中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

23’紬塾染織実習 小さな布を織る(最終回)

2023年12月22日 | 紬塾’21~’24
糸をつむぐこと、染めること、織り物設計をすること、そして今回最終回の織ることを4回に亘って行いました。

先日の半巾帯を織り上げた経糸が少し残り(予定外でしたが)、それを使って一人2~3寸ずつ織ってもらいました。

自分でつむいだ糸(柿の小枝で染めた白茶)を最大限活かすことと、もう1~4色の色糸(私の方で用意している色糸)を選び、混ぜながら一枚の小さな布を織ってもらうのが実習の趣旨です。

たての縞がはっきりした、凝ったものなので、初心者には難しいかと思いましたが、
多少アドヴァイスもしながらですが、案外いい感じに出来上がりました。
織は初めての方がほとんどでしたが、耳も出来る限り意識して綺麗に織ってもらいました。
良い布になり、私もホッとしています。

織った順番に、それぞれ紹介します。布の手前が、織り始めです。


T.K.
設計通りに焦げ茶でスタートしましたが、途中色の変更や混ぜ方を臨機応変に変え、進めました。力強い温かみのある布になりました。




I.M.
柔らかな色を選び、やはり予定を少し変更しながら織り上げました。
ピンクとグリーンをランダムな段で織りましたが、薄い色の段なので、たての縞が生きた優しい布になりました。




K.M.
暖色系の中に寒色のグレーが生きています。互いの糸がハーモニーを醸して洗練された大人可愛い布になりました。




O.Y.
規則的なグラデーションはほぼ最初の設計通り、迷わず織り進めていました。
色糸を2段に分けて、スッキリしたグラフィック的な布になりました。




I.K.
機の最後で経糸が短くなり、織りにくかったのですが、不平不満も漏らさずに黙々と織ってくださいました。
今回の趣旨と少し外れましたが、ご自分の好きな色を入れたいという強いご希望があり、色を中心にした元気な布になりました。中程は白糸で七子織も入れました。

終わって、バスの時間まで少しあったので、「織る時に大事にしていることは何か」という質問を受けましたので、お答えしました。
「自分の表現は最後でいい、まず素材を観ること」と答えました。
目をまるくされていました。°_° 

この実習を通して、真綿の糸の感触や糸を混ぜながら奥行きを出していく紬織物の世界を少しでも体感して頂ければと思います。
また、経糸に複雑な節のある糸を使っていることで、布の深味が増すことも知ってもらえたらと思います。

紬というものが曖昧になってしまった昨近ですが、たて糸に節があり、柔らかな真綿の糸の風合いを活かしたものが野趣のある本来の紬だと思います。

みなさん基礎コースもしっかり受講し、更に実践でも紬の世界を深めてもらったと思います。
私も実のあることをしてもらいたいと、採算は度返しで務めたつもりです。
技術は拙いながら、こんなに高度な布はそうはないと、自信を持って言えます。

来年は紬塾が出来るか否か、全く未定です。
3月初めには開催の有無を決めますが、検討中の方はHPの「問い合わせ」よりメールでご連絡をいただければ、開催の有無が分かり次第ご連絡します。





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