足立 真一のTriton Blog

株式投資の実践、グローバルな視点での投資戦略。
銘柄選択は、成長株、中・小型株、新興市場株にバイアスを置く。

今年も終わった

2005-12-31 16:17:14 | 株式

ウォール街を最後に「株式市場がことしも終わった」。

クリスマス明けの相場を期待したが、昨日のNY株はダウ平均が10717.50(-67.32)、ナスダックが2205.32(-12.84)、S&P500が1248.29(-6.13)で終わった。年間ではダウ-0.6%、ナスダック+1.4%、S&P+3.0%であった。ダウの上昇は3年目にストップした。それにダウの変動率は1886年にダウ平均が登場して以来の最低の数字である。ことしの米国株で成果を挙げるのは難しかった。ただ先進国では日本が1986年以来、ロンドンが1999年以来の上昇率を記録した。NY株の不振が世界の株式市場にマイナスの影響を与えなかったことも珍しい。新年の投資戦略を立てる上での注目点の一つである。日本とヨーロッパのプレゼンスが上がってきたのか?

ウォール街のこのような環境下で、ビル・ミラー(レッグメイソンのバリュートラストの運用者)が、今年もS&P500に勝って+5.32%と15年連続という記録を立てた。前人未踏の数字である。S&P500は+4.91%(いずれも配当を含む)。連続してS&P500を上回るのは不可能というのが学界では定説になっている。その定説に彼は挑戦してきた。

ビル・ミラーの過去15年間の成果は年率+16.44%。4年余で資産を2倍にした。今年はインターネットのグーグルに大量に投資した。2兆円近くを運用しながら41銘柄への集中投資である。エネルギー株への投資はゼロであった。原油価格の上昇は一時的というのがその理由である。

彼の生き方をみてると勇気づけられる。

「ことしも終わった」あとのウォール街でのコンセンサスの一つは、「2006年もストック・ピッカーズ・マーケット(個別物色)が続く」ということである。株価指数には関係なしにである。

東京市場でも+40%のあとの市場では、ウォール街と同じことがいえるかも知れない。

2006年も良い年でありますように。


新興市場の人気が新年にいっそう強まる

2005-12-30 19:03:15 | 株式

大納会の相場は大幅安で終わったが、新興市場に注力できる投資家にとっては満足の行くいく展開であった。

「相場には循環現象がある」というのは頭ではわかっていてもなかなか実行は難しい。8~11月の上昇相場は銀行、鉄鋼、不動産、非鉄、造船、化学などが大商いをともないながら上昇した。これらの銘柄が1日で7~8%も上昇した。「まるで新興市場のようだ」としばしば書いた。肝心の新興市場は動きが止まり、辛抱しきれずに新興市場→大型株という資金の流れが続いた。新興市場に悪材料が出たわけではなく「動く銘柄につく」という単純な動機である。新興市場が日本の産業構造の転換の象徴のひとつであるというのが、かねての私の持論だけに、第1部市場だけではなく両方に分散して投資をすすめてきた。

ウォール街で活躍している有名な運用者にマーチン・ズバィという人がいる。彼の投資で成功する3つの方針をいつも頭に置いている。

「柔軟性」「忍耐」「自己規律」である。特にここで注目したいのは「忍耐」である。大納会の相場で一足先に「わが世の春」を享受できたのは、分散投資で新興市場の銘柄にも注力した投資家だ。特に新興市場ではインターネットやハイテクが強かった。このトレンドは新年はじめにまで持ち越されるだろう。

ウォール街ではクリスマス・ラリーは不発に終わった。しかし小売業界で大きく伸びたのはEコマースであった。オンラインによる販売は前年比+42%。なかでもPCとその周辺機器が+126%、民生用機器が+109%、アップルのiPodが+109%、そのほかアパレルも大きく伸びた。

インターネツト革命が大きく頭をもたげてきた証明。新興市場での有望銘柄の発掘にはインターネツト関連株を柱にしている。東京市場でもこの動きは新年にいっそう強くなるだろう。


売り急ぎの戒め

2005-12-29 21:30:25 | 株式

今年も余すところ1日だ。

以前にも書いたが8月5日を分水嶺にして相場の性格がすっかり変化した。まず指摘できるのは相場の上昇スピードがそれ以前とはケタ違いに大きくなってきたことである。これまでは資産バブルの清算という多分に後ろ向きの材料で相場を支えてきたが、景気の基調が循環的にも上昇トレンドに入って、通常の景気回復相場よりもスケールの大きな展開になってきた。株価の上昇が景気に好影響を与え、それに様々な分野での構造改革が加わった。株価上昇→個人、経営者の自信の回復→景気の上昇→株価の上昇という循環が始まった。

いまひとつ注目したいのはニューヨーク株離れをしたことである。S&P500は年初来+4%だが、日経平均はそれの10倍のスピードで上昇した。その大半は8月以降の相場である

こんなことは1980年代後半以来のことだ。

このトレンドが新年にも持ち越される。今年は「株を枕にして」越年しよう。あわてて手持ち玉を売る必要はない。特にこれまで人気の圏外にあったハイテク、それに12月後半から勢いづいてきた新興市場に新年は注目している。1~3月が勝負どころである。


逆イールド・カーブと東京市場の変化

2005-12-28 18:11:58 | 株式

ウォール街で昨日、大きな関心を集めたのは逆イールドカーブ。短期金利(2年国債)と長期国債(10年国債)の金利が一時は逆転したことだ。本来は長期金利が高いのが常識であるが、このような異常な事態がたまには起こる。1970年以降では6回あったが、直近は2000年のネット・バブル崩壊の初期。

逆転現象は先行き景気後退を暗示する。過去はいずれも景気が後退した。長期金利が低いのは先行き景気の後退で政策転換があると市場は読む。しかし足元の金利高は景気に影響を及ぼす。これまでの米国の長期金利の低位安定は外国からの資金流入で説明されてきたが、今回は初めて景気の先行きの関連で見られるようになってきた。それに株価が反応した。

市場の反応に対して「雇用が安定、低金利、個人消費の堅調」という現状から「過去とは違う」とみる向きも多い。目先の金利高は連銀がコントロールできる。新年の金融政策がどう反応するか、ひとつの大きな課題を市場が政策当局につきつけた。

東京市場の物色の流れに変化が出るのか?

この日の売買高のベストテンから常連の三菱UFJと三井住友が消え、銀行ではみずほフィナンシャルとりそなホールデングスだけが残った。代わりにソニー、TDKが加わった。相場の流れに変化が出るのかどうか?変化が出るなら、われわれのポートフォリオの一部の変更を迫られる。

12月21日にIPO(新規公開)したプロダクション・アイジー(3791・JQ)に注目している。東映アニメーション(4816・JQ)と並んで日本の代表的なアニメの制作会社。国を上げて育成しようというメディア・ソフトの争奪合戦が、ブロードバンドの普及で始まる。日本版のディズニー、ピクサー、ドリームワークスだ。米国に20年以上の遅れで登場した。


信用取引の規制をどうみる

2005-12-27 18:52:09 | 株式

16年ぶりの信用規制を東証が検討を始めたと日経新聞が伝えた。オンライン取引で信用取引の売買をして利益をあげた投資家のなかには「規制とは?」と初めての経験で、ピンとこない向きも多いのではないか。

現在信用取引で株式の売買を行うときには担保を現金で30%差し入れなければならない。100万円で株式を購入するとき、信用なら30万円を担保としていれる。現金でなく株券を担保で入れることもできる。その場合、株券の評価は時価に対して80%に評価されるので、(30%÷80%)×100=37.5%分の株券を担保として入れればよい。

担保の掛け目が70%になったら(30÷70%)×100=42.8%分の株券が担保として必要。投資家の資金力はそがれる。

取引所の狙いは過熱気味の相場を事前に抑えておきたいということ。それに80%という担保掛目は異常な高さで先進国では一番に優遇されてきた。それを70%という常識的な水準に戻そうというもの。日銀のゼロ金利解消と同じ狙いである。

東証の規制は相場にとっては影響なしとはいえない。掛け目だけではなく証拠金率も40~50%に引き上げるという。

ただ日経平均が1万6000円に乗り、売買代金が恒常的に20~30億株時代にはいっただけに規制してもそんなに大きな影響はないと東証は判断しているのだろう。いままでの「異常」を「正常」な水準にしようというのがいまひとつの狙い。そうしておかなければ株価が暴落した時の政策手段がないからだ。

しかし東証は「こと株式市場に関してはデフレは終わった」と判断している。相場の先見性が正しいなら、第1回目の規制は心理的なものに止まるだろう。むしろデフレ終了宣言の方に注目が集まるかもしれない。

しかし一つだけ投資家の皆さんに強調しておきたいのは信用取引での投資は避けることである。これだけは健全な資産運用とはいえない。説教のように聞こえるかもしれないが、プロ以外は信用で大もうけしたという話は聞かないからだ。