへの疑問、それを専門家と称する人々が一方的に決めていく反民主的なシステムに対し、それは選択の問題であるはずだというお話をされた。
 次の松島先生からの大規模土木改変による影響のお話は、このブログでも何度も紹介しているけれども、最後に地域の小学校や保育所などで配られたリニア推進の下敷きに触れて、これではまるで戦前の神風教育と同じではないか、若い人はだまされていないかと締めくくられた。また、松島先生は第2部の最後にも、今の飯田下伊那地域ではこの問題に対して自由に物が言えない雰囲気が充満していることに疑問を投げかけておられた。

 休憩後の第2部は、まず参加者の中から電磁波被害についてのお話、午前中のシンポにも参加された方からそちらの様子、また、JR東海の労組の方からのお話をいただき、その後は休憩時間中に集められた質問に川村先生、松島先生が回答していく形で進められた。
 今後のことでは、国交省の審議会の中央新幹線小委員会の最終答申が3月下旬に出る予定らしいが、それを受けて、もう1回パブリックコメントを募集することになる。これまでの2回のパブコメでは、まだまだ疑問を呈する側からの意見提出が少ないので、ぜひみんなでたくさんの意見を出しましょうという提案があった。
 意見を述べるためには、あるいは周りの人に伝えるためには、やはり専門家任せでなく、自分自身で情報収集して勉強していく必要がある。原発の立地計画を撤回させた巻町では、住民が原発について1時間は語れるようになっていたという話も紹介されていた。もちろん、(マスコミには全く報道されないけれども)、このところ埋め立て工事阻止で緊迫した状況が続いている山口県の上関の祝島の人たちもそうだろう。前回のパネリストだった橋山禮治郎先生が『必要か、リニア新幹線』という本を書かれて岩波書店から出版されている。リニア計画がいかに経済合理性のないものかということが過去の事例などを基に実証的に書かれている。

中川村TPP参加反対デモ

2011年02月20日 | 非戦・平和・社会


 今日はお隣の中川村で、村長さんが呼び掛けた全村挙げてのTPP参加反対デモが行われた。TPPについては、日本の農業がこれによって壊滅的な打撃を受け、食料自給率が十数パーセントにまで低下するのではないかと言われているし、農業だけの問題ではなく、金融、保健医療などさまざまな分野の規制緩和までも対象になっていて、国内の経済、生活への影響は大変なものになるので、つい先日も長野県のJAで取りまとめている署名用紙が回ってきたので署名したばかり。今回のデモも中川村民だけでなく、広く参加を呼び掛けていたので、隣村で近いこともあって参加してきた。随分大勢の人が集まったなと思っていたら、380人もの人が参加したそうだ。曽我村長の「エジプトに続いて声を!」というツイートが15日。わずかの準備期間ですごいなと思う。こういう動きが全国あちこちに飛び火していくといいな。
 上の写真は役場を出発するときの先頭で、真ん中辺のスーツにエジプトのスカーフ姿の人が曽我村長。


 若い人たちも結構大勢いる。農業っぽく、トラクターや軽トラックも。
 音の出る物を持って参加くださいとのことで、空き缶や太鼓など賑やか。
 (村長さんはカンをたたいていた)
 時々シュプレヒコールあり、そろいのはちまき、のぼりばたなど、古典的なデモっぽい。
 中央アルプスの山々にもみんなの声が届いたろうか。







 最後はショッピングセンターの駐車場で、各団体の人たちのメッセージがあり、
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉への参加に反対する宣言を読み上げて
解散。
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TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉への参加に反対する宣言

 政府は、「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」交渉への参加を検討し、
アジア太平洋貿易圏の構築を目指すと表明し検討を行っている。
 TPPは原則としてすべての品目の関税を撤廃する協定で、BSEの心配のある
牛肉や遺伝子組換作物の自由化、食料自給率低下といった問題に留まらず、
保健医療、政府調達をはじめ24にも及ぶ多くの分野で米国基準が押し付けら
れ、国内法よりTPPが優先されることになる。
 国内経済、国民生活への影響は甚大で、特に農山村では、地域経済・集落
共同体そのものの崩壊(「限界集落」化)が懸念される。
 よって、私たちは中川村全村を挙げてTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)
交渉に参加しないことを、政府に対し求める。
 私たちの「食」「文化」「暮らし」「地域の未来」を変えてしまうTPPへの
参加に断固反対する。
 以上、宣言する。
 2011年2月20日    中川村全村挙げてのTPP参加反対集会

雪景色

2011年02月15日 | 田舎暮らし

 この冬は1月までは雪が少なかったけれど、先日の連休に20センチほどの積雪があり、
それがまだ全然溶けないうちに、昨日は今度は30センチの積雪。
長靴がすっぽり埋まってしまうほどの量になった。
 twitterでつぶやくようになってから、ブログの更新は本当に滞ってしまって、
写真もあまり載せていないので、今朝の雪景色を何点か載せます。
(最後の1枚は先日の雪のとき。一応、鳥を撮ったつもり)
 この雪の中、昨日、「ホピの予言」の監督、宮田雪さんがスピリットの世界へと
旅立たれた。ご冥福を祈ります。








高尾山のお話

2011年02月04日 | 自然・環境
 厳しい寒さが続いた後、今度は急に暖かくなり、今週の朝の気温は月曜日のマイナス13度から、マイナス10度、マイナス8度、マイナス6度、そして今朝はマイナス1度。日中もかなり暖かく、日当たりのよい部屋では暖房を切っても大丈夫なくらい。しかし、日陰の雪はそのままだし、地中の氷が解けているとも思えないので、相変わらず水道は出しっぱなしにしている。 

 だいぶ時間がたってしまったけれど、飯田市議の方との懇談の後にお聞きした、高尾山の虔十の会代表、坂田昌子さんのお話をようやく文字起こしして、100年先を育む会のみんなにシェアした。東京出身の私にとっては、高尾山は子どものときに遠足か何かで登った親しみがある山。新宿から1時間くらいでいけてしまう、都心から近い山で、最近はミシュランの三つ星に選ばれて、登山客がすごく多いという話は新聞か何かで読んで知っていたけれど、実は植物が1300種、昆虫は5000種もいて、日本三大生息地の一つになっていることなど、生物多様性の宝庫であることを、坂田さんのお話を聞いて初めて知った。その高尾山に圏央道建設のためにトンネルが掘られようとしていて、地元では多くの人たちが反対して、裁判なども起こしている。
 地元の多くの人たちが反対しているのは、この地域では、山に大きなトンネルが掘られるとどういうことが起こるのかということを、かつて中央道の小仏トンネルが掘られたときに実際に体験したからだという。高尾山はとても水の豊かな山で、山の中の至るところに水道(みずみち)があり、山の中を水が巡っている。トンネルを掘ると、その水道が変わってしまい、今まで水が湧いていなかったところから湧き出したり、湧いていたところがかれたりする。そうすると、当然その水に依拠していた人々の暮らしはもちろん、そこに生息する生物も甚大な影響を受ける。わずかしかない植物はなくなってしまったり、それに依存していた昆虫やら、生態系はいろいろなものが関連し合っているから、どれだけの影響が出るかは計り知れない。あるいは、高尾山では海底トンネルと同じシールド工法という、セメントで固めてから掘る工法を用いているそうだ。そのためにセメントミルクを注入する。ある日突然、小仏川が真っ白になって、魚も蛍もみんなやられてしまったという。あるいは、動物たちは一斉に移動を始めた。また高速道路なので、騒音や排ガス等々、いろいろな影響を地域の方々は身をもって実感することになったのだという。
 しかし、現実には、高尾山の問題は二十数年前から始まっているので、世代交代もあり、次の世代の人がもう農業をしないからと土地を売ってしまったり、こうした現場の各地で見られるようにコミュニティが分断されたり、いろいろ大変なことが起こっている中で、周りで圏央道自体の工事はどんどん進んでいる。トンネルも少し掘られ始めていて、戦国時代からかれたことのない井戸がかれるとか、いろいろな影響が出始めているという。
 
 今のリニア新幹線の計画は、東京から大阪までほとんどトンネルだから、実は南アルプスに限らず、至るところでこうした水の問題が起こるのだろうと想像できる。実際、山梨の実験線でも水がれの問題は起こっている。大阪の箕面では、やはり道路のトンネル工事の影響で有名な滝の水が減ってしまい、ポンプアップして人工的に滝を維持しているという。審議会では国交省の方が、こうした問題の指摘に対して、水環境のアセスはやるが、100%予想できない、その場合は一定の基準に基づいて補償することになると思うと言っていた。坂田さんのお話の後、みんなで話をしていた中で、松島先生が山梨での事例を挙げて、では、その補償を果たしてJR東海が全部やってくれるのだろうかという疑問を呈しておられた。当然、5.1兆円の工事費の中には含まれているとは思えない。
 リニア新幹線の話は、今のところあまりに具体的な情報が少なすぎるけれども、これからは本当にもっと具体的、現実的なところを、きちんと見ていかないといけないと思う。