NY株が急落した。
けん引役はこれまで反騰相場のリード役であったハイテクでグーグル、マイクロソフトなどで、いずれも決算が事前の予想を下回った。
それに毎年10月19日にはブラックマンディの亡霊が徘徊する。25年前の1987年10月19日に相場が一日で23%も暴落した。ブラックマンディである。
この下落率を現在のダウ平均に当てはめると3100ドルに匹敵する暴落で世界の投資家を震撼とさせた。
相場の世界ではこの種のジンクスを気にする風習がある。
足元の米国景気は住宅市場がけん引役になって回復基調が鮮明になってきたが、中国経済の減速、ユーロ圏の金融不安が市場に懸念材料としていつも頭をもたげる。
1987年の暴落の日には売りものが殺到し、取引を一時中断するサーキットブレイカーが発動された。
現在の市場のメインプレイヤーである多くのヘッジファンドは、この種の暴落を経験していないだけに、相場がこれといった理由もなしに下げると市場では先行きに不安心理が増幅される。
当時はグリーンスパン連銀議長が就任して間もない時でインフレを抑えるために利上げしたばかりであってクラッシュに戸惑った。
当時は東京市場もクラッシュの余波を受けて暴落したが、当時の個人投資家は懐が深く、暴落時には買い向かうという行動に出る向きが多く、日本株の回復は世界の株価に先行して回復した。当時の日本の世界における存在感は、現在の中国のようで世界の経済に影響を与える力があった。
現在のアメリカの経済力は22年前に比べ格段に強くなった。当然、株式市場も他国を引き離し、リーマンショックの洗練を受けて金融システムは強化され、バーナンキ議長の巧みな金融政策が株式市場に大きな支えになっている。現在のNYダウ平均は日経平均を追い抜いたが、当時は日経平均の10分の1であった。この事実をみても日本の実力の低下が実感される。
ウォール街の現在の関心事はNYダウ平均が2007年の史上最高値の14,164ドルを追い抜いていつ新記録を達成するかにある。
昨日のようなNY株の下落は相場にとってはむしろ好ましい。いまは“相場は不安の壁を登る”という格言を地で往っているだけに、不安の増幅は先行きの相場展開には「ばね」の役目を果たすだろう。