「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

過去執着型

2010年12月29日 | 田舎暮らし
 私は物をなかなか捨てられない人で、ついつい何でも取っておいてしまう。4年前の年末には、ずっと取ってあった羊の毛に虫が発生したため、全部畑にまいた(そうしたら、羊の毛を畑の動物よけに使っているところがあるという話を最近知った。少しずつ使えばよかったのかと思っても後の祭り)。3年前の年末には、足の踏み場もないほど物があふれていた物置にネズミが侵入したのを機に、やはり思い切って捨てまくった。世の中に片付けの本はたくさんあるけど、今年は「断捨離」というのがはやってるらしいと聞いて、ついつい本を買ってしまった。ブームになるだけあって、単なる片付けの本ではなくて、家のがらくたを片付けることで心のがらくたも整理する、見えない世界に働き掛けるというあたりがなかなか興味深い。
 一昨日、今年最後の納品を済ませ、昨日は年賀状を書いて、さて、今日は断捨離するぞという気になって、まずは自分の部屋の引き出しにたまった紙類から始めて、どんどん捨てていく。
 その中から、20年くらい前の「広報おおしか」が出てきた。そういえばと思って、ちょっと探したら、役場の木造の旧庁舎が写っている昭和60年の「広報おおしか」が出てきた(思わず携帯で写真を撮ってツイッターにつぶやいた)。ちなみにそのとき人口は2066人。長男が生まれた昭和62年に2000人を切ったみたいだ。昭和63年に大鹿村の新規移住者を調査したものまで出てきた。そんなものを見つけると、ついつい見入ってしまって片付けが中断されてしまう。
 「断捨離」といっても、そういうものはなかなか捨てられない。まさに、この本で言うところの過去執着型の「捨てられない人」に相当するみたいだ。う~ん、そうすると過去に生きていることになるのかな。そんなつもりはないのだけど。

池田香代子さん講演会

2010年12月11日 | 非戦・平和・社会
 今日は下条村の下条大学で池田香代子さんの講演会があるということを、つい3日ほど前に友達のtwitterで知って、ぜひお会いしたいなと思って出掛けてきた。池田香代子さんは『世界がもし100人の村だったら』シリーズで有名だけど、もともと専門はドイツ文学の翻訳で、ベストセラーになった『ソフィーの世界』をはじめ、たくさんの児童書や絵本を出されている。
 『世界がもし100人の村だったら』は、インターネットでいろんなバリエーションで広まっていたメールの内容を池田さんが再話という形でまとめた本で、大ベストセラーになって、シリーズで5冊出て、さらに去年『日本がもし100人の村だったら』も出た。そのメール自体は、当時、私のところにもどこかから回ってきて読んでいたけど、それを池田さんが絵本にしようとしたのは、9・11の後、テロの実行犯とされたアルカイダが潜伏しているという理由でアメリカに攻撃されることになったアフガニスタンで、井戸を掘ったり医療支援をしていた中村哲さんのペシャワール会にまとまった支援をしたいというのが一つの動機だったそうだ。100万円くらい寄付したいと思っていたら、それどころか1億円を超え、半分くらいは税金で取られるけど(高額所得者の最高税率は、今は金持ち優遇策で当時に比べて随分引き下げられてしまった)、残りの何千万円かをすべて、100人村の基金として、難民支援や、さまざまな平和活動をしているNPOやNGOへの寄付に投じたそうだ。一つの本から始まって、こんなにいろいろな広がりが持てるのだという、ちょっと元気の出るお話。

 難民というと、日本は先進国の中にあって非常に難民に対して門戸を閉ざしている国で、アメリカやヨーロッパでは年間万単位で受け入れているのに、何十人というレベルでしか受け入れていないのだそうだ。そうした中、日本にやってきたアフガニスタンの少数民族の難民の方に「どうして日本に逃げてきたの?」と聞いたら、日本のNGOの人たちは、分け隔てをしない、危険が迫ったときに最後まで踏みとどまってくれるという答えだったそうだ。政府は本当にひどいけど、実は海外で活躍しているNGOの人たちがそうやって信頼を得ているのだと知って、本当に頭が下がる思いだし、素晴らしいことだと思って嬉しかった。

 さて、下条村は中山間地にあって子どもが増えていることで有名なところ。話のテーマも子どものことになる。つい先日報道されたPISAの学力調査。上位に来ているのは、かつての日本のように詰め込み教育をしている途上国であって、別に日本の子どもたちの学力が落ちているわけではないとのこと。あるいは、マスメディアで繰り返し凶悪事件が報じられるせいで、近ごろ日本では少年犯罪が増えているような気がしてしまいがちだけど、実は全然そんなことはなくて、少年犯罪も殺人事件なども減っている。また、諸外国と比べても、日本の少年犯罪はずっと少ない。外国の学会で、なぜ日本の子どもたちは非行が少ないのかと話し合われたりもしているそうだ。そこで出た一説として、ケアリングコミュニティがしっかりしているのではないかという話があったそうだ。これは都会はともかく、下条もそうだと思うし、うちの村でも、地域ぐるみで子どもを大切にしていると思う。とかく「近ごろの子どもは、若者は」という言い方をされがちだけど、全然そんなことはなく、日本の子どもたちは学力もあるし、世界の中でもいい子たちなんだと。ただし、自己評価の低い子、自信のない子が多いとも。また、日本は他の先進国に比べて、教育と医療にお金を使っていない。例えば子ども手当満額払って、ようやく先進国の平均くらいだとか。
 
 100人村シリーズの3冊目は食べ物編。日本の食糧自給率は40%とよく言うけど、それはカロリーベースの話で、重量ベースにすると何と20%。そして、食品の廃棄率も20%。といったところから、地産地消の重要性。地産地消は食料だけでなく、小水力や地熱など自然エネルギーを使って、エネルギーの地産地消もできればというお話。これは日本の場合、電力が独占事業になっているので、ここを規制緩和しないとできない。アイスランドは金融危機で大変だけど、地熱や水力でエネルギーを自給している。これは先日、田中優さんの講演でも聞いた話。

 最後に100人村シリーズの最後、子ども編の一部を朗読してくださって、講演を終わる。ドネラ・メドウズさんが言った貧しい人たちが幸せになる五つの条件、「1つめは、きれいな空気と土と水。2つめは、戦争や災害のためにふるさとをはなれなくてすむこと。3つめは、予防をふくむ基礎的な医療をうけられること。4つめは、基礎的な教育をうけられること。そして5つめは、伝統文化に誇りをもち、それらを楽しむことができること」。別に貧しい人に限らず、これが満たされれば、十分幸せではないかと思う。(でも、実は一見豊かな都市には1つめが欠如しているかもしれない)
 朗読のバックには、池田さんと高校の同級生だった鎌田實さんが「がんばらない」レーベルで制作した坂田明さんの「ひまわり」。このCDの売り上げはチェルノブイリやイラクで白血病に苦しむ子どもたちの薬代になるとのことで、購入してきた。初めて行った下条村は結構遠かったけど、いいお話を聞けて行ったかいがあった。しっかりミーハーで持参した本にサインもいただいてきた。

雨と雪の境界

2010年12月08日 | 山の風景
 いよいよ雪の季節になって、標高1100mのうちの周辺では先日初雪だったけど、今日はもう少し積雪量が多く、雪のラインも低くなった。こんなときに山から下りていくと、車の屋根に積もった雪にびっくりされたりする。バス停のある鹿塩市場には全然雪がなく、西の集落の少し上に線を引いたように白くなっている。


帰路、途中の集落から見下ろすと、こんな感じ。この急斜面はこんにゃく畑。


うちの周囲の雪はこのくらい。


中央アルプスにかかっていた雲が晴れてきた。木々の雪が解ける前に。

ワシタカ類と道路工事のお話

2010年12月04日 | 自然・環境
 昨日は大荒れの天気で、突然雲が下りてきて暗くなったと思うと、すごい風雨になったり、いったん収まって天気が回復するのかと思うと、また突然嵐のようになったりと、本当に目まぐるしく天気が変わった1日だった。最後は雪に変わったみたいで、朝起きたら、うっすらと雪景色になっていて、うわ、初雪と思って、携帯で写真を撮って、twitterにつぶやく。
 午前中は自治会の道路清掃作業で、午後から飯田の美博の自然講座を聴きに行く。「ワシタカ類の生活と道路建設事業」と題して、一昨年開通した三遠南信道飯喬道路の山本IC~天竜峡IC区間で行われたワシタカ類の調査や保全対策のお話を聴いた。対象になっていたのは、その地域に生息する猛禽類、オオタカ、ノスリ、ハチクマで、特に巣にビデオカメラを設置してずっと観察していたことから、随分いろいろなことが分かったみたいで、本当にびっくりするような事象もビデオ映像で見せていただいた。ヒナ同士の争いや、時には親がヒナを間引いてしまうこと、ヒナが天敵に襲われてやられてしまう場面、ノスリとフクロウで巣の奪い合いをしたり、本当に厳しい生存競争の一端がうかがえた。
 工事との関連では、工事個所のすぐ近くで営巣していたので、代替巣をつくってやったら、そっちに移動した例なども紹介していただいた。その他、低騒音の重機を使うとか、遠いところから工事をしてきて、騒音等に慣らすとか、いろいろ配慮した工事をしたそうだ。実際、工事期間中は、工事個所を避けるなど行動圏に変化はあったそうだけど、工事の騒音などはあまり気にしていない様子だったとか。工事期間中は繁殖に成功したつがいの数が減ったけれど、工事が終わり、道路が供用開始になってからの2年間は、工事実施前と同程度に繁殖に成功しているのが確認されたということで、「事業の円滑な推進と希少猛禽類の繁殖の両立」を果たすことができたとのこと。ただ、そういう結論を得て、この場所でのモニタリングは今年で打ち切りとのことで、例えば交通量が増えることなどによる継続的な影響も気になった。
 
 ワシタカといっても、私自身はどれがどれだかほとんど区別がつかないのだけど、もちろん大鹿にもいろんな猛禽類が生息している。ただ、今回紹介いただいた里山の猛禽類と違って、奥山に生息するイヌワシなどはもっとずっと敏感だという。もしリニアが本当にこの地域を通ることになったら、やはり工事によるその辺の影響は大きな心配の一つ。