おっさんひとり犬いっぴき

家族がふえてノンキな暮らし

不屈の精神

2023-02-02 11:34:09 | 日記
 朝4時前にアンに起こされる。毎日この時間になるとエサを欲しがって、ミャアミャア鳴きながら寝ている僕の顔を前足でそっと叩く。仕方がないので、ゴソゴソと布団から抜け出し、アンの餌入れにカリカリを入れてやるのだが、その頃には少しばかり目が覚めてくる。というわけで、朝のテオの散歩までの時間が僕の読書の時間になっている。真っ暗い中、ストーブの前の椅子に陣取り、膝の上にアンを乗せて本を読む。

 昨日で「明治天皇」を読み終えたので、今朝は本棚から以前買った「エンデュアランス号漂流」(アルフレッド・ランシング著)を引っ張り出して読み始める。買ったのその日に面白くて、夜中までかかって一気に読んでしまったので、細かい部分はほとんど忘れてしまった。南極で遭難し、信じられないほど過酷な状況から脱出を果たした物語は、寒い日に読むにはぴったりのような気がしたのだ。

 本の帯にはこんな説明がある。「オーロラ撮影のため厳冬期のアラスカ山脈で1ヶ月に及ぶ単独キャンプ生活を送った星野道夫は、携行したこの一冊の本によって、困難な状況に耐える勇気を与えられた」。また、「歴史的名著である本書の刊行は、96年急逝した写真家星野道夫の生前の尽力によって実現した」とも。

 歴史的に有名なこの事件は、図書館に行っても数冊は置いてある。それは星野道夫さんの言葉によるなら、「シャクルトン(隊長)の旅は失敗に終わり、輝かしい南極探検史の中で埋もれてしまった。しかし、このすさまじい生存への脱出行は、読む者に生きる勇気を与えてくれる」からである。

 ノルウェーのアムンゼン、イギリスのスコットが、初の南極点到達を目指し競争していた頃、シャクルトンはすでに次の冒険は南極大陸の横断であると信じ、準備を重ねていた。時は第一次大戦勃発の年で、イギリスも参戦を表明したところだった。国の援助を得ていたシャクルトンは、出発していいものか迷い、当時の海軍大臣だったチャーチルにお伺いを立てたところ、「決行せよ」との返事で、意気揚々とイギリスを出発するのである。

 が、南極大陸に接岸する前に、大量の流氷に閉じ込められ、エンデュアランス号は身動きが取れなくなってしまう。時間とともに流氷は巨大な氷床となり、エンデュアランス号はポツンと氷の中のゴマ粒みたいになってしまった。無線もないから誰も救助に来ない。第一、最先端の技術を持つ船だから、今で言うと月ロケットみたいなものである。たとえ遭難を知らせたからといって、誰も助けに来てはくれないのだ。

 この冒険記は、氷に閉じ込められたエンデュアランス号が氷の圧力で粉々になり、船を捨て、氷の上を数千キロにかけて歩いて移動し、最後は有志によって救命ボートで氷の海を救助を求め、人間の住む一番近い島まで航海する様子を描いたものだ。

 感動的なのは、こうした絶望的な状況にも関わらず、隊員28人全員が前向きで明るさを失わず、シャクルトンの指揮のもとに一致団結して困難を克服していくことにある。ちなみにエンデュアランス号はもともと「北極星」という名前の建造中の船だったが、シャクルトンが南極探検用にと買い取り、エンデュアランス号と名前を変えた。エンデュアランスとは、「不屈の精神」という意味だ。そしてそれは、シャクルトン家の家訓でもあった。
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