「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

二児山

2012年09月28日 | 山の風景
 今年は大鹿の100年先を育む会で始めた植物調査に都合がつく限り参加している。伊那谷自然友の会と共催だった5月の大西山の植物観察会、7月は鬼面山、豊口山、青木川源流、そして、今日は二児山へ行ってきた。二児山は去年の8月に伊那谷自然友の会のジオツアーでも行っていて、そのときは線状凹地など地形・地質的な解説をお聞きしながらの山歩きだったけれど、今回は植物を見ながら。
 前回は天候がいまいちだったけれど、今朝は快晴で、黒川牧場の駐車場からは北アルプスの槍ケ岳までよく見えた。でも、南アルプス側はだんだん雲が出てくる。肝心の植物の方は鹿の食害がひどくて、トリカブトまで葉っぱが食べられて茎だけになったところに花が少し残っているような状態で、驚いた。
 二児山の東峰から長谷方面、美和ダムが見える。この右に仙丈も。


 南アルプス方面。北岳と間ノ岳が見えているが、木が視界をだいぶ遮っている。


 シラビソを中心とした亜高山帯の針葉樹林の中を歩く。今日はシラビソとオオシラビソの見分け方をしっかりと教わった。
 

9月定例議会終わる

2012年09月20日 | 議員活動
 10日に開会した9月定例議会が昨日で閉会した。今回は報告1件、議案が18件、発議が1件で、すべて原案どおり可決された。
 9月の議会は決算の認定ということで、第6~11号が一般会計、国保、診療所、水道、介護保険、後期高齢者医療の各特別会計の決算の認定だった。昨年9月のときに、他村の方から予算と決算は全員で審議すると聞いて、大鹿村の議会も人数が少ないので、その方がいいのではないかと思って議会の中で話題にしてみたところ、ほかの皆さんからも賛同を得られて、いっそのこと一委員会にしたらいいのではないかとか、どういう形にするのがいいかという話などもしてきた中で、今回から予算と決算は全員で構成する特別委員会で審議することになった。そのため、本会議での決算の説明は事項別の数字は省略して簡略化。そんなわけで、今回初めて総務課、住民税務課、保健福祉課、教育委員会などのところの細かい説明もお聞きすることができた。新人にとっては予算の決定過程のことも分からず、去年は本当にただ数字を聞いているだけの状態だったけれど、今回は人数が増えた分、皆さんがいろいろ聞いてくださるので、勉強にもなった。総務社教常任委員会に比べて、産建常任委員会が短時間で終わってしまうということもなく、各事業の細かい内容を全員で共有できたこともよかった。
 平成23年度の一般会計の歳入総額は20億2438万87円、歳出総額は18億9883万3778円、差引額は1億2554万6309円、翌年度へ繰り越すべき財源が2784万7000円、実質収支額が9769万9309円。特別会計も含めた総額は、歳入25億9915万239円、歳出額が24億7022万5293円、実質収支額は繰越額を除いた1億107万7946円で、診療所特別会計の実質収支ゼロ円以外は黒字で決算された。歳出総額は前年比13.7%の減額で、地デジ化によるCATV工事が終了したこと等々によるもの。
 その他、報告は損害賠償の専決処分について。
 議案第1号は若者定住促進条例の一部改正で、これは要項(若者人口増加促進助成金等交付要綱)に定めてある内容を削るもの。
 議案第2号は大鹿村木工体験交流施設設置条例の制定について。これは鹿塩にプレオープンしている木工館についての条例で、管理運営の細かい内容は別途規則が設けられる。施設の名称を木工体験交流施設とすること、利用料を取ることなどが定められている。今月の全戸配布に入っていた地域おこし協力隊の活動報告に木工館の設備の紹介が載っていたが、条例は10月1日からの適用になるので、9月30日までは無料で利用できる。
 議案第3号は大鹿村奨学資金の貸付基金条例の一部改正で、これまで貸付金が月額2万円以内だったものを、高校2万円以内、短大や専修学校および高専が4万円以内、大学が6万円以内となる。
 議案第4号と第5号は看護師と保健師の修学資金貸付金免除条例の一部改正で、これまで村内で3年間(看護師)または2年間(保健師)働くと貸付金の返済を免除されていたものが、5年間になる。これは県の制度を参考にした改正で、村内により定着していただくことを図るもの。
 議案第12号は一般会計の補正予算。一般質問で触れたように地方交付税の算定が増額になったので、今回の補正予算の中では8647万9000円増額されている。県の地域支え合い体制作り補助金を使って、NPOあんじゃネットで行う高齢者の安心サポート、グループ活動の支援、配食サービスなどに283万円。これは単年度の補助金だが、必要な事業なので、ぜひ継続的な支援が欲しいという意見が出る。また、放射線の空間線量を測る機器と食品の測定機器を購入するとのこと。前回一般質問でお聞きした図書室関連では、鹿塩地区館の図書を交流センターなどに運び、いつでも借りられる形にするための図書館管理システムや書架の購入なども盛られている。その他、高齢者生活支援ハウスの地盤改良工事等々。
 議案第13~17号は、国保、診療所、水道、介護、後期高齢者医療の特別会計の補正予算。
 議案第18号は教育委員会の委員の任命。
 その他、議員発議で、地球温暖化対策に関する「地方財源を確保・充実する仕組み」の構築を求める意見書、これは全国森林環境税創設促進議員連盟から依頼が来ていたもので、地球温暖化対策税の一定割合を、森林面積に応じて市町村に譲与することを求めるもの。

一般質問

2012年09月11日 | 議員活動
 昨日から9月定例会が始まり、初日の村長あいさつの中で、柳島村長が来年1月の村長選に再選を目指して立候補する意志を表明された。実は今日の一般質問の中にも村長の意向を聞くものがあったが、昨日のあいさつの中で既に答えられた形になった。
 他の一般質問は、地方交付税の算定額が当初予算より3億円ほど増額になったことから、その活用方法を問うもので、特養や定住対策、食のセンター、学習施設の建設など、さまざまな積極的な活用方策の提言がなされた。私の一般質問の内容も、一つは同様のもの。

1.地方交付税の増額分を有効活用して獣害対策の一層の拡充を図ることについて
 地方交付税の算定が当初予算より3億円強の増額となったが(国会の空転で赤字国債発行法案の成立が難しく、予算の執行抑制で減額や先送りの懸念はあるが)、その使い道をどのように考えているか。この機会に近隣町村のようにある程度広域的に防護柵を設置したり、モンキードッグの育成、狩猟免許の取得者の拡大を図るなど、村ぐるみの鳥獣害対策をより拡充し、意欲を持って安心して農作物等を作れるような地域づくりを進める方策に活用してはどうか。

2.景観保全地区の指定について
 美しい村条例の中で定められた景観審議会がこのほど発足したが、審議会の人選について、多様な視点が必要と考えるが、公募の委員を入れる考えはないか。また、条例の中で保全地区を定めることができるとされているが、具体的に保全地区指定を考えている地域はあるか。リニア工事による景観への影響も危惧されるところであり、上蔵地区や釜沢地区、青木地区など保全地区に指定して、風土に調和した良好な景観を守ることを内外にアピールすべきではないか。

 質問の中で、村の景観条例(美しい村づくり条例)は、景観法に基づくものではない独自条例のため、届け出などで県との関係がどうなっているのかお聞きしたところ、これまでに十数件の申請があったそうだけど、村を通って県に上がっているとのことだった。携帯電話の鉄塔などの事例では、高さ40mの申請だったものを30mにしてもらったり、色について配慮してもらったりしたそうだ。

9月定例会の日程

2012年09月03日 | 議員活動
 今日は議会運営委員会が開かれ、9月定例会の日程が決まった。

9月10日(月)午前10時~ 本会議開会 
             議案説明、質疑、審議、一部採決、
             発議、委員会付託

9月11日(火)午前9時~ 一般質問 特別委員会

9月12日(水)~14日(金) 特別委員会

9月18日(火) 常任委員会

9月19日(水)午後4時~ 本会議

 9月議会は決算の認定が議案に上がる。その他、条例案件、補正予算など、議案は18件。これまで大鹿村の議会では、予算や決算も総務社教、産業建設の二つの常任委員会に付託されていたけれども、人数も少ないことだし、予算と決算は全員でしっかり審議した方がよいのではないかということで、今回から特別委員会によって全員で審議することになった。
 一般質問は5名。地方交付税の算定方法が変わり、大鹿村では当初予算よりかなり増額になった。その使い道についての質問が主になる予定。

講演会など

2012年09月01日 | 地域おこし
 今週は、火曜日に中央大学学術講演会「限界集落は克服できるか―イタリアの小規模山岳自治体がヨーロッパ中から注目される理由―」、金曜日に南アルプスリレー講座第1回「植物から見た南アルプスの魅力」、そして今日は「リニア中央新幹線を見据えた地域づくり講演会」を聞きに行った。

 一つ目の「限界集落は克服できるか」は、イタリアの行政に詳しい中央大学法学部の工藤裕子先生のお話。日本とイタリアは面積も近く、南北に長い国土、背骨に山脈があって、海沿いの都市に人口が集中していることなど、地政学的にも似ている。ただ人口は日本の約半分で、小規模な自治体が多く、人口10万人以上の自治体はわずか0.5%、3000人未満の自治体が全体の6割を占めるという。カンパニリズモ(郷土愛)が強く、例えば自己紹介で自分を「イタリア人」とは言わず、たとえ数百人の村であっても「○○っ子」というのだとか。企業も伝統工芸などの中小企業が非常に元気なのだそうだ。
 日本と同様に、高度成長期には向都離村で、南部から北部の工業地帯へ、山岳地帯から平野部への移民が多く、人口が半減した山岳自治体も珍しくなかった。しかし、80年代以降の新潮流として、都市化に伴う問題点がさまざま浮上する中で、スローフード、キロメートル・ゼロ(生産・消費の移動距離がゼロ、つまり地産地消)、アグリトゥリズモ(アグリツーリズム)といった考え方が広がり、農業・畜産への回帰(Uターン)が起こってきている。またヨーロッパ特有の事情としては、EUの規則とのせめぎ合い、例えば伝統的な自然発酵のチーズがEUの衛生基準に合わないといったことなどから、特産品の付加価値が見直されることになった。スローフードの目指すものも、まさに食を通じた地域の再発見、再評価であり、ライフスタイルの見直しでもある。等々の概括的なお話と、実際のイタリアでの事例をお伺いする。ちょうど大鹿村でも、千葉県の子どもたちの山村留学が行われたばかりで、また、チーズ作りの農場のお話はアルプカーゼのお話を聞いているようでもあった。
 リニアについては「非常に危険です」と一言。陸の孤島のような場所だからこそ、来た人にいかに長く滞在して楽しんでもらえるかという形の観光を考えないといけないというお話だった。

 南アルプスリレー講座は、昨年から大鹿の100年先を育む会の植物調査でお世話になっている飯田美博の蛭間さんのお話。私自身は育む会の調査や講座にかなり参加しているので、その中でお聞きしている話が中心だった。
 南アルプス地域は、(大鹿にはあまりなけれども)標高800m以下の丘陵帯、台地帯の常緑広葉樹林(→アラカシ林、ウラジロガシ林)から、800~1400mの低山帯の落葉広葉樹林、常緑針葉樹林(→イヌブナ林、モミ-ツガ林、クリ林)、1400~2000mの山地帯の落葉広葉樹林、針広混交林(→ウラジロモミ林、ミズナラ林、ブナ林)、2000~2600mの亜高山帯の常緑針葉樹林(→シラビソ林、コメツガ-トウヒ林)、2600m以上の高山帯の常緑針葉低木林(→ハイマツ群落)が垂直分布している。
 その中で、南アルプスの植物の魅力として、蛭間さんは、山体が大きく広大な亜高山帯針葉樹林があること、北岳・仙丈岳など高山植物の宝庫であること、多くの高山植物が分布する最南端の地域であること、ハイマツは世界分布の南限、固有種・隔離分布種や遺存種が多いこと、石灰岩地に特有な植物相があること、地元住民の意識の高さを挙げられて、特に亜高山帯、山地帯、石灰岩地の魅力をアピールしたいとのことだった。なので、南アルプスのかれんな高山植物の話を期待していた人がいたとしたら、ちょっと違う話だったかもしれない。いろいろな針葉樹のまつぼっくりや、話に出てきた植物の標本を回して見せていただく。話に出てきた地元住民うんぬんは、具体的には育む会のことを言っていたと思うけれども、世界自然遺産や世界ジオパーク、エコパークを目指すならば、より広範な地域住民の意識を高めることが必要だろう。

 今日のリニアを見据えた地域づくり講演会は、日本経済研究所の傍士銑太氏の講演と、地域の事例発表、南信州交流の輪、飯田西中、ネスク・イイダ、上郷地域まちづくり委員会の野底山森林公園の取り組みの四つ。
 傍士さんはJリーグの理事をされているそうで、スタジアムの資料があったり、またご当地プレートを提唱されていて、その資料もあった。タイトルに「リニア時代を見据えた」とあったけれども、冒頭、2027年をどう見るかというのは難しい、15年前の1997年はどうだったか、いかに時代が変化するかということ、そして、今は日本の針路が転換を求められているとして、1.経済は目的ではない、2.人口増加時代の価値観から人口減少時代の価値観、3.先進国唯一の中央集権システムから地方分権に変わっていかなくてはならないという3点を挙げられた。地域と国の関係は、中央集権の支配関係ではなく、地域でできないことを国がやると言う補完関係にならなければいけない。そのためには意識改革が必要。また、未来の原動力として、地域意識の表現力(文化)、小さい単位の力(個の自立)、つなげる力・つながる力(連帯・複合)の三つを挙げられた。Homeのある風景、自信と誇りを持てる地域をつくること。飯田の未来を考えるとき、何を変えていかなければならないかという変える勇気とともに、変えてはいけないもの、変えられないことを受け入れる忍耐、その二つを見極める知恵、そしてサイレントタイム、静かに声を聞く時間が必要と締めくくられた。