おっさんひとり犬いっぴき

家族がふえてノンキな暮らし

経験の拡大

2024-08-01 11:22:47 | 日記
 世界第二の高峰K2の未踏ルートに挑んでいた日本人の登山家ふたりが遭難した。ヘリコプターを飛ばし滑落現場でふたりの姿を確認したが、救助が困難な場所であるとともに、動きがまったく見られないために救助をあきらめたという報道が流れた。

 遭難したふたりは世界的な登山家であり、登山家に与えられる最高賞も得ていただけに残念な結末を迎えてしまったが、冒険家である以上、常に限界ギリギリの挑戦をしているだけに、悲劇はつきものである。

 同じく冒険家として多数の著書もある角幡唯介氏さんがこういうことを言っている。
「多くの冒険家が43歳で遭難するのは決して偶然ではない」
「私の考えを述べれば、経験の拡大に肉体が追いつかなくなりはじめる年齢である」

 冒険家の世界では「43歳の壁」と呼ばれているものがあるという。植村直己、長谷川恒男、谷口けい、河野兵市、星野道夫は43歳、森田勝は42歳、山田昇は39歳で亡くなっている。今回事故に遭った平出さんは45歳、中島さんは39歳だった。ただこの中で僕が敬愛する写真家の星野道夫さんは、冒険家ではない。おまけに事故にあったのは、日本のテレビ局に応じてのことだったから、本人のミスとは言い切れないだろう。

 それにしても、「経験の拡大に肉体が追いつかなくなりはじめる年齢」という言葉の意味するところは深い。なぜなら、僕ら凡人では、経験は拡大どころか年齢とともに縮小していくからだ。肉体が追いつかないのではなく、肉体の衰えが脳みその衰えとなり、経験の拡大という意欲を失わせてしまうからである。

 冒険家にとっての経験の拡大とは常の命の危険を伴うことなのだが、それでも冒険家の宿命として停滞や撤退は考えられないのだろう。それに反して、僕らのような凡人は、経験を拡大したところでそうそう命の危険にさらされるわけではない。それなのに、「この歳で何をやっても仕方ないだろう」とか、「今さらやったってどうなるってわけでもないだろう」と言いたがるのはどういうわけなのか。

 
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