「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

南アルプストンネル長野工区契約

2016年02月11日 | リニア新幹線
 一昨日2月9日のJR東海社長定例記者会見にて、リニア中央新幹線南アルプストンネル長野工区について、鹿島建設を中心とするJVと工事契約を締結したことが公表された。

南アトンネル本格着工 リニア 長野工区契約(信毎Web)


 しかし、工事契約をもって「着工」という言い方はおかしい。上の記事は信濃毎日新聞2月10日1面に掲載されたものだが、同日の4面では「工事開始向け道路改良 地元住民らの理解」「難工事 県内残る課題」といった見出しとともに、「トンネル掘削口となる下伊那郡大鹿村での着工前には解決すべき課題がある」として、村内の状況に触れている。先日の対策委員会の記事でも触れたように、県道の改良について住民の納得のいく計画が示されている状況ではないし、何より道路改良開始よりリニア南アルプストンネル工事の開始が早期になることが示されている「JR側の希望するスケジュール」に対して異論が噴出したし、村中心部の迂回ルートや送電線の問題等々、未解決の問題が多々残されている。3月末~4月に住民説明会を開くとのことだが、そこで多くの村民の理解を得られるかどうかもまだ分からない段階で、「着工」という言葉を使われることには全く納得がいかない。対策委員会の理解さえ得られない状況で、村民の理解など得られるはずがない。

 今日の信濃毎日新聞には、そうした大鹿村の状況が社説とコラムの両方に出ていた。

リニア着工 地元理解を最優先に(社説)

斜面

 「斜面」の中に「工事用車両が通る道路の改良は後回しになった」と書かれているけど、後回しを現時点で村民が認めたわけではないし、社説には「夏ごろには着工するという」と書かれているけど、それもJRが「着工したい」にすぎないだろう。言葉だけ「着工」といくら言っても、地域住民の声をないがしろにしたままでは現実の「着工」は不可能。(ちなみに「斜面」に出てくる福徳寺は江戸時代に老中水野忠邦が浜松に移築しようとして譲渡を求めたものを住民の反対で断念させて保存されてきたもの。長野県最古の木造建築物として国の重要文化財に指定されている)
 


 

第13回リニア対策委員会

2016年02月05日 | リニア新幹線
 今日は11月20日以来の久しぶりのリニア対策委員会が開催された。今回はJR東海、県、中部電力も出席しての会合。初めに中部電力から、現地調査を経ての送電線ルート案が示される。8月の第9回の対策委員会で示されたルート幅の中の南側、北側を通る二つの机上検討案のうち、村中心部の視点場から遠くなる南側のルートで、鉄塔の数をできるだけ減らし、また線下伐採をして鉄塔の高さを低くした場合のフォトモンタージュが示され、また地中化した場合の検討案も示された上で、改めて架空線としたいという説明だった。70名ほどの地権者の9割以上が架空線を承認しているとの説明もあった。フォトモンタージュの視点場が小渋橋、大西公園、博物館、上蔵だけだったので、南側の集落から見たものも示してほしいと前に言ったと思ったが、地権者からそういう要望はなかったとも言われてしまった。大鹿の景観は地権者だけのものではないのに。
 次にJRから、道路改良、南アルプストンネル工事に関する、JR側がこうしたいというスケジュール案の説明があった。道路改良計画や国道152号線の迂回ルートの考え方を示す住民説明を今年度末~28年度初めにかけて、道路改良と南アルプストンネルの工事説明会を28年度前半の早い時期、そして工事の着手が28年度の前半からという図が示されたが、驚いたのは小渋線の拡幅・トンネル工事よりも先に南アルプストンネルの工事が始まる図になっていたこと。「住民の理解と同意」が着工の前提というこれまでの話から言えば、道路改良や迂回ルートなどの納得のいく説明がなされなければ、到底、本体工事の説明会は受け入れられないし、小渋線の道路改良着工より前に本体トンネル工事着工なんて、どう考えても順番が逆だ。小渋線の道路改良については県議会での承認に向けて準備中ということで歯切れの悪い説明に終始して、委員からだいぶ不満の声が上がった。これはあくまでJR側が希望するスケジュールであって、「村民の理解には時間がかかる」と村長が最後に釘を刺していた。
 
 説明と質疑の後は、JR、県、中電は退席し、委員だけの話し合い。まず前回保留となっていたリニア工事車両が住民生活に及ぼす影響調査アンケートの実施について。これまで対策委員会としても、工事車両が住民生活に重大な影響を及ぼすとの認識のもとに道路改良を求め続けてきたのだから、ここまで進んできた今の段階で実施するのはいかがなものかという否定的な意見が多く、対策委員会としての実施は却下された。

まず県道赤石岳公園線を改良 JR東海がリニア建設工事日程案(中日新聞)

 このアンケートは阿智村の社会環境アセスメントで実施されたアンケートを踏まえた内容のものだったが、昨日その社会環境アセス委員会の最終会合と報告会が阿智村で開催され、傍聴してきた。阿智ではかなりの費用もかけて、交通量調査や住民アンケート、ヒアリング調査などを行った上で報告書をまとめている。今後JRとの協議にどう生かされていくのか注目したい。

工事車両削減など求める 阿智 社会環境アセス委報告書(信毎Web)