今月3日、米連銀は第2次の金融量的緩和策を発表した。6000億ドル(50兆円)の債券を市場から来年6月までに買い付けるという内容だ。
この政策に対してすぐに賛否両論が出たが、それを予想してバーナンキ議長は政策決定を世間が十分に理解するように、11月4日にワシントン・ポスト紙にわざわざ自ら寄稿した。そこでは明快に「現在は失業率が高すぎるし、インフレは低すぎる。高い雇用率、安定した適度のインフレ率の回復という2つの信任を得るためには一段の金融の緩和が必要である。適度のインフレは望ましく、低インフレは経済にはリスクをもたらせる。特に現在のような景気が不透明なときには必要である。極端なケースを考えると、低インフレはデフレ(物価と賃金の下落)になり、景気を長期のスタグフレーション(景気低迷とインフレ)に陥れる」と主張した。
またバーナンキ議長は今回の連銀の行動が望ましい結果をもたらせると、以下のように明快に論じている。「初期の段階では経済の成長率を促進する。たとえば住宅融資の利率の低下は住宅価格を手頃な価格で取得できるようにし、住宅所有者の借り換えを促進させる。債券の利率の低下は企業の設備投資を促進する。株価の上昇が消費者に資産効果をもたらせ、確信を植え付け消費の回復につながる。消費の増加は所得増と企業収益に好影響をもたらし、さらなる景気拡大を支えるという、堅実な循環をもたらせる」。
世界のメディアはバーナンキ議長の決断に様々な論評をすることを予想しての寄稿である。自分が下した決断に対して強い信念と自信をもつ。グリーンスパン前議長のときには考えられなかった行動である。特に自分が決断した金融政策が株式市場に好影響をもたらせるという自信のほどを表明するのは、アメリカ経済の方向を左右するという責任の自覚の現れである。
日銀の白川総裁にここまでの自信と責任感があるのか、米国の政策当局の現実論に立脚した行動は実にうらやましい。
NY株は来年にかけて一段と水準を切り上げるとみる。