「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

講演会「中央構造線の始まりから現在まで」

2013年10月26日 | 自然・環境


 今日は中央構造線博物館開館20周年特別企画の3回目として、中央構造線研究の第一人者である早稲田大学教授の高木秀雄先生による「中央構造線の始まりから現在まで―日本最大の断層である中央構造線の1億年の歴史をひもとく―」と題した講演会が行われた。台風27号の接近が危惧されたが、幸い当初の予報よりはだいぶ沖合を通過し、雨も昨夜はかなり降ったものの午前中までで、講演が始まるころにはすっかり上がっていた。そんな天候の中、遠方からも大勢の方が聴きにこられていた。
 講演は、まず日本列島の位置付け、火山と地震、断層などについての前置きのお話の後、中央構造線の活動の歴史として、1億年前の中央構造線の始まり、断層岩の分類、マイロナイトのお話、6000万年前、4000万年前、2000~1500万年前といった時階での活動史などをお話しいただいた。やや専門的で難しい内容も多かったが、皆さん熱心に聴講されていた。



 講演終了後は大西公園に移動し、鹿塩マイロナイトなどを観察。台風が通り過ぎたら急に寒くなった。




 川は昨夜の雨で濁って増水していたけど、青木川と小渋川の濁り水の色がはっきり違うのが興味深かった。

鳥倉林道の紅葉

2013年10月21日 | 山の風景
 昨日の大鹿歌舞伎は雨となり中学校の体育館で行われた。映画直後を思えば、だいぶ観客数は落ち着いたものの、体育館は後ろまでびっしりで、市場神社にはとても入り切れそうにない人出だった。お客さんから「紅葉にはまだ早いのね」と言われて、「標高の高いところはきれいですよ」とお答えしていた。今日は雨も上がり、また週末には台風の接近で天気が悪化しそうなので、今のうちに見ておこうと思って出かけてみた。一昨日、赤石岳も初冠雪だったようだけど、もう解けている。



 鳥倉林道の一番の紅葉スポットは登山口のゲートから先。駐車場から見たところ。


 カラマツ林を抜けると広葉樹林になる。この道沿いはカエデの種類が多くて、鮮やかな赤が目につく。日が差したり、かげったり、光の変化、雲の変化を楽しみながら散策してきた。









 ここにリニアは要らない。地下で見えなければいいというものではない。
JR東海・リニア新幹線環境影響評価準備書ご意見フォーム



大鹿村でのリニア説明会・2回目

2013年10月16日 | リニア新幹線
 10月14日に開催された大鹿村2回目の説明会での質疑の概要。前回の質問者はすべて大鹿村民だったが、今回はお隣の中川村・曽我村長やイヌワシ研究会の方などからも質問があった。地元で30年間調査してきた人の意見と、アセスで2年調べただけの結果と、どちらが信用できるかは明白。

Q:地下水・水資源への影響について住民が納得できる説明を。大鹿村は破砕帯ばかり。予測範囲すべてで井戸や水資源の調査を実施してほしい。調査に所有者や村の立ち会い、結果の公表を。全線湧水を防止する工法で施工していただきたい。
 小渋川を橋梁で通過する理由は? 鳶ヶ巣岩壁は本村でも重要な地形、かつ断崖絶壁で危険な場所。どんな工法で行われるのか。橋脚のない構造に。
 大西公園から変電施設は見えないので影響ないと言うが、送電線や鉄塔が新設されるとかなり影響が大きい。送電施設はトンネルの中に設置できないか。3haの改変ではなく、できるだけ小さくできないか。住民意見を反映できるような協議の場を。
A:トンネルが通過する部分は風化の影響が及んでいない深いところ。周辺の地下水に部分的に影響あるが、全体的な影響は小さい。破砕帯においては先進ボーリングなどで地質の状況をしっかり把握し、止水工法などの補助工法を組み合わせて、安全かつ地下水の流入を抑える形で工事を進めたい。事後調査は基本的には予測検討範囲内だが、具体的な位置や頻度は実際の状況を見ながら判断。
 南アルプスの土被りをできるだけ小さく、天竜川は橋梁で渡河する計画で、合理的に縦断勾配を設定すると、小渋川は谷が深いので地上部を渡河せざるを得ない。
A:橋梁の具体的な工法、詳細は今後詰めていく。変電施設のレイアウト等、減らせるかどうかも今後検討していきたい。変電施設までの送電については、電力会社に極力景観を考慮したルートにしてもらうよう話をしていきたい。
Q:排土を村外に運ぶのにどの路線を使って搬出するのか。搬出道路の環境影響調査、観光産業へ及ぼす影響は今後算出するのか。豊丘村から掘ったトンネルを使って排土を搬出すれば問題がだいぶ少なくなるが、そういう考えはあるか。鹿塩温泉や小渋温泉を調べていないのはなぜか。
A:大鹿村からの搬出は、主体は県道59号線と考えている。全線が2車線で広いわけではないことは認識している。県、大鹿村、中川村と調整して、工事車両を通すための道路対策を計画していく。
A:最大約1700台が通ることを想定して、59号に出る手前のところできちんと騒音、振動を予測している。希少猛禽類については調べている。一部、猛禽類の生活環境に影響を及ぼす可能性があるが、保全措置をちゃんとして工事をやっていく。観光についてはアセスの直接的な評価項目ではないが、景観資源や人と自然との触れ合いの場で、公園やキャンプ場などは挙げている。
A:鹿塩温泉については、塩川から約4~5kmで小渋川、それよりも離れたところにトンネル。高さも塩川に比べて若干高い。基本的に鹿塩温泉にはトンネルの影響が及ばないと考えている。小渋温泉も検討範囲の中に入っていないので準備書の中では取り上げていない。状況に応じて事後調査の箇所や頻度を決めていく。
A:豊丘村からのトンネルを使って土を出せないかという提案は現実的でない。南アルプスのトンネルは非常に長く掘削の時間もかかるので、早期に取り掛かりたい。豊丘村からトンネルを掘って大鹿村まで届くのには相当な時間がかかる。大鹿村の中で出てきた土を大量に仮置きするのは難しい。
Q:中川村では説明会はないし準備書の送付もなく関係市町村の一覧にもないが、ほとんどの掘削土が中川村を通っていく。しかも、それについて中川村内では環境影響調査で問題にしていない。中川村では調査をせずに、そのままやったもの勝ちでいいと考えたのか。
 騒音の基準が70dBだが、69dBだから基準以下だという話があった。こちらは本当に静かな素晴らしい環境の中で住民の皆さんが暮らしている。国が一律に定めた基準以内であればいいという考え方では違うのではないか。
 事後調査をして、万が一想定外のことが起こった場合にはどのような対応をされるのか。工事期間中に継続的定期的に調査をして、万が一何かを超えてしまった場合には、それが改善されるまで工事を止めることも約束願えるのか。
A:県道59号の改良は別の道路事業となるので、今回の事業とは切り離したアセス。道路の工事計画の中できちんと説明していく。
 基本的なスタンスとしては、事業者のできる範囲で影響を小さくしていく。もし何か起きたときは、地元の方の生活の確保を第一に取り組んでいくし、工事との因果関係があれば、すぐ対応させていただく。
A:環境基準との整合性も一つの評価基準だが、事業者の実行可能な範囲内でできるだけ環境への影響を回避・低減するという観点から評価している。例えば工事用車両の走行であれば、工事を平準化するとか、車両の運行計画を適切に行う、低速で、しかも数珠つなぎにならないように間隔を開けて運行させるといった対策を取りながら、少しでも影響を少なくしていく努力はしていきたい。
Q:30年間この地方で猛禽類を調査している。大鹿村から南木曾までの間にクマタカが9ペア、イヌワシが1ペアいて、クマタカ5ペア、イヌワシ1ペアが工事の影響を受ける。クマタカ2~3ペアは非常口が営巣地に非常に近く、工事によっていなくなるのではないかと思われる。なぜ影響が少ないのか。イヌワシに関して、営巣地は遠いところと書いてあるが、ごく近いところで毎年繁殖活動をしているし、工事で影響を受ける狩り場が2~3か所ある。モニタリング調査で影響があった場合はどうするのか。
A:今回の準備書の中でも、猛禽類については全体的には影響は小さいが、中には生息環境が保全されない可能性があり、注意して見ていかなければいけないところがあることはお示ししている。環境省のマニュアルに基づいて2年間調査をしてきて、非常口や路線近傍の猛禽類の状況は把握できている。影響については専門家の意見も踏まえて予測している。モニタリングで影響があった場合は、専門家の意見や地域の方々のご意見もいただきながら、適切な対応を図っていく。
Q:小渋線の中川村部分は10km余。住民は環境悪化と生活への悪影響を心配している。工事は24時間のフル操業がされるのか、資材運搬等は夜間は行わないのか。
 道路の拡幅や改修は、3年後に工事が開始されるとしたら全く対応できるような期間ではない。シビアに県と打ち合わせをして的確な改良・拡幅を即時行っていただきたい。そうしてからでなければ、工事の着工は地元としては受け入れられない。特にダムサイトから下については、一般道利用ではなく、河川内に専用道路を渡場まで造って、資材・排土運搬をしていただきたい。
A:トンネル工事については基本的には昼夜両方。橋梁、変電施設についてはほとんどが昼。詳細については地元の意見を伺いながら調整。道路運搬も含めて、昼とは8時から夕方5時ぐらいが普通。通勤、通学、デイサービスなども考慮しながら時間設定していきたい。県とはぜひとも早急に調整していきたい。ダムの排砂トンネル工事のときに小渋川の河川敷を走ったという話だが、それは国交省の管轄になるので、今後国とも調整していきたい。
Q:南アルプスの土被りを浅くという根拠はコストか、工期か。
 大鹿村は日本で最も美しい村連合に加盟して景観にはかなり配慮している。高圧鉄塔が建つのは非常に大きな問題。電力会社との話だと逃げたが、これは大きな環境影響評価の中の一つ。高圧鉄塔、主な動力源がどこから来るのか、この場で説明いただくのが筋。
 2027年の開業ありきで話が進んでいる。どうしてもリニアを通したいのであれば、もっと丁寧な議論をしていただくべき。
A:土被りが深くなればなるほど、トンネルは地圧を受ける。なるべく土被りが薄い方が施工性が有利になるので、今回示している縦断線形が適切と考えている。
A:変電施設までの高圧鉄塔については基本的には電力会社が計画して進めるが、われわれも景観的な観点を考慮してもらうように、電力会社にはしっかりと伝えていきたい。
A:2027年の開業を目指しているが、手順を省くわけではない。環境影響評価の手続きを、きちんと法律にのっとってやっている。
Q:1日1700台の工事用大型車が国道を通過するが住民に対して影響はないというお答えだが、本当にそうか。娘はこの国道を横断して1km歩いて小学校へ通う。運行台数の時間制限だけで対応できるのか非常に疑問。子どもたちに対しては100%の安全を確保していただきたい。工事用車両の公道通過は避けて、取り付け道路を付けていただきたい。
A:具体的な発生土や工事用資材の運搬については今後詰めていく。事業者としても請負業者に対して、交通安全も含めて安全第一と考えているので指導・教育していく。実際、工事用車両が通るルートが本当にこの国道一本のみか、代替ルートが可能であれば、そういうことも含めて地元と調整させていただきたい。
A:工事に入る前の説明会で、交通安全についてどういうことを考えているかは、きちんと説明する。
Q:道路管理者と協議をされたのか。今後いつごろ進めていくのか。下市場に住んでいるが、あの周辺を一日300~500台通っても、高齢者はとても外へ出られる状態ではない。
A:長野県との具体的な協議はすぐにやっていきたい。国道だけを通るのか、迂回路を設けるのかという話についても、これから村や道路管理者と協議する。
Q:松川インター大鹿線を1700台というのは本当に現実的ではない。われわれの住環境や観光業に全く配慮がなされていない。JR東海の一方的な考えを説明されているだけで、一つとして住民目線になっていない。ぜひ一緒に考えるという姿勢を見せていただきたい。
A:今回は私どもの環境影響評価の評価結果をご説明する場。一方で、今回ルートや具体的な斜坑口、設備の場所を初めて発表した。次に考えていくのが工事の具体的な計画で、当然これは住民目線で、これから地元の方のご意見を聞きながらやっていかなければいけないと思っている。住民の方が納得されていないような段階で、無理やり工事着手はできないと思っている。そこは今後きちんとご意見は伺っていく。
Q:キャンプ場や公園が観光客がこの村に求めているものではない。小渋線の紅葉や新緑の季節に地蔵峠の方に抜けていくといった景観を求めて大鹿村に来ている。そういったことへの配慮をお聞きしたい。
 水源に関して、山梨では幾つも川が枯れて魚がいなくなったという記事をたくさん読む。継続的に補償していくと言っているが、それを永久的にやっていくとか、どれくらいで補償が切れるという決まりがあるのか。
 工事中もしくは工事後に地震や水害など大きな天災が起きたときに、工事箇所などについてどのようなマニュアルを持っているのか。
A:観光の話で、この地区で一番影響があるのは交通量の問題だと思う。もう少し観光という観点できちんと調べて、どれぐらいの影響があるのか、ないようにするにはどうすればいいのかは、工事車両の運行計画の中で事業者のできる範囲でやっていく。
 水資源の補償については基準がある。代替水源を作ったときに、水をどこかから汲み上げたり、水を運ぶ水路などの設備を作る。その設備は地域の方にメンテしていただくことになっている。そのメンテにかかる部分をおよそ30年の見積もりをして、その分を金銭で補償させていただく。
 例えば水害でいうと、当然、過去の水害の履歴は調べるし、現状の河川計画がどれくらいの水を想定しているか、過去にどれくらい水が来たかはきちんと把握して施工計画を作っていく。地震に関しても、工事用の仮設物に対しても一定の耐震基準をもって作っていく規則がある。関係する法令などをきちんと遵守してやっていく。
Q:品川から名古屋までの間に変電所は幾つ造られるのか。リニアは調べれば調べるほど大変な問題。私たちの村で工事が始まるというのは青天のへきれき。大鹿村民は一度も賛成と言った覚えがない。路線をほんの少し変えて大鹿村での工事はやめていただきたい。
A:変電施設は東京から名古屋までの間に10か所。うち長野県には2か所設置。
 今回初めてルートを発表したので、青天のへきれきと受け止められる方が多いのだろうと考えている。沿線住民にはこれからも丁寧に説明していく。賛成とはならないかもしれないが、少なくとも理解いただかないうちはなかなか工事もできないと思っている。

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大鹿村でのリニア説明会

2013年10月10日 | リニア新幹線
 準備書の説明会が長野県内でも10月2日から始まっているが、昨日は大鹿村で説明会が開かれた。会場の交流センターは後ろまで人がびっしりで、163人集まったそうだ。最初の1時間は挨拶と約50分のパワーポイントでの説明。その後、質疑応答が行われ、予定時間を30分ほど延長して、8人質問したところで、まだ挙手していた人がいたが打ち切られる。
 主な質疑応答の内容は以下のとおり。
Q:南アルプスはユネスコエコパーク登録を目指している。世界的なモデルとなるような自然との調和、住民生活との調和を心掛けて工事をしていただきたい。上蔵、釜沢は景観上大切なところなので絶対守ってほしい。小渋川沿いに工事用道路をトンネルで造ってもいいのではないか。
A:計画している非常口は居住や経済活動が可能な移行地域。核心地域や緩衝地域はトンネルで通過し、地上部の改変はない。今後、関係機関と調整しながらエコパークに影響を及ぼすことのないように進めていきたい。
A:小渋川は急峻で工事用道路の設置は困難。既存の道路を改修して工事用車両が運行できるようにしたい。
A:釜沢地区に2か所非常口を計画しているが、南の非常口は静岡に向かって掘る。北の方は小渋川と静岡に向かうトンネルの間を掘る。この間がつながると、トンネルを使って土を運べる。釜沢に仮置きできれば、このルートで出すことを考えている。
Q:南アルプスは先進坑も掘られるとされているが、先進坑も含めて坑口は非常口の円内に収まるのか。断面図を見ると南アルプスの最高標高地点から一方的に下り勾配で天竜川の方に行く。日向休から西側の水はすべて天竜川の方に抜けてしまうが、排水計画をどのように考えているか。発生土置き場をどこにするかは環境及び安全について重大な問題で、それがはっきりするまで環境影響評価は終わったことにならない。発生土置き場が完全に決定するまで着工しないことを約束していただきたい。
A:非常口の○印の位置から本線と先進坑までを掘っていく。
A:自然流下すれば当然そうなる。排水計画はこれから検討していく。最終的には公共用水域に放出することになるが、河川法などを遵守し、関係者、関係機関と協議して決める。
A:発生土については長野県を窓口に調整をお願いしている。今後、場所や規模が明らかになったものは事後調査という形で調査する。環境影響評価法の準備書の記載事項の中に事後調査も決められており、手続き的には手順を踏んでやっている。
Q:大鹿村の道路は狭い。既存の道路は誰のためのものか。生活道路にこれだけのダンプが走ることについて心の痛みを感じないのか。「影響は小さいと予測します」と、すべて予測。住民がどれだけダメージを受けることになるか深く検討したのか。変電所や非常口はどういうものか、道路をどうするのか、一般の生活者によく分かるように図で説明いただきたい。沿線以外にもリニアはどういうものかきちんと説明すべき。載っている意見はほとんど反対。意見募集を行っていることを沿線以外にも広範に周知していただきたい。
A:パブコメ等を踏まえた国土交通省の交通政策審議会の審議があった後に、国土交通大臣から建設の指示を受けた。今、環境影響評価の準備書の段階。環境影響評価の手続きが終わった後に工事実施計画の申請をし、認可になって初めて工事に着工できる。ここで事業説明会を行い、中心線測量、用地の測量、用地の取得手続きに入る。それが終わって工事に移る際には工事説明会で詳しい位置などをお示しする。今後もいろいろな説明の機会はあるし、飯田の事務所で質問などにお答えする体制をとっている。
A:確かに狭い道を通るので、道路管理者ときちんと話をして拡幅などの改修工事をした上で、工事をやらせていただく。
A:方法書の説明会は58回行った。調査・予測・評価をしていた2年間に6都県で2回ずつ12回説明会を開催している。今回も92回説明会をする。縦覧については関係地域で行うことが法律で決まっている。インターネットに出ているので誰でも見られる。
Q:騒音、振動などは大鹿村の谷地形に合わせた予測結果なのか。リニアの工事で大鹿村に何のメリットがあるのか。1日1736台もダンプが通る。あと何年観光客が来るのか非常に不安。
A:大気質については地形の条件も加味した予測ができる式を用いて評価している。振動、騒音については距離減衰が大きい。今回の予測は、工事区域の直近、道路端など一番影響の大きいところで評価している。
A:JR東海が大鹿村に対して何ができるのかということは具体的には言えないが、リニアができるとこの地域には経済的社会的に環境が変わって大きな効果があると考えている。
Q:工事計画の1年目とはいつか。山梨実験線で想定外の水枯れが起こったことの検証がきちんとなされているのか。発生土の件で、評価書までに決定しないものは事後評価でよいと言うが、持って行き場がなくなって仮置きが固定化されるのではないかと不安。計画が示されてから着工を。
A:環境影響評価の手続きが終わると工事実施計画の認可申請となるが、いつ終わると言えない。認可申請を平成26年度を目指している。もろもろの法手続き、用地の手続きが終わって着工になったときが1年目で、場所ごとに変わってくる。
A:高橋の水文学的方法によって影響が出る可能性がある範囲を出している。その中で、水文・地質的な検討を行っている。南アルプスについては水収支解析という手法を用いて定量的な予測もしている。予測結果は妥当なものと考えているが、断層付近、破砕帯等では予測の不確実性が伴うので事後調査を実施する。今回の予測に際しては山梨実験線の渇水事例も踏まえて検討を行っている。
A:発生土を処理できる場所を県と調整して決めてから掘り進めたい。仮置き場も含めて大鹿村とも調整しながら工事計画を深度化していきたい。
Q:工事が始まると何人ぐらいの工事関係者が村に入ってきて滞在することになるのか、あるいは外から通うことになるのか。
A:トンネルをどのように掘っていくかはこれから詰めていく。それによって人数が決まるので、今何人ぐらいとは言えない。
Q:釜沢のような狭い谷に二つの非常口は要らない。自治会に対して相談なり説明が、どういう日程で期待できるか。
A:ここがつながると小渋川の非常口から土が出せるようになるので、地域住民にもメリットがあると考えて2か所に非常口を設置している。今後いつ説明会をするかという日程はまだ決めていない。
Q:予測が外れて水枯れが生じたときはどのような責任が取れるのか。残土の置き場が決まらない限り工事にかからないのか確認したい。85デシベルというのはどのくらいの音か。
A:今日の説明会は準備書に対する説明なので、責任がどうのこうの言及する場ではない。発生土全体に対して、すべてが決まらないと掘らないというわけではない。順番に掘っていくので、その都度場所は決めていく。
A:車両の通行に伴う騒音は最大で69デシベル。70デシベルで騒々しい事務所の音に相当する。建設機械の稼働で80デシベルと出ているが、80デシベルは地下鉄の車内ぐらい。この値がいいと思っているわけではなく、少しでも環境への影響を低減して地元の皆様の生活に支障がないように進めていきたい。

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リニア準備書への疑問点

2013年10月01日 | リニア新幹線
 リニア準備書の縦覧が始まってから10日ほどたち、他県では説明会が始まって、市民からの疑問が次々寄せられている状況が報道されている。長野県でも明日から説明会が開催され、大鹿村では来週説明会が行われることになっている。準備書は千何百ページもあり、本当に膨大な量で、どこに何が書いてあるのかを探すのも大変に思えてしまうけど、ある程度ポイントを絞って読むだけでも概要はつかめる。多くの人が少しでも事前に内容を頭に入れて説明会に臨んでほしいと思う。
 準備書は分厚い本編と資料編、関連図、要約書の四つに分かれている。まず1万分の1の地形図に記された詳細な位置図が、環境影響評価関連図というところにある。紙ではA2判の大きな地図で、大鹿村では非常口4つ(釜沢に2つ、上蔵、青木)、新たな工事用道路(上蔵)、橋梁(日向休)、変電施設(上蔵)の位置と、路線が点線で示されている。一応、釜沢、上蔵の集落は回避した形。
 また工事現場ごとの詳細、何年目から何年目にどういう工事を行うのか、どんな機械がどのくらい使われるのか、工事に伴って資材及び機械の運搬に用いる車両の運行台数がいつどれくらいになるのかといったことが、資料編の3、工事計画の中に書かれている。この資材及び機械の運搬に用いる車両の運行台数について、JR東海の環境保全事務所に確認したところ、残土運搬のダンプも含まれているとのことだった。大鹿村の工事現場A~Gの総台数がピークになるのは4年目で、年間21万1337台、月最大2万6314台とされている。これを土日を除く20日間で割ると1316台にもなる。
 また、準備書本編の8章、大気質や騒音、振動予測のところを見ると、資材及び機材の運搬に用いる車両について、発生集中交通量は県道赤石岳公園線(上市場)で1566台/日、国道152号線下青木)で234台/日、国道152号線(下市場)で1736台/日という数字が出ている。以前に住民意見交換会の折に、村の予測として小渋線の交通量が残土運搬ダンプだけで片道数百台という数字が示されたが、「数百」という言葉の意味が曖昧なせいもあるが、それをはるかに上回る大きな数字だ。相当な道路改良がなされなければ、村民や観光客の通行に大きな支障を来すし、工事車両自体もスムーズな通行は到底不可能だと思われるが、工事計画を見ると、釜沢の非常口では1年目から掘削が始まるとされている。
 長野県内だけで950万立方メートルとされる建設発生土の行き先が決まっていないため、残土についての記述はほとんどなく、「事業者により実行可能な範囲内で、再利用及び再資源化を図る」あるいは「関係法令等を遵守し適正に処理、処分する」から、「事業者により実行可能な範囲内で低減されている」と評価されている。何も具体的に示されていないのに、どうして評価できるのか理解できない。「事業者の実行可能な範囲内」という文言が、事業者が自ら行う環境アセスメントであることの問題点を端的に表している。法的基準さえ満たしていれば、影響を受ける側の尺度など何ら関係ないのだろう。これは騒音や振動、大気質の予測評価等でも感じることで、現況との著しい差をきちんと評価してほしいもの。

 リニア工事の環境影響で、沿線各地で最も心配されているのが水源への影響ではないかと思う。何しろ山梨実験線の延伸工事で絶対枯れないといわれていた川が枯れるなど、「トンネル掘削箇所の上部では井戸も沢も用水も全て100%が涸れた」そうだ(豊丘村住民グループの視察報告書より)。土被りの厚さ、地質などで違ってくるにしても、予測できなかった水枯れがどこでも起こり得ることが懸念される。断層破砕帯や地質の脆弱な部分が多々ある大鹿村では、準備書においても小河内沢や釜沢水源の水量の減少が予測されているのは、前のブログに書いたとおり。でも、山梨で想定外の水枯れが起きていることを思えば、その程度の減少で済むのか疑問を払拭できない。あるいは水の調査地点や検討範囲は十分なのか。大鹿村の温泉については、生津の湯以外は予測評価の対象にすらなっていない。また、人が使っている水については減水などで支障を来せば何らかの応急対策が施されるものと思われるが、人が使っていない水については調査もされていないだろうし、故に因果関係も認められず対策も施されないことになるのではないかと危惧する。

 動植物や生態系への影響で、重要な種の予測結果を見ると、例えば猛禽類のオオタカ、ノスリ、クマタカなど、幾つか「生育環境の一部は保全されない可能性がある」と評価されている。しかし、「一部の種は、生息環境の一部は保全されない可能性があると予測されたが、低騒音・低振動型機械の使用等の環境保全措置を実施することで、影響の回避または低減に努める」ことから「実行可能な範囲内で回避または低減されている」ということになってしまう。すべて「実行可能な範囲内で」だ。イヌワシについては「改変の可能性のある範囲の一部が行動圏に含まれ、ディスプレイが確認されている」とあるが、営巣地は相当離れているから影響は小さいとされている。
 また、動植物の調査範囲は、猛禽類以外は非常口などの土地改変区域から概ね600メートル程度だけに限定されている。例えば沢の水位が減少すれば、植生や水生生物への影響が出てくるところはもっと広範に及ぶだろう。青木の方では河川水(地下水)低下に伴う動植物調査地域が付加されているが、小河内沢も心配だ。大体、南アルプスはもともと十分な調査が及んでいない地域なのに、1年やそこらで十分な調査が行えるはずがない。

 景観への影響については、大鹿村では主な眺望点としては大西公園しか挙げられておらず、大西公園からは鉄道施設を視認できないので景観の変化はないとされている。また景観資源である小渋川も改変はごくわずかで、景観資源の価値を大きく損なうものではないとしてイメージ写真もない。確かに小渋川橋梁は日向休下流の道下になるようなので、それほど目立たないかもしれない。しかし、工事ヤードの存在や新たな工事用道路など工事中の景観は損なわれるはず。

 などなど、大鹿村に関係するところだけをピックアップして読んでいっても、要約書は付箋だらけだ。ましてや沿線各地域に、共通の問題、固有の問題が山積している。静岡県では二軒小屋付近の谷底から掘り出した残土の一部を山梨県境の2000メートルの山の上に積み上げるなんてことも計画されている。環境影響だけでもない。採算性、安全性、さまざまな面で問題点が指摘されている。準備書が出されてから、ようやくマスコミでも「夢の超特急」ではないリニアの問題点も少しは報道されるようになってきた。しかし、このまま行けば、来年には着工されてしまう。一般の人が意見を言える最後の機会である準備書に対して、ぜひ多くの人に関心を寄せていただき、疑問の声を上げてほしい。

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