足立 真一のTriton Blog

株式投資の実践、グローバルな視点での投資戦略。
銘柄選択は、成長株、中・小型株、新興市場株にバイアスを置く。

円相場と金

2009-02-27 08:14:53 | 株式

昨日のウォール街ではオバマ政権での初の予算教書にも大きな反応を示さなかった。

景気、金融対策に具体的な内容が示されるまで見送りというのがコンセンサス。しかし政府の景気見通しは2009年‐1.2%、2010+3.2%と来年度に向けての景気の大きな回復を見込む。

昨日の価は後半にかけてジリ安になったが、注目すべき動きもあった。

まず原油価格で2.72ドル高の$45.22126日以来の高値になった。週間の在庫統計でガソリンの供給が減少し、需要が増加したことだ。景気の落ち込みはひどいが、石油需要に関しては、消費者の動きには下げ止まりのサインである。昨年7月に$147の高値をつけて以来、下落を続けてきたが、投機現象もすっかり消え実需の動向を率直に反映する。

いまひとつの注目点は円相場だ。NY市場では一時、98.69ドルを記録した。円相場の下値の支持線といわれる98円を切った。昨年11月以来だ。トレーダーのなかには「目先、102円を目指す」とみる向きも出てきた。世界の投機家の関心事は円相場に移り、円対ドルの取引が為替市場の注目点になってきた。

材料は日本経済の予想以上の不振である。特に昨年10~12月期のGDPが年率12.7%の落ち込みになったのを問題にする。改めて日本経済の高い外需依存度を問題にする。

金投資にこれまで注目してきたが、これまで円建ての金価格は、円高で海外の人気を率直に反映しなかった。しかし円安基調は金相場の上昇を実感させる。

特に今回の金相場の反騰局面での注目点はウォール街での金鉱株の人気化である。金相場に対して歴史的には3~4倍のボラティリティ(変動率)があるという習性を金鉱株が取り戻してきた。昨日も金相場は下落したが、金鉱株は堅調であった。


2回目の中間反騰

2009-02-26 08:37:42 | 株式

オバマ大統領の演説にウォール街は冷静な反応。「骨子には好感が持てるが具体性に乏しい」という評価。

先のガイトナー財務長官の就任時の演説に対しての評価とほぼ同じだ。市場が求めているのは銀行への信用の回復と、景気の底入れへのサプライズのある新政策だ。

「我々は(国家を)再建し、復活し、米国はかってよりも強力になってよみがえるだろう」(日経新聞より)という演説の冒頭分は印象的だ。日本ではこの種の演説が政治家の口から聞こえるだろうか?リンカーン大統領のスピーチを彷彿とさせる。

前日、大きく反発した(NYダウ+236ドル)相場は小幅反落(‐80ドル)。昨年11月の底値に引き続いて2回目の底入れをした。このまま大底いれとは読めないが、今週の動きを先行き繰り返しながら、オバマ大統領のいう再建の動きが現実化していくのだろう。

景気の先行きを占う指標で注目されはじめたのが、金利のイールド曲線だ。

1ヵ月物)0.27%→(10年物)2.92%→3.50%(30年物)と期間が長くなるほど高くなる順イールドになってきた。景気の先行きは好転するという投資家の読みが現れてきている。バーナンキ議長は「2010年には回復」と今回の議会証言で明言した。

景気の最大の問題点である信用市場の不安は、政策で払拭する自信をみせた。

日米とも株価は第2の中間反騰の可能性が出てきた。


空売りはすべて閉じる・・・プレクターの警告

2009-02-25 08:12:35 | 株式

NY株が猛反発した。

久しぶりにバーナンキ議長の発言が相場を動かした。昨日の議会証言では今回のストレステストといわれる大手銀行の緊急検査が「銀行の国有化の有無をみるためではない」と明確に否定した。

“必要がないのに国有化を検討したりしても、銀行固有の価値を毀損するだけだ”。

“政府が支配したからといって個人や企業にプラスになることはない”

“銀行の健全化のカギは景気がにぎっている”

このような発言が市場に安心感を与え、政府に金融安定化と景気対策の実行を求めた。

前日までとは市場は一転して買い人気が支配、銀行株のETFであるKBW銀行株(KBE)は+12.24%と急騰し、シティ・グループ、バンク・オブ・アメリカがいずれも+20%以上の上昇になった。

エリオット波動の第一人者であるロバート・プレクターは「ショート(空売り)はすべて買い戻す」ようにという緊急レポートを出した。

“空売り筋には恐怖の猛反発になる”と警告。短期的には相場の反騰を予想した。ただ長期的なトレンドには弱気だ。

彼は1987年の株価のクラシュの2ヵ月前に弱気に転換して注目を集めた。今回は天井の3ヵ月前に弱気の信号を発信した。

また私が注目している別のニュースレターも、目先について先週末「S&P500750ポイントは相場の行過ぎ。そこまで下落すれば820ポイントの上値抵抗線を突破し、900ポイントまで急反発」と伝えた。

先週末のS&P500770ポイント、今週月曜日には743ポイントまで下落した。


昨年9月の再来(NY株)

2009-02-24 07:41:20 | 株式

NYダウ平均は19975月以来の安値になった。ITバブル後の安値であった2002年を下回り、次ぎの節目の1990年代半ばの相場の転換点の水準になった。

今回の相場の下落の理由は先週のオバマ政権の景気、金融安定に対しての不手際に帰する。

昨年の株価の暴落は9月のリーマンブラザーズ破綻にあり、ポールソン財務長官の判断ミスに始まった。

今回はサマーズ経済会議委員長、ガイトナー財務長官の「時間との勝負」という政策運営への市場の期待感が裏切られたことだ。

株価の下落→証券化商品の下落→銀行の資産の悪化というマイナスのスパイラル現象の再燃である。株式市場の考える時間と政策当局の時間の間のギャップが出た。

先週末にはシティ・グループとバンク・オブ・アメリカが「現在の資産内容は万全」という声明を出したが、株価の水準が変わると先週末の常識も通用しない。

“私の市場哲学というか、あるいは市場理論は、現在のパラダイムが不確実性を低評価しているか、無視しているということにある。

 私自身は不安定性の分析家で、セキュリティ・アナリスト(証券分析)ではない”というジョージ・ソロスのことばが想い出される。

今回の市場の波乱を利用して運用成果を上げている。それだけにソロスのことばの意味は重い。


米金融危機の再燃・・・今週が正念場

2009-02-23 06:26:37 | 株式

先週のNY株の下落の主因のひとつであった銀行株が正念場を迎えている。下手をすれば昨年9月のリーマンブラザーズ破たん時のような事態になる可能性をはらんでいる。

特にシティ・グループ(C)とバンク・オブ・アメリカ(BAC)の動きだ。週末の株価はシティが$1.95で時価総額は9980億円。バンク・オブ・アメリカの株価は$3.78で時価総額は22700億円。

三菱UFJの時価総額は49900億円、任天堂は39000億円、そしてグーグルが102000億円。これらの時価総額をみると市場は、上記の2大銀行の生存は別にして国有化の懸念を抱いている。

両行は金曜日の午後、「資本は十分にある。将来の成長に向けて合理化と費用削減に努めている」(シティ・グループ)、「国有化の議論は資産内容の強固なことを考慮せず、その経済にもたらせる影響を無視している。預貸率は改善している」(バンク・オブ・アメリカ)と発表した。

今週は銀行の資産内容の健全性の調査があり、ガイトナー財務長官の新金融政策の発表がある。

先週末、オバマ大統領は減税策を発表、4月初めまで実行すると約束した。政府は休日も返上して準備を進める。同じようなことが金融市場の安定にも出るかどうか?