中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

アート鑑賞いろは塾――床の間奪回!

2014年12月11日 | かたち塾、アート鑑賞いろは塾



毎回、気づきや発見のあるアート鑑賞いろは塾ですが、今期最後の塾は櫻工房で7日に行われました。女性ばかりの参加となりました。

いくつかのテーマの中で、特に「床の間奪回」の話と共に、具体的に床の間に、かたちコレクションの絵画や置物を置いて鑑賞したり、他の物と置き換えてみたり参加者の若手アーティストの作品も飾ったり、、の実践は特に面白かったです。

床の間の飾り方は西洋的な単品の鑑賞方法ではなく、2点、3点を取り合わせるところに意味があるのですが、参加の若いアーティーストも、「自分の作品をこんなふうに展示してみたことはないので新鮮でした!」と言ってました。

波長の合うものを時間をかけて探すのも楽しいです。

床の間は必ずしも伝統的スタイルのものでなくても、見立てで良いのです。
自室の一角に、玄関の下駄箱の上に、床に板を一枚敷き、一段高くすればそこは床の間空間になります。

そこに何かを飾り取り合わせる。絵を掛け、置物や花や石やとりあわせる。
ものと向き合ってみる。
自分に出会えるかもしれませんね。

参加のお一人から一昨日、床の間の画像が添付されたメールが届きました。
ご本人の許可を得て少しご紹介します(斜体が引用文です)。

20代の方で、現在アルバイトをしながらいろいろ勉強中なのですが、糸や布、手わざ、古いもの、現代のもの、民俗的なものなど様々に興味を持って見聞きすることに夢中のようです。

この日の講義を受け早速一人暮らす家に帰り床の間に手持ちのものを置いてみたようです。



「飾る絵がなく上に視線を逃すことができず糸巻きなどごちゃごちゃ置いてしまいましたが、
一つ間違えると古道具屋の商品棚ですね。

左にある女神像は半身虫食いでぼろぼろなのですが、こう取り合わせると、過酷な労働の時代の女性を彷彿します。
病的なところが人々の身代わりのようでなんとなく気になって購入したものですが、床の間に取り合わせるとまた違う目線で見られます。
(中略)
これまでも写真にある机の上に抹茶腕や水差しを置いていたのですが、
どちらかといえば飾り棚に近い感覚でした。
なので、今回取り合わせて物を置いたことで、やっと床の間へ昇格です!!

知っている人にしかわかりませんが、写真の座繰り機は新潟のものなので、
水が飛んでも凍り付かないように、歯車が隠れています。
そこに寒さ(自然)の条件に対する人の知恵を感じるので、そういう気分で
眺めると良い感じです。ちなみに実用してみる予定です。」




いわゆる茶道などでいうところの床の間飾りとしての体は全く成していないのですが、私は前衛的な強い印象を受けました。

私も床の間を美術品の鑑賞や自分の心の置き場所としたりはしているつもりですが、こんな取合せを考えたことはありません。
道具を置くなんて・・と思いがちですが、糸は本来は人の命を守るために紡がれてきたわけですし、仏像も悲しみ、苦しみを抱えた人々の祈りの対象物ですから彼女の取合せの発想もうなずけます。

彼女が提示してくれた画像からもう一度糸のことや布を織ることの歴史、道具の叡智と美しさを再確認させてもらいました。

自分の身の丈に合わせ、今の自分を反映させ、取合せを考え、心の置き場所にもなっているこの床の間飾りは私にとって刺激的でした。
自分が大事にしたいものや事を少し高く掲げてみる。

美術館で名品を眺めるのも良いことですが、現代の暮らしにも床の間空間を持つことは誰にでもできるし、自分の美意識や興味を高め鍛えることにもなります。

お正月前の大掃除で少し片付けをして、自分の暮らしに床の間スペースを確保してみませんか?

アート塾でも今後も「床の間」は継続していきます。

今回のアート塾は20代の方が3名参加してくれていたのですが、フレッシュな空気が漂ってよかったです。

また紬の着物に先日お求めくださった小川郁子さんの帯留めを締めて参加してくださった貫禄充分!の60代の方もあり、様々な年代、立場の方と終了後も飲み会に突入し楽しい時間が過ぎました。

モノと出会い、毎回新しい目でモノを観続ける――。
新陳代謝のある床の間を奪回したいですね。

来年も充実した内容で開催していきますので、ぜひたくさんのかたの参加をお待ちしています。






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