水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

雑念ユーモア短編集 (58)一方的

2024年04月28日 00時00分00秒 | #小説

 一方的にコトを強制されれば、人は反発心を抱きやすい。むろんそれには個人差があるが、多かれ少なかれ、気分がよかろうはずがない。
 とある銀行である。家の修理資金が必要になった井深は、定期預金を解約しよう…と、銀行に出向いていた。待合番号の紙を機械で出し、待合椅子に座りながら電子掲示板の番号が変わるのを待った。ところが、である。いっこうに番号が変わる気配がない。5分ばかり待ったが電子掲示板の番号は[105]のまま停止し、井深の番号[106]を示す気配がなかった。井深は待合椅子を立つと女子行員が座るデスクの方へ近づき、その様子を覗き込んだ。すると、ようやく女子行員が井深に気づいた。窓口には係の行員が誰も座っていなかった。これでは一方的に顧客は待たされることになる…と、井深に怒りが芽生えた。まあ、それはそれとして…と、思い直した井深は、女子銀行員に言われるまま解約処理を進めていった。その後も井深が一方的だな…と思える事務処理内容が幾つかあった。それを箇条書きにすれば、下記のとおりである。
 [1]利用者名がカタカナ表記で印字してある。これは利用者に対して失礼極りない一方的な印字処理である。
 [2]利用者は捺印しているのに、係員の捺印がない。これは一方的な銀行の上から目線の処理方法である。
 [3]西暦で書こうとしたが、利用日の記載欄を元号で書くよう指示された。銀行が一方的に指示すべき事項ではない。
 他にも幾つかの腹立たしい事務処理が生じたが、細かいことなので、まあ、いいか…と、井深は思うに留めて我慢した。
 このように、顧客に対する一方的な事務処理は、利用者を遠退かせ、ひいては組織力を弱めることになるのは必然でしょう。^^

                   完


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